アフレコが完了した『ガンダムSEED FREEDOM』は「劇場作品らしいカタルシスがある」シン・アスカ役の鈴村健一さんが登壇した『ガンダムSEED DESTINY』HDリマスター上映記念舞台挨拶レポート

更新日:2023年10月13日 18:38

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

取材・撮影・文●キャプテン住谷

「機動戦士ガンダムSEED」シリーズ最新作であり、ファン待望の劇場版となる『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』の公開が2024年1月26日(金)に決定したことを記念して、TVシリーズの特別総集編「スペシャルエディション」のHDリマスター版が全国50館以上の劇場で上映中です。2023年10月11日(水)には、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』よりシン・アスカ役を演じた鈴村健一さん登壇の舞台挨拶が丸の内ピカデリーにて行われました。この記事では、集まったファンに向け鈴村さんがアフレコ当時を振り返りながら展開したトークショーの模様をレポートします。

 

この日MCを務めたのは、ニッポン放送アナウンサーの吉田尚記さん。「私がここにいるということは、丸の内ピカデリーは特殊部隊の潜入を許したということになります」と、自身が『SEED DESTINY』に出演している背景を絡めたジョークで場の空気を掴んでいきます。前説もそこそこに鈴村さんを呼び込む段になると、「シン・アスカ、コアスプレンダー、行きます!」の声とともに鈴村さんが登場。大きな拍手で迎えられました。

 

シン・アスカ役に抜擢される前、『SEED』のオーディションに参加していたという鈴村さんは「落ちてしまって悲しかったんですけど、その『SEED』が大ヒットして余計悲しかったです」と吐露。しかしそのオーディションが縁となり、福田己津央監督から直接電話でシン・アスカ役をやらないかとオファーがあったといいます。鈴村さんは「僕が世の中の誰にも知られてない頃、『GEAR戦士電童』という作品で監督とお仕事させていただきました。監督はその現場での僕を見てくれていて、縁を大事にしてくれていたのだと思いました」と語りました。また「声優としてのキャリアは19歳くらいの頃からありますけど、10年くらいやってきて“仕事を見てもらえた”と実感できたのはその時が初めてで。20代の最後に任された大役でした」とシン・アスカという役に対する思い入れを明かしました。

「シン・アスカというキャラクターを今振り返ると?」と話題が振られた際には、「難しいですよね。あの頃はとにかく苦戦して大変だったなと。でも今見ると、とってもかわいいんですよ。あとは、もうちょっとみんな褒めてやれよって!」と鈴村さん。客席から笑い声が上がるなか、「いつ見ても怒られているんですよ。結果も出してるのに……。僕もそうでした。現場で誰も褒めてくれなかった。だから(シンと気持ちが)シンクロしてたんです!」と続けました。

 

その流れで、トークは「当時のアフレコ現場について」がテーマに。8月24日に同じく舞台挨拶を行ったキラ・ヤマト役の保志総一朗さんは、当時の現場を振り返って「戦場のようだった」と語ったことが引き合いに出されました。鈴村さんは『SEED』の現場に参加したことはないため、実際の温度感は分からないと前置きしつつ、「『DESTINY』の方が、おそらく緊張感は高かったのではないかと思います」と話しました。というのも、当時の鈴村さんは「今『SEED』のアフレコ終わって飲んでるから遊びに来なよ!」という連絡をたびたび受けていたんだとか。そんなアフレコ後に飲みに行く雰囲気があった『SEED』に対し、『DESTINY』の現場はとてもそんな空気ではなかったそう。「いつも収録時間ギリギリまで使って、なんなら少しこぼれるくらい。僕はおしゃべりな方なんですけど、おしゃべりするくらいならそのエネルギーをお芝居に注いて集中しないとついていけないくらい。色んな人が探り合いながら戦略を練っているような現場でしたね。保志さんの戦場という言葉に対するなら、こちらは冷戦みたいな……」と振り返りました。

また鈴村さんは当時、福田監督から演技について「もっと誇張して欲しい、癖をつけて欲しい」というディレクションがあったことを回想。「キラって、保志さんにしかできないキラじゃないですか。癖ってなんだろう、個性ってなんだろうとずっと見つめ直す一年でしたね。今まで過ごしたなかで一番長い一年だったんですけど、アフレコ現場での思い出はあまりなくて……」と語る一方で、朝早くからの収録時、眠りこける保志さんの頭に蜘蛛が巣を張っていたというエピソードは鮮明に覚えていると話しました。

 

ここからは、TVシリーズで鈴村さんが特に好きだという第34話「悪夢」についてトーク。「キラを倒すために、めちゃくちゃ努力するんですよ。分析して、それに対して自分の技術は~って。当時のシンから見たら、キラって何を言っているのかよく分からない存在じゃないですか。そんなキラを倒すのは悲願で、良かったねとなるのかと思いきや……サブタイが『悪夢』。そこは『歓喜』でしょ! ってオンエアを見ながら思っていました(笑)」と話しました。また「ネガティブな子どもだったシンが、何かを成そうとポジティブになるエピソードでもあったんですよね。彼の人生のピークだったし、大事な出来事でした」とも語りました。

 

また昨今、『水星の魔女』から新しくガンダムシリーズを鑑賞し始める若いファンが増えてきているとMCから振られると「当時の『DESTINY』にも『水星の魔女』に似たムーブメントが起きていて、その前に『W(ウイング)』もありましたけど、特に女性が見てくださった作品なんですよね。『SEED』は初代のオマージュということもあってロードムービーっぽいところがあるんですが、『DESTINY』ではそれ以上に群像劇化していて。政治劇的なところや人間関係もより楽しめるところがあると思います。僕がやっているラジオに、当時中学生だったという方から“すごく難しい作品だった”というメールが届いて。でもそれって、良いことだと思うんです。僕も子どもの頃は作品を背伸びして見ている部分もあったし、今見返すと“こういうことを言ってたんだ”と分かる部分もあるというか。そういうところに手を抜かないというか、やりたい群像劇を描こうという志があったと思います」と作品に対する想いを語りました。

 

最後の話題は、ファン待望の『SEED FREEDOM』について。いよいよ制作が決定したという連絡を受けた時、鈴村さんは「ビックリしました。……本当のこと言いますね。“本当にやるの?”と思いました(笑)」と率直な胸の内を吐露。「いよいよだなと思ったし、だったら楽しみになりました。20年前の作品にもう一度関われるなんて、そうないじゃないですか。まず役者を続けてないといけないし、作品のポテンシャルも保っていないと……これはお祭りだな、と」とワクワクした気持ちで臨んだことを語りました。また『SEED FREEDOM』のアフレコは現時点で完了しており、「なので全部知っています。でもここで言っちゃったら、明日から生きていけなくなります。中身は絶対喋れません」と固く口を閉ざす鈴村さん。それでも「劇場作品らしい作品になっています。劇場の尺で見るのにとてもいいし、そのなかでカタルシスがあるのは間違いないです。かなり高まります」と公開が楽しみになるコメントをしてくれました。

最後は「本当にこの作品はすごい作品です。今日これだけの方たちが集まってくれて、20年も愛されて。改めて実感しております。新作も一丸となって収録が終わっています。きっと期待に応えられる作品になっています」とファンへメッセージを送り、舞台挨拶の幕を引きました。

 

関連情報

 

関連記事

上に戻る