『キャプテン・アース』デザインの現場 浅井真紀(その4)

更新日:2014年7月23日 13:12

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『嬉しかったですね。想像していなかったものが出てきているわけですから』

 

インタビュー:電撃ホビーマガジン編集部(2014/5/2)
※インタビューで語られる画稿は電撃ホビーマガジン2014年7月号に掲載されています。

 

―ギグモードの姿も印象的ですね。

 

コヤマ:一部の方はこれがパイロットと思ってしまっているかも知れないですけど、ギグモード時に出てくるあの姿は実体じゃなくて、あくまで仮想空間の中に現れている”イメージ”なんですよ。地球上での姿を「アバター」と呼んでいるのに対しての「ギグモード」という感じです。キルトガングが自分で思い描いたイメージであって「本当の自分」ではない。

 

浅井:映像に近い存在というか。

 

コヤマ:そうですね、映像ですね。人間とコミュニケーションを取るために電子空間へ表示した擬似的なモノでしかない。なので人型としてのルールを外していても問題ないということでデザイン的には関節が外れていても大丈夫だし、浮いていても関係なし、と。ただし、ストーリーを進める上でドラマを演じないといけないので、これはキャラとしてデザインしてもらいました。

 

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浅井:まず僕がガーッとCGで描くじゃないですか。そのうえでコヤマくんが、もっとここはこうでしょう、ってプリントアウトの上に重ねて描き込んで……。

 

コヤマ:僕が顔以外のデザイン的な部分で「ここはこうしたほうがいい」みたいなアイデアを出したものを、浅井さんがさらに盛り込んでくれて、そうして出来た”原案”的なものをキャラクターデザインの石野(聡)さんにキャラクター設定としてまとめてもらう、という手法を取っています。

 

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浅井:本当に多くの人との“大合作”って感じになっちゃってますね。最初に描いたのはアマラでしたが、ギグモードの身体は薄い表面しかない、中身が空洞のイメージだったので、それを示すためにあちこちに穴が開いてるんですよ。その状態は発売中の電撃ホビーマガジン7月号を確認して欲しいんですが、CGモデルでデザインすると“線”で描くところを“段差”や“面”を作って表現するんですよね。立体造形としてはそうするしか無いんですが、2Dのアニメとして絵に描くのは大変だし、描いたところで効果的かどうかっていう話がありました。

 

コヤマ:浅井さんはCGで“描く”というよりは、”造形していく”みたいな感じでデザインされるので、僕からは「画で描くとここの線はナシで、ここはアリ。ここはもっとこう描いた方が画として映えるので……」といった感じで指示させてもらって。

 

浅井:自分は造形をやっている人間なんだからその強みを! みたいな気負いも最初はあったんです。今まで、造形の仕事で色んなデザインを見てきて「コレじゃ動かない」とか、「コレじゃ面構成が成立しない」とか、散々言ってきた立場なわけですよ、デザイナーさんに対して。それがいざデザインする側になってみたらそんな余裕は全くなくて(笑)。アニメ制作の現場から「これじゃ曲がらねえよ!」って逆に突っ込まれてしまって……。例えばアマロックの膝裏。ここは3ピースに分かれてますが、最初のデザインでは1ピースだったんですよ。それを吉岡(毅)さんから「曲がらない」って指摘されて「あ、ホントだ!」ってやっと気がついて、直しの打ち合わせがあったりしたんです。その辺りで、造形をやっている強みを、みたいな気負いは「あぁ、ムリムリムリ!」って、自分の現実を知れました(笑)。

 

コヤマ:でも、浅井さんならきっと理解できるはずだ! と勝手に信じてましたけどね(笑)。

 

浅井:信じてもらって嬉しい状況にある分、ガッカリさせてしまって残念な思いをするのは僕一人だけじゃすまなくなる、というプレッシャーが(笑)。

 

―デザインされたものがアニメで動いているのをご覧になっていかがですか?

 

浅井:冷静な目で見れない嬉しさはありました(笑)。やっぱり、最終的な映像こそ解答だな、と思いましたね。アニメのキルトガングはメカ作監でもある吉岡さんに整えていただいたデザインで、それはもう吉岡さんのものであり、さらに言えば実際に作画された人のものなんですよ。原案の形状が正解ってことではないんです。そもそも僕のデザインも五十嵐監督からオーダーがあって、脚本の榎戸洋司さんからキルトガングというものに対しての説明をいただいて、コヤマくんからは形状のアイデアをもらってでき上がったものです。だからそこからさらに色んな人の手が入って形となった映像は、その結果を見れたような気がして心地良かったです。

 

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―その変化も楽しめると?

 

浅井:そうですね。例えばアルビオンの手から出た槍。あのエネルギー状のものが手首のリングから直接実体化する動きは、コンテと作画から生まれてるんです。嬉しかったですね。想像していなかったものが出てきているわけですから。あの槍は僕にとって、僕の頭の中からは出てこない“正解”だったんですよ。これから登場する予定のキルトガングたちも“演出”と“作画”でどのように魅せてもらえるのか、とても楽しみにしています。

 

(第1回終了。 次回、第2回は6月30日よりスタート予定です 4/4)

 

 

 

 

<関連情報>

キャプテン・アース公式サイト

その1:『デザイナーと原型師への憧れは同じようなもの』

その2:『機械生命体という存在なので、生き物でもあり、機械でもならなくてはならない』

その3:『異形の部分を狙い過ぎたせいもあって、なかなかOKにならなかったんですよね』

その4:『嬉しかったですね。想像していなかったものが出てきているわけですから』

 

 

(C)BONES/キャプテン・アース製作委員会・MBS

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