Vol.36

ARZ-124 [HRAIROOⅡ RAH] フライルーⅡ・ラー

フライルーⅡは、素体となるウーンドウォートをベースに、「アドバンスド・フライルー」と同じレイアウトで汎用強化パーツを装着した代替機形態である。人型を外れた半ば航空機状の機体構成であり、機体各部に装備された複数のブースターによる加速を利用した、一撃離脱戦法を採るMA的な運用がなされる。機体の外見上、機能上の最大の特徴である両腕のコンポジット・シールド・ブースターは、高機動時の剛性を確保するために背部に接続されたフレームに半固定される。この固定方式により、変形を行わずにモード変化——高出力ビーム砲による射撃モードと、クローを展開する格闘モード——のみでの運用が可能となった。各モードを使い分けることで、あらゆる戦局への対抗が可能である。「フライルーⅡ・ラー」形態は、その「フライルーⅡ」形態に「フルドドⅡ」を装着した状態を指す。この形態を第2の基点として、両肩と両脚のフルドドⅡのドラムフレーム部分に、各種の超重装備を追加で装着することで、「ギガンティック」「クィンリィ」形態等のサイコガンダム系巨大機動兵器に変化する中核ユニットを構成する。TR-6の多くの形態がそうであるように、フライルーⅡもまた「対抗兵器」という概念で開発されている。当形態は対Zガンダム系後継機(後のゼータプラス、デルタプラス等)に対応しており、原型機であるギャプランと同様に、大気圏外より飛来するこの敵勢力を高高度で迎撃する任務を担うと同時に、それらを凌駕する能力を与えられた形態でもある。グリプス戦役後の混乱期、ギャプラン系の技術はカラバ等の地上勢力も入手していた。その中で計画された高高度迎撃機も、当形態と共通した半MA的な特徴を持つと言われる。これが収斂進化か技術継承の結果かは定かではないが、用途を同じくする兵器は、必然的に似た形状に辿り着くことが多い。ただし、それらの機体が特定任務に特化した機能や形状に進化したことに対して、TR-6は換装により全く異なる別任務に対応できる点が最大の特徴かつ、アドバンテージとなっている。

ARZ-124 [WONDWART RAH] ウーンドウォート・ラー

「TR計画」とは、ティターンズの最終兵器開発計画で、その要諦はパーツの換装による万能機の開発にある。その換装形態すべての基本となる機体が、素体となるウーンドウォートである。そして「ウーンドウォート」が「フルドドⅡ」と合体した形態が、「ウーンドウォート・ラー」である。フルドドⅡは、GアーマーやGディフェンサーといった強化パーツの一種で、単体では戦闘機形態(MA形態と称される)での戦闘が可能。MSと合体して機体を強化する支援戦闘メカとしての機能も有しており、「Gパーツ」とも呼ばれる。なお、名称の「ラー」とは、MS本体とフルドドが合体した状態を示すために、機体名の末尾に付けられる。このウーンドウォート・ラーは、試作機であるフルドド(Ⅰ)の代替機であるフルドドⅡ装備のため、「ウーンドウォート・ラーⅡ」が正式名称となるが、配備を終えた試作機との合体運用は想定されておらず、さらに機体名が複雑で長くなるためにⅡが省略されることも多い。

A

ウェポンコンテナ:巨大な武装コンテナで、内部に搭載する装備を変更することで任務に必要な様々な機能を強化、補佐する。一例を挙げると、ハイ・メガ・キャノンパーツ装備時の出力を補うための増加ジェネレーターの搭載など、他の強化パーツの装着により引き起こされるデメリットを解消する重要ユニットとして、TR-6の換装システムを裏側から支えている。

B

ハイメガ粒子砲:絶大な威力を誇るビーム兵器。面制圧力に加え、拡散式として使用することも可能で、その際は防御兵装としても運用される。装備することで第4世代に匹敵する攻撃力を獲得、同クラスの敵を凌駕することが出来る。カバー内の機関部はアドバンスドキハールⅡの頭部強化パーツと共通の物が搭載されている。後部にバインダーやコンテナ等をマウント可能な拡張装備用ラッチを備える。

C

フルドドⅡ:強化パーツとしてMSの肩部や腰部に装着することで、ユニット後方に備えられたドラムフレームを介して本体と巨大な武装を接続するためのジョイント・ハブとして機能する。これにより本形態を中核として大型オプションを自在に運用可能。「Gパーツ」とも呼ばれ、組み換えによる分離合体が可能。分離時には支援戦闘機として戦闘でも運用できる。

D

ウイングブースター:2連式の推力増加ユニットで、機体に高度な機動性、運動性を付与する。プロペラントを内蔵しており、航続距離を含む継戦能力も延長。原型機(ギャプラン)のバインダー後半部を進化させた機能を有し、生み出される強大な推力により大気圏内の自在な飛行を可能とする。装着位置は任意で設定でき、機体の重心と位置の調整によって性能を変化させる。

E

ウインチキャノン:開放型バレルを備えるビーム砲で、有線による制御によって遠隔攻撃に加え、オールレンジ攻撃にも対応する。また、モノアイセンサーをも備えており、隠密索敵行動にも対応する。ウインチワイヤー部に電流を流し、敵を絡めとる海ヘビとしても使用できる。裏面には追加武装の装着ができる。図はグレネード等の実体弾系武装を搭載した状態である。

F

コンポジット・シールド・ブースター:TR-6が標準装備する汎用兵装で、クロー・アーム、ブレード・ライフル、Iフィールド、ブースター、ウィンチなど、格闘から射撃、防御に加え、機動力やオールレンジ攻撃などの能力を備えるマルチウェポン。「BUNNyS」の制御によって自律稼働し、強化パーツの組み替え作業なども行う。有線遠隔式兵器として使用できる他、NT(強化人間)用の改良型である無線誘導式のモビルビット仕様も存在する。

G

投擲爆弾:TR計画系の機体の多くが装備する投擲兵器。強化パーツの組み替えなどに使用するサブアームを戦闘時にも有効活用するためのもので、メインアームとは独立して駆動、指示による自動で爆弾を投擲する。

H

増加脚パーツ:各強化部品を支えるために堅牢な脚部が必要な場合、TR-6は素体の脚部を折り畳んだ後に既存MSの手足を装着可能。この図では試作TR-1[ヘイズル]の脚部が使用されているが、TR-1の脚部は次世代主力機TR-Sの脚部試作部品であり、完成後はその部品を汎用強化脚パーツとして使用する計画であった。実際には開発計画の諸変更からTR-Sの簡易型であるバーザムの脚部での運用へと変更された。

TR用汎用強化部品

TR-6をはじめ、TR計画機に用意された強化パーツには、各形態用に特化した装備や、フルドドⅡを介した超重装備まで、さまざまなものが用意されている。本項で解説する汎用強化パーツは、それらの装備と組み合わせて使用されるもので、各形態の能力を補佐する役割を担っている。なお、ここで解説する能力、仕様は一例であり、作戦内容に合わせて柔軟に換装を行うことで、現場で新しい発想の使用方法を生み出すことも可能である。この万能性が、TR-6を無限の可能性を秘めた最強兵器として成立させている。なお、これらの汎用強化パーツは、TR-6用であると同時に既存のティターンズ機にも装備可能である。[アドバンスド・フライルー]の例のように、装備した既存機の性能を次世代機レベルにまで引き上げることができる。ティターンズ時代には、投入の遅れからその能力を発揮せずに終わった。しかし、後のレジオン建国戦争においては、当時火星を支配していたジオンマーズの多種多様なMSに対し、TR-6一種が宇宙、空、陸と各領域においてその換装能力を駆使した形態変化で対抗、これを打ち倒して戦争に勝利した。