Vol.55

[グワジン級の系譜]

グワジン級大型戦艦は、ジオン公国軍が開発した宇宙艦艇である。先端が尖った流線型の船体が特徴で、翼を持つ艦の形状は設計段階で大気圏への突入と飛行を盛り込んでいた証左となっている。多数のMSを搭載できるほか、メガ粒子砲をはじめとする充実した武装を持つなど、高度な戦闘力が与えられている。また、外見上の特徴でもある球形のパーツは、燃料タンクで、アステロイドベルトまでの航行能力を有しているなど、艦隊の旗艦に相応しい性能を持つ艦であった。これほどの性能を持つグワジン級は、ジオン公国の指導層であるザビ家、そして彼らから特別な信頼を得たものにのみ与えられた。特にグレート・デギンやグワジン、グワラン、グワデンなどが知られている。そして一年戦争後、ジオン残党勢力において後継艦が開発され、組織の旗艦として運用されている。これは、グワジン級がザクなどと同様に「ジオン」の象徴として認識されていたことの証と言えよう。グリプス戦役時に地球圏に帰還したアクシズ、その指導者であるミネバ・ラオ・ザビの座乗艦で組織の旗艦がグワダン級戦艦である。本艦は、グワジン級の流れを汲みながらも、搭載MSや火砲、航行能力などが飛躍的に強化されていた。同型艦も建造されており、アクシズの造艦能力の一端をうかがい知ることができる。そしてアクシズはもう1タイプ、グワジン級の後継艦を開発している。それがグワンバン級である。本艦のうちグワンバンはグリプス戦役で一時的にアクシズの、そして第一次ネオ・ジオン戦争ではグレミー派の旗艦として運用されている。また、U.C.0083のデラーズ紛争において、アクシズが送った先遣艦隊のグワンザンもグワンバン級である。艦の能力では他のグワジン級の後継艦に劣ると言われるが、大型MSやMAを搭載可能であったなど、機動兵器の運用能力は高かったと推測される。そしてこのグワジン級の流れは、後にシャアが率いたネオ・ジオンにも見ることができる。ネオ・ジオンの旗艦であったレウルーラ級は「シャアの反乱時」における最高の火力やMS能力を有する艦として知られ、その後もネオ・ジオン残党組織によって運用されている。このことからもグワジン級やそのコンセプトを引き継いだ艦が、高い運用性を持っていたことが理解できる。

[MIDALAHN]サダラーン級機動戦艦ミダラーン

レジオン建国戦争以前、キシリア派のジオン残党組織であるジオンマーズが、火星全土を支配していた時代に建造された艦艇が、このサダラーン級機動戦艦ミダラーンである。当時、火星ジオンマーズと、火星と木星の間のアステロイドベルトにある小惑星アクシズを拠点とするドズル派アクシズは強い協力関係にあった。小惑星という不自由な暮らしから地球圏への帰還を熱望していたアクシズに対し、火星のジオンマーズは地球に戻ることは特に望んでいなかった。それは、数億以上の移民が暮らす植民都市群サイドA(アルカディア)全土を支配していた彼らが、その独裁的な支配体制に満足していたこと、そして地球では「ジオン残党」としてお尋ね者であったことが理由として挙げられる。火星は宇宙移民初期に建設された巨大プラントと、そこで働く国民による生産力から、多くの兵器を製造し、それをアクシズに供与した。これは、地球に帰還したアクシズの戦力の多くが火星によって担われたものであることを意味する。つまり、小惑星を拠点とし、兵器の生産性力に劣る少数勢力のアクシズが、短期間で強力な新型MSをはじめとする大戦力を整備し、投入した背景には火星の貢献があったのである。ジオンマーズおける兵器の設計、開発もアクシズと共有している部分が多い。今回解説するサダラーン級機動戦艦も、組織の旗艦として建造された。ネオ・ジオンと名を変えたアクシズの旗艦サダラーンに対して、その姉妹艦であるミダラーンは同等の能力を有しながらも、各部の仕様は、その系譜の原型であるグワジン級に近い。サダラーンではダミーを含め、中央部と船尾の三箇所に設けられているブリッジは、ミダラーンの場合では中央部に機能を集中させた、グワジン級により近い構成である。また、各部のウイングの配置や艦首の形状、武装のレイアウト、艦の側面に設けられたタンクなども、グワジンに酷似している。また、艦体中央のMS格納庫が拡大され、そこから繋がる艦体下面にはグワダン級と同等のカタパルトを備えている。この点が姉妹艦でありながら、サダラーンとミダラーンの決定的な違いとなっている。こうした外装の違いは、前者がその後に各勢力建造される艦艇(レウルーラ級戦艦や地球連邦軍のカイラム級機動戦艦)などに近い、実戦に即した武装レイアウトであるのに対し、後者は旗艦という組織の象徴、伝統を重んじたがゆえの設計を採用した結果と言える。火星の置かれた環境が、実際の戦場から遠く離れているという地理的な要因も考えられる。このミダラーンに限らず、ジオンマーズの兵装はアクシズ製兵装と共通設計を基本としながらも、その外装は旧ジオン公国の伝統主義的な意匠が多い点が特徴である。そのため、レジオンをはじめとした敵対勢力からは、「オールズモビル」と揶揄されている。アクシズの地球侵攻作戦に呼応したジオンマーズの高官のひとり──後のアウトローチェスター──は、まだ若い息子をミダラーン艦隊の総指揮官として地球に派遣した。指揮官として同胞の戦いを目の当たりにすることで、息子を後継者として育てると言う意味もあった。しかし、向かった先ではハマーン派とグレミー派の内戦が勃発していた。これに巻き込まれることを嫌ったミダラーン艦隊は、両派のどちらにも与しない独立した派閥を収容し、火星へと帰還した。だが、彼らの旅の間に火星にも変革の時が訪れていたのである。それはかつて劣勢であったギレン派のジオン残党組織──レジオンとの建国と、ジオンマーズの敗北であった。これによって火星の勢力図は一変、ミダラーン艦隊は帰る場所を失い、地上への降下を阻まれた。この状況に艦隊は強硬策に打って出る。艦隊は、予定されていた地球侵攻作戦に合わせ、地上制圧を目的とした機動兵器を配備していた。それに加え、ネオ・ジオン残党の戦力も保有していたのである。かくしてミダラーン艦隊は火星降下作戦を実施。その強大な戦力を投入、実力で地上へと降下し、都市を制圧、レジオンからの政権奪取を試みるが……。

[SADALAHN]サダラーン級機動戦艦

ミダラーンの同型艦であり、第一次ネオ・ジオン戦争ではハマーン・カーンの座乗艦として、組織の旗艦を務めた。大型メガ粒子砲のほか、メガ粒子砲、対艦ミサイル・ランチャー、対空レーザー砲などを備えるなど、旗艦に相応しい攻撃力を有する。また、本艦の特徴として、大気圏突入能力と飛行能力を持つ点が挙げられる。特に後者はミノフスキー・クラフトによるものと考えられる。こうした機能から、地球侵攻を強く意識した艦であったことがうかがえる。それは艦首に大型のコムサイが配置されていたことからも理解できる。

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