トランスフォーマー ムービートイシリーズ10周年記念!タカラトミー開発スタッフ座談会!!【連載第6回】

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インタビュアー●RED染谷/文・写真●浅井 渚

2007年の第1作『トランスフォーマー』の劇場公開から10年――最新作の『トランスフォーマー/最後の騎士王』が2017年8月4日より全国ロードショー公開されました。映画に登場する、個性あふれるトランスフォーマーたちの完全変形フィギュア、「ムービートイ」シリーズも同じく誕生から10周年を迎え、今や130の国や地域でトランスフォーマーの変形フィギュアが発売されています。そこで今回のRED染谷の「トランスフォーマー映画10周年記念連載」は、その「ムービートイ」の開発を行っているトランスフォーマーデザイナーの方々にお集まりいただき、商品開発の現状や裏話をお聞きしました。

 

tfz_001a▲トランスフォーマーデザイナーの皆さん。左から……幸 日佐志(ゆき・ひさし)さん、國弘高史(くにひろ・たかし)さん、蓮井章悟(はすい・しょうご)さん、大西裕弥(おおにし・ゆうや)さん。

 

――まず始めに、実写映画『トランスフォーマー』の関連商品である「ムービートイ」シリーズの立ち上げの経緯からお聞かせください。

國弘:今年、実写映画も「ムービートイ」も誕生から10周年を迎えましたが、実写映画化の話が弊社に届いたのは、12~3年前だったと思います。第一報としては、「あのスティーブン・スピルバーグ監督が、ハスブロ社(米国の大手玩具メーカー)にトランスフォーマーの映画を作らせてくれと言いに行ったらしい」という内容でした。

 

――それはかなりのビッグニュースだったのでは?

國弘:本当に驚きました。その当時、海外では「変形ロボットトイと言えばトランスフォーマー!」というくらい、『トランスフォーマー』のキャラクターは幅広く支持され続けていましたが、日本ではそれほどメジャーな存在ではありませんでした。ですから、その話を聞いた時は、「トランスフォーマーもスピルバーグ監督が映画を作りたいと言うほどメジャーな作品になったのか!」と感動しましたよ。

 

――映画に登場するオプティマスプライムは、それまでに立体化されてきたアニメやトイの『トランスフォーマー』に見られる正義のヒーローロボットをイメージしたデザインとは異なり、『トランスフォーマー』の劇中設定である“金属生命体”のイメージを見事に具現化した生命感あふれるものでした。

國弘:生命感あふれるだけにちょっと違和感も感じたんですが「これはえらいことになったな……」って思いました(笑)。実写映画化をきっかけに、今まで『トランスフォーマー』を見たことのない子どもたちも興味を持ってくれるいい機会だと思いましたが、映画に登場するトランスフォーマーたちのデザインは、それまでのトランスフォーマーの変形フィギュアと比べてはるかに複雑なので、遊び慣れていない子どもたちのことを考えると、「何となくパーツを引っ張ったら足になる」というような、遊びやすい”仕組みも盛り込まなければれなければいけないのでは……と考えるようになりました。

 

――そこで、「ムービートイ」ならでは変形ギミックの考案を?

國弘:そうです。映画第1作の「ムービートイ」では、ひとつの部分を変形させると、連動して他の部分も変形する新しい変形ギミック“オートモーフ機構(連動変形)”です。子どもたちがストレスを感じることなく変形遊びが楽しめるようにするというのが商品開発の全体的なコンセプトとなりました。

 

――新ギミック“オートモーフ機構”を内蔵したトランスフォーマーの変形フィギュア、その開発にあたってハスブロ社との間では、どのような形でのやり取りが行われたのでしょうか?

蓮井:オプティマスの初期デザインは最終稿よりもっと生物的で、ほとんどビークルのパーツが原形をとどめないデザインだったので、オートモーフ機構を提案する以前にロボットデザイン1回で「よりビークルとして明確なパーツが体のいたるところにあしらわれたロボットデザインにしたほうがいいのではないか」ということを提案する必要がありました。その時提案するものがイラストだと、その絵を見る人の解釈の仕方によって立体形状の受け取り方違うし立体には表現できないウソも描けてしまうので、僕の方でどれくらいビークルのパーツがロボットの体に使われているのが理想か、実際にロボットの立体モデルにビークルのパーツを貼り付けたモデルを作り、「こういうことがしたいんです!」ということをタカラトミーとハスブロ社とが一丸となって映画のデザインサイドに提案したんです。

 

國弘:3D映像の変形シーンの試作映像を見せてもらいましたが、トラックのバンパーがぐにゃっと曲がってロボットモードにトランスフォームする、まだテスト段階のものだったこともあり、変形というよりもモーフィングに近いような動きでした。とても斬新なアイデアだと思いましたが、さすがに変形フィギュアをぐにゃっと曲げて変形させることはできないので、映像のイメージを参考にしつつ、変形フィギュアで再現できる新しい変形ギミックの導入をひたすら考えました。

 

蓮井:映画第1作目の時は、あんなに複雑な変形をするとは知らなくて商品開発を行っていたんです。機密事項も多く、こちらに届く資料も限られていて、各キャラクターがトランスフォームするシーンの完成映像を見たのは、映画が一般公開された頃……つまり、お客さんとほぼ同じタイミングだったんです。「この車がこのロボットに変形する」という、変形前と変形後の絵や検討中のラフな動画(オプティマスとジャズとバリケードの3種)は見てますが、各ビークルからロボットへ変形していく行程までは、我々開発スタッフも未見だったんです。だから、変形の過程は想像でやりました。“オートモーフ機構”も、映画劇中で複雑にパーツが移動している変形を、いかに少ない行程で行うかを課題としていたんですが、そのオートモーフの機構と、劇中に登場する変形機構の描写が偶然にもうまく合致していたんです。

 

――あの複雑な変形を、ほぼ想像で補い再現するというのは、相当大変な作業だったのではないでしょうか……?

:それもあって、一番大変だったのは第1作目ですね。最初期から現在までムービートイの開発に関わっているのは國弘と蓮井くらいなんですが、これまで誰も見たことがないし、どういう映像になるかもよくわからない、デザイン画も初めて見るし、細かいところがどんな形をしているかわからない。そんな状況の中、苦労して作り上げたのが第1作目のムービートイシリーズでした。私は2作目の『トランスフォーマー/リベンジ』から本格的に参加しているのですが、以降のシリーズになると経験値も上がり、「このキャラクターは、前回と同じ系統の変形をするんじゃないかな…!?」「これはたぶん進化したバージョンだ!」といった考え方もできるようになったので、変形方法でそんなに悩むこともなくなりました。実際、映像に登場するキャラクターと大きな違いはなかったですし……。

 

――ちなみに、実際に商品を作るにあたって、チームの誰がどれを作るかなど、選択基準はあるのでしょうか?

蓮井:まず、ハスブロ社が1年間の商品ラインナップを決めるんです。そのラインナップを受けて、誰がどれを作るかの年間スケジュールを決めていきます。中でも1番最初に店頭に並ぶ1番大きな商品(リーダークラスなどの商品)の開発スケジュールが最も開発期間がタイトで難易度も高いため、そこへベテランデザイナーが割り振られます。そのうえで、各デザイナーの能力や発売スケジュールに合わせて人を割り振っていく感じですね。同時期に発売される同じくらいの難易度の商品については、デザイナーの好みが反映されることが多いです。

 

――主に第1作目では、どのキャラクターの変形フィギュアを担当されたのでしょう?

蓮井:僕は、ジャズ(MA-04 オートボットジャズ)、ラチェット(MA-02 オートボットラチェット)、バリケード(MD-02 ディセプティコンバリケード)とスタースクリーム(MD-08 スタースクリーム)です。

 

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MB-12 オートボットジャズ

  • 価格:3,500円(税抜)
  • 2018年2月下旬発売予定

 

 

10年の歴史を持つ「トランスフォーマームービー」のベストヒット商品から、選りすぐりのアイテムを復刻!映画第1作『トランスフォーマー』劇場公開時に販売された、蓮井さんが玩具デザインを担当した「MA-04 ムービージャズ 」の成形色と塗装色を変更した商品。本体カラーはメタリックシルバー塗装になり、ウインドウはより実車感のあるスモークブルーに変更されています。

 

國弘:オプティマスプライム(MA-01 オプティマスプライム)、ディセプティコンブロウル、ボーンクラッシャーなどです。オプティマスのような大きいサイズの商品デザインを担当すると、作業時間もかなりなものになるので、数多くは担当できないんです。

 

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MB-13 ボーンクラッシャー

  • 価格:3,500円(税抜)
  • 2018年2月下旬発売予定

 

 

映画第1作『トランスフォーマー』劇場公開時に発売された、國弘さんが玩具デザインを担当した「MD-09ボーンクラッシャー 」の成形色と塗装色を変更した商品。本体色は艶消しのサンドベージュ塗装、エンブレムがラベルから印刷へと変更。彩色パターンもより劇中の印象に近づけています。

 

――正義のオートボットのリーダー、オプティマス・プライムは、日本ではそれまで“コンボイ司令官”という名称が使われていましたが、実写映画からはずっと“オプティマスプライム”で統一されるようになりましたね。

蓮井:海外開発チームは、ずっと「オプティマスプライム」と呼んでいるので、僕らはそんなに違和感はありませんでした。ただ、映画の事情からすると、劇中で「オプティマスプライム」と呼んでいるのだから、翻訳のときにそこを「コンボイ」と変えるのは違うだろうな……と、個人的には思いました。

 

:国内で第1作をローカライズするときには、当然議論になりました。でも、映画で「オプティマスプライム」と呼んでいるのだから、ムービートイでも「オプティマスプライム」で統一しようと、思い切って舵を切りました。

 

――トランスフォーマーの完全変形フィギュア1体のデザイン作業から立体試作が仕上がるまで、どれくらいの期間を要するものなのでしょうか?

蓮井:商品のサイズや内蔵している変形機構によっても開発に要する期間は違います。なので具体的な日数はお伝えすることができませんが、1つの商品をかなり短期間でデザインしていますね。また、第1作目のときと5作目の現在とでは、各担当の経験値も上がり、デザインする環境もかなり変化したので、今はかなり短期間で安定した作業ができるようになっています。しかし、「ムービートイ」シリーズ以外にも、TVアニメのシリーズや、歴代のトランスフォーマーの人気キャラクターを現在の技術でリファインしている「トランスフォーマー ジェネレーションズ」シリーズなど複数の商品ラインが同時期に開発されるため、ひとつのアイテムにかけられる時間が非常に短くなっているんです。短い時間で、どれだけコンスタントにアイデアをひらめかせて、良い商品を作り続けられるか……ということが我々トランスフォーマーデザイナーにとって、ひとつのテーマでもあります。

 

――1作目のムービートイの中で、一番最初に試作ができあがったものはどれでしたか?また、それに対して他のデザイナーの反応はどうだったでしょうか?

蓮井:最初に上がったのは、僕が担当した「ジャズ(MA-04 オートボットジャズ)」でした。ただ、ハリウッドムービーというのは、非常に機密が高く、キャラクター名もコードネームでやりとりしているような状況だったので、試作ができあがったとしても社内で複数の人からの反応を聞く……ということはできないんですよね。

 

:ムービートイの関係者が、狭い場所で「ああだこうだ」と言うくらいですね(笑)。

 

國弘:そうそう、そんな感じだった。

 

蓮井:今でこそ、図面や試作が上がってきたらチーム全員で見て、開発の思想に抜けがないか、それぞれの商品のテイストが揃っているかというチェックをしていますが、第1作目のときはまだそこまでの体制ができあがっていませんでした。「ムービートイ」の開発を行っていく上で、そういうことが非常に重要だということになってきて、後から必要条件になりました。それまでは個人で開発して、あまりチームレビューをしたりはしていませんでしたね。

 

:今は本当にコストが厳しいですが、当時は今よりラクでした。ですから、開発がコストを度外視した、やらかした試作をよく作っていました(笑)。あとで大ナタを振るわれることもずいぶんありましたね。最近はそういうこともほとんどありません。よりデジタル化されたお陰もあるでしょうね。

 

蓮井:第1作目の開発スタート時には、まだ3Dキャドなどというものは導入されていなかったので、平面図面から立体的にどうなっているのか考えていっていましたからね。ムービー商品開発の前の年までTVアニメ『トランスフォーマー ギャラクシーフォース』の商品開発を担当していて、それは四角い箱を組み合わせたようなロボットでしたし。ムービートイとの出会いによって、いきなり有機的なロボットを作ることになって、デザインしているもののゴールがガラッと変わってしまった。そのため試作の造形修正を何度モデル開発会社に依頼しても、思うような生物的なデザインにならず、箱っぽい形状が残りがちでした。今までのロボットとは骨格からデザインを変えなければ再現ができなかったりして、「いいか悪いか」判断できるモデルはなかなか上がらず、そのモデルを期限内にどれだけ映画のデザインに近付けられるか、というのを必死でやっていましたね。

 

――「ムービートイ」のほとんどのビークルモードは、実在する自動車や飛行機です。自動車会社などのライセンス元のチェックを全部の商品で行わなければならないのもかな手間がかかることだと思うのですが……。

蓮井:ムービートイの開発以前は、ハスブロ社の承認が出れば商品の試作を生産ラインに乗せられたんですが、「ムービートイ」ではさまざまなメーカーのビークルの許諾を必要としますから、そこからのコメント(修正依頼)もくる。デザイン自体が版権元の意向に沿わなかった場合、商品化そのものがNGになったりもします。しかも、映画が当たるかはずれるかも未知数だったので、商品の手応えを感じるとかいうこともなく、“死にもの狂い”で与えられた商品開発を形にしていくだけでした。商品数も多かったですし、正直、いつまで経っても仕事が終わらない……という感じでしたね。

 

――そして、2007年に第1作の映画が公開され、商品が店頭に並ぶ日がくるわけですが、ユーザーからの反応はどうでしたか?

蓮井:第1作目の公開時、海外出張でニューヨークのトイザらスに立ち寄ったことがあるんですが、「ムービートイ」のメイン商品が陳列棚にほとんど残っていない状態を見て、尋常じゃないくらいの人気が高まっているのを肌で感じました。

 

――続いて、2009年には第2作目『トランスフォーマー/リベンジ』が公開。「ムービートイ」も怒涛の商品展開が行われました。トランスフォーマーの生命感を演出したギミック“メックアライブ”を搭載した変形フィギュアやトランスフォーマー同士が「合体」できる商品も登場して話題になりました。

蓮井:映画の続編の制作の企画提案は、第1作目のムービートイの開発から間髪いれないタイミングだったと思います。タカラトミー側としても第1作目の「ムービートイ」は「変形」で驚いてもらったから、次は「変形以外の何か」で驚かせなきゃいけない! その答えはどこなんだろう……という視点から商品企画を考えました。結果、「第1作目では“変形”で驚かせたんだから、次は“合体”ですよ!」とう考えに至り、それがハズブロ社のプランにも合致しました。

 

:TVアニメ『トランスフォーマー アニメイテッド』の完全変形フィギュアの商品開発がまだ行われている時期で、2作目のシリーズの玩具デザインの仕事が入ってきたため、それはもう、えらいことになってましたね……(笑)。

 

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MB-16 ジェットファイアー

  • 価格:10,000円(税抜)
  • 2018年3月下旬発売予定

 

 

映画第2作『トランスフォーマー/リベンジ』劇場公開中に販売された、玩具デザインを國広さんが担当した「RA-13 ジェットファイアー」の成形色と塗装色を、より劇中イメージに近いカラーリングに変更。音声を日本語版(乃村健次氏)として新たに録音し直しています。 別売りの「MB-17 オプティマスプライム リベンジバージョン」や「MB-11 オプティマスプライム」との合体遊びも楽しめます。

 

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MB-17 オプティマスプライム リベンジバージョン

  • 15,000円(税抜)
  • 2018年3月下旬発売予定

 

 

映画第2作「トランスフォーマー/リベンジ」劇場公開時に販売された、國弘さんが玩具デザインを担当した「RA-01 オプティマスプライム」の成形色と塗装色を変更した商品。別売りの「MB-16 ジェットファイアー」との合体が可能で、合体時のバランスを考慮したダークなカラーリングに変更。音声ギミックを内蔵していて、音声は「MB-11 ムービー10thアニバーサリー オプティマスプライム」と同じです。

 

蓮井:忙しい時期でしたよね。國弘がオプティマス(RA-01 オプティマスプライム)とジェットファイアー(RA-13 ジェットファイアー)の合体方法を考えているのを側で見ていましたけど、朝から晩までずっと席から動きませんでした(一同笑)。産みの苦しみというのを感じましたね。さらには、どう合体させるのか、どういうデザインなのか、どんな合体にすればリアリティが出るのか、というのを含めて、それまでの開発ではなかなか議題に上がらないさまざまな模索がされました。第2作目は、変形の工程数が少なければ変形が簡単なのか、どういう構造だと難しいのかという部分についても深く話し合った時期でしたね。

 

:実写映画が公開される直前、国内ではTVアニメ『トランスフォーマー ギャラクシーフォース』が放映されていて、完全変形フィギュアとしてのギミック面での進化は続けていても、デザイン的にはそれまでの作品の良い部分を継承し続けていることもあり、それほど大きく変化することはありませんでした。だから、おもちゃを作ることを想定している我々はあの映画の登場するオプティマスのような“飛び抜けた”デザインは出せなかったと思います。映画で「デザインはここまで飛んでいいんだ!」と見せてもらえたお陰で、その後のトランスフォーマー商品の開発にもその大胆さを結びつけられるようにもなったんです。

 

――ところで、トランスフォーマーの完全変形フィギュアの変形機構に関するアイデアというのは、皆さん、どのようにして考えているのでしょう?

:これについては、おそらく全員考え方が違うと思います。それぞれが独自のスタイルを持っていますから。変形前と変形後の形は決まっているので、その間をつなぐ方法は各担当に任されています。その料理の仕方も発想の仕方も、紐解くと全員違うと思いますよ。

 

蓮井:開発者だけでなくそのシリーズごとでも重要視する部分が「変形」であったり「デザインの再現度」であったりさまざまです。その重要視する部分のプライオリティによっても発想の仕方が変わっていくので、一概に「こう考えています」とは言いにくいところがあります(笑)。

 

:「ムービートイ」以外のトランスフォーマートイでは、「こういう変形をさせて遊んでもらいたいので、こういうデザインを!」という話を持っていけるんです。でも、ムービートイの場合は、最初からビークルとロボットのデザインが決まってしまっていますから、それに各シリーズごとに「どういう遊びが入っているか」とか、「どういうコンセプトを入れるか」といったお題があって、それを各担当者がそれぞれの答えの出し方をする……というのがムービートイの玩具デザインを行っていくうえでのポイントになっています。

 

――2011年に発売された第3作目『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』のムービートイは、攻撃や変形アクションを備えた大型武器(メックテックウェポン)と「トランスフォーマー」のゲームが楽しめるカード(メックテックカード)が付いたシリーズ。2014年に発売された『トランスフォーマー/ロストエイジ』のムービートイでは、映画に登場するトランスフォーマーを、より忠実に再現した完全変形フィギュアが揃いました。大西さんは、その第4作目からムービートイの開発に参加されたそうですね。

大西:はい。第4作目では初登場したオートボットのクロスヘアーズ(AD-06 クロスヘアーズ)などを担当しました。映画の中でも活躍するキャラクターなので、嬉しかったですね。『トランスフォーマー/ロストエイジ』のムービートイに関しては、ハスブロ社から「変形のステップ数(工程数)の制限を設けて、より簡単な変形にしてほしい。またなるべくボールジョイントを使わないで」というリクエストがあり、そういった意向を反映した商品ラインナップとなりました。

 

――第1作目から10年間、黄色いカマロに変形するオートボットのバンブルビーも変わらぬ人気を誇っています。デザイナーは同じ方が担当されているんでしょうか?

大西:いえ、同じではないですね。けど毎回違うというよりは、連続して担当したあと、世代毎に異なる担当者が引き継いでいるという感じです。バンブルビーは映画毎に「オールニュー」で商品化され、なおかつ世代毎にデザイナーが異なるので、全てを集めることで作品によっての変遷を見ることができるといえます。自分は、4作目で初めてバンブルビーの玩具デザインを担当しましたが、10年間にわたって愛され続けている人気キャラクターなので、どうしたら違和感なくお客様に受け入れられるか悩みました。ガラッと変えてしまうと、全くお客様に受け入れてもらえず、売れないという恐怖心がありますから。本当に主役キャラクターをリメイクする作業は難しかったですね……。

 

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TLK-22 ニューバンブルビー

  • 価格:2,800円(税抜)
  • 2017年9月発売予定→発売中

 

 

最新映画『トランスフォーマー / 最後の騎士王」』のメインキャラクターで、オートボットの若き戦士・バンブルビーの完全変形フィギュア。黄色いボディのコンセプトカマロがロボットにトランスフォームします。玩具デザインを担当したのは大西さん。

 

:バンブルビーは、CGの雰囲気はあまり変わらないのに、車のフォルムや黒いラインは絶妙に変わってたりするので、面白いですよね。

 

蓮井:バンブルビーはさまざまなデザイナーが手掛けている商品であり、僕が以前にバンブルビーを担当したものもありますが、オプティマスプライムについては、その多くを國弘が担当していますね(笑)。

 

國弘:苦労してます……(苦笑)。

 

――それだけ同じキャラクターを作り続けて、アイデアが枯渇するようなことはないんでしょうか?

國弘:ちょっとでも条件が違うと、変形は変わってきますから。第1作目はよくわからない中で作ったけれど、第2作目では「売れてほしい」という思いがありました。というのも、2年目に同じ映画をやって、同じキャラクターの商品が出た場合、同じような価格帯で、同じようなサイズの箱に入って立っているものを、大きいお友だちは別物だとわかっても、子どもたちは「同じものだ」と思って買ってくれないわけです。2作目以降、オプティマスは、合体ができる機構でなければいけない、しかし単品でもかっこよくなければいけない、ということで、かなり難しかったです。

 

――最新作『トランスフォーマー/最後の騎士王』のムービートイでは?

國弘:「ムービートイ」も第5作目となると、大人のファンが求める「再現性の高さ」と、子どもたちへ向けた「遊びやすさ」の2つのラインが明確に分かれました。

 

大西:『トランスフォーマー/最後の騎士王』は、映画のスケジュールが急に前倒しになったので大変でしたが、前作、『トランスフォーマー/ロストエイジ』に引き続いて登場するキャラクターが多いと聞いていたので、彼らをブラッシュアップして、より売れるような商品群にしていくことを第一に考えつつ、今作で初登場した可愛らしさを持ったスクィークスや人気キャラクターのホットロッドなど多彩なバリエーションで充実したラインナップを構えることができたと感じています。

 

:第1作目の公開から10周年を迎え、「映画のキャラクター」としての人気が確立しています。それまでは、オプティマスをはじめ、キャラクターとしての人気がどこまで出るかわからなかった分、まずおもちゃとして遊びがいがあったり、キャラクターのコンセプトを伝えるものであったり、というところをしっかり決めて商品開発を進めていましたが、現在は「キャラクターとして、しっかり再現されたおもちゃでなければいけない」という考え方になり、トランスフォーマーのおもちゃとしての立ち位置が少し変わってきているといえます。

 

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TLK-24 ダイノボットスコーン

  • 価格:4,500円(税抜)
  • 発売中

 

 

“恐竜軍団”ダイノボットのメンバー、スコーンの完全変形フィギュア。スピノサウルスからロボットにトランスフォームします。玩具デザインを担当したのは大西さん。

 

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TLK-25 ディセプティコンニトロ

  • 価格:4,500円(税抜)
  • 発売中

 

 

最新映画『トランスフォーマー/最後の騎士王』に登場するディセプティコン軍団の兵士、ディセプティコンニトロの完全変形フィギュア。モノトーンが印象的なジェット戦闘機からロボットにトランスフォームします。國弘さんが玩具デザインを担当した商品。

 

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MB-14 メガトロン

  • 価格:8,000円(税抜)
  • 2018年2月下旬発売予定

 

 

今夏に発売されたばかりの「TLK-19 メガトロン 」の成形色と塗装色を変更した商品。鈍く輝くメタリックボディを重塗装で再現、『トランスフォーマー/最後の騎士王』劇中でも印象深い、赤く染まった顔も再現されています。

 

 

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MB-18 ウォーハンマーバンブルビー

  • 価格:3,500円(税抜)
  • 2018年3月下旬発売予定

 

 

今夏発売の「TLK-22 ニューバンブルビー」の成形色と塗装色を変更。『トランスフォーマー/最後の騎士王』の劇中で、ネメシスプライムと戦う時に使用したハンマー(新規に作成)が付属しています。

 

 

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MB-20 ネメシスプライム

  • 価格:8,000円(税抜)
  • 2018年3月下旬発売予定

 

 

最新映画『トランスフォーマー/最後の騎士王』公開時に販売された、「TLK-15 オプティマスプライム」の成形色と塗装色を変更した商品。『最後の騎士王』でバンブルビーと戦った「ネメシスプライム」を「TLK-15 キャリバーオプティマスプライム」のリデコで再現! 全体的にダークなカラーリングとなり、目は紫色に変更。クインテッサ星人に叩かれ、赤く染まった顔も再現されています。付属武器のアックスはクリアーパープルに、シールドはブラックカラーに変更されています。

 

――あれっ!? もう一人、顔見知りのトランスフォーマーデザイナーさんがいらっしゃるので、仲間に加わっていただこうと思います!

:染谷さんの顔が見えたので、気になってちょっと覗いてみたんですけど、顔出しは恥ずかしいので、通りすがりの開発スタッフA(仮名)ということでなら……(笑)。

 

――ぜひ、よろしくお願いします!

:こちらこそ!

 

――現在、130の国や地域で発売されているタカラトミーのトランスフォーマーシリーズ。今後の展開も実に楽しみです。

:映画は10周年で、これから20周年を目指すことになりますが、TFとしては30周年を超えて40周年を目指しています。キャラクターとしては、世界的に見れば一番有名なロボットキャラクターと言ってもいいと思います。私個人の話ですが、父親が海外旅行に行ったとき、「自分の息子はトランスフォーマーのトイデザインをやっている」と言えば、海外では大体大丈夫だ、と言われたことがあります(笑)。これだけ世界中で人気のあるキャラクターになりましたから、このバトンをずっとつなぎ続けていかなければいけないと思っています。

 

國弘:アメリカのキャラクターというのは本当に息の長いものが多いですから、その中でTFは、全体で30年でもまだまだ若い。それが今後も続いていくということは、我々もファンの皆さんも世代交代しながら、親子3代、4代のキャラクターになっていく。そうしてずっと愛され続けていくものなら、デザインが変わるだけでなくて、変形する遊びも含めてのトランスフォーマーだから、次々と新しいことを考えていかないと……と思います。

 

蓮井:トランスフォーマーの「作品」も「おもちゃ」も知れば知るほどとても奥が深いと思っています。ひとつひとつのキャラクターに歴史があって、見るたびに新しい発見があります。まさにTFそのものが「More than meets the eye」です。ですから、このTF世界を深く掘り下げて研究していけばまだまだいろんなものが派生して、いろんな商品が生まれると信じていますよ。

 

大西:やればやるほど奥が深くて、毎回難しくて、悩みながらやっています。チームとしては弊社だけでなくハスブロ社にも若いメンバーも入ってきて、どんどん新しい発想を生み出しています。トランスフォーマーの面白いところのひとつは、こうしてタカラトミーとハズブロ社という日米の2社が共同で開発しているという、世界でも珍しいコンテンツだというところです。日本人、アメリカ人それぞれが面白いと思うこと、やりたいことをお互い出し合いながら、相乗効果でいろいろ生み出しているトランスフォーマーはどんどん進化と深化をしていきますので、今後の展開に大いに期待してもらいたいですね!

 

:一人だけで作っていては、同じようなものしかできません。誰か一人の発想にいろんな人が乗っかって、新しい何かができるというのは、とても面白いことですよ。人のデザインや発想を見ると、いつもすごいと思います。褒めませんけどね(一同爆笑)。

 

:トランスフォーマーの完全変形フィギュアは、その名の通り、フルポーザブルのアクションフィギュアとしての機能を持ちながら、余剰パーツを発生させることなくビークルモードからロボットモードに変形することができるのが最大の魅力です。1980年代にトランスフォーマーのおもちゃが世界中で大ブームになりましたが、その頃のアイテムは、変形機構とロボットのプロポーションの両立がまだ計れていなかったこともあり、ロボットの腰の部分が回らなかったり、ロボットになっても両脚があまり可動しなくても、それが当たり前でした。それが、誕生から30年が過ぎた現在、「ムービートイ」シリーズの登場もあり、飛躍的な進化を遂げています。作り手である我々開発スタッフも、「もっと良いものができるはずだ!」という意識を持って、さらに次のステップを目指して前進しています。

 

――それでは最後に、トランスフォーマーファンの皆さんへメッセージをお願いします!

:最新映画の『トランスフォーマー/最後の騎士王』はご覧いただけたでしょうか……? トランスフォーマーたちが活躍するシーンが本当に多いので、ファンの皆さんがとても楽しめる映画になっていたと思います。トランスフォーマーというのは、実際におもちゃ(完全変形フィギュア)を手に取ってもらうことで魅力が伝わるものだと思いますから、映画の中で気になるキャラクターがいたら、おもちゃを触る機会を持ってもらいたいです。箱に入ったままにしないで、実際に触って、その魅力を知ってほしいですね。

 

大西:今回の映画も、いろんな戦士たちがいて、みんながバトルしたり、仲間とコミュニケーションを取ったりしているんですが、今作ではそれがしっかり描かれていて、それぞれの個性が楽しめます。それと実写映画のお楽しみいただけるもう一つの側面がスーパーカーも多く出ていることです。超高級車が爆走していたり、爆発したり(笑)。ですから、好きな車(ビークルモード)でおもちゃを選ぶというのも、楽しい要素じゃないでしょうか。

 

蓮井:今回、ムービートイシリーズで初めてメガトロンの完全変形フィギュアの開発を担当したので、メガトロンに注目して映画を見たらすごく楽しかったです。メガトロンに仕える軍団が登場するのも、いかにもトランスフォーマーらしい演出で僕は好きです。自分だけの主人公(ヒーロー)を見つけて楽しめるのはTFの醍醐味のひとつ。まずは自分だけのお気に入りを見つけて、そのおもちゃを手にとってほしい。そして、そこから映像をより深く楽しんだり、自分だけの軍団を集める楽しさを感じてもらえたら幸いです。

 

國弘:『トランスフォーマー/最後の騎士王』は、これまでの作品以上に人物もトランスフォーマーも数多く登場します。なので、先におもちゃをひとつ買って、そのキャラクターがどこに出ていたか、答え合わせするのも面白いんじゃないかと思います。第1作目の時は、僕らも答え合わせみたいな感じでしたから、それと同じ感覚を味わえるかもしれません(笑)。

 

:実写映画のシリーズも今回の『トランスフォーマー/最後の騎士王』から「最終章(3部作)」が始まったばかりです。「ムービートイ」のシリーズはもちろん、これからもさまざまトランスフォーマーの完全変形フィギュアが登場すると思います。これまで応援してくださっているユーザーの皆さんはもちろん、今回の映画がきっかけとなってトランスフォーマーに興味を持ってくださった方、今後も末永くお付き合いください!

 

――本日はお忙しい中、ありがとうございました。

 

 

差し替え用画像kunihiro國弘高史(くにひろ・たかし)
トランスフォーマー開発チーム所属。1984年入社。「トランスフォーマー」誕生の頃から商品開発に携わり、主に海外展開を担当。その後、勇者シリーズ等を手がけてから再びトランスフォーマーを担当。「ムービートイ」の開発には、第1作から最新作に渡り関わっている。

 

tfz_012幸 日佐志(ゆき・ひさし)
トランスフォーマー開発チーム所属。1991年入社。『ビーストウォーズ||』から商品開発に関わり、主に国内のローカライズなどを担当。「ムービートイ」では第2作より海外チームに参加、以降、最新作『トランスフォーマー/最後の騎士王』まで携わっている。

 

tfz_013蓮井章悟(はすい・しょうご)
トランスフォーマー開発チーム所属。1999年入社。入社後、すぐにトランスフォーマーチームに配属され、以降ずっとTF商品開発を担当。「ムービートイ」では、アメリカのハズブロ社とタッグを組んで開発。ムービーシリーズ立ち上げ時の第1作と2作ではメイン担当として活躍した。第1作から最新作までの開発に関わっている。

 

tfz_014大西裕弥(おおにし・ゆうや)
トランスフォーマー開発チーム所属。家電メーカーのR&D部門を経て2011年タカラトミーに入社。海外向けトランスフォーマーの企画と開発を担当。「ムービートイ」には第4作から参加、第5作ではメイン担当として活躍。他企業との特殊なコラボレーションビジネスも担う。

 

tfz_015RED染谷(れっど・そめや)
電撃ホビーウェブ編集部・トランスフォーマー担当。トランスフォーマーの原体験は1985年放送の初代アニメ『戦え!超ロボット生命体 トランスフォーマー』。実は、アニメの内容よりも主題歌歌手の下成佐登子さんの歌声に魅かれて見ていた……というのはナイショの話。

 

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