飛行禁止令が布かれた火星において、宇宙用の装備は使用不要となった。しかし、戦力の拡大を迫られたジオンマーズは、これらの装備を改修し、自軍の装備として配備した。ガ・ゾウムマリンタイプやガザM(マリンタイプ)などがそれにあたる。そして、このズサブースターもこうした経緯で開発されたオプション装備である。元のズサブースターと同じく、大推力で一気に加速して敵陣に到達、装備した多数の火器を一斉射したのちにブースターを切り離し、MS単体で近接戦闘を行うという運用法を想定していた。ブースターの構造は、ガザ系と同じくMP-02A オッゴから発展したものである。ドラムフレームを中心に、前方にはコクピットと機首センサー、後方に推進器、左右にはミサイルコンテナなどの大型兵器の装着部が設けられている。このタイプは、背面中央部にバラストタンクを備え、整流カバーや魚雷ポッド、推進器の各部が水中用に改良されており、その外観と機構は後のZMT-D15M ガルグイユと酷似している。インレ強奪作戦——輝ける星作戦においては、ティターンズ残党が持ち込んだRGM-79Q ジム・クゥエルを改造し、その背部にズサブースター・マリンタイプを装着。ジム・クゥエル本体にも、コクピットの気密性を守るためにオッゴの外装を装備している。ジオン残党を狩る者と狩られる者が手を組み、火星の明日を取り戻そうとする姿を象徴するような奇妙だが力強い外観。ティターンズがジオンの未来を背負い、ジオンがティターンズを未来へと運ぶ——。
TR計画機は、そのコンセプトゆえにパーツの分離と変形、そしてその換装状態を保持する機構が必要不可欠な要素であった。これはドラムフレームの能力を担保としており、軍事兵器に搭載可能なまでの技術的成熟と高性能化のために、TR-3[キハール]で開発と実験が行われた。TR-6の中核を成すプリムローズはそれ単体で運用可能なモビルポットに分類される。さらに、ドラムフレーム部にフルドドをパーツ換装することで、戦闘支援をはじめ、サブアームを用いた作業機械化にも対応する。
両肩の各種武装を取り外すことで、フレーム部が露出する。ここにミサイルコンテナをはじめ、各種武装を換装し、保持できる。このマリンタイプでは、魚雷ポッド、ビーム・ショットライフル等を装備。また、側面のスラスターの配置にはオッゴの面影が見受けられる。
宇宙世紀の黎明期における宇宙開拓において、月やスペース・コロニーといった宇宙植民地の建設、火星や木星等の外惑星圏への進出には多くの作業機械が使用された。それらは今日、「モビルワーカー」や「モビルポッド」と呼ばれる作業機械群で、ミノフスキー粒子散布環境下での有視界戦闘を前提に開発された人型兵器=モビルスーツとは、その誕生経緯や用途、機構などが大きく異なっている。その中でも「ドラム式フレーム機構(ドラムフレーム)」は、作業機械に端を発する構造と言える。ドラムフレームは作業機械の関節部に広く使用されている技術である。単純な構造に起因する堅牢性や動作の安定性、高い耐久性という作業機械に求められる要素を満たすものであった。それは、高コストかつ複雑な構造、調整や整備といった恒常的なメンテナンスが必要な軍用兵器とは趣が異なるものと言える。このドラムフレームは、最初期の作業機械であるキャトルの腕部に既にその構造が見て取れる。さらに、モビルポッドであるオッゴやそこから発展したガザ系の構造にも同様の技術が採用されている。これは、戦時下や限られた資源の中で、安価かつ堅牢な兵器の必要性から生まれたものである。この構造は後のサンドージュの腕部にも見受けられる。このことからも、人が宇宙に暮らす限り、その生活を維持するためには作業機械は必要不可欠な存在であること、そしてドラムフレームはそれを支える技術のひとつであることが理解できる。
一方で優れた民間技術の軍事転用の例は枚挙にいとまがなく、ドラムフレームもその例に漏れることはなかった。特に変形合体時に関節に大きな負荷がかかる可変MSや、巨大な追加兵装を保持する機体にとって、ドラムフレームは極めて有用な構造として転用された。一例を挙げれば、前述のガザ系の一種であるガザCの腕部に搭載されたドラムフレームは、独特の大型火器ナックルバスターの懸架を可能とした。また、作業機械をMS化した故に抱えていた当機の可変機構の脆弱性も、後継機となるガ・ゾウムで採用された部のドラムフレームにおいて解消され、MA形態への変形機構と背部へのハイパー・ナックルバスターの展開機構の両方を支える重要な役割を担った。連邦軍においても、初の本格的可変MAであるNRX-044 アッシマーの腰部に使用されており、大気圏内での変形と飛行を支える重要な機構となっている。その構造の高い信頼度は、機体上部に1機のMSを搭載し、その重量を支えての飛行が可能なアンクシャに受け継がれている。さらに巨大な装備を保持す機構の一例として、折り畳んだ巨大なタイヤ型のオプション装備を背負ったまま戦闘を行うブルッケングの腰部分が挙げられる。そしてTR計画の中核であるTR-6においても、ドラムフレームが重要な役割を果たしている。本機構は、TR-6中心核の背骨部分をはじめ、パーツ換装が頻繁に行われる全身の各結合部を保持するために積極的に活用され、「万能化換装システム」を文字通り「支える」機構となった。
一年戦争末期にジオン公国軍が開発したモビルポッド。MS戦力の不足を補うための急造兵器で、宇宙開拓に使用された作業用ポットをベースとし、戦線の移行に伴う不要となったザクⅡJ型のジェネレーターを流用するなど、生産性を重視した構造が特徴である。地球連邦軍のRB-79 ボールもまた、似たような経過でSP-W03 スペースポットから戦闘用に改修されたモビルポットであった。胴体部左右端の大型のドラムフレームは機体における最重要部位で、360度の回転が可能であり、そこに大型のマニピュレーターを備えている。作業性能が高く、物資の輸送といった一般作業にも対応する一方で、この腕を用いた格闘を行うことも可能という、柔軟な運用性を誇った。両端のアタッチメントにはザク・マシンガンをはじめ、各種兵装が装着可能である。フレームの後方には主推進器が配置され、フレームが回転することで推進方向を自由に変化させることが可能。これにより、高い機動性と運動性を発揮したMA-05Ad ビグ・ラングと共同運用され、それはインレとキハールⅡの関係を彷彿とさせるものであった。ジオン公国の敗戦後、オッゴはその残党組織アクシズの手に渡った。アクシズの拠点となる小惑星アクシズ、その再開発のための作業用モビルポッドであるガザAの開発に影響を与え、それをベースに戦闘用に改修したガザC以降のMS開発へと繋がっていった。このことからもオッゴが、アクシズの発展と軍備拡大、ひいてはジオンの再興に多角的に貢献したことがわかる。