Vol.27

[爪甲の猛者]

MSM-07 ズゴックは、火力と装甲、水中での巡航能力、そして地上における格闘戦能力を兼ね備えた水陸両用MSの傑作機である。同じくジオン公国軍が開発したMS-13 ガッシャは、ズゴックの格闘戦能力を汎用機に転用した例と言える。ガ・ゾウム水中型も元の変形機構を生かし、水陸での効率的な運用を両立。同じく汎用機から水陸両用機に改修されたAMS-129M ゼーズールにおいても複数のヒート・ナイフをクローに見立てて使用している。こうした地上における格闘性能の強化と水中での移動能力の両立は、後年のOMSM-07RFRF ズゴックにも受け継がれている。

海を持たないスペースノイドであるジオンが抱き続けた海戦兵器への強い畏怖と憧れが、こうしたMSを生み出した要因のひとつと言えるのかもしれない。

AMX-008M GA-ZOWMN MARINE TYPE ガ・ゾウム水中型――ガ・ゾウムマリンタイプ

ガ・ゾウムは、アクシズ(ハマーンのネオ・ジオン)が開発した可変MSである。ガザ系の発展機であるが、大型武装を装備し、より対MS戦を重視した設計がなされている。

本機はアクシズと装備を共有していたジオンマーズでも使用されており、アルカディア・プラントで生産された機体がレジオンとの建国戦争に投入されている。しかし、<インレの翼>によってジオンマーズは制宙権を失い、戦争に敗北。その後のジオンマーズの地下ゲリラ組織化と、レジオンによる飛行禁止令で活躍の場を失った生産中の機体群は、そのまま死蔵されることとなった。

だが、アリシアの進める地下氷河基地開発と、そこで再建中のインレを強奪するために急遽、宇宙用装備を外し水中型――ガ・ゾウムマリンタイプに改修されることとなった。

改修にあたっては、元の可変機構も有効活用されており、MA形態で水中を高速移動し、敵施設に接近、そして上陸後はMS形態に変形し戦闘を行うという運用が想定された。また、投入される作戦——インレ強奪もしくは破壊を目的とする「輝ける星作戦」——の性格上、長時間の戦闘や遠距離砲撃などは考慮されておらず、敵防衛網の強行突破と基地強襲という特攻兵器的な使用が前提となっていた(これは、改修の参考となったジャブロー攻略作戦における旧ジオン公国軍の水陸両用MSと、使用法が似ている)。こうした特殊な仕様を有する機体のため、パイロット達は成功か死かという覚悟で、死地に赴いたのである。

水中型への改修

水中型への改修にあたっては、コクピットを含む胴体ブロックを、同ジオンマーズの量産機であるガザマリンタイプ(M)と規格を統一し、水密性を強化している。こうした改修が可能となった理由として、モビルポッドをベースとするガザ系MS特有の気密性の高い構造があったことが挙げられる。なお、指揮官である“猛牛”コルト専用機は、重装甲で覆われ、かつ突入後の格闘戦継続能力を重視した胴体形状が採用されている。

両腕部は伸縮式フレキシブルアームとヒート式アイアンネイルに交換されており、格闘戦に対応。また、ナックルバスターも廃され、掌部にビーム砲を内蔵している。肩部にミサイル等も装備するなど、射撃戦から格闘戦を想定した武装構成がなされ、推進器も水中用に換装されている。これらの設計や装備は、協力関係にあったアクシズが地球侵攻・降下作戦用に開発していた各種パーツを流用したものである(降下作戦用の水陸両用MSは、戦艦での直接降下が可能となり不要となった)。

しかし、ゲリラ活動下で急造されたMSであったため、機体は水密性に問題を抱える結果となった。さらに水中で変形や格闘戦を行った場合のフレームへの負荷など、本来であれば出撃ごとのメンテナンスが必要であった。しかし、設備や資源が限られたジオンマーズにおいて当機の複数回の出撃は考慮されておらず、一度の出撃で使い捨てる形での投入となった。