美少女×戦闘機『ガーリー・エアフォース』集中連載第2回!! 夏海公司先生書き下ろし短編「シアターブルー」第2章掲載!!

更新日:2015年12月4日 21:43
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「シアターブルー」

■著者:夏海公司 ■イラスト:遠坂あさぎ

 

FA2

 

第2章

 

 

『我に秘策あり』なんて台詞は軽々に使うものではない。

   秘策は秘するからこそ秘策なのであり、公にした瞬間ただの奇策に堕する。その証拠に見てみるがいい。数多のフィクションで登場人物が「我に秘策あり」と言い出した時は結構な確率で芳しくない結果が待ち受けている。予想外の要因により計画が瓦解したりする。

   失敗フラグだ。

   考えてみれば秘策を練るような時点で味方は劣勢なのだ。もっと言えば崖っぷちに追い詰められている。そこを覆すには並々ならぬ慎重さと情報秘匿が必要になるはずだ。なのに率先して「秘策あるんですよー!」と明かしてしまう策士は不用意に過ぎる。あなた、それ格好つけたいだけでしょうと言いたくなる。

   だから私は決して安易に件の台詞を使わない。細心の注意を払い、全ての不確定要因を潰し、成功確率を百パーセントに近づけるのに腐心する。

   だって無様ですし。

『秘策あり』と胸を張っておいて大失敗するなど。小っ恥ずかしくて二度と表を歩けなくなる。犯人当てに失敗した名探偵ばりに気まずくなる。

   だが。

   逆に言えばだ。

   失敗の確率を限りなくゼロに近づけられれば話は変わってくる。当初の目的も果たしながら格好もつけられる。

「我に秘策ありです」

   数多のシミュレーションと検証を繰り返した末、私は鏡の前でつぶやく(人前ではまだ言えない。私は石橋を叩いて叩いて鋼鉄で鋳造しなおすタイプだ)。髪を掻き上げながら、妖艶な笑みを浮かべて宣言した。

   イーグルとの展示飛行、危険極まりないアクロバットに対し私が編み出した策はシンプルだった。

   そう、『イーグルの操縦も私がやればいい』

   決して不可能事ではない。実際海鳥島奪還作戦の時はグリペンのコントロールを一部受け持った。データリンク経由で操縦系に介入し最適な戦闘機動を取らせた。あれと同じことをもう一度、もっと大胆にやればいい。何、別に空戦をするわけではないのだ。一般的な展示飛行程度、二機分でも三機分でも受け持ってみせる。

   全ての機動が私の制御下に収まるならイーグルの暴走は考えなくていい。彼女にはコクピットでお茶でも飲んでいてもらおう。機体を起動さえしてもらえば、あとは全部こちらで対応できる。機体間隔もタイミングのズレも何一つ気にせずによくなる。

   完璧だ。

   唯一の心配はイーグルが黙ってコントロールを渡してくれるかだった。あの娘は目立ちたがり屋でお祭り好きだから、展示飛行なんて聞けば目を輝かせて応じてくるだろう。『え? ファントムに操縦させるの? 絶対イヤ!』と言ってくるはずだ。

   だが心配はいらない。予想される障害には全て対策を練ってある。

 

N20151120GA_211

▲イーグル(ドーター)

 

「え? イーグルが展示飛行の演目選んでいいの? 本当に?」

   夕刻、食堂に呼び出して相談するとイーグルは目をまたたかせた。意外そうな顔に「ええ」とうなずいてみせる。

「構いませんよ。あなたの好きなアクロバットをあなたの好きな順序で選んでください。派手なのでも綺麗なのでもご自由に」

   代表的な演目のリストを差し出す。一部二機編隊ではできないものも含まれているが、まぁ些末事だろう。細かい調整はあとで行えばいい。

   イーグルは興奮した様子でリストを眺め始めたが、すぐに眉をひそめた。疑わしげにこちらを見つめてくる。

「なんでこんなこと任せてくれるの? 普段なら全部自分でやっちゃうのに。あ、分かった! 直前にやること変更してイーグルを笑いものにするつもりでしょ! で、自分だけちゃんと飛んで人気を上げるつもりだ!」

   誰がそんな低レベルな小細工をするか、馬鹿と一緒にするなと言いたい、が。

(我慢だ。ここは我慢)

   困り顔で肩をすくめ。

「私が選ぶとどうしても安定性重視の地味な進行になってしまうんですよ。お父様からも今回は派手さを心がけろと言われてまして、だったらあなたの方がよいプログラムを組み立てられるかなと」

「よいプログラム」

「こういうのはセンスもありますからね。下手に理詰めで考えるよりあなたの感性を頼りにしたいなと」

   むふぅ! とイーグルは鼻息を荒くした。喜びで口元がむずむずしている。非常に分かりすい。大きく息を吸い、胸を張って。

「分かった! じゃあイーグルが完っ璧なプログラムを作ってあげるね。かっこよくて可愛くて胸がわくわくするようなやつを!」

   言うが早いか猛然と資料を読みこみ始める。一緒に渡した筆記具でフローチャートのできそこないめいたものを書きつけていった。

「できた!」

   メモ書きを渡されるまで五分とかからなかった。ナスカの地上絵を思わせる幾何学模様がプリント上に現れている。矢印と点線が縦横無尽に走り回り読みづらいが、一応演目の順序らしい。上から下に眺めていくと。

(あらあら、まぁ)

   想像を上回る高難度技の連続だった。ダブルハンマーヘッドにバーティカルキューバンエイト、ローリングコンバットピッチでタッククロス、コークスクリュー。繋ぎも間隔も無茶苦茶で機体の運動エネルギーをどう考えてるんだと言いたくなる。まぁある意味予想通りだ。彼女に任せたらこうなることは分かりきっていた。

「なかなかにぎやかな演技になりそうですね」

   にこやかにうなずきつつ小首を傾げる。

「でもこれを全部やるとなると大分練習時間が必要ですね」

「え?」

   練習? とイーグルが目をまたたく。予想外の言葉を聞いた表情だ。

「ええ、さすがの私達アニマでもぶっつけ本番というわけにはいきませんから。難易度の高い技ならそれ相応の時間をかけて調整しないと。そうですね、あなたの作ったプランに従うのであればざっと計算して」

   各練習時間に1・5倍、トータルタイムに1・2倍の安全マージンをかけて。

「ぶっ通しで八十時間くらいやればなんとかなりますね。アラート待機以外の時間を丸丸使えば計算上は展示飛行までに間に合いますよ」

   どうだ、面倒くさいだろう。

   ノリと勢いだけで生きている彼女のことだ。現実的な手間が分かれば途端にトーンダウンしてしまうはずだ。とはいえ自分で提案したプランを捨てることもできない。だから私は言うのだ。

『コントロールを預けていただければ面倒な部分は担当しますよ』と。

   単機でパワープレイするパートは好きなように飛んでもらえばいい。且つコンビネーション部分を他人に任せられれば彼女は本当においしいところだけいただける。練習なしで気持ちよくフライトできて更に周囲の喝采も浴びられる。決して悪くない取り引きのはずだ。

   さぁ厄介がれ。『訓練なんていやだー』といつものように駄々をこねろ。そうすれば私は助けの手を差し伸べる。彼女と自分、二人にとって救いの道を開ける。

   高揚を押し殺し、返事を待っていると。

「うん、じゃあ一緒に頑張ろう!」

   予想外の答えが返ってきた。

   え? あ、あれ?

「頑張るというのは、その?」

「八十時間でも百時間でも付き合うよ! せっかくの展示飛行だもんね。最高のコンディションで臨まないと!」

「ず、随分前向きですね」

   イーグルは「うん」とうなずいた。

「お父様がね、『おまえは天才だ。天才が努力したら何が起こると思う? それはもう誰もついてこれないぶっちぎりのナンバーワンになれるんだ。だから展示飛行がんばってみろよ。できるできるよ、積極的に、ポジティブに。予算をぶんどっていこうぜ』って言ってくれたんだよ。だからイーグル、今超やる気なの!」

   あのデブ。

   ターボジェットのタービンホイールに巻きこんで脂肪を削り取ってやりたい。

   呪いの言葉も虚しく、イーグルはがっしり私の手をつかんできた。

「じゃあ早速今からシミュレータで訓練してみようよ! とりあえず予定の演目全部流してみる感じで。腕が鳴るね!」

   一時間後、私はシミュレータの中で十二回、墜落していた。

 

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▲ファントム(ドーター)

 

「ファ、ファントム? どうしたんだそんな大荷物で、旅行にでも出かけるような格好して」

   スーツケースとボストンバッグ、肩掛け鞄持参で廊下を歩いていると後ろから慧さんに呼びかけられた。丁度技本棟のロッカールームから私物を回収し終えたところだ。十分後にタクシーを呼び出し基地正門前に来るよう頼んでもある。ぐずぐずしてはいられなかった。

   私は居住まいを正し一礼した。

「三沢に帰らせていただきます。ひょっとしたら実家の百里に行くかもしれませんが、ここにはもう戻りません。短い間でしたがお世話になりました。慧さんの健勝とご多幸を心よりお祈り申し上げています。では」

「いやいやいや」と呼び止められる。鞄の肩紐を後ろからつかまえられた。

「いきなりなんだよ、わけが分からないぞ。ちゃんと説明してくれ。八代通さんには話したのか?」

「話してません、けど」

   慧さんの手はがっちり荷物をつかんでいる。勢いで解放してくれそうな気配はない。仕方なく肩の力を抜き向き直った。

「少々、面倒ごとに巻きこまれてまして」

   三日前のお父様の打診、イーグルとの打ち合わせ、そのあとの惨状について説明していく。隠しても仕方ないので私の作戦計画についても打ち明けた。最初は彼女を直接コントロールしようとし、それが敵わなくなったあとはなんとか演目通りの動きをさせようとしたことも。

「ですが全ては無駄でした。あの娘に他人との協調を求めること自体そもそも無理だったんです。かくなる上は逃げるしかありません。外からの助力が求められない以上、自分の身は自分で守らないと」

「いや……まぁお気の毒にと言いたいところだけど」

   慧さんは心底不憫そうに言ってから。

「だからって他の基地に引き揚げるのはどうなんだ? ドーターまで持っていけないだろ、あっちにはもうアニマの整備部隊もいないだろうし」

「それは」

   その通りだ。私達アニマは普通の人間とは違う。専門の設備でのメンテナンスがなければ一月と生きていられない。虎穴から逃れて飢え死にしたでは笑うに笑えなかった。だが。

「じゃあどうすればよいと仰るんですか、慧さんは。万に一つの幸運を信じて展示飛行に臨めと?」

   慧さんは「うーん」と唸った。

「よく分からないけどさ、イーグルがおまえに合わせてくれなくて、おまえのコントロールも受けつけないなら、やれることは一つじゃないか? というか俺なら真っ先にそれを試すけど」

「はい?」

   続く台詞に意表を突かれる。

   私は目をまたたいた。

 

 

 

~第3章へ続く~

美少女×戦闘機『ガーリー・エアフォース』集中連載第3回!! 夏海公司先生書き下ろし短編「シアターブルー」第3章掲載!! 電撃ホビーウェブ

 

 

<DATA>

ガーリー・エアフォース

■電撃文庫

■著者:夏海公司

■イラスト:遠坂あさぎ

■既刊4巻、以下続刊

■発刊:株式会社KADOKAWA

 

 

イーグル

_MG_0491

 

N20151113GA_0006

▲異質な形状に装甲化されたキャノピーは開閉選択可能。コクピットに座らせられる着座状態のフィギュアが付属。

N20151113GA_0007

▲各機とも高機動航空技術(HiMAT)を導入し強力なエンジンに換装。ザイの敵性技術を導入(?)しているようにも見えるノズルのフェアリングを再現。

 

N20151113GA_0008

▲劇中の世界観に従い各機に装備される航空自衛隊で実際に使用されているミサイルが、よりリアリティをアップ。

 

_MG_0532 _MG_0538
▲商品には機体に該当するアニマの同スケールフィギュアが付属。(画像は試作品イメージです。)

 

イーグル

■技MIX ガーリー・エアフォースシリーズ

■1/144スケール

■ メカニックデザイン:KuWa(FRAMEOUT MODELS)

■発売日:2016年3月発売予定

■価格:4,800円(税抜)

■発売元:トミーテック

 

 

ファントム

_MG_0485

 

N20151113GA_0009

▲稼働時にアニマとドーターがリンクして現れる各機のパーソナルカラーとヘックスパターンを技MIXの彩色とタンポクオリティで劇中イメージそのままに再現。

 

N20151113GA_0010

▲機体各所のバルジやアンテナ、機動性向上を目指しつつ試行錯誤した跡が残る動翼やフィンなどの改造箇所など、実機と異なる劇中設定のディテールを完全再現。

 

N20151113GA_0011

▲ファントムにはEPCCM(対電子・感覚妨害手段)装備のため追加された巨大なポッドが付属。

 

_MG_0532 _MG_0538
▲商品には機体に該当するアニマの同スケールフィギュアが付属。(画像は試作品イメージです。)

 

ファントム

■技MIX ガーリー・エアフォースシリーズ

■1/144スケール

■ メカニックデザイン:KuWa(FRAMEOUT MODELS)

■発売日:2016年3月発売予定

■価格:4,800円(税抜)

■発売元:トミーテック

 

<関連情報>

ガーリー・エアフォース 電撃文庫特設サイト

技MIX 公式サイト

美少女×戦闘機『ガーリー・エアフォース』第4巻発売&技MIX化記念、集中連載第1回!! 夏海公司先生書き下ろし短編「シアターブルー」掲載!! 電撃ホビーウェブ

美少女×戦闘機『ガーリー・エアフォース』集中連載第3回!! 夏海公司先生書き下ろし短編「シアターブルー」第3章掲載!! 電撃ホビーウェブ

美少女×戦闘機『ガーリー・エアフォース』集中連載に、遠坂あさぎ先生から応援イラストが到着! 電撃ホビーウェブ

 

(c)2014 KOHJI NATSUMI

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