[ハイゼンスレイⅡ]は「機種統合計画」におけるRX-110 ガブスレイの後継機としての役割も担っている。ガブスレイと同じくMA形態に変形可能なほか、その発展機構として2機の小型戦闘機への分離・合体機構を持つ。対抗機であるMSZ-010 ZZガンダム、AMX-107 バウといった合体と分離が可能な可変機に対応した機体運用を行う能力を備えている。また、脚部のみをクロー・アームに変形させる「中間形態」をとることができ、そのままの形態で格闘戦を行うことも可能。
本図は[ハイゼンスレイⅡ]の変形機構の概念図である。ふたつの連なったドラムフレームが、変形機構の中核となっていることが理解できる。
変形にあたっては、胴体は背中部分のポッドに、腕部はショルダーカバーの中に収納され、腰部が回転したのち、脚部も前後に別れると同時にクロー・アーム状に展開してMA形態となる。シールド・ブースターは股間の隠し腕で保持される。分離と合体の際には上下のドラムフレームの接続部分から切り離しと接続を行う。
「可変MS」に分類される機体は全般的にMA形態に変形することで、MSの欠点のひとつであった「行動半径の狭さ」の解決を図っている。[ハイゼンスレイⅡ]などに見られる上半身と下半身に機体が分離し、運用するシステムは「可変機構の進化」であり、機体の多角的な運用を可能としたのである。
分離した下半身が変形したMA形態。大型のクロー・アームを生かした重MA的な運用がなされる。コクピットブロックとなる[プリムローズⅡ]は、機首ブーストポッドの内部に収納されている。増加スカートは、股間部の装甲が強化され、両サイドにスプレッドビームを装備する。素体の股間部に収納されたビームサーベルは、ビーム・ライフルモードで使用され、状況に応じてGトップ・ファイターからコンポジットブースターを受け取り使用する。脚部強化パーツは爪先とカカトが展開し、クロー状に変形。脛カバーに内蔵されたビームサーベル(同様にライフルに切り替え可能)をクローで保持して使用。膝カバー部は肩部と共通規格のウエポンベイであり、交換可能なコンテナ式のミサイル・ポッドなどを内蔵する。テールスラスターはバインダーとして独立可動し、AMBAC肢としても使用される。
[ハイゼンスレイⅡ]の分離した上半身が変形したMA形態で、高速戦闘機的な能力を持つ。[ウーンドウォート]を素体として各種強化パーツで構成される。背部ポッドは[フルドド2]の中核としても使用されるジョイントユニットで、メガ粒子砲を内蔵し、MA形態時には機首部分を構成する。
肩部パーツはウエポンベイを兼ねており、コンテナ式オプションを換装することで様々な兵器を搭載することが可能。胸部装甲にもメガ粒子砲を内蔵し、小型ながら強力な火力を備えている。コンポジットシールドはシールド側のジャバラアームで本体と接続、保持される。
[ハイゼンスレイⅡ]用に用意されたペットマーク。グリプス戦役時には、戦局の悪化によりブラックオター小隊機では未完成、使用されることはなかった。その後、奪取された火星鹵獲機においてはペイントが施された。
上半身(Gトップ・ファイター)と下半身(Gボトム・ファイター)が合体した状態でも、MA形態への変形が可能。その余りある出力によって大気圏からの離脱と再突入が可能である。また、大気圏内での飛行や空中戦を行うこともできる。
MS形態での脚部がクロー・アームとなり、機首に備えたメガ粒子砲を併用することで、MA特有の「一撃離脱戦法」を行う。
パイロットが一名の場合、分離時のどちらか一方はBUNNYSの補佐による半自立操作 で運用される。さらに[フルドドⅡ]と合体した[ハイゼンスレイⅡ・ラー]形態では、三機分離運用も可能となる。
RX-124 ガンダムTR-6[ウーンドウォート]の高速戦闘形態が、この[ハイゼンスレイⅡ]である。本機は、ティターンズのフラッグシップ機となることを想定したガンダムタイプMSとして用意された。つまり、敵(エゥーゴ)陣営の推進する「Z計画」系後継機(MSZ-010 ZZガンダムやMSA-0011[Ext] Ex-Sガンダムなど)への対抗機であり、それらに打ち勝つ拡張機能を内包した機動兵器として開発された(*注)。
ガンダムTR-6の運用方法とは本来、その任務や用途に応じて各種強化パーツを組み替え、柔軟な対応を可能することにある。この「固定された形態を持たない」ことこそが、最大の特性と言える。しかし、軍上層部の一部はその柔軟すぎる新たなコンセプトを理解しかねた。この「頭の固い」軍上層部を納得させ、さらにその要望に応える形態が必要となった。その条件を満たすために、[ハイゼンスレイⅡ]は従来のMSの仕様に沿った「最強の万能機=ガンダムタイプMS」として用意されたのである。
こうした背景を持つがゆえに、本形態はフラッグシップ機としてコストを度外視したほか、過剰なまでの高性能の多様な装備に加え、合体分離機構をも備えたエリアドミナンス機として完成したのである(この時代、MS開発は全般的にこうした恐竜的な巨大化、高火力高出力化の一途を辿る傾向にあり、それが第四世代MSの誕生に繋がったとも言えよう)。
なお、[ハイゼンスレイⅡ]は、T3部隊をはじめとするテストチームで運用され、グリプス戦役の終結に貢献した。また、火星へと渡った鹵獲機は、レジオン建国のために活躍し、その後ARZ-125 リハイゼへと改修されることとなった。
※ZZガンダムは本来、Zガンダムより先行して計画されていた。しかし、技術的諸問題などにより開発が遅延した機体であり、構想を同じくするTR計画機との時期的な技術的格差は存在しない。グリプス戦争の終結に前後して実戦配備されたSガンダムにおいても同様である。