2019年、実物大のガンダムが動き始める!? 富野由悠季氏らが登壇し「ガンダム GLOBAL CHALLENGE PERESENTATION ~第一次選考発表会~」開催

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18メートルの実物大ガンダムを動かして一般公開する……そんな大きな目標を掲げたプロジェクト「ガンダム GLOBAL CHALLENGE」は、2014年の7月から一般公募でアイデアを募集してきましたが、今回、第一次募集の審査結果が決定しました。審査にあたったのは、機動戦士ガンダム総監督 富野由悠季氏、橋本周司氏(早稲田大学副総長、早稲田大学理工学術院教授、ガンダムGLOBAL CHALLENGE技術監修)、ピトヨハルトノ氏(中京大学工学部教授)、映画監督の本広克行氏、齋藤精一氏(ライゾマティクス代表取締役)です。

 

▲そうそうたる登壇者の顔ぶれです。左から、バンダイナムコホールディングス代表取締役社長 田口三昭氏、チーフ・ガンダム・オフィサー、バンダイ取締役会長 上野和典氏、ライゾマティクス代表取締役 齋藤精一氏、映画監督 本広克行氏、SUGIZO氏、機動戦士ガンダム総監督 富野由悠季氏、ガンダム GLOBAL CHALLENGE技術監修、早稲田大学副総長 理工学術院教授 橋本周二氏、中京大学工学部教授 ピトヨハルトノ氏、ガンダム GLOBAL CHALLENGE代表理事、サンライズ代表取締役社長 宮河恭夫氏、創通代表取締役社長 青木建彦氏。

▲左から、バンダイナムコホールディングス代表取締役社長 田口三昭氏、チーフ・ガンダム・オフィサー、バンダイ取締役会長 上野和典氏、ライゾマティクス代表取締役 齋藤精一氏、映画監督 本広克行氏、SUGIZO氏、機動戦士ガンダム総監督 富野由悠季氏、ガンダム GLOBAL CHALLENGE技術監修、早稲田大学副総長 理工学術院教授 橋本周二氏、中京大学工学部教授 ピトヨハルトノ氏、ガンダム GLOBAL CHALLENGE代表理事、サンライズ代表取締役社長 宮河恭夫氏、創通代表取締役社長 青木建彦氏。

 

 

この決定を受け、秋葉原UDXシアターにて「ガンダム GLOBAL CHALLENGE PRESENTATION ~第一次選考発表会~」が開催されました。

 

 

受賞したのは、奈良先端科学技術大学院大学 情報科学研究科博士後期課程の金子裕哉氏、ロボフューチャー株式会社代表取締役の木原由光氏、国立台湾大学 非常勤准教授のMing-Hsun Chiang(ミン・スンチェン)氏、東京大学情報システム工学研究室の岡田慧氏の4人です。なお、岡田氏は残念ながら欠席となりました。また、4人とも18メートルのガンダムを実際に動かす「リアルエンターテインメント部門」での受賞となり、もう1つの部門である、視覚効果を利用して仮想空間で動きを再現する「バーチャルエンターテインメント部門」での受賞者は該当者なしという結果になりました。

 

▲受賞者の皆さん。左から、金子裕哉氏、ミン・スンチェン氏、木原由光氏。

▲受賞者の皆さん。左から、金子裕哉氏、ミン・スンチェン氏、木原由光氏。

 

最初に名前を呼ばれて壇上に上がったのは、奈良先端科学技術大学院大学の金子裕哉氏。応募したアイデアは、「ガンダムとザクに相撲をとらせて四脚にした自立歩行(または足を上げて一歩踏み出し)の実現」です。なるほど、二脚でムリなら四脚にして歩かせようという、発想の勝利的な内容でした。

 

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金子氏は沼津工業高等専門学校の電子制御工学科を卒業後、現在は無線通信分野(流星バースト通信、光電波融合技術というのだそうです)の研究に従事されています。金子氏は「まさか選んでいただけるとは思わず、光栄です」と語り、自分には2つの夢があって、1つは富野由悠季総監督にお会いすること、もう1つはガンダムを作ることであり、1つは今実現できた(富野氏に会うことができた)し、もう1つも動き出しているので嬉しい、と受賞の喜びを語りました。また、今まではガンダムの“消費者”としての立場だったのが、今後は作る側に立って恩返しをしていきたい、とも。

 

 

次は、国立台湾大学のミン氏(Ming-Hsun Chiang氏)です。彼が応募したアイデアは「ロボットが人間のような歩行を実現するための、ヒューマノイドロボット歩行に関連する新しいメカニズムの提案」です。資料写真をご覧いただければ分かるとおり、たいへん専門的な研究らしく、それもそのはず、ミン氏は工学博士であり、人体解剖学、スポーツ医学、生体力学の研究に従事した後にロボット工学に進み、ヒューマノイドロボットの新型メカニズムとその歩行プロセスフローについて提唱しているのだそうです。金子氏につづき、ミン氏もガチの研究者というわけです。

 

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ミン氏は、「40年近く前、ガンダムが大きな夢を与えてくれました。今、その夢が現実になろうとしています。この機会を与えてくださってありがとうございます」と挨拶。指導された先生やご家族にも謝辞を述べました。

 

 

最後に登壇したのが木原由光氏。ロボフューチャーという企業の代表取締役で、東海大学工学部生産機械工学科を卒業した後、自動車会社での設計経験を活かして福岡でロボットや機械装置の設計、製作、販売を行っているそうで、こちらもロボット技術のプロフェッショナルです。木原氏のアイデアは、「外部動力供給式軽量型ガンダム独立歩行システム」で、外部から動力を供給することでガンダムを軽量化し、その歩行を実現させようというもの。

 

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木原氏も、この「ガンダム GLOBAL CHALLENGE」の計画を聞いたときから参加をしたかったそうで、「今後は少しでも貢献できるように頑張りたい」と、その意気込みを語りました。

 

 

受賞した4名の方は今後、審査を行った「ガンダム GLOBAL CHALLENGEリーダー」とともに、ガンダムの研究を行っていきます。また、受賞式にはゲストコメンテーターとしてミュージシャンのSUGIZO氏(LUNA SEA、X JAPAN)が登場。副賞50万円の目録が手渡されました。SUGIZO氏は、小さい頃にガンダムにハマったと、ガンダム好きであることを語った後「現代は夢がどんどん現実化しています。でも、明るい未来が現実化しているかというと、問題も山積している。夢を現実に結びつけてくれる科学者に引っ張っていってもらって、平和的な未来をテクノロジーを使って具現化してくれたらありがたい」と語りました。

 

▲プレゼンテーターを務めたSUGIZO氏。

▲プレゼンテーターを務めたSUGIZO氏。

 

 

電撃ホビーウェブでは、受賞式が終わった3人に、個別にコメントを取ることができました。短い時間でしたので、ここはやっぱり電撃ホビーウェブ的に「ガンダムとの関わり/どのガンダムが好き?」という直球な質問をしてみました。

 

 

木原氏は、47歳というガンプラブーム直撃世代。ファーストガンダムが立ち上がるシーンに衝撃を受け、そこからずっとファンを続けているとのこと。好きなガンダム作品はやはり『機動戦士ガンダム』(ファーストガンダム)でした。

 

 

ミン氏は、人間のように歩くガンダムを作りたい、と研究への熱意を述べたあと、一番好きなガンダムは、ガンダムMk-IIだと笑顔で回答。力強いフォルムが好みなのだそうです。「もうすぐHGUC ガンダムMK-IIのガンプラが出ますね」と水を向けると、にっこり微笑みました。

 

 

金子氏は、アイデアを応募する前に、ガンプラの「RG MS-06S シャア専用ザク」を組んだそうです。ガンダム作品はどれも好きとのことですが、一番の傑作は『機動戦士Zガンダム』だと思っているとのこと。

 

 

●有識者のコメントも

 

受賞式が終わると、ガンダム GLOBAL CHALLENGEリーダーによるコメントが始まりました。橋本氏は「それぞれ違った角度から考えているので、(受賞した)4人に加わっていただいた。これから一緒に考えていきたい」と、今後に期待を滲ませました。次にコメントをしたピトヨハルトノ氏は「周囲に、できるわけがないと言われました。6階建ての建物を歩かせるのと同じですから。でも、4人の素晴らしい仲間が加わって、本当にできそうな感じがします。とはいえもう1つ、2つのブレイクスルーがないとできないと思います」と、これがゴールなのではなく、スタートである点に言及しました。

 

▲橋本氏(左)とハルトノ氏(右)。

▲橋本氏(左)とハルトノ氏(右)。

 

映画監督の本広克行氏は「僕の中ではガンダムは歴史であって、その歴史を実現できたら」と期待しつつ、18メートルのガンダムが動くCG映像『ガンダムの動きを考えるための参考映像』を公開しました。ガンダムが動くCGは多々ありますが、この現代の世界で18メートルの大きさのものが動く、というシチュエーションを想定して製作されたものだけに、その質量が感じられるCGとなっていました。

 

▲本広克行監督による「ガンダムの動きを考えるための参考映像」

▲本広克行監督による「ガンダムの動きを考えるための参考映像」

 

▲本広氏(左)、齋藤氏(中)、富野氏(右)。

▲本広氏(左)、齋藤氏(中)、富野氏(右)。

 

齋藤氏は「今後は地に足が付いた開発フェイズに向かっていきます。まだまだいろいろな才能が必要なので、二次もふるって応募してほしい」と、今後の応募への期待を述べました。

 

 

続いて、総監督の富野由悠季氏です。

 

 

●富野由悠季氏のコメント

 

絵空事の夢しか見ていなかったのと、この年齢になったことで見知ったことがあります。少年雑誌の特集ページで知ったようなことです。新型機の開発と生産と運用を考えたときの面倒くささというものを、何故か本能的に知っている子供になってしまいまして、今日(こんにち)まで来ています。

 

 

こういう絵空事でものを考えている人達が大っ嫌いで、困ったもんだなあというのがひとつあります(会場笑い)。困ったものだということがありながらも、コンピュータの時代までくると“困ったモノだな”が日常に入り込んでしまって、我々がとんでもなくとっちらかった暮らしをしているのではないかというのが、先進国の常態だと思っているんです。

 

 

だからこそなんです。

 

 

夢とロマンに溢れている部分がガンダムにもあるならば、おめでたい本広監督が考えているようなあんなCGくらいのことはやってみせようぜ、ということにトライするのは、リアリズムでものを考えるための礎になると思っているんです。ですから、やっていいことだと、これは本当に思っています。

 

 

はじめに言ったことと矛盾しているのではないかということに関しては、矛盾していません。むしろ、戦争をやりながら新機種を開発し、戦場にリアリズムで投入してしまうことのほうがフィクションで、それができると思って、それで国が勝てると思うような、そんなめでたい話はなくて、そんなのはウソ八百なんです。

 

 

今、こんな平和な時代だからこそ、ガンダムという素材であれば当たり障りもないしどこからも歓迎されるだろうから、これをもってきて、リアリズム-工学の部分から攻めていきたい。

 

 

ほんとうに、技術でどうとでもごまかせる時代になっているけれども、人型のものを動かすということが、工学的にどれだけ馬鹿馬鹿しくてたいへんなことか。けれど、これを達成していったとき、応用技術がとても(多く)生まれるだろう。ブレイクスルーになる要因をはらんでいると思っているんです。ですから、一見遊びごとかもしれないけれども、それを今できるという、平和な日本という御代(みよ)はとても素敵なことだなと思いますので、新たに参加してくれた皆さん方を含めて、もうちょっと具体的に考えて、まあ、せめて本広監督が考えているようなめでたい立ち上がるガンダムを見せられるものなら、それは見せてほしい。それは、この年になった自分としてはとても嬉しいことだから。

 

 

それがいったい何になるのかということについては、皆さん方は今想像ができないと思います。しかし、僕自身、動かない1/1(1/1ガンダム立像)を見せられた時に、奈良の大仏には負けているけれども、少しは勝っているかもしれないという意味の感動を受けました。年を取った自分を生かさせてもらっているという感触を得ました。そういう意味で、もし動いてくれたら、また次の何かを考えてくれる人達……子供達が出てきてくれるのではないか。その子供達は、問題点というか馬鹿馬鹿しさを指摘して「いい加減にやめましょうよ」と言うのかもしれない。けれどそういうことを考えさせてくれるためにも、具体的にこういうことをやってみせるというのは、とても大事なことだと思っていますので、今後ともよろしくご協力いただきたいと思います。お願いいたします。

 

 

さて、「ガンダム GLOBAL CHALLENGE」の今後はどうなるのでしょう? 社団法人ガンダム GLOBAL CHALLENGE代表理事であり、サンライズ代表取締役社長の宮河恭夫氏によれば、2016年秋以降に基本プランの発表会があり、2018年には製作・調整が行なわれ、2019年夏にプロジェクトの成果発表が行なわれるとのことです。

 

▲ガンダム GLOBAL CHALLENGEのスケジュール。

▲ガンダム GLOBAL CHALLENGEのスケジュール。

 

技術監修の橋本氏は「あの大きさのものが動くというのは“馬鹿馬鹿しい”こと。ロボット工学を超えている。だからこそ引き受けた」と、その心意気を語りました。2019年、富野氏が言うように、戦争ではなく平和な日本の“馬鹿馬鹿しくてたいへん”なプロジェクトでガンダムが動き、多くの技術的なブレイクスルーが達成されることに、期待しましょう。

 

 

 

<関連情報>

ガンダム GLOBAL CHALLENGE公式サイト
http://gundam-challenge.com/

 

 

(c)創通・サンライズ

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