本図は、[クィンリィ]フルアーマー形態の標準的な装備の構成を示したものである。[ウーンドウォート・ラー]形態を素体とし、汎用強化パーツおよびギガンティック・アーム・ユニットを装備することで、サイコガンダムの代替交換機である[ギガンティック形態]となる。一方で、[アドバンスドキハールⅡ]を汎用バインダーとして装備することで、デンドロビウムの代替機となる[クィンリィ]形態をとる。そして、これら全ての強化パーツを装着した状態が[クィンリィ]フルアーマー形態と呼ばれる装備形態である。全身に各種の超重装備を配することで、両形態の特性を持つ対40m級巨大MS形態へと変化する。サイコガンダムとデンドロビウム、異なるタイプの両機体の特性を併せ持つということは何を意味するのか?両機の共通点、その回答のひとつを機体の制御システムに求めることができる。通常のMSと異なる膨大な武装や複雑な機構を持つ両機だが、前者では「サイコミュ+強化人間」が、後者では「一般兵+特殊OS」がその制御を担っている。一長一短こそあるが、基本的なコンセプトに共通する部分を見ることができる。なおこの特殊OSは、後の可変MS用のOSへと繋がる。(デンドロビウムの実際の運用においては、戦闘の長時間化に伴ってパイロットに特殊な薬物投与が行われたとも言われ、その複雑な火器管制がパイロットに過剰な負担を強いた。この事例が後の制御システム開発に生かされた可能性も高い)。TR-6においては、それに代わる制御システムとして強化人間人格対応OS「BUNNyS」が採用された。実用化されたBUNNySは、「計算」ではなく人を遥かに凌駕する速度で「思考」し、状況に柔軟に対応する。並列化されたOSは学習機能を有し、経験を積み、成長、そして進化する。これは強大な敵に破れても、そこから収集した対抗策を講じることで、次にはその脅威に打ち勝つことを意味している。サイコミュ接続された兵器運用、プログラム外の判断、応用力など、人格式OSならではの能力を備える。この強力なOS=ソフトの能力に対応したハード的な受け皿が、機体に備わった装備の組み替えによる拡張機能である。OSによる万能化換装システムの制御。さらには、量産機として機体および強化パーツを組織的に運用する体制も含まれる。これがTR-6の掲げる「最強の兵器=ガンダム」を成立させ、外敵から地球を守護するティターンズの抑止力を根底から支える概念であり、仮想敵となるアナハイム系ガンダムタイプMSやエース級のワンオフ機との大きな違いである。こうしたMS制御の為の特殊OSの開発は、一年戦争時から繰り返し試みられている。特にRX-78 ガンダムに採用された教育型コンピューターやその発展系であるALICEなどが、自己学習型のOSとして知られる。さらに「EXAM」に始まるNTとの戦闘、抹殺を意図したシステム、さらには後年にサナリィで研究された疑似人格コンピューターなど、人格を模したOS開発の例は多い。しかし、TR計画機に搭載されたBUNNySほど、大規模かつ難易度の高い換装機構の全てを統括して制御するOSは前後に例がない。なお、BUNNyS開発を目的とした「OVER THE MIND計画」では、人体実験による幾人もの犠牲者が生じたとされ、その並列思考能力の高さはシステムに彼らの心が憑依している故とも言われているが、真偽のほどは定かではない。
ジオン公国軍が一年戦争に投入する予定であったMSN-02 パーフェクトジオングは、ニュータイプの使用を前提とした40m級巨大MSの始祖となる機動兵器であった。戦後、その戦力に脅威を感じた地球連邦軍はこれに対抗すべく、巨大なガンダムタイプの機動兵器としてMRX-009 サイコガンダムを開発している。強化人間パイロットを前提とし、ジオングのコンセプトを引き継ぐ対抗兵器と言えるサイコガンダムだが、そのTR計画における代替機が[ギガンティック形態]であり、代替交換形態への命名法則による[サイコガンダムⅡ]の名称を持つ。強化人間人格OSによりパイロットを補佐し、外装化された腕部や脚部、ミノフスキー・クラフトを装着することで、原型機の機能をより高度化して獲得することとなった。なお、サイコガンダムのMF形態は拠点防衛用MAの要素を含んで開発されており、後述の[クィンリィ]形態が担う部分とも共通する。拠点防衛用というコンセプトで開発されたRX-78GP03 ガンダム試作3号機デンドロビウムは、ジオン公国軍のMA-08 ビグ・ザムの対抗兵器をコンセプトとしている(元々ビグ・ザムはジャブロー攻略用の機体だったが、ソロモン攻防戦での拠点防衛で高い効果を発揮したことから、地球連邦軍は拠点防衛用という機体の威力を実感したとされる)。デンドロビウムのTR計画における代替機が[クィンリィ]であり、代替交換形態名「デンドロビウムⅡ」と仮称されたことからも、そのコンセプトが引き継がれていたことが分かる。「MSが各種オプション装備(MA)を制御する」という部分にデンドロビウムとの関連性を持ち、[ウーンドウォート]がフルドドⅡを介して様々な強化パーツを装備する点からそれが見て取れる。特にウエポンコンテナに様々な機器を搭載し、それを、換装システムを支えるシステムとして成立させることで、より多様な兵装の装備と運用を可能とすることに成功した。このように、MSという新兵器の開発は、斬新な発想の元で作られたジオン公国軍の機体と、それに対抗する地球連邦軍機のように、鏡となる「対抗兵器」という概念によって支配されることも多い。さらにその概念を一歩推し進めたTR計画では、パーツの換装によってティターンズ、ひいては地球連邦軍の既存のMSへの代替機へと変化し、敵勢力のあらゆる対抗兵器として運用可能に設計されている。
MS開発史において生み出された、頭頂高40mを超える巨大なNT専用MS。その戦闘力は突出しており、通常のMSでは対抗することが困難であった。そうした巨大MSへの対抗策として、TR-6には大型の強化パーツを装着した超重装備形態が存在する。そのひとつがこの[クィンリィ]形態群である。素体となる[ウーンドウォート・ラー]に汎用強化パーツを装着した[フライルーⅡ・ラー]を中核に、攻防一体型の汎用バインダーとして2機の[アドバンスドキハールⅡ]を両肩のドラムフレームに接続した状態が[クィンリィ]形態である。全身各所に装着されたコンテナ内の各種武装により、拠点防御兵器として極めて高い攻防力を有している。作戦内容にあわせ、ミノフスキークラフトの一種であるダイダロスユニットや、追加コンテナなどを装備する。一方で、[ウーンドウォート・ラーⅡ]の両肩と両腰のドラムフレームに、汎用強化パーツおよび大型機動兵器の腕部や脚部等を装着した形態が、「ギガンティック形態」である。本形態は、NT兵器としてのオールレンジ攻撃のほか、巨大な四肢を用いた近接戦などでも威力を発揮した。そして、[クィンリィ]にギガンティック・ユニットを組み合わせた形態が「フルアーマー形態」である。両形態の長所を備えた本形態は、将来に出現が想定される敵勢力の巨大MS(後のNZ-000 クィン・マンサや、新たなジオングの後継機など)を想定した対抗兵器であり、それらを打倒する性能を有している。他のTR-6各種形態と同じく、各部の装備はドラムフレームと、フレームを支える接続アームの剛性によって堅牢に固定されているが、各装備のレイアウトは現場で自由に換装することが可能である。この換装による能力強化によって未知なる敵巨大MSに対抗・排除する。このように[クィンリィ]は、MSという局地兵器カテゴリにおいて最高クラスの能力を有する形態である。本機で対応が困難な敵に対応する際には、[ファイバー]をはじめとするMAカテゴリの換装形態を用いる。さらに決戦においては戦略兵器である[インレ]が、その任を担うのである。