Vol.28

[宇宙移民を支える機械]:3 万能軸受け

オッゴの胴体の両端部に設けられたドラムフレームは、同機が建設機械より発展したことを示す特徴的な部位である。フレームの回転を利用し、接続された大型アームと主推進器を自由に動作させることが可能。一般的にドラムフレームは、駆動のための原動力を発生させるコアユニットを中心として、その周辺を複数枚の円盤状のレールが囲む構造である。レールの表面に接続されたパーツを強固に保持し、360度自在に回転させることが出来る。一方で、接続パーツの着脱や交換が容易で、レール切り替えでユニット同士の位置を自在に変更できる互換性の高さなどを特性とする。こうしたドラムフレームは「宇宙世紀の万能軸受け」とも呼ばれる。名称の元となった「軸受け」とは、古代エジプトのピラミッド建設に始まり、旧世紀において様々な工業製品に用いられた「ベアリング」を差す。ベアリングとは、軸などを支持する機械で、回転や往復運動を行う相手部品に接し荷重を受ける役割を担う。ボールや流体(機体やオイルなど)が用いられ、その構造によっていくつかの分類がなされる。回転部位がある機器には必ず存在し、その重要性から「機械産業の米」と呼ばれる。その用途は様々な日用品をはじめ、産業機械、砲塔などの軍事用品まで多岐に亘る。その重要性から、製造工場は旧大戦時には攻撃目標となり、激しい爆撃にさらされることも多かった。ドラムフレームは、構造的な面に加え(汎用性の高い回転軸式の関節)、その周辺を取り巻く状況といった象徴的な面でも、ベアリングの延長に位置する。つまり、旧世紀の「軸受け」と同じく、ドラムフレームもまた宇宙世紀を生きる人類の生活を支える必須の機械であり、これが「宇宙世紀の万能軸受け」と呼ばれる所以でもある。なお、このドラムフレームの一大生産地であり、シェアブランドとして火星のアルカディアプラントが特に知られている。また、その生産力は火星サイドAの独立自治の一部を担うほどである。火星産のドラムフレームは特に堅固な構造が特徴で、それは火星特有の鉱石に由来するとされる。ガンダリウム合金を構成するものとも言われるが、企業秘密として詳細は明らかにされていない。ジオンマーズの統治下では、戦乱が一時的な技術の衰退を招いた。しかし、レジオン建国後、総帥であるアリシアは国力増強のために国民に無理を強いてまで、その増産と輸出を進めようとている。

[AMX-001 GAZA-A] ガザA(ジオンマーズ仕様)

一年戦争に敗れ、アステロイド・ベルトに落ち延びたドズル派ジオン残党軍(アクシズ)は、拠点となる小惑星基地アクシズやモウサの整備、軍備拡張のため作業用MSを開発した。それがガザタイプである。逼迫した状況にあったジオン残党軍は、ガザタイプの開発にあたって堅牢な設計と低コストでの大量生産が可能という条件を課した。これを満たすために、開発陣は似た条件での実績を持つモビルポッド、MP-02Aオッゴの設計を参考に開発を進めたのだった。本機は、剥き出しだったセンサーのモノアイ化をはじめ、設計のベースとなった原型機=オッゴから受け継いだ両肩のドラムフレームを保護するためにシールド状のバインダーが装備された。また、両腕のクローアームは作業の効率化を図るために大型化されている。なお、このクローアームは脚部としても使用される。全体的に一年戦争末期の急造兵器であったオッゴに比べ、各部のパーツは時代と運用に即した進化を遂げている。その後ガザタイプは、作業用MA形態に特化した本機の他に、人型タイプ等の試作型の開発を経て、それらを可変機として統合、兵器化したC型以降の機体へと発展していった。そのため本機は、後に開発されるAMX-003ガザCやAMX-006ガザDのMA形態と酷似したシルエットを特徴とする。

[水中型への改良]

ガザA設計時に参考にされたオッゴの胴体構造は、耐圧性・気密性に優れた形状であった。そのため水中型への改良に適していた(現に一年戦争当時、オッゴ系の水中仕様のモビルポッドも存在し、ザク・マリンタイプと共に海中作業にあたるなどの活躍を見せた)。ガザMやガ・ゾウムM(マリンタイプ)も同じく、ガザAタイプの胴体部品を使用することで、水中での気密性を保っている。なお、指揮官(猛牛コルト専用)機は、さらなる改良が施されており、ズゴック系水陸両用MSの胴体形状を採用、より高い気密性を確保している。輝ける星作戦においては、格闘戦に優れたガ・ゾウムM部隊は河辺の氷山に上陸し、陸沿いに進軍。一方、水中戦に特化したヘリオス・マリナーとガザM部隊(ホシマル機、コルト機も随伴)は、水中から侵攻。水上と水中の二方面からパイプライン沿いに地下氷河秘密基地の深奥に設置された発電施設の水門を目指した。そして、さらにその奥には完成間近のインレが鎮座する——。

[AMX-003M GAZA-M] ガザM(マリンタイプ)

アクシズと連携を取り火星を支配したジオンマーズ(キシリア派ジオン残党)においても、ガザAは火星宇宙港の整備や拠点の軍事要塞化などのために生産、使用されていた。ジオンマーズ仕様機では、設計を共有しつつも使用環境の違いによる内装部品の調整が施されている。その残機をベースに水中用に改良した機体がガザMである。レジオンの地下氷河秘密基地に潜入し、同基地で建造されているインレを奪回するために製造された、水中戦闘に特化した機体で、人型への可変機構を排しMA形態でのみ運用される(クローアームを脚部として使用することで陸上での歩行は可能である)。フレキシブルに可動する両肩のドラムフレーム構造を受け継ぐと同時に、左右のアームはAMX-006ガザDのものに換装されている。肩部のバインダーもガザDのものを改良したタイプで、大型ミサイルポッドや水中用の推進器を搭載する。頭部センサー類も水中用に変更され、胴体中央下部には、EMS-05アッグ用のオプションだった4連装ミサイルランチャーを装備(同武装は、ズサ・ブースターを装備したジム・クゥエルも右腕に装着する)。戦闘方法はMA-05ビグロやその水中派生機MAM-07グラブロ系のMAと同じく、高速で敵に急接近しクローで攻撃を加えるという一撃離脱戦法を採る。汎用作業機械であるガザAには、ドラムフレームの恩恵により換装可能な用途別のオプション装備が存在し、こうした水中用への改造も容易であった。他にも巨大クレーン搭載機や、中には武装を施し移動砲台として使用された機の例もあった。