Vol.55

◯多銃身機関砲装

このダブル・ガトリングガンは、リーベン・ヴォルフ・カスタム専用の装備である。主にIフィールド下での護衛任務時に装備された。こうした大型の機関砲──ガトリングガンは、その重量や取り回しなどから一般的な装備とは言い難い。しかし、ビーム兵器が普及する以前の一年戦争において、ジオン公国軍のMSを中心に数々の装備例が知られる。その中でもラサ秘密工場基地攻防戦におけるMS07B3グフ・カスタムの戦果などは特に有名である。シールド・ガトリングを装備した本機は、パイロットの力量もあり、基地周辺の鉱山都市に配備された砲撃戦用MSを撃破、さらにその護衛の任に就いていたMS部隊を単機で翻弄した。また、戦後もジオン残党勢力が運用したMS-21C ドラッツェなど、ビーム兵器が運用できない機体にガトリングガンを装備させることで火力を強化するケースが見られた。リーベン・ヴォルフ・カスタムのダブル・ガトリングガンもその系譜に連なる兵器である。機体の全高に匹敵するほどのサイズを持つ兵器だが、それを搭載、運用が可能なのは大型機である本機の積載能力があってこそであった。対する地球連邦軍でも少数だが同様の兵器が運用されている。それがRX-78-5 ガンダム5号機である。ジャイアント・ガトリングを主兵装する本機は、メガ・ビーム・ランチャーを装備するガンダム4号機との連携──ビームランチャーのチャージの間、弾幕の展開により4号機を護衛など──を想定していた。こうした任務形態は、ガトリングガンの使用方法としても、リーベン・ヴォルフ・カスタムと似通っている。Iフィールド内での護衛という限定状況下、ビーム兵器が一般化したからこそ、それを逆手にとったこの装備は絶大な効果を上げた。MSの装甲材の発展もあってガトリングガンが使用されることは少なくなった。しかし、それでもはるか後年、F90D ガンダムF90デストロイド・タイプやザンスカール帝国製MSの標準的な武装のひとつとしてガトリングガンは使用され続けている。その理由として、標的によっては確かな威力を発揮すること、そして技術的な信頼度などが挙げられる。このようにガトリングガンは、MSの携行兵器としてミサイルやバズーカ同様、一定の需要が存在し続けたのである。

AMX-014Rs [REBEN-WOLF CUSTOM MUNSUKII USE] リーベン・ヴォルフ・カスタム/ムンスキー専用機

リーベン・ヴォルフの特徴として、任務に応じた装備を選択できる点が挙げられる。この機体はAMA-01S ビグ・ザムールの随伴機として専用にカスタムされた仕様である。ビグ・ザムールは拠点攻略用MAとして開発された機体で、かつてジオン公国軍が開発したMA08 ビグ・ザムの後継機に当たる機体である。機体や武装の構成は原型機であるビグ・ザムと同じだが、それよりもさらにアップグレードされているほか、MSとの近接戦闘にも対応した装備を追加。また、防御システムとしてこの時代の大型MAの標準的な装備であるIフィールドを採用している。Iフィールドはミノフスキー粒子によって形成される力場で、ビーム兵器に対して高い防御力を発揮する。しかし、実体弾兵器には効果がないため、敵MSやミサイルなどの実体弾兵器への防御手段が必要となった。そのひとつが随伴機の存在であり、ビグ・ザムールの随伴機がこのリーベン・ヴォルフ・カスタムである。リーベン・ヴォルフ・カスタムは、ビグ・ザムールに随伴し、実体弾兵器からの護衛や肉薄したMSからの近接攻撃に対応する役割を担う機体である。主にIフィールド下での活動となるため、主兵装として巨大な2連式のガトリングガン──ダブル・ガトリングガン──を装備。弾幕を展開することで敵の接近を阻むほか、ミサイルなどの迎撃も行う。そのため、バックパックには大量の弾薬を装填したマガジンを装着する。この大型武装による重量の増加に対応するために、肩部にはドーベン・ウルフと同型のスラスターを装備。腰部にはAMX-011 ザクⅢ用に設計されていた「エクステンションブースター」を装着することで、機動力を補っている。指揮官機でもあるため、頭部には大型のアンテナを備える。なお、胸部メガ粒子砲はIフィールド下では使用できず、デッドウエイトとなるため、取り外されている。本機は、ジオンマーズによる火星降下作戦で本格的に投入された。その際、チェスター艦隊に合流したアクシズ勢力の代表であるムンスキーが搭乗、ビグ・ザムールの護衛の任に就いた。ちなみに、大型MAと護衛用MSの関係は、TR計画におけるRX-123 ガンダムTRS[ラブスカトル]と[エルアライラー]と同じである。なぜなら、[ラブスカトル]やそのベースとなった[ダンディライアン]は、「対抗兵器としてのティターンズ版ビグ・ザム(TR-S ビグ・ザム形態)」を開発コンセプトとしていた。そのため、強大な火器と巨大なクローによる高速戦闘、大気圏突入によるピンポイントの拠点攻略といった運用法や、実体弾や近接戦を弱点とするところもビグ・ザムと同じであった。こうした傾向は随伴機の装備形態が似たものとなることを意味していた。それは、[ラブスカトル]の随伴機である[エルアライラー]が、マシンガンやミサイル、近接戦闘用ブレードアームなど、装備した数多くの実体弾兵器を使用して、護衛任務を行うことからも理解できる。

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