『あの花』スタッフが名曲に乗せて贈る感動の青春群像劇『心が叫びたがってるんだ。』、9月19日公開!
「泣けるアニメ」『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』のメインスタッフが再結集して製作した完全オリジナルアニメがいよいよ公開です。本作も埼玉県秩父市を舞台に若者たちが繰り広げる群像劇となっていますが、『あの花』のような感動再び、かどうか、ぜひ劇場でお確かめください。
※一部解説にネタバレを含んでます。
文/百鬼
■ストーリー
過去のトラウマで声を失った少女・成瀬順、本音で話せない少年・坂上拓実、後輩たちから厄介者扱いされる野球部の元エース・田崎大樹、優等生を装いながらも秘密を抱えたチアリーダー・仁藤菜月……。同じクラスに所属しながらも、なんの接点もなかった彼らが、地域ふれあい交流会の委員に任命され、クラスでミュージカルの上演をすることになった。誰もが絶対に無理だと思った企画だが、順だけは違っていた。出ないはずの声を振り絞り宣言する。「…私は歌うよ!」
■解説
『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』や『とらドラ』の“超平和バスターズ”が原作の感動青春群像劇。『あの花』に引き続き、“聖地”秩父が舞台になっているので、“聖地巡礼”の方々にはお馴染みの場所が、そこかしこに描かれている。
地方都市ながらも、程よく自然も残っているお蔭で、いろいろな世代に向けた普遍的な青春を描くことに成功している。このあたりは、まさに『あの花』スタッフならではの仕込みといったところだろう。劇中で、順と拓実がSNSやメールでやりとりすることも多いし、そこでの“会話”が物語の大きなウェイトを占めているわけだが、けっして今時の子供たちになってはいない。ケータイがあってもなくても、ここでは誰もが通ってきた“青春”の欠片を見つけることができるはずだ。
まず、見どころの一つは、一見バラバラに見えた4人が、紆余曲折を経て心を一つにしていくこと。そして、それがうねりとなってクラス全体を巻き込んでいく。クラスメイトからも気が付かれないほど存在が希薄だった順がミュージカルの主役となり、いつの間にかクラスの信望を集めていく。このようなダイナミックな環境変化を、いつの間にか見ている側も納得してしまう。それでいながら、先の読めない展開。いろんな意味で最後の最後までドキドキさせてくれるはずだ。
さて、本作を観る上で、たぶんほとんどの人は『あの花』のような“ボロ泣き”を期待するかもしれない。もちろん、泣けるのは間違いないかもしれないが、『あの花』よりも、本作のほうが、まさに“群像劇”になっているのだ。これは、4人の誰に感情移入するかでも違ってくるが、それだけじゃなくクラスメイトの誰を気にするかということにもなるし、それが野球部の後輩なのかもしれない。また、学生時代に演劇をやってたとか、文化祭に思い入れがあるかとか、それこそ学生時代はボッチだったという人も含めて。もちろん、あくまでも映画としての主役は4人だけど、自分自身の青春を顧みたとき、きっと本作のどこかに自分の姿を見出せるだろう。
というような体力のいる鑑賞をすれば、けっこう号泣も可能かもしれない。けれど、本作はかなり爽やかな映画で、清々しい青春を描いている。少年2人に少女2人。当然恋愛要素もあるけど、やっぱり爽やかなのだ。
そして、本作の最大の見どころがクライマックスでのミュージカルシーン。高校生がオリジナルでミュージカルを上演するという設定なので、楽曲自体はベートーベンの『悲愴』や映画『オズと魔法使い』の「虹の彼方に」などのポピュラーな音楽。歌詞はミュージカルのストーリーに合わせて変えられているが、耳に残りまくる名曲ばかり。
つまり観終わって劇場を後にした時に頭の中に残っているのは、これらの名曲の数々にのせた“順たちの歌声だけ”ということなのだ。
<DATA>
心が叫びたがってるんだ。
監督:長井龍雪/原作:超平和バスターズ、脚本:岡田麿里、キャラクターデザイン・総作画監督:田中将賀
キャスト:内山昂輝、水瀬いのり、雨宮天、細谷佳正、藤原啓治、吉田羊、他
制作:A-1 Pictures
配給:アニプレックス
製作:「心が叫びたがってるんだ。」製作委員会
上映時間:119分
9月19日全国公開
<関連情報>
映画『心が叫びたがってるんだ。』
(C) KOKOSAKE PROJECT