Vol.38

ARZ-124 TR-6[HRUDUDU Ⅱ]フルドドⅡ

「フルドドⅡ」は、TR計画によるGパーツ開発実験用の試作機「フルドド」の完成版である。フルドド試作機と同様に、TR-6をはじめとしたティターンズ製MS(ひいては地球連邦軍製MS)の強化パーツとして機能する。これに加えて、ドラムフレームを介して超重装備を運用可能なハブジョイントとしての機構を持つ。TR強化パーツを組み合わせることでフルドド試作機の機能を再現した代替形態であり、プリムローズ+ブーストポッド+股間サブアーム(いずれもTR-6の構成部品でもある)から構成されるコクピットブロックと、推進器を担う両肩のドラムフレームユニットをコアとして構成されている。通常はウーンドウォートと組み合わせた運用を想定した汎用支援戦闘機として、ドラムフレーム部分に備えた両サブアーム部にウインチキャノンを装着して運用されることが多い。さらに、これを取り外して専用ユニットを装着することで、下記のような局地戦対応型MAとしても運用が可能。ドラムフレームに加えて計3本のサブアームに各種武装を組み合わせることで、そのバリエーションは多岐に及ぶ。

MS強化Gパーツ

[Gパーツの運用能力]:「Gパーツ」とは、MS用のサポート兵器の一種である。単体で戦闘機として運用が可能であり、また、MSと組み合わせて使用することによって、装備した機体の戦闘力を大幅に向上させる強化パーツとしての役割を有している。RX-78 ガンダム用に開発された「Gアーマー」は最初期のGパーツであり、ガンダムとGアーマーの各種パーツを組み合わせることで、様々な形態へと変化する。ガンダムを搭載した巡航形態である「Gアーマー」では、MSの欠点である行動範囲の狭さを解消。Gアーマーが分離した各パーツとコア・ファイターの組み合わせは「Gブル」「Gスカイ」といった戦闘兵器として運用され、ガンダムの下半身にパーツを装着した「ガンダムスカイ」形態ではMSの機動力が強化される。さらに、Gパーツのみで構成された戦闘機「Gファイター」としての運用など、使用状況に合わせて変化する運用性の高さがGパーツ最大の特徴と言える。

[TR計画製Gパーツ]:Gアーマーの運用能力は、TR計画において開発されたGパーツ「フルドド」にも引き継がれた。そもそもTR計画とは「機種統合」「最終兵器」というふたつの目的に基づいて進められた万能兵器開発計画である。フルドドにおいてもこのふたつに沿って開発が進められた。

機種統合計画:「FF-X29A フルドド」は機種統合計画に基づくGアーマーの後継機、ティターンズ版Gパーツとして開発された試作機であり、主にRX-121-1 ヘイズル改と組み合わせて実験的に運用された。強化パーツとしてMSに装着し機動力を向上させる「ヘイズル・ラー」形態をはじめとして、「ヘイズル・ラー第二形態“クルーザーモード”」では、Gアーマーと同じくMSの航続距離を大幅に拡大させた。また戦場ではMSと分離したうえで、Gファイターと同様に支援戦闘機形態として独立行動が可能である。このように、フルドドはGアーマーのコンセプトを、より洗練された兵器と言えよう。

最終兵器開発:同時期にアナハイム・エレクトロニクス社によって開発されたエゥーゴ版Gパーツが「FXA-05D Gディフェンサー」である。戦闘機としての単体運用、巡航形態「Gフライヤー」、MSの性能強化形態「スーパーガンダム」として機能するなど、Gアーマーの能力を受け継いでいる。フルドドとGディフェンサー、両者はティターンズとエゥーゴに分岐したそれぞれの勢力におけるGアーマー的な位置づけの兵器と言える。また、最終兵器開発の側面から見た場合、TR計画機の多くは対抗兵器の概念を持つ。フルドドは、このGディフェンサーの対抗兵器として、その後継機——合体変形システムの発展により、Gパーツの機能をMS本体のシステムに組み込んだMSZ-010 ZZガンダムやMSA-0011 Ex-sガンダムといったエゥーゴのZ計画後継機は、MS形態から巡航形態や分離戦闘機形態へと変形可能な、Gアーマーの機構を内包するMSであった——を想定し、それを凌駕する能力を与えられた機体として開発された。試作実験機であるフルドド、その完成系として正式採用されたのが「RX-124 フルドドⅡ」である。そして、前述のZZガンダム等と同様にGパーツ(フルドドⅡ)をMSの合体変形システムに組み込んだ機体が、RX-124 ガンダムTR-6[ハイゼンスレイⅡ・ラー]である。本機もまた巡航形態、分離戦闘機形態、MS強化パーツとしての運用が可能であり、名実ともにZZガンダム等の対抗兵器に位置する形態と言える。

[Gパーツのその後]:合体変形システムの実用化は、GパーツとMSの融合を促す結果となった。その結果、単体でのGパーツは姿を消していくが、その能力は有用であり、後の時代にも形を変え受け継がれていく。特にグリプス戦役に勝利したエゥーゴ(とアナハイム・エレクトロニクス社)は、Gディフェンサーの技術を取り入れたMSを開発した。U.C.0090年代前半には、MSZ-006 Zガンダムの簡易モデルとも言えるRGZ-91 リ・ガズィでは、バック・ウェポン・システム(BWS)と呼ばれるオプションパーツを装着することで巡航形態となるほか、戦闘機としての運用も可能となる。このBWSもGパーツの延長上にあるものと考えられ、合体技術が参考にされていた。(ただしBWSは、分離後の再合体や単体飛行も不可能な構造zsであった)。それ以外にもZ計画の延長上にある機体には、Gディフェンサーの技術を取り入れた機体例は多く、AOZガンダムもその一種である。またU.C.0150年代のLM312V04+SD-VB03A Vダッシュガンダムとコア・ブースターの例でも、合体変形や強化パーツの装備によって、MSおよび、コア・ファイターの性能を強化する機能は、Gパーツの延長にあるとも考えられる。その意味では、TR-6の万能化換装システムそのものが、Gパーツとガンダムの組み換えとその運用の延長にあるとも言えよう。

ARZ-124HB Ⅱ GUNDAM TR-6[HAMBRABI Ⅱ]ガンダムTR-6[ハンブラビⅡ]

単体で戦闘機として機能するフルドド試作機だが、2機が合体することでMA形態へと変化する。これはフルドド試作機のバインダー状のウイング・ユニットが、推進器以外にAMBAC肢として機能するほか、クロー・アームとしての機能も有す複合ユニットであり、その機能をMAとして生かした部品組み替えが可能なためである。俗称として「TRハンブラビ」の名を持つことからも分るように、この形態と機能は、RX-139 ハンブラビのMA形態へと繋がるものであった。ティターンズが開発した可変MSであるRX-139 ハンブラビのMA形態は、高い機動性や燃費の良さなどの特性を有していた。また、簡易な変形システムによる整備性の高さや、MA形態でも腕部が使用できるなど、移動に特化した他の可変MSと比較して高い戦闘能力を有していた。この特徴はハンブラビ開発の際に、フルドド試作機の合体MA形態で得られた技術が生かされた結果と言える。その開発系譜上にあるフルドドⅡも同様の機構を有している。フルドドⅡをコアとして、ドラムフレーム部分に高い機動力を持つ翼状のウイング・バインダーを装着。さらに両サブアームにビーム・キャノンを保持し、両肩先端部のクロー・アームを使用することによって、射撃と格闘の双方に対応可能である。これにより、支援戦闘機からMAへと機体能力が進化する。フルドド試作機の合体MA形態や、ハンブラビのMA形態と共通した特徴的な装備と、能力を受け継ぐ代替機形態であることから、当形態は「ハンブラビⅡ」と呼称される。また、TR-6と合体した上で余分な装備を取り外した状態は、ハンブラビのMS形態の代替機ともなる。こうした組み替えは、各種強化装備のレイアウト変更によって機体のパラメーターを調整できる万能化換装システムの一例と言える。使用されている各種TR強化パーツは汎用だが、この形態ではビーム・キャノンをはじめとして、ハイゼンスレイⅡと共通したパーツが特に多く見られる。ウイング・バインダーはハイゼンスレイⅡではテール・バインダーとして使用されている。これは元を辿れば、フルドド試作機のウイング・バインダーをベースとして完成した汎用部品である。ハイゼンスレイⅡはGパーツとMSが融合した機構を持つため、フルドドⅡの強化パーツが組み込まれているのは当然の流れである。

ARZ-124HB Ⅱ M[AQUA HAMBRABI Ⅱ]アクア・ハンブラビⅡ]

ハンブラビⅡは、空間戦を主眼に置いた局地戦用MAである。これに対しARZ-124HBⅡM アクア・ハンブラビⅡは水中での運用を主とする局地戦用の機体である。機体の両サイドのドラムフレーム部と胴体上部には、水中戦用のハイドロジェットパックを装着。さらに各部に装備したミサイルポッドをはじめ、全身の武装は地球連邦軍の水中用MSと互換性の高い武装構成となっている。これは合体後の本機がRAG-79 アクア・ジムの代替後継機であることの証明とも言える。また、この水中用装備のほかにも、空戦用、陸戦用、後方支援用などのユニットがあり、ユニットの換装により理論上、あらゆる局地戦に対応できる。元となったフルドドⅡ及びハンブラビⅡと同じく、Gパーツとしての機能を有しており、MSと合体して水中を巡航し、そのまま水中戦用の強化パーツとして機能し、そして単体でもMAとして戦闘が可能である。アクア・ハンブラビⅡの場合、合体したMSの水中での機動性や運動性を向上させることで、水中用MSとしての機能を付与する。また、本機と合体した場合、ハイザックの場合はアクア・ハイザックとなるように、機体名の前に「アクア」が付く命名法則が適用される。ティターンズ製MSとの合体が可能で、TR計画での運用を前提に設計されたバーザムとは特に相性がよく、合体した形態は「アクア・バーザム」と呼ばれる。また、MSの腰に装着した場合は水上での運用、肩に装着した場合は水中での運用など、合体時の装着部位によって運用領域が変化する点も特徴である。対抗兵器として見た場合、モビルポッドから発展したガザ系が変形したMA形態に対抗するために、同じくモビルポットから進化した側面を持つフルドドⅡを元にした形態と言える。これは、多数の可変機が運用されていた当時の情勢から考えても必然と言える。事実、ジオンマーズとのインレを巡る水中戦では、同じ運用法がなされる水中用MAがぶつかり合う事態となった。グリプス戦役終戦間際に完成・投入されたTR-6の各種強化パーツは、レジオンで初めて本格的に生産され、主に重要拠点にTR-6やバーザムなどの主力機と共に配備された。そしてハンブラビⅡの配備によってレジオン建国戦争に投入された旧ハンブラビは、その役目を終え、ノンブラビとして作業用MSに転用。現在のアクア・タイプは地下氷河インレ秘密基地の守備隊として配備され、水中の警護を行っている。一部の機体は、モビルポッドとしての機能を活かして、インレ基地建設の水中作業にも使用されている。水中に潜む巨大なエイはジオンマーズという獲物を待ち構え、鋼の毒尾で貫く——。