ガルバルディβ
一年戦争中にジオン公国軍が実施した、「ペズン計画」において開発されたMS-17 ガルバルディの再設計機。ガルバルディ自体、MS-14A ゲルググとYMS-15 ギャンをベースにその両機の性能融合を意図した機体で、一年戦争時の機体として極めて高いポテンシャルを有していた。戦後、本機を接収した地球連邦軍が近代化改修を施し、RMS-117 ガルバルディβとして配備するに至った。後年、アクシズ(ネオ・ジオン)が開発、運用したAMX-117R(L) ガズR(L)もガルバルディと似た外観を有する。これは機体の再設計に協力した旧ジオン公国軍系のAE社の技術者によってそのデータがネオ・ジオンに渡ったためと言われている。
「TR計画」においては、本機を素体として実験機が開発されている。RMS-117 ガルバルディβ(高機動型)で、本機はトランスパックシステムの開発から発展したガンダムTR-1型のバックパック上部に取り付けられるポッドの拡張機能(ブースターポッド、マルチコネクターポッド、トライ・ブースターなど)の実験機としての側面を有していた。なお、素体となった機体は開発時期の関係上、トランスパックシステムに対応していない。そのため、胴体部〜背部にかけて強化処置を施している。具体的にはフレームと装甲を増設し、そこをベースとして胴体前部のラッチを介してバインダースラスターを、背面上部には可動式の試作型高機動ブースターポッドを搭載する。この試作型高機動ブースターポッドは、両サイドのラッチを介して、
1:シールド・ブースターやバインダースラスターなどの推進器ユニットを取り付けての高機動機化。
2:ビーム/実体弾式大口径キャノン、ミサイル・ランチャーなどの火器を取り付けての中距離支援機化。
3:レドームやセンサーなどを取り付けてのEWAC機化。
という3種類のトランスパック機としての運用が可能で、これは後にガンダムTR-1やガンダムTR-6のマルチコネクターポッドへと引き継がれた。
なお、この試験機はパイロットを務めたマキシム・グナー大尉がエゥーゴ側への離反時にその実験運用計画データとともにAE社の手に渡った。このデータが後のリック・ディアス[シュトゥッツァー]やネモ・カノンなどが装備するAE社製シールド・ブースターの開発に役立てられた。
ティターンズでは、この試作機のさらなる強化によるアドバンス化——その際の機体名は通称「ガルバルディγ」ことアドバンスド・ガルバルディ——を行う予定であった。
しかし、機体の喪失により実験は、[アドバンスド・ヘイズル]へと引き継がれた。
グリプス戦役時における実機の運用は未確認だが、戦役後にトリスタン艦隊によって火星に持ち込まれ、レジオンの手によって少数が生産された。
さらに、後の火星で発生した「輝ける星」作戦時には、建機仕様に改造、運用されていた機体が、反乱軍の手によって戦闘に投入されている。
ハイザック
一年戦争後初の地球連邦軍の主力MSであるハイザックは、旧ジオン公国軍のザクⅡF2型を母体とし、AE社と地球連邦軍が共同で開発した機体である。またバックパックや脚部にはザクR型系列の設計も盛り込まれているとされる。
本機のベースとなった機体がYRMS-106 先行量産型ハイザックである。本機はT3部隊で運用試験が行われ、そのデータがハイザックの開発に反映されているほか、ハイザック・カスタムなど、他のハイザックのバリエーション機の始祖ともなった。
また、この先行量産型ハイザックとビーム・キャノンユニットを組み合わせた機体が、YMS-106+BL-85X バイザックTR-2[ビグウィグ]である。一年戦争時にもスキウレやバスとライナーなど、MSが登場するタイプの大型のビーム・キャノンが存在した。この[ビグウィグ]はそれを発展させたものであり、後のメガ・ランチャーやRX-124 ガンダムTR-6[インレ]のビグウィグ・キャノンⅡの開発に反映された。
ハイザックはトランスパックシステムによるバックパックの換装システムを備えており、高機動タイプや中距離支援タイプ、EWACタイプなど、様々な仕様で運用することが可能であった。
なお、グリプス戦役におけるエゥーゴ陣営の高性能MS投入に対抗するため、本機もアドバンスド化改修が施された。改修機は通称アドバンスド・ハイザックと呼ばれ、ハイザック飛行型のベースとしても使用された。
マラサイ
ハイザックに次ぐティターンズの主力機だが、当初はエゥーゴでの運用を想定していた。しかし、AE社の政治的判断によりティターンズへと譲渡されたという経緯を持つ。RX-107 ロゼットは本機の試験機として開発された機体で、ハイザックをベースとしていたこともあり、腕部、脚部などを中心に換装が可能である。
RX-107+NRX-005X ロゼットTR-4[ダンディライアン]では、大気圏突入ユニットの装着やMA形態における高速格闘戦性能の運用実験が行われた。この実験で得られたデータは、後のNRX-055 バウンド・ドックやガンダムTR-6[インレ]の下半身ユニット(RX-124+NRX-005-2 ガンダムTR-6[ウーンドウォート]ダンディライアンⅡ形態)の開発に反映されている。
トランスパックシステムにも対応しており、バックパックの換装によって他のアドバンスド機と同じく多様な用途に対応可能であった。さらに、アドバンスド化改修機=アドバンスド・マラサイは陸戦型マラサイ(ダイダロスユニットやグラン・ユニット)の管制ユニットとしても運用された。
ガンダムTR-1[アドバンスド・ヘイズル]
RX-121-2A ガンダムTR-1[アドバンスド・ヘイズル]は、RGM-79Q ジム・クゥエルを母体として開発されたRX-121-2 ガンダムTR-1[ヘイズル2号機]を改修した機体である。改修にあたってはRX-121-1 ガンダムTR-1[ヘイズル改]をベースとしつつ、さらに[ヘイズル改]で得たデータも反映されている。また、機体各所に装着した強化パーツの開発と運用の実験形態でもある。これは、グリプス戦役の激化に伴うエゥーゴ陣営の高性能MSに対抗するために、既存機の高性能化改修=アドバンス化構想によるものである。
本機によって得られたデータは、グリプス戦役前後において採用された地球連邦軍各機にも反映され、それぞれの機体のアドバンスド化構想に役立てられた。
バーザム
後のグリプス戦役末期におけるティターンズの主力機のひとつ。RX-124 ガンダムTR-6の開発の遅れからRX-121-2P ガンダムTR-1[ヘイズル・アウスラ]に次ぐ主力機として量産された機体で、RX-123 ガンダムTR-Sの簡易設計機にあたる。
設計段階で、[アドバンスド・ヘイズル]をはじめ、各アドバンス機によって開発された強化パーツ群——モノアイや大型のブレード・アンテナ、トランスパックシステム、腰部装甲の簡略化、膝部の大型スラスター、ハイヒール状の足部——が反映されており、機体各所に標準的に搭載されている。
グリプス戦役初期/U.C.0087
前回(vol84)では、地球連邦軍純正の主力機であるジム系MSについて解説した。今回は、一年戦争後、ジオン公国軍系の技術者や技術を吸収したアナハイム・エレクトロニクス(AE)社と地球連邦軍の協力体制のもとで開発・生産された主力機を紹介する。ジオン公国軍の優れた技術を得た結果、ティターンズ(と地球連邦軍)の運用するMSの一部はモノアイを搭載した機体となった。
また、グリプス戦役前に開発、生産、運用された機体をはじめ、紛争勃発後にTR計画で開発、使用された機体の高性能化改修=通称アドバンス機を紹介していく。