「ロウきゅーぶ! NEXTフィギュアプロジェクト」投票結果発表! 原作者・蒼山サグ先生とPMOA担当A氏の対談形式でお届け!!
さて、先日好評のうちに投票が終了となった「ロウきゅーぶ! NEXTフィギュアプロジェクト」。皆様の熱い応援のおかげで、シルバーウィーク中もかなりのデッドヒートが繰り広げられました。
この記事では、その結果を、『ロウきゅーぶ!』の生みの親である蒼山サグ先生と、ピーエムオフィスエー(以下、PMOA)の企画担当A氏による対談形式で発表!
……しようと思っていたのですが、ふたつの業界が誇る小学生のオーソリティの邂逅によって想像以上のボリュームのインタビューが誕生したため、結果発表の掲載は次ページからとなっております。ですので、
お急ぎの方は先にこちらから先に結果をご確認ください。
そこまでお急ぎでない『ロウきゅーぶ!』ファンの方は、今回の記事が初公開となる「香椎愛莉~うさぎさんVer.~」の原型などの最新情報と、それを巡って展開するふたりの熱いこだわりを冒頭からお楽しみください!
【Profile】
蒼山サグ…『ロウきゅーぶ!』で第15回電撃小説大賞<銀賞>を受賞。
代表作は同作および『天使の3P!』(共に電撃文庫)。
企画担当A…ピーエムオフィスエーのキャラクターホビー事業(PLUMブランド)企画担当。
特定の年齢層の女の子が多い同社のフィギュアラインナップを支える。
―― それでは本日はよろしくお願いします。
蒼山サグ氏(以下:蒼山): 本日はどうもよろしくお願いします。
PMOAフィギュア企画担当A(以下:企画A): こちらこそよろしくお願いいたします!
―― お二人は今日が初対面なんですね。
蒼山: ええ、Twitter上では何回かやりとりをさせていただいたのですが、直接お会いするのは今日が初めてですね。
―― 実は、Aさんからは、ずっと「蒼山サグ先生と対談したい!」と言われ続けてきました。ついに実現しましたがいかがですか?
担当A: 「うさぎさんシリーズ」が始まる前からずっと担当編集さんには「5人揃ったら対談させて!」とお願いしていましたから、今回、念願が叶って嬉しいです。ちなみに今日のために原作小説とコミックとアニメを見直してきました(笑)。
蒼山:光栄です(笑)。私も、以前掲載されたインタビュー(⇒『ロウきゅーぶ!』にかける思いをPLUM担当に直撃!)を拝見させていただいていますので、色々とお伺いできるのが楽しみです。
-- さて、それでは早速インタビューを始めていきたいと思います。まずは電撃文庫『ロウきゅーぶ!』の話題から。7月に発売となった第15巻でついに本当の完結となりましたね。
蒼山: これまで読んでくださっている皆さんはお分かりだと思いますが、『ロウきゅーぶ!』はすでに2年前――2013年に刊行された第13巻で、ストーリー上は一応の完結ということになっています(※1)。これは、TVアニメの第2期となる『ロウきゅーぶ! SS』の話をいただいたときに、このアニメとタイミングを合わせて、小説の方も一区切りつけよう、という話になったからです。
一方で、慧心女バスの6年生5人が、ひとりずつ表紙に登場していたので、もう2冊は書きたいな、と。1冊は短編集かな、と考えていて、実際にそうなったのですが、この15巻は、どうしようか、何を書こうか、とかなり迷いました。
(※1: 第13巻のあとがきでは「ひとまずの終幕」と表現されている)
―― 一度、第13巻で6年生が卒業式を迎えているわけですしね。
蒼山: いろいろと考えたんですけど、熱心に続きを待ってくれている読者の皆さんがいる以上、しめやかに締めくくるのではなく、いつものように5人の楽しい話を書こう、という結論にいたりました。この1冊だけでしっかりと起承転結があって、もし、この巻だけ手にとってくださる方がいたとしても、しっかりと楽しんでもらえる、そういう話にしよう、と。
そういう意味では、最終巻ですが、第1巻を書いていたときと同じ気持ちで書けたと思います。実際、個人的にもそのあたりは実現できたかな、という感触もあって、やり遂げた感じはありますね。
―― さて、一方で『ロウきゅーぶ!』ファンである担当Aさん。Aさんから見た『ロウきゅーぶ!』の魅力とは?
担当A: 『ロウきゅーぶ!』アイテムを開発している身としては、ファンの方々が、凄くこの作品を愛しているんだな、という実感がありますね。もちろん、私もその中の一人なわけですが。そこで、どうしてだろうな、と考えてみると、逆説的な話になってしまうのですが、かわいらしい小学生が登場するだけではない、というところではないかな、と。
『ロウきゅーぶ!』がこれだけ長い間、多くのファンから支持されているのは、スポーツものとして、また青春ものとして本作が魅力的だったからじゃないかな、と。
―― 確かに、思わず熱くなるような試合や、各キャラクター同士の友情/ライバル関係など、凄く魅力的なシーンが多いですよね。
担当A: ちなみに、自分はお恥ずかしながら「イリーガルユースオブハンズ(※2)」というルールを知りませんでした(笑)。
(※2:手で相手を掴んだり、はたいたりするファウルのこと。転じて一部『ロウきゅーぶ!』ファンの間では小学生に対する接触を戒める言葉となっている。ここでの用法は当然前者のもの)
蒼山: バスケットボールの公式用語なのに、便利な言葉なんですよね「イリーガルユースオブハンズ」(笑)。
担当A: 実際、うちのスタッフも、男女問わず夢中になって読んでいますよ。社内にある本棚(※3)からは、小説やコミックが常に何冊か持ちだされているぐらいで。まずはコミックから入るという人が多いかな? という印象ですかね。
(※3:インタビュー中はさらりと流されているが、事務所内には担当A氏の本棚があり、そこに氏の私物である『ロウきゅーぶ!』原作やコミック、アニメDVDなどが収められている、らしい)
蒼山: コミックに関しては、本当にコミカライズを担当してくださっているたかみ裕紀先生のタッチが素晴らしいですよね。絵のタッチも少女漫画的な部分もあるので、入りやすいのかもしれませんよね。
担当A: でも、そうやってコミックから入っても、だんだんと話の続きや細かな部分が気になって結局原作を読むことになるという(笑)。かわいいキャラクターが出てくるだけ、萌えだけの作品では、こうはいかないと思いますね。凄いぞ『ロウきゅーぶ!』、と(笑)。
蒼山: ありがとうございます。『ロウきゅーぶ!』に関しては、自分の未熟な部分を、いろんな人達に助けていただいて、フィギュアも含めてコンテンツとして凄く育ててもらえて。そんな『ロウきゅーぶ!』を好きだと言ってくれる人がいるというのは本当にありがたい限りです。
■『ロウきゅーぶ!』フィギュアはお腹で語る?
「うさぎさん」シリーズについて
―― さて、そんなAさんの好きがこうじて誕生した「うさぎさん」シリーズ。現在進行中の「香椎愛莉~うさぎさんVer.~」の登場で、ついに慧心女バス6年生が全員揃うこととなりました。蒼山先生にご感想を頂戴できればと思います。
蒼山: 率直に嬉しいですね。やっぱりフィギュアの売れ筋だと胸の大きな子がメインじゃないですか。なので、『ロウきゅーぶ!』に関してはフィギュアは出ないかも、と、ずっと言われていたんです。まさか、2期が終わってからこうやって5人全員が揃うなんて夢みたいです。
自分は『ロウきゅーぶ!』の作者ではあるんですけど、和田さん(※4)に、そのあたりの商品化について、根堀葉掘り聞くことはしないんですね。なので、実はPLUMさんのフィギュアに関しても、ファンの皆さんと同じ感覚でドキドキしながらラインナップをみていました。
もちろん5人全員揃って欲しいなぁ……とは思っていましたが、それが、5人全員出るんだ! という確信に変わったのは「紗季」のフィギュア化が発表されてからですね。自分がこういうのはおかしいかもしれませんが、紗季も出るんだったら、もう絶対に愛莉まで出るだろうと(笑)。ですので、5人揃うとわかったときの感動は、ファンの皆さんと共有できたかと思います。
(※4:電撃文庫編集部の蒼山サグ先生の担当編集者。蒼山先生の作品のあとがきに頻繁に登場し、ファンからも親しまれている)
担当A: ユーザーの皆さんも「紗季」の発表のタイミングで「紗季が出るんだ! だったら愛莉も……」と、期待が確信に変わったみたいですね(笑)。実際、会社としては、始めから5人全員出そうという話ではありませんでした。「智花」や「ひなた」が売れてくれて……という。そういう意味では、熱心なファンの皆様の応援があったおかげですね。実際、ファンの方からの反応は物凄かったですから。
―― 蒼山先生はこうして5人並んだところをご覧になるのは初めてだと思いますが、ご感想はいかがでしょうか?
蒼山: こうして並べて見ると、担当Aさんが前のインタビューでおっしゃていたように、お腹周りなんかはいろいろな意味で凄くこだわった造形になっているなぁと思います(笑)。
担当A: ありがとうございます(笑)。実際、お腹周りというのは、こういう小学生フィギュアを作る上で結構重要な部分なんです。実は以前、「ひなた」を作っているときに、腰にくびれを作ってしまったんですね。でも、それを監修に出したら、関係者の皆さんから「ひなたはもっとイカ腹です」とリテイクが入りました(笑)。
蒼山: 凄くよくわかります、「イカ腹」(笑)。
担当A: もちろん原型師は良かれと思ってやってくれたんですけどね。
蒼山: 胸で語られることが多い美少女フィギュアですが、『ロウきゅーぶ!』のフィギュアを見るときはぜひともお腹で語って欲しいですね。
それぞれ並べてみるとわかるのですが、PLUMさんのフィギュアは、5人それぞれ、お腹のラインが違うですよ。「智花」はずっとスポーツをやっているのでスッキリしている、「ひなた」はプ二ッとしたライン、「真帆」はもう、ストンと(笑)。「紗季」は“文系”っぽさが辛うじて残っている感じがいいですよね。この辺りの再現が、ほんともう「どうなっているんだ!」と。マジックですね(笑)。
担当A: この違いを出すのが難しかったですね。これは「真帆」と「紗季」を比べるのが一番わかりやすいと思うのですが、彼女達ってお互いライバルじゃないですか。で、体型的には胸が無いことは共通なんだけど、作中だと真帆がパワーフォワードで、紗季はポイントガードですよね。そういうキャラクターごとの違いを再現するべく努力しています。……お腹で(笑)。
▲左が「紗季」、右が「真帆」。2人のキャラクター性を腹部の造形の違いで表現している。 |
蒼山: いやぁ、このこだわりが素晴らしいです。あとは、胸も凄いですよね。それぞれの個性がキチンと再現されています。
担当A: 「無いんだけど、でも、そこにある胸」をいかに再現するのかは、ずっと苦労してきた部分ではありますから。真帆が一番小さいということで、恐らく衣装が一番ブカブカでサイズがあってないだろうな……と想像したりしながら、衣装と胸の隙間を大きめに開けたりしていますね。他のキャラクターについても、それぞれに個性がでるように、隙間にはこだわって作っています。
蒼山: 隙間が重要なんですね。……なんだか、Aさんのお話を聞いていると、競馬場の芝に行う「エアレーション作業(※5)」のことを思い出してきました(笑)。
(※5:専用の器具で芝の根が成長する隙間を作る作業のこと。芝の成長を促進する目的で行われる。競馬場の芝生のコンディションはレースの行方を大きく左右するため、競馬ファンにとっては重要な情報となる)
―― これから育つ(ハズの)胸のためにも、隙間は重要ですよね。その意味では、5人目のフィギュア化となる「愛莉」の原型は、逆にいろいろと収まってない感じになっていますが。
蒼山: 「愛莉」に関しては、胸もお尻も凄くて、これはまた違う意味で「スゴイものを作っていただけたな」と思います(笑)。これまた自分でいうのもおかしな話ですけど「こんな小学生いないよ!」っていう(笑)。でもそれが良い。
担当A: 正直やり過ぎたかなと(笑)。イラストを描き下ろししていただいた段階でも「ちょっと胸、盛っちゃいました」って言われていたのですが、立体物って色んな角度から眺めるものですから、メリハリやバランスを考えると多少誇張するぐらいがちょうど良いんですよね。……というか、立体にするときにさらに大きくなってしまいましたが。
蒼山: 愛莉は、他のキャラクターと高さを合せるためにこの前かがみなポーズになっているんですよね?
担当A: そうですね。シリーズとして全体の高さを合せるという意味もありましたし、愛莉は恥ずかしがり屋なので、こんな露出の激しい衣装を着てしまったら、それはもう縮こまってしまうだろうというところで、このイラストを発注しました。
蒼山: 実際、愛莉ならそうするでしょうね。そして、この前かがみのポーズのおかげで、彼女の胸やお尻がよりエクスキューズになっているという。これはある意味、奇跡的だなと思いますよ。愛莉のもつキャラクター性、フィギュアとしての事情、いろんなものが合わさった結果、こうなるべくしてこうなったという感じがします。まさに神に愛されたポージングですね。
担当A: 造形にあたっては、てぃんくる先生のイラストを始め、コミック、アニメなどを原型師と一緒に検討して、より愛莉らしくなるように作ってもらいました。もちろん、基となるイラストはありますが、より“愛莉らしく”するために、こういうイメージを統一するのは大切ですし、ただ資料をドサッと渡すだけだと原型師も混乱しちゃいますので。
ただ、今回頭部を担当してもらった女性原型師も『ロウきゅーぶ!』ファンなので、むしろ「どの愛莉がいいかな」と嬉々として資料を漁っていましたけど。
蒼山: 原型は女性の方なんですか?
担当A:「愛莉」に関しては原型師3人がかりで製作していますね。男性原型師2人が身体を、頭部に関しては女性が担当しています。女の子らしい可愛らしさや繊細さを出すのは、やはり女性のほうが向いていますね。フワッと広がった髪の毛の感じなんかは愛莉らしく仕上がったかな、と思います。
蒼山: 愛莉の髪はてぃんくる先生も描き分けるのが難しいとおっしゃってましたね。こうして色がついていない原型の時点で誰が見ても愛莉だな、という造形になっているのはスゴイと思います。そういう女性ならではのこだわりがあってのことなんですね。
担当A: そういっていただけると原型師も喜びます(笑)。ちなみに先ほども話題になったお腹ですが、「愛莉」も結構最初はお腹が細かったんですよ。くっきりとした、女性らしいラインというか。なのでそこに関しては修正しました。ナイスバディではありますが、成熟した女性ではないですからね。
蒼山: 発育は良くても、あくまで小学校6年生ですからね。
担当A: ええ。なので、そこは「わかるでしょう?」と(笑)。とはいえ、やはり女性キャラクターの身体に関しては男性原型師の方が、より魅力的に造形できますね。
ただ、PLUMのラインナップは小さな女の子の立体物が多いので、結構忘れている部分もあったらしくて。最初は胸が突然飛び出してくるような造形になっていましたので、もっとなだらかに大きくしてくださいとお願いしました(笑)。
―― 大きな胸を作るのにも苦労があるんですね。フィギュア原型師さんが大きな胸の作り方を忘れるというのもなかなか珍しい、PLUMならではの事情とは思いますが(笑)。
担当A: 小さな女の子のフィギュアが多いですからね(笑)。ちなみに原型師の話になったので触れておきますと、今回の「愛莉」ですが、試験的に通常とは違う方法で製作しているんです。
担当A: まずは、こんな感じで小さな愛莉のフィギュアを作って、それを長野本社でスケールに合わせて大きくする作業を行ってもらいました。
担当A: これは、本当にただ大きくしたもので、全然ディテールなんかも甘いんですけどね。で、これを切った貼ったしつつ、最終的には手作業で形状を煮詰めていくというやり方です。PMOAは元々製造業ということもあって、自社で3Dプリンターや、CADで設計する部署をもっていますから、出力を依頼するとすぐ手元に届くんですよ。
蒼山: そういうフットワークの軽さは、元々の仕事の強みが発揮できるんですね。フィギュアってこうやって製作されているんですね……なるほど……勉強になります。
<関連情報>
ピーエムオフィスエー PMOA
http://www.pmoa.co.jp/
TVアニメ 『ロウきゅーぶ!SS』 公式サイト
http://www.ro-kyu-bu.com/
(c)蒼山サグ/アスキー・メディアワークス/TEAM RO-KYU-BU! SS