Vol.55

◯拠点攻略用MA

一年戦争のある時点まで、ジオン公国軍は地球連邦軍の拠点であるジャブローの攻略を目指していた。コロニー落としもそのための手段だったが、それとは別に攻略用機動兵器の開発も行われた。そのひとつがMA-08ビグ・ザムである。ビグ・ザムはジオン公国軍が開発したモビルアーマーのひとつである。量産化を想定しており、多数のビグ・ザムを地球に降下させることで、敵の拠点であるジャブローを攻略することを目的としていた。大型メガ粒子砲をはじめ、多数のメガ粒子砲、さらにはIフィールド・ジェネレーターを備えるなど、極めて強大な攻防力が与えられており、ソロモン防衛戦では、単機で艦隊を撃破するほどの戦闘力を発揮した。そして、後年、ジオン系組織においてビグ・ザムのコンセプトを継承した機体が開発されることとなる。ネオ・ジオン(アクシズ)では、ビグ・ザムのコンセプトを引き継いだ機体として、AMA01Xジャムル・フィンを開発。ビグ・ザム以上の大型機として建造されていたジャムル・フィンだが、戦局の悪化に伴い、未完成のまま小型MAへと改修され、戦線に投入された。急造機とも言える状態だったが、その高い機動性とハイ・メガ・キャノンによる高い攻撃力、専用ブースターによる航行能力などを有していた。戦争末期に投入されたジャムル・フィンは、エゥーゴの中核部隊であった「ガンダムチーム」を翻弄するほどの活躍を見せており、その性能のほどをうかがい知ることができる。第一次ネオ・ジオン戦争時、アクシズの地球降下に協力するため、ジオンマーズでは独自にジャムル・フィンの開発を続行した。そうして完成した機体がビグ・ザムールであり、本機はジャムル・フィンの完成形とも称される。なお、このジオンマーズの設計案の他に、アクシズで想定されていた本来の完成形の設計も存在する。アクシズの地球降下作戦は当初、大気圏外からMS部隊を地球に降下させたのち、重要施設を制圧することを目的としていた。しかし、ミノフスキー・クラフトを搭載した艦艇による直接降下が可能となったことで、火星側が用意していた降下用MS部隊は投入されなかった(この部隊が後年のジオンマーズ残党による「インレ奪回作戦」で活躍することとなる)。そして、ハイ・メガ粒子砲を始めとした大型火器を胴体部に複数搭載する設計は、はるか後年の火星におけるジオン残党組織オールズモビルが開発したOMAX-01グランザムにも継承されていった。大気圏外から敵拠点へと降下し、制圧するというコンセプトを持つ機体は、ジオン系組織以外でも開発されている。エゥーゴでは「Z計画」で開発されたMSZ-006Zガンダムが知られる。WR形態で大気圏突入が可能な本機は、ジャブロー降下作戦やキリマンジャロ基地降下作戦に投入(後者は偶発的な出来事によるものだったが)され、多大な戦果を残している。一方ティターンズでは、「TR計画」において同じ役割を担うTR-6の拠点攻略任務用の形態として[ダンディライアン]が開発された。このように少数勢力による敵拠点へのピンポイント攻撃は、成功した場合は形勢を逆転させる以上の効果を持つ。そして、この任務に対応するために機動兵器の開発と、それを用いた作戦は、物量に勝る地球連邦軍への対抗手段として、引き継がれることとなった。

◯咆口機関部

ビグ・ザムールは、突出した出力を誇る拡散/収束偏向式ハイ・メガ粒子砲を上下に2門搭載する。このレイアウトは地球連邦軍の可変MAであるサイコ・ガンダム系に酷似している。これは、対決を想定した設計の結果である。砲口の周辺に備えた4枚の偏向ブレードは可動式で、ビームの拡散率を調整する。ジャムル・フィンではこのハイ・メガ・粒子砲1門を胴体中央部に使用。さらに偏向ブレードの可動部分を生かして簡易式のアームへと換装している。このため、ビグ・ザムールの砲口機関部は、ジャムル・フィンの胴体部を縦に2機収納したレイアウトになっていると言うこともできる。

AMA-01S[BYG-ZAMURU]]ビグ・ザムール

ビグ・ザムの後継機であるビグ・ザムールは、主兵装として胴体部中央に2門のハイ・メガ粒子砲を装備。股間部に折り畳んで収納された砲身を併用することで、長距離砲撃にも対応する。さらに胴体上部にはIフィールド・ジェネレーター、胴体左右側面には収納式の拡散メガ粒子砲を多数搭載するなど、武装レイアウトもビグ・ザムと同じ、かつアップグレードされている。また、背部には高い機動力を有する大型ブースターが配され、頭部の左右には4連装ミサイルを装備するなど、MA-05ビグロの設計からフィードバックされた装備も見られる。胴体前方には伸縮式のクロー・アームを内蔵しており、MSとの近接戦闘にも対応可能となった(これはRX-78ガンダムとの戦闘でビグ・ザムが撃破されたことの戦訓によるもの)。脚部も逆関節の鳥脚状になっているが、これは重力下での機体保持に加え、高機動MAーークローを折り畳むことで、地上での走破性を損なわずに高機動形態へと変化するーーへの性能傾向の変化に伴う重心変化に対応したものである。なお、ビグ・ザムの欠点でもあった20分という稼働時間の制限も解決されており、長時間の運用が可能である。かつてのビグ・ザムは、複数のパイロットによって制御されたが、本機はニュータイプ(強化人間)による単独での操縦が想定されている。

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