『キャプテン・アース』デザインの現場 柳瀬敬之(その2)

更新日:2014年8月25日 16:35

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『この作品は手描きの持ち味を大事にしていますから、そこにはとても気を使いました。』

 

インタビュー:電撃ホビーマガジン編集部(2014/7/2)

※インタビューで語られる画稿は電撃ホビーマガジン2014年9月号に掲載されています。

 

―MGFはどのようにデザインされていったのでしょうか。

 

柳瀬:初期のMGFはキャラクター性の強いデザインでした。「天狼星」という名前が最初から決まっていたせいもあって、「狼」というイメージでやり過ぎましたね(笑)。五十嵐監督からは「ちょっと濃いよね」ということでボツになりましたが、その意匠を残しながらもデザインを進めました。MGFに共通するデザインとして、これがあれば量産型だろう、という記号的な「目」というのを考えました。あの目は映画『オブリビオン』という映画に登場したドローンの動きなどを参考にしましたが、劇中でも同様な動きをしてくれていて嬉しかったですよね。

 

コヤマ:「『オブリビオン』に出てきたものと同じ動きでお願いします」って説明された時、ぼくらまだ映画自体をを観てなかったということもありましたけど(笑)。

 

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―デザインは登場順にされたんですか?

 

柳瀬:天狼星、猛攻兎、あとは登場した順番ですね。ラフとしては全機をいっぺんに描いて進めておいて、その後は話数に合わせてクリンナップしていった感じです。

 

コヤマ:キルトガングと一緒で、アマラとモコがデザインの根本、雌雄になっています。

 

柳瀬:最初の対となる天狼星と猛攻兎が決まれば、その後は楽でしたね。胴体と顔のデザインは基本的に同じなので手足とオプションを変えていくだけでしたから。蛇花火はラフの時からオーケーをもらっていますし、爆裂獣も本当にラフのままですね。

 

コヤマ:ちょうどそのくらいの時期に、僕がアースエンジン・インパクターのデザインを進めないといけない時期だったんですけど、コアとなるオーディナリーがMGFをベースに開発されたメカだという設定だったので……ちょっとずるいんですけど、MGFの基礎システムが出来てから、それを参考にさせてもらいつつ、Globe側が改造したというオーディナリーをデザインさせて頂きました(笑)。でも、このサイズのメカは柳瀬さんが本当に上手くて。MGFというのは、ちゃんと人が乗り込める、メカというよりシステム自体をデザインされているんですよ。

 

柳瀬:人が乗る10メートル弱くらいのサイズで、共通規格のコクピットが持っているというオーダーでした。当初はコクピットも小さくて棺みたいなデザインだったのですが。

 

コヤマ:五十嵐監督とデザインを詰めている内に少しだけ大きくなりましたね。完成目前のラフを見た時には、「MGFはこれだ!」と五十嵐監督も満足してました。

 

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―MGFのデザインが完成するために工夫した部分はありますか?

 

柳瀬:設定があって大きなサイズにできなかったので、コンパクトなサイズにどれだけ破綻なくメカを詰め込むかというところでしたね。コクピットのおかげで腰に軸が設定できなかったせいもあって、上手くアクションできるか不安もありました。とにかく狭いので首にオルゴンエネルギーのカプセルを入れるギミックを考えるのも大変でしたね。

 

コヤマ:8~10メートルくらいのサイズって人間が乗るメカとしてはかなり小さいんです。相当キツキツだし、人が入る以上胴体を余りイジれないという縛りもあるし、腰を絞ってマッチョにするとか、「どこかを大きくして絞る」ということが難しくなってしまってシルエットに幅が持たせられなかったりするんですよね。MGFで柳瀬さんにやって頂いたのは、ロボットとしてのカッコ良さを持った五十嵐監督のフェティシズムの表現にあったんですが、今回はそこを踏まえつつ、さらにお芝居に絡めて調整しなければならなかった部分も多かったので大変だったと思います。オルゴンエネルギーの注入口とか、MGFの格納庫とか。

 

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柳瀬:モコが手前にいてアマラが奥にいるとかの芝居が見えている段階で、それはもうただのデザインじゃなくて舞台装置を作るのと同じ作業です。キャラとカメラの位置関係から、立つ場所の高さをもう少し上げてくれとか、そういうオーダーに応える形でデザインを進めました。本当にセットを作っている感覚です。他にも芝居するための舞台装置としてコクピットをけっこう描きましたね。コクピットは先ほども言ったように大きさの制限があったので苦労しました。横向きと縦向きで使われる装置なので、縦になった時に位置が変わる内部コンソールの変形ギミックも考える必要がありました。その検討には3DCGを使っていますが、それはあくまで検討用であって、完成した画稿は手描きです。3DCGのままだと五十嵐監督から「雰囲気が硬い」と言われてオーケーが出ないんです。それも分かる話で3DCGだと手描きならではの(柔らかい)線が出せないんですよ。この作品は手描きの持ち味を大事にしていますから、そこにはとても気を使いました。

 

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(8月18日につづく 2/4)

 

<関連情報>

キャプテン・アース公式サイト

その1:『メカをデザインしたら、その格納庫までデザインしたい性分なので。』

その2:『この作品は手描きの持ち味を大事にしていますから、そこにはとても気を使いました。』

その3:『運用面では意外と考えて設定させてもらいました。』

その4:『コンテや演出だけでは作れないその世界で違和感のないモノを作る。』

 

(C)BONES/キャプテン・アース製作委員会・MBS

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