Vol.33

AMX-011EW[ZAKU Ⅲ RECON TYPE]ザクⅢ 強行偵察型

アクシズとその協力下にあるジオンマーズが共同で開発・運用したザクⅢの偵察仕様。ザクⅢを偵察タイプに改修した機体で、頭部や両肩部、股間部にカメラを設置したほか、ガンカメラを装備するなど、ザクⅡ強行偵察型に準じた偵察や索敵に特化した仕様となっている。バックパックには、他勢力の偵察用MS(EWAC機)と同じく、大型のレドームアンテナを装備。この2基一組のレドームアンテナは、一年戦争時にジオン公国軍が使用していた偵察機ルッグンのものと同規格の機器を搭載している。パネル状のブレードアンテナも偵察用MSに共通する特徴的な装備と言える。地球圏での運用時には、宇宙・地上を問わずに使用が可能であったが、現在の火星の状況下では、空からの偵察が不可能であるため、デッドウェイトとなる場合に限り、背面のレドームを取り外して陸戦で使用される例もある。

TR計画

地球連邦軍(とその傘下である特殊部隊ティターンズ)のMSが、共通で装備できる大型レドームを備えたバックパックの開発実験機として建造された機体が、RGM-79EW EWACジム。そして、RMS-106 ハイザックに同タイプのレドームを装備した機体が、RMS-119 アイザックである。その実証データを経て、TR-6用の強化パーツのひとつとしてEWACユニットが完成した。EWACキハールⅡが装備したレドーム型ブーストポッドがそれで、偵察用MSの機能をTR-6が担うための機器である。TR系の強化パーツ群は、ティターンズのMS、ひいては地球連邦軍の全MSに共用可能な強化パーツという側面も持つ。そのため、キハールⅡの下位互換機であるアッシマーにも装着可能である。なお、アッシマーが装着した状態は、EWAC アッシマーと呼称される。円形のレドームはその形状から、アッシマー(とキハールⅡ)系の円盤型MAと相性がいい。また、レドームを背負ったアッシマー(EWAC アッシマー)は、その色と姿から旧世紀の試作戦闘機「XF5U」になぞらえて「パンケーキ」の愛称で親しまれ、その性能からグリプス戦役後も偵察任務に重宝された。地球の空はこの「空飛ぶお菓子」が守ったのである。

偵察任務機

宇宙世紀におけるEWAC機の用途は、中世紀のそれに近しいものとなっている。ミノフスキー粒子によってレーダーなどの使用が阻害されている状況下においては、高性能な光学機器などを装備した専用の機体 =EWAC機による偵察や索敵が必須となる。こうした機体によってもたらされた情報が、戦いの趨勢を左右することすらある。このように戦闘とは単なる戦いだけではなく、偵察や後方支援、補給、兵站等の様々な支えがあり始めて成り立つ。敵と銃火を交えることの少ない偵察機だが、その任務は極めて重要なのである。宇宙世紀に勃興した各軍事勢力は、ミノフスキー粒子散布環境下における偵察の重要性を把握していた。だからこそ、ジオン公国軍はザク・フリッパーを、地球連邦軍ではEWACジムをはじめとしてジム系、ジェガン系などの主力MSにレドームを搭載した偵察機を、ネオ・ジオンやその残党勢力はRMS-119 アイザックを、後の時代のクロスボーン、ザンスカールといった組織も同様に偵察任務を専門で行う機体を保有していた。そして、ジオンマーズやアクシズでは、ザクⅢのバリエーション機がその役割を担っていた。一方、ティターンズでは、TR-6ただ1機が万能化換装システムによりあらゆる任務への対応を可能としていた。TR-6に用意された各種換装パーツに偵察や後方支援用のものがあることからも、組織がどれだけ兵站を重要視していたかが理解できる。戦いとは、少数の強力なエース機だけが決するものではない。高性能なガンダムが1機だけでは意味がなく、後方を支える兵器やシステムがあってこそ、それらは満足な性能を発揮するのである。TR-6の真価は、これらが当初からシステムとして構築されている点にこそあると言える。

ARZ-124KH2EW GUNDAM TR-6[KHEAR  Ⅱ]キハールⅡ EWAC形態

ARZ-124WD ウーンドウォートに強化装備を搭載した機体が、ARZ-124KH2 キハールⅡである。インレの護衛を目的としたバリエーションで、通常はMA形態で複数機が搭載される。レドームを装備したこのEWAC キハールⅡは斥候的な役割を担い、インレより先行し、偵察するための機体である。レドームは空力特性に優れた円形のリフティングボディに合わせており、空戦能力を損なわない構造となっている。また、レドームの後ろにあるブーストポッド後端に設けられた小型の円状サブアンテナは、ティターンズに与したジュピトリス内で建造・使用されたボリノーク・サマーンと同系のものが使用されている。キハールⅡは、僚機や監視衛星とブレードアンテナでサイコミュ・リンクを行うことで、EWAC キハールⅡが得た偵察情報をリアルタイムで共有することが可能である。アリシアとその親衛隊のTR-6だけが、火星の空を自由に飛行し、地上を見下ろすその眼は敵を見逃さなかった。そして、レジオンの監視の眼を逃れるため、ジオンマーズは地下への潜伏を余儀なくされたのである。