庵野秀明監督による企画構想から6年――“全人類に向けて放つ”『シン・仮面ライダー』が発表された生誕50周年企画発表会見レポート

取材・撮影・文●キャプテン住谷

2021年4月3日(土)、50年前に『仮面ライダー』の第1話が放送開始となったこの日、「仮面ライダー生誕50周年企画発表会見」が行われました。昭和・平成・令和と、3つの時代をまたぐことになった国民的ヒーロー・仮面ライダー。その大きな節目である「50周年記念」を冠した企画がいくつか進行中であり、4月3日には『仮面ライダーW』の正統続編であるコミカライズ作品『風都探偵』のアニメ化と、原作者・石ノ森章太郎先生が直接関わった最後のTVシリーズ『仮面ライダーBLACK』のリブートが会見に先駆けて発表されていました。本稿では、各企画を担当する東映の敏腕プロデューサーたちが登壇した会見の模様をレポートしていきます。

 

まずはじめに、東映の代表取締役社長・手塚治さんから挨拶がありました。手塚さんは「人類は3種類に分けられる。仮面ライダーを現行で観ている人、かつて楽しんでいたけど離れてしまった人、そしてまだ観たことがない人です」と話し、これから発表する企画は「人類みな等しく、仮面ライダーを楽しんでもらおうと考えたものです」と、まるで悪の組織の首領のような語り口で注目を集めました。

 

ここで、『風都探偵』のアニメ化が改めて発表。担当するテレビ企画制作部長・塚田英明さんは、「(風都探偵は)もともと映像作品だったダブルを漫画にすることで、新たな発見と進化があった作品だった。それをアニメという形態にすることで、また新たな発見と進化を実現させたい。この作品をアニメにしたくてウズウズしていたクリエイターたちと制作進行中です」と語り、「様々な人に楽しんでもらえるに違いない」と自信に満ちたコメントで締めました。

 

続く東映取締役・コンテンツ事業部門担当の吉村文雄さんからは、1987年に放送開始となった『仮面ライダーBLACK』のリブート作、『仮面ライダーBLACK SUN』が改めて発表されました。“原点回帰”がコンセプトにあり、親友と戦うことになるという悲哀に満ちたストーリーが、未だに多くのファンの心を掴んで離さない『仮面ライダーBLACK』。『孤狼の血』などで知られる白石和彌監督がメガホンをとることも発表されており、2022年の春にそのベールを脱ぐ予定であるとのこと。

 

そして、同じく東映取締役・テレビ第二営業部部長の白倉伸一郎さんからは「最大限の、全人類に向かって放つ」企画、『シン・仮面ライダー』が発表! 言わずとしれた庵野秀明さんが『シン・ゴジラ』ぶりに実写映画でメガホンをとることになり、脚本も担当するとのこと。アニメ監督の前田真宏さんが手がけたイメージイラストとともに、石森プロの代表取締役社長・小野寺章さんと庵野監督からのメッセージや、本作が2023年の3月に公開予定であること、また制作にあわせて何らかの出版企画も検討中と明かされました。

 

白倉さんからは、発表を総括して「50周年企画はこれだけではない。夏の映画や現行の『セイバー』、そのほかイベントや商品展開など、様々な分野にわたって50周年という冠がつくことになる」と、これだけでは終わらないことが示唆されました。また、50周年企画である作品の公開が2022年や2023年へとずれ込んでしまうことについては、やはり新型コロナウイルスによる影響が大きかったと説明しつつ、「逆に言えば、この50周年というお祭りが23年まで終わらないということです。心を尽くし、手を尽くしてやっていきます」と語りかけました。

 

会見終了後には、現地に集まったメディアからの質疑に応える場面もありました。

 


――『シン・仮面ライダー』の企画経緯は?

白倉さん:6年前にさかのぼります。『『シン・エヴァンゲリオン劇場版』のやりとりを通して庵野監督と親密になった人間が、「こういうのはどうだ」と企画メモを受け取ったことがきっかけです。

 

――海外のファンは発表された作品をいつ頃見られますか?

塚田さん:『風都探偵』は日本と同じく2022年の夏。欧米はファニメーション(アメリカのアニメ配給会社)を通して、そのほかは調整中です。

 

吉村さん:まだ未定ですが、2022年の春には同時に見られるよう調整したい。

 

白倉さん:『シン・仮面ライダー』も、日本映画としては珍しいかも知れないが同時公開を目指しています。

 

――『仮面ライダーBLACK SUN』の監督に白石和彌さんを選んだ理由は?

吉村さん:話の骨子として、親友で兄弟同然の2人が戦う運命になるという悲劇がある。その関係にフォーカスし、苦しみや人間性に突っ込んだ作品にしたいと考えた時、どういう人にお願いしたら新しく生まれ変わるかを重視しました。

 

――『シン・仮面ライダー』はどのような作品になりますか?

白倉さん:庵野監督は5つ歳上。若い頃からその背中をずっと追いかけてきた。クリエイターとしてすごく飛躍されてて、仮面ライダーに愛着を持ってくれているのを嬉しく思っています。そんな世界的クリエイターと仮面ライダーが結びつくのは、幸運、僥倖です。愛に満ちた、初めて仮面ライダーを見た人でも楽しめるエンターテインメントになるはず。1日も早く見てみたいですね。

 

――“仮面ライダー”の魅力とは?

塚田さん:東映の辞書には「悪から派生した正義です」と書いてある。そんな、他のヒーローと違って影を負っている、深いテーマが魅力なのでは。

 

吉村さん:他のヒーロー作品と違って、『仮面ライダー』は本当に怖かった。シリーズをずっと見てきて、東映に入社したその年に『仮面ライダーBLACK』が放送された。そのリブート作を担当することになり、運命的なものを感じています。

 

白倉さん:私も50年前のこの日、吉村と同じようにテレビにかじりついて『仮面ライダー』の第1話を見ました。世間的には、一文字隼人の変身ポーズとともに、爆発的に人気になっていったような印象がある。陰と陽がないまぜになっている、珍しいシリーズだと思います。だからこそ、人間ドラマを追うことも、子ども向けに明るい作風でやることもできる。手塚も言っていましたが、「全人類が楽しめる」ものすごい器です。


 

会見を経て、まず率直に思ったのは「“庵野監督”と“仮面ライダー”の結びつきが意外だった」ということです。特撮好きとして知られる庵野監督ですが、やはり大学時代に映画を自主制作したエピソードがある『ウルトラマン』の印象が強く、またその影響を色濃く受けた「エヴァンゲリオン」シリーズのイメージもあり、仮面ライダーのような“等身大のヒーロー”についてどのように考えているのかを深堀りする機会は、これまで比較的少なかったように思います。庵野監督の仮面ライダーに対する解釈、そしてそれをどのように再構築してくれるのか――『シン・仮面ライダー』を通してそれが見られるかと思うと、純粋に楽しみです。

 

もうひとつ。『シン・ゴジラ』『シン・エヴァンゲリオン』『シン・ウルトラマン』と、すっかり庵野監督の代名詞となった感のある“シン”というワードですが、これが仮面ライダーにかかると、どのような意味が生まれるのでしょうか。新?真?その答えは本編を見るまで分からない(もしかすると、見ても分からないかも知れない)ですが、過去に『真・仮面ライダー』という作品が存在していただけに、これまでの“シン”とはまた違ったニュアンスが生まれることは間違いなさそうです。ひとりの仮面ライダーファンとして、『シン・仮面ライダー』の動向を見守りたいと思います。

(C)石森プロ・東映

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