Vol.55

巡航形態 CRUISER MODE

「航続距離が短い」というMSの欠点は、一年戦争時点で明らかとなっていた。これを解決するためにサブ・フライト・システムが開発された。これにより航続距離の問題は一応の解決をみたが、その後も様々な形態が模索されることとなった。中でも特殊なものが一年戦争時に地球連邦軍が開発したGアーマーである。RX-78 ガンダムのサポートメカとして開発されたGアーマーは、合体・分離機能によって様々な形態で運用できた。これによりガンダムの航続距離を伸ばしただけではなくそれ単体でも高い戦闘力を発揮したのである。そしてグリプス戦役期にも、Gアーマーの開発コンセプトを引き継いだ強化パーツが敵対する両勢力で開発されている。エゥーゴではFXA-05D Gディフェンサーを開発した。 RX-178 ガンダムMk-Ⅱ用の強化パーツであるGディフェンサーは、機体の性能を大きく引き上げ、ティターンズの新鋭機と互角の戦闘力を付与したのである。機体の背部に装着(合体)する形式だったGディフェンサーは、運用性においてGアーマーを凌駕しており、ユニット化されて後にも使用されることとなる。そしてグリプス戦役期における可変MS(第三世代MS)は、MA形態への変形により推力を同一方向にまとめることで航続距離の延長を果たしたのである。また、Gアーマーのコンセプトを有する機体も存在した。それがMSZ-010 ZZガンダムのGフォートレスやMSA-0011[Ext] Ex-sガンダムのGクルーザーである。これらは、合体・分離機構を当初から機体に盛り込んでおり、機体の航続距離をはじめ、重爆撃機などとして運用可能となったことで、より機体の運用性が向上する結果となった。一方のティターンズでは「TR計画」によって、強化装備としてのGパーツが開発されている。それがFF-X29A フルドドである。TR-1用である[フルドド]でGパーツの開発と実験が行われた。その後、TR-6では[フルドド]とそれと合体したTR-1での実験のデータを踏まえて完成した[フルドドⅡ]を、MSの一部に組み込んでいる。これは将来的な仮想敵として想定された、ZZガンダムをはじめとするMS群への対抗形態である。

互換

TR-6で得られたデータや技術的フィードバックによって[ヘイズル]は進化した。しかし、度重なる改修は機体の全換装と言う状態を引き起す結果となった。RX-121-3C ガンダムTR-1[ハイゼンスレイ]がそれで、TR-6の高速戦闘形態である[ハイゼンスレイⅡ]用の強化パーツを、[ヘイズル・アウスラ]に組み込んだ形態である。本機は[ヘイズル]の最終進化系となる。なおこの強化パーツはTR-6と同時開発であり、命名法則上TR-1側を[ハイゼンスレイ(Ⅰ)]と呼称する。そして、[ハイゼンスレイ]に2機の[フルドドⅡ]を装備した形態が[ハイゼンスレイ・ラー]であり、TR-1シリーズ屈指の攻撃力と運用柔軟性を備えている。TR-6は「機種統合計画」による既存機の代替交換機の役割を有するため、[フルドドⅡ]をはじめ、その強化パーツの多くは、ティターンズ(地球連邦軍)機との互換性を持つ点が特徴である。大型ブースターは[フルドドⅡ]に接続されているため、[フルドドⅡ]を 装備した他のMSの「ラー」形態でも巡航形態をとる事が可能。当然、[ハイゼンスレイ・ラー]にも巡航形態が存在する。また、[フルドドⅡ]のドラムフレーム部を介して超重装備の装着などが可能である。こうした能力を生かした実戦運用の例として、グリプス戦役末期におけるコロニー・レーザーを巡る戦闘において、[ファイバーⅡ]ユニットを装着した[ヘイズル・ラーⅡ]が投入された例が知られている。なお、[ヘイズル・ラーⅡ]は[ヘイズル・アウスラ]に[フルドドⅡ]を装備した形態である。

TRハンブラビの系譜

ティターンズが開発したGパーツ、[フルドド]は合体機構を有しており、2機が合体することでMA形態となる。そこで得られた実験データはRX-139 ハンブラビのMA形態の開発に生かされることとなった(そのため、このMA形態はTR試作ハンブラビの愛称で呼ばれることもある)。[フルドド]の完成形である[フルドドⅡ]は、各種装備を追加することで、局地用支援機に変化する点が特徴である。高機動ユニットを装備したハンブラビⅡ形態では、ハンブラビのMA形態の代替機となる。また、水中用装備を追加したアクア・ハンブラビⅡ形態では、MSと合体することで装着した機体に水中用MSとしての機能を付与する。ティターンズ製の装備を配備する火星のレジオン軍において、ハンブラビはその建国戦争で活躍した。しかし、ハンブラビⅡが導入された後は前線を退き、建機MSであるノン-ブラビへと改修され、第二の人生を送る。

TR-1

[フルドド]と[ヘイズル改]などが合体した形態を[ヘイズル・ラー]形態と呼ぶ。合体することにより機体の火力や機動力が向上する。さらに2機の[フルドド]を合体した形態が[ヘイズル・ラー]第二形態で、本形態では各機能の稼働効率が最大限に発揮される。そして、この第二形態には大型のブースター・ユニットを装備することが可能で、長距離航行機能も付与される結果となった。ブースターを装備した状態をクルーザーモード(巡航形態)と呼称する。その推力を生かした高速による一撃離脱戦法が可能であり、こうしたMA的特性を得ることで、[ヘイズル・ラー]は第三世代MSに匹敵する能力を獲得した。

TR-5

TR-5[ファイバー]の素体となるギャプランに、[フルドドⅡ]を装着した機体。装着システムには、[ヘイズル]で得られたデータがフィードバックされている。なお、背中や両腕のシールドブースターなどの装備からもわかる通り、TR-1[ヘイズル]とTR-5[フライルー]は兄弟機と言うべき関係にある。[フルドドⅡ]は、TR-6本体よりひと足早く実戦に投入され、TR-5に搭載されて一定の成果を挙げた。運用時に得られたデータはTR-6にフィードバックされている。そして、フルドドⅡに接続され巡航形態で使用される大型ブースターは、TR-5の原型であるORX-005 ギャプランにも使用されている。ティターンズ製MS用の共通規格品として、TR計画にも組み込まれている強化パーツのひとつである。キャプランでは、航続距離の延長に加え、対Z計画機への成層圏でのインターセプト任務に使用される。後年ではRX-160 バイアランの系列機でも装着、使用された例が知られている。

TR-6

[ウーンドウォート]が両肩と両腰部に2機のフルドドⅡを装着した形態が、[ウーンドウォート・ラー]である。TR-6の中でも極めてシンプルな武装形態だが、[フルドドⅡ]との合体により[ウーンドウォート]の突出した機動性とパワーウェイトレシオがより強化され、本機の得意とする一撃離脱戦術向きの機体特性がより顕著化する。そして、[フルドドⅡ]の後方に備えられたドラムフレームは、巨大な武装を接続するためのジョイント・ハブとして機能し、本形態を核に大型オプションを自在に運用可能となる。この[フルドドⅡ]の機能は、[フルドド](とその合体形態)の運用データで得られたものである。TR-1とTR-6と同じ関係性が、[フルドド](実験機)と[フルドドⅡ](制式採用機)にも見られる。また、TR-1と同じく、TR-6でも[フルドドⅡ]にブースターを装備できる。この巡航形態をとることで戦闘空域の迅速な移動が可能となっている。

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