Vol.59

●TRシリーズ開発系統図

本図は、ハイザック系(バイザックTR-2)、アッシマー系(アッシマーTR-3)、マラサイ系(ロゼットTR-4)の各TR機から、ガンダムTR-6へと至る流れを示したものである。各TR機はベースとなったMSが存在しており、それらを改修することで、ガンダムTR-6に必要な機能や装備の検証や技術的な蓄積を行ったのである。このTR-2やTR-3、TR-4については、特に装備や機構の技術的検証といった側面が強く、ガンダムTR-1やギャプランTR-5については次回解説する。なお、地球連邦軍は青い機体色で、ティターンズは緑の機体色を採用していた。

RX-106 HI-ZACK ProtoType

一年戦争後、地球連邦軍が独自開発した機体で、RMS-106 ハイザックの前身機にあたる。量産仕様機よりも高性能で、開発された機体のうちの数機は水中用MSのベース機となったほか、RX-106E プロトハイザック飛行型に改装された例も知られる。

●[インレ]の構成部品の実験形態

ここで解説している各TR機は、ガンダムTR-6[インレ]を生み出すために必要な技術を確立するために開発された。[ビグウィグ]は長射程ビーム・キャノンの、[キハール]は変形や大型ユニット装着の要となるドラムフレームの、[ダンディライアン]は機動ユニットの、それぞれ運用と試験が行われた。各機の試験で得られたデータを反映することで、技術的により高度な機能が確立されるに至った。

●RMS-106 HI-ZACK

一年戦争後、地球連邦軍が接収したザクⅡをベースに開発した機体。全天周囲モニターとリニアシートを採用したほか、新素材の導入によって操縦性の向上と機体の軽量化に成功、さらに高い機動性も特徴であった。ジェネレーター出力の問題から、複数のビーム兵器の同時使用ができないといった問題もあったが、グリプス戦役においては、ティターンズと地球連邦軍の主力として運用された。

●YRMS-106 HI-ZACK EARLY TYPE(TITANS)

RX-106 ハイザック試作型をベースに開発されたハイザックの先行量産タイプで、ティターンズ・テスト・チームにおいて運用試験が行われた。本気で得られたデータが正式量産機に反映されている。

●RX-107 ROZET

アナハイム・エレクトロニクス社が開発したマラサイの試作機。マラサイと互換性を持つほか、ベースとなったハイザックとも腕部や脚部などが共通している。ジェネレーター出力の高さが評価され、[ダンディライアン]のコア・ユニットとして使用された。また、右胸部の一部と脚部を変更することで、BL-85Xを装備することも可能。

●RMS-108 MARASAI

ハイザックの発展形として試作機であるロゼットを経て、開発された主力MS。曲面を多用したシルエットが特徴だが、これは旧ジオン公国軍系の技術者が開発にかかわったためである。エゥーゴ向けのドミンゴから変更されているハイザックと比較してジェネレーター出力が高く、ビーム兵器の同時使用も可能であった。

●RMS-106C HI-ZACK CANNON

ハイザックの火力増強仕様で、バックパックを240mm キャノン砲を装備したキャノン・パックに換装している。これはトランスパックシステムに対応したもので、ジム・スナイパーⅢでテストされていたものである。キャノン砲のほかにもガトリングスマッシャーに変更することも可能。胸部には試作増加装甲ユニットを装備することもできた。

●次世代主力機開発の実験機

「TR計画」においては、[インレ]の開発や「万能化換装システム」以外に、次世代主力機の開発が含まれていた。計画の変更や遅延によって、結果は当初の予定とは異なったが、それでも得られた様々な技術は既存機の「アドバンス化構想」へと受け継がれた。

●RX-107 ROZET LAND BATTLE RENFORCED TYPE

ロゼットの高速戦闘形態で、腰部にホバリング・スカート・ユニットを装備している。本ユニットには、熱核ジェット・エンジンが搭載されており、その大推力によって高速でのホバー移動が可能となっている。また、ホバーという移動方式をとるため、プロペラントの消費が少なく、作戦行動時間が延長されるという利点もある。

●RMS-108 ADVANCED MARASAI

既存機に「TR計画」の技術をフィードバックすることで、高性能化を図った「アドバンス構想」に基づいて近代化改修がされさたマラサイ。トランスパックシステムへの対応によってバックパックの換装が可能で、多様な任務に対応することが可能であった。また、原型機と比較して、頭部や肩部、胴体など、装甲形状なども変更されている。

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ビーム・キャノンを使用しない場合は、上図のように折り畳んで携行する。巡航形態ともいえる形態である。スラスター・ユニットと推進器のプロペラントタンクが一体化しているほか、着艦時などに機体固定するためのクローやランディングギアを備えている。本ユニットは独立した機器で、ユニットの換装も容易となっている。

●RX-106E HI-ZACK with Flight Unit

ハイザック試作型をベースに開発されたMSで、機体各所にガンダムTR-1[アドバンスド・ヘイズル]で培われた技術が投入されている。特にバックパックには、マルチ・コネクター・ポッドを採用、さらにフレキシブル・ブースターを装着することで、より高度な機動性を発揮した。武装には長銃身型ビーム・ライフルが用意された。

●RX-107+NRX-005X ROZET TR-4 (DANDELION)

ロゼットに大気圏突入用ユニットを装着した形態で、MS形態ではMA形態でのクローアームが脚部ユニットを構成する。これは地上での運用が主となる本機の大重量を支えるためである。ただし、歩行には向いておらず、ホバー移動などを移動手段とする。また、本機はMA形態、大気圏突入形態、飛行形態、MS形態の4形態へと変化するが、これは変形でははく、運用時に状況変化における形態移行にあたる。こ可変機とは異なり、形態を使い分けるという概念とは異なっている。
本機では、MA形態における高速格闘戦性能の運用実験などが行われた。得られたデータは、ガンダムTR-6[ウーンドウォート]ダンディラインⅡ形態の開発に役立てられた。

●YRMS-106+BL-85X BY-ZACK TR-2(BIG-WIG)

ハイザック先行量産タイプとビーム・キャノンユニットを組み合わせた機体で、ティターンズ・テスト・チームによって運用試験が行われた。大型ビーム砲は推進器などと一体化しており、ハイザックがそれを装着する形となる。本ユニットにはハイザックの胴体部が取り付けられており、これが「バイザック」の名称の由来となっている。ビーム砲台としての機能に特化したため、運用時には随伴機による護衛が必要となる。本機の運用データは、[インレ]のハイパー・ロングレンジ・ビーム・キャノンの開発に役立てられた。

●NRX-044 ASSHIMAR

地球連邦軍が開発した可変MA。MA形態時には円盤状となるが、リフティング・ボディ構造によって高い飛行性能を発揮した。この変形機構に着目したティターンズは本機を接収、改修を施して[キハール]を開発している。

●NRX-044 ASSHIMAR (BALCK HARES)

ティターンズ内の特殊チームである「ブラックヘアーズ」が使用したアッシマー。濃紺の機体色が特徴だが、所属部隊を偽装するため、「ティターンズ・テスト・チーム」のマーキングが施されている。地球で実施された、いくつかの作戦に投入されたが、特に強化人間人格OSである「BUNNyS」の開発を主目的とする「3号計画」での運用が特に知られている。

●NRX-044(R) PROTOTYPE ASSHIMAR TR-3 (KEHAAR) SPACE TYPE

実用レベルの可変機構に着目したティターンズが、アッシマーを徴用し宇宙用に改造した機体。MA形態のほか、脚部推進ユニットのみを展開した中間形態をとることが可能である。本機に搭載されたドラムフレームとそれを用いた可変機構は「TR計画」における機体開発に大きな影響を与えた。

●RX-124IL GUNDAM TR-6 (WONDWART) INLE FORM

[ファイバーⅡ]と[ダンディライアンⅡ]が合体した形態で、それぞれの管制ユニットとして[ウーンドウォート]が用いられている。「TR計画」の集大成となる機体であり、その戦闘力から「決戦兵器」「戦略兵器」とされる。極めて複雑なシステムのため、必要となる要素を各TR計画機に分散させて実験を行い、そこで得られたデータによって開発に漕ぎつけた。

●NRX-044 PROTOTYPE ASSHIMAR TR-3 (KEHAAR)

アッシマーTR-3[キハール]宇宙仕様を重力下用へ換装した機体。改修にあたってはアッシマーの開発データをベースとして、下半身を脚部ユニットに戻している。また腰部には垂直上昇用の補助ユニットとしてスカート・ユニットを装備している。外観こそアッシマーに近いものとなっているが、機能や装備などの一部は異なっている。

●RX-124 GUNDAM TR-6 [WONDWART]

次期主力機開発の完成系となるMS。ガンダムTR-6の各形態の素体となる機体で、装備の換装によって様々な任務に対応できる。ジェネレーター出力や推力に優れ、MA形態では大気圏内の単独飛行が可能である。

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