超合金魂GX-70マジンガーZ 第2回――超合金魂の原点「マジンガーZ」に今立ち返る

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文●アニメーション研究家:五十嵐浩司

この連載は、超合金魂20周年を記念して製作されている『超合金魂GX-70マジンガーZ』の、企画立ち上げから完成までの道のりを、リアルタイムでお届けしていく連載である。

 

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第1回も併せてチェック!


 

超合金魂の初代担当、野中剛氏がGX-01マジンガーZを作る時に考えたのは、超合金マジンガーZ(1974年2月発売)を、時代に即してモデルチェンジすることだった。超合金魂のアイディアはそこから生まれ育ち、まもなく20年になろうとしている。
では、超合金魂GX-70マジンガーZの場合はどうだったのだろうか?

 

越智一裕氏の参加により、GX-70マジンガーZの企画は新たな方向へ舵を取ることになる。それまで企画チームが想定していた“暗黒大将軍版”という基本コンセプトに変更はない。しかし、ここで越智氏が提案したのは、「より正確な再現」である。いわば“暗黒大将軍「風」”ではなく、徹底的に“暗黒大将軍「版」”を作るということである。

 

越智氏はデジタルコミック「クリックまんが ダイナミックロボット大戦」(1999年発売。のちに『永井豪まんが外伝 ダイナミックヒーローズ』としてリメイク)以来、DVDのボックスイラストやパッケージなどの媒体で、15年以上に渡ってマジンガーZを描き続けてきた。越智氏が旧作キャラクターに携わる時の姿勢は一貫しており、「正確に描く」ことに執念を注いでいる。その手順はシンプルで、すべての映像を見て、形状や色を検証したのちに描き始めていく。即ちきわめて労力が必要とされる作業である。だからこそ、越智氏の絵にはアニメーション映像そのものの空間が再現されているわけだ。超合金魂開発チームは越智氏が培ってきた「尋常ではないレベルの正確さ」にインスピレーションを得て、ついにGX-70マジンガーZの方向性を決めるのだった。

 

ちなみに越智氏は、過去に一度だけ超合金魂用にアイディアを提案したことがある。GX-01RマジンガーZ(2002年10月発売)の頃の出来事であり、「電撃ホビーマガジン」の編集スタッフを介した、あくまで参考意見としての提出だった。この時は実際のところアイテムにフィードバックなされたとは言い難いため、越智氏と超合金魂との関わりはGX-70が最初となる。

 

さて、GX-70マジンガーZの方向性が定まったところで、いよいよ実務が開始される。まず2015年の5月、越智氏による提案スケッチが企画チームへ提出された。詳細を述べれば、2014年に造形された原型に対して、越智氏のアンサーが送られたのである。

 

イラスト1

▲ プロポーションに関する越智氏からのアンサー。これはバンダイから「暗黒大将軍版」のオーダーが正式に来る前に描いたもので、前期オープニングのイメージとなっている。映像を正確に咀嚼した形状はもちろんのこと、肩の位置、下腕の長さ、拳の反り返り、胸部高熱板の位置などの細部にわたって注意事項が記されている。

 

イラスト2

▲原型の設計用CGとイラスト1を重ねたもの。企画チームが考えていた“アニメ「風」”と越智氏の目指す“アニメ「版」”の差は、これを見れば一目瞭然である。

 

上に掲載した設計用CGとイラスト1を重ねたものをご覧頂きたい。越智氏の提案を受け入れるとなると、原型からやり直しとなるのは明白だ。それは、これまでの1年間に描かれたスケッチや原型がすべて使えなくなるということで、リセットに近い状況である。
だが、このプロジェクトのゴールは正確な「暗黒大将軍版」の再現である。そこで、企画チームは越智氏の提案を最優することに決めた。こうして、企画チームと越智氏の強力なスクラムによって、超合金魂GX-70マジンガーZは実現へ向けて大きく胎動を始める。

 

イラスト3

▲イラスト1で越智氏が提案した形状に関して、開発チームからすぐにゴーサインが出た。一週間後に提出されたプロポーション案のスケッチ。GX-70はこれを元に開発が進められることになる。ちなみに「角田版」というのは『マジンガーZ対暗黒大将軍』の作画監督を務めた角田紘一氏を示す。

 

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▲越智一裕氏がストーリーと絵を手がけた、フルカラーコミック『永井豪まんが外伝 ダイナミックヒーローズ』。マジンガーZのほか、グレートマジンガー、ゲッターロボG、デビルマン、キューティーハニー、グレンダイザーが共演するという驚異のストーリー。越智氏のマジンガーに賭けた情熱を感じていただきたい。現在はイーブックジャパンで電子書籍として発売中。全4巻。

 

 

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