Vol.47

NRX-044〔R〕PROTOTYPE ASSHIMAR TR-3[KEHHAR]試作アッシマーTR-3[キハール]

NRX-044 試作アッシマーTR-3[キハール]は、宇宙用と大気圏内用の2種タイプが開発され、それぞれに運用試験が行われた。宇宙用は、TR計画の完成機となる可変MS(後のTR-6)用のフレーム開発実験機として、ニュータイプ研究所が試作したアッシマーをティターンズが接収、改修した機体である。MS形態では、脚部を持たない特徴的な外見をしているが、MA形態も原型となったアッシマーと異なり円盤状ではない。「未完成」とも言える形態だが、可変システムの検証用だったことから、それほど問題にはならなかった。なにより、後部に集中した推進ユニットによる爆発的な加速力と長時間稼働は実用レベルにあった。このように可変機構こそ手探りの状態にあったが、本形態は後の可変機開発のひとつの方向性を示したのである。大気圏内用は、TR-6用飛行パーツの実験機として、宇宙用を重力下で運用するために再改修した機体である。形式番号は本来の「NRX-044」になっている。テスト段階のアッシマーに開発データがフィーバックされた結果、制式採用されたアッシマーと共通した外装となっている。しかし、胸部に増設された増加ジェネレーターやスカート・ユニットなど、本仕様独自の装備も確認されている。特にスカート・ユニットは垂直上昇用の推進器と空中での姿勢制御ユニットを兼ねており、MA形態では機体下部に固定される。なお、宇宙用、大気圏内用ともにT3部隊でテストが行われ、旧ジオン公国軍残党と交戦し、これを撃退している。

NRX-044[ASSHIMAR]アッシマー

オークランド研究所において開発された大気圏内用の可変MAが、このNRX-044 アッシマーである。U.C.0085に完成した本機は史上初の可変MAとされるが、その最大の特徴がMA形態時の円盤状の形状にある。リフティングボディと呼ばれるこの形状によって、機体そのものが空力的に優れ極めて高い長距離飛行能力を獲得する結果となった。この特性を生かし、MA形態で上空に侵入したのち、MS形態に変形し降下しながらの戦闘、そしてMA形態での離脱、というものが主な運用法であった。なお、本機にはムーバブル・フレームは使用されておらず、複数のドラムで構成された「ドラム・フレーム」を採用している。アッシマーの「背骨」として使用されているドラム・フレームは、堅牢な構造により変形機構を支える中核を成すパーツとなっている。

TR計画

MAへの変形機構を有するMSが「可変MS」と総称される。グリプス戦役期に登場したMS群で、「第三世代MS」とも呼ばれる。その最大の特徴は、前述のとおりMAへの変形機構を持つことで、これにより高度な機動性をはじめ、航続距離の延長などを果たした。MSの欠点である航続距離をSFSなどに頼らず単独で解決した可変MSだが、欠点がなかったわけではない。その代表的なものが機体の構造の複雑化である。この要因となったものが「ムーバブル・フレーム」である。可変機開発の中核技術となったムーバブル・フレームは、フレームの可動によって変形する技術であったが、その構築に至る技術的に高いハードルが存在した。これに対しTR計画では、ムーバブル・フレームとは異なるフレーム構造を採用している。それが「ドラム・フレーム」である。ムーバブル・フレームを採用した可変機がフレームの可動によって変形することに対し、ドラム・フレーム採用機=TR計画機は組み替えや取り外しによってパーツの位置を変えて変形する機構を持つ。これは、戦局に応じた装備や形態を換装によって変化させるTR計画機にとって、必要不可欠なフレーム構造であったことは間違いない。そのため、TR-3[キハール]宇宙用においてドラム・フレームの柔軟性や剛性の試験が行われたのである。その結果、得られたデータをもとに、TR-6[ウーンドウォート]の換装システムの中核となるフレーム構造が構築されることとなった。また、TR-6[インレ]の護衛機のテストに供された機体が、TR-3[キハール]の地上用である。これは変形した状態で複数機がTR-6[インレ]に搭載され、戦域周辺で射出、哨戒や防衛部隊との戦闘、そして制圧などを行うことを主目的としていた。戦略兵器であるTR-6[インレ]には必要不可欠なものであったと言える。なお、護衛機の開発実験は[TR-3キハール]以外にも、バイアランに生かされたTR-1[ヘイズル]用のイカロスユニット(MSの大気圏内飛行ユニット)や、TR-4[ロゼット]陸戦型によるダイダロスユニット(ミノフスキークラフトの搭載)などでも行われた。これらを経てTR-6の強化ユニットのひとつである飛行ユニット(キハールⅡユニット)として完成した。こうした円盤形態に変形する可変MSの有用性は、様々なテストを経て証明された。ティターンズが実施したTR計画とは別の形で後年、地球連邦軍による後継機としてRAS-96 アンクシャが誕生するに至った。

ARZ-124KH2 [KEHHARⅡ]

ARZ-124KH2 キハールⅡは、素体であるARZ-124WD ウーンドウォートに飛行用強化装備=キハールⅡユニットを搭載した機体である。インレの護衛を目的としたバリエーションで、母艦となる弾道兵器インレに艦載機として複数機を搭載できるよう、小型かつコンパクトな可変MS仕様となる。通常はMA形態でインレに搭載されて出撃し、敵地付近で射出され周囲の哨戒や敵防衛隊との空中戦、その後の敵地制圧など、戦況に合わせて形態を使い分ける。そうした特性のため、単機ではなく僚機と連携しての作戦運用が中心となる。レジオンにおいてはアリス親衛隊の専用機として使用。強化人間用のサイコミュを搭載する。

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