「娯楽であふれたこの世の中に出して本当に欲しいと思ってもらえるのか?」といつも自問自答。話題沸騰の変形メカ「ヴァリアブルフレームシステム01 ガルダギア【ベルーガ】」はどうやって生まれたのか!?開発者インタビュー!!
コトブキヤでは「M.S.G」シリーズの新規格として、完全オリジナルデザインの変形メカ「ヴァリアブルフレームシステム」を始動! その第1弾アイテム「ガルダギア【ベルーガ】」は、その姿が公開されるや、電撃ホビーウェブの記事の週間アクセスランキング1位(2021年12月6日~12日集計)に輝くなどユーザーから熱い注目を集めています。そこで本記事ではその商品内容と開発経緯に迫るべく、コトブキヤYUKI氏にお話をうかがいました。
プロフィール
YUKI(ユキ)
M.S.G、ヘキサギア、創彩少女庭園などのオリジナル商品シリーズのプロデューサーを務めるコトブキヤ企画担当でプラモデルチームのマネージャー。今回の「ヴァリアブルフレームシステム」でも初期からその開発に携わる。
怒りから生まれた新企画!?
「ヴァリアブルフレームシステム」シリーズの立ち上げ
――本シリーズの立ち位置を確認したいのですが、「M.S.G」内の変形専門のサブブランド的な認識でよろしかったでしょうか?
YUKI:オリジナルの可変ロボを作るために新たに作られたブランドですね。世界観やストーリーが存在しないので企画側の労力はかかりませんが、活躍するイメージが与えられないので、ユーザーさんの脳内妄想に頼ることになってしまいます。一方で純粋に見た目やギミックにこだわることができるのはメリットですね。好きなだけカッコイイ機体を開発できる(笑)。そして設定が存在しないということで、自分だけのオリジナル機体を考えやすいというユーザーさんもいると思います。
――そもそも企画はどういった経緯で立ち上げられたのでしょうか?
YUKI:もともとはギガンティックアームズシリーズの商品として開発がスタートしたんです。ギガンティックアームズはFAガールなどと組み合わせて楽しむ「パワードガーディアン」や「ラピッドレイダー」、「ルシファーズウイング」が人気だったのですが、徐々に落ち着いてきてしまったし、何よりも複数合体の「アルティメットガーディアン」で企画担当としてはやり切った感がありました。
――確かに同じ方向性であのボリューム感を超えるものを考えるのは難しそうですね。少なくとも短いスパンでは。
YUKI:はい。そこで新たにやるならば切り口の異なるアイテムを考えようということで本企画が動き始めました。結果的にはあまりにもこれまでのギガンティックアームズと路線が違うので「ヴァリアブルフレームシステム」という新たな名称を付けることになりました。またブログでも書きましたがM.S.Gには航空機の主翼に使えそうなパーツが不足しているというユーザーさんのご意見を当時のSNSで見たのもこの企画のきっかけです。どのパーツも“ウイング”とはいいつつもブレードのように使える武器の域を出ていないものが多かったのは事実ですからね。そして言われたままにしておくのは企画担当者としては悔しいので「そこまで言うならやってやるよ!」って思いまして(笑)。
――ユーザーの予想を超えてやると(笑)。
YUKI:ええ、本格的な航空機を作ることができるパーツだけではなく、飛行形態のフォルムを重視した人型変形メカのアイテムを作ろうと。M.S.Gで良いアイテムができる時の動機ってある種の“怒り”であることが多いんです。「なぜ自分の求めているようなパーツが無いんだ!」とかね。思い返せば、メカサプライのエクスアーマーシリーズなどもそういったところから生まれたアイテムでした。
発売前から話題沸騰!
注目の第1弾アイテム「ガルダギア【ベルーガ】」
――そうして生まれた第1弾アイテムが「ガルダギア【ベルーガ】」だったわけですね。発売前からユーザーから熱い視線が寄せられています。
YUKI:実際に手に取る前にこれだけご注目いただけるのは嬉しいですね。でも本当に楽しみなのは発売後にユーザーさんが夢中になって遊んでいる姿を見ることです。新製品情報の公開や予約開始、発売日などはいつもユーザーさんの感想を血眼になってリサーチしています(笑)。
――商品の注力ポイント、推しポイントをお教えください。
YUKI:やはり変形ギミックと人型メカとしての可動性能の両立ですね。変形の機構を取り入れつつもストレスなく遊べる可動範囲をどう盛り込むかを考えるのに時間を使いました。
――ユーザー的には変形フレームの強度や保持力が気になるところですが?
YUKI:人型メカとしての主要な関節部には5ミリのジョイントを採用しています。遊び心地はヘキサギアシリーズに近い感じになっています。関節強度はかなりしっかりとしているので、安心して変形やポージングを楽しんでもらえるかと思います。
――「M.S.G」シリーズでもあるということで、M.S.Gの周辺オプション商品などでの拡張性も確保されているのでしょうか?
YUKI:そこもこだわった部分です。人型形態でも戦闘機形態でも、完全に隠れてしまう外装パーツがなるべく発生しないように配慮しているのですが、これは武装やパーツをユーザーさんが独自に追加、または改造したとしても、基本の変形パターンであれば干渉せずに戦闘機形態に変形できるようにするためです。外装各部にあるハードポイントについては3ミリを採用していますし、目立つ箇所にはディテールカバーで不要な時には目立たなくなるように工夫されていますので、必要に応じて武装を強化して楽しむことができます。
――白いプレーンな機体という印象ですが、色を含め、デザインはどのように決まっていったのでしょうか?
YUKI:塗装しやすいプレーンな配色にしようということと、ヒットして後続の商品が出る時に最初の一機がシリーズ全体の主人公機に感じられるようにこの配色を選びました。ただし白のみの成型色になると立体物として少しメリハリがなくなってしまうと感じたので白も濃淡のある2色を使っています。
――ちなみに個人的にどんな色に塗りたいか、またどんなユーザーの作例が見てみたいなど、ご希望はありますか?
YUKI:私としてはサフの色が好きなのでライトグレーか、M.S.Gでよく使用されるグレーのツートンで塗装したいですね。スティレット〈装備拡張試験型〉のようなカラーリングが好みです。ユーザーさんの作例で見たいものと言うと、フレームしか使わずにメカサプライとかヘキサギアのパーツでオリジナルのカスタムをした作品も見てみたいです。非常に上級者向けの内容ですが、可変式のフレーム自体をどのように使うのかという発想自体を楽しみにしています。
これまでの技術の集大成!
――今回の「ガルダギア【ベルーガ】」では、どういった方々がデザインや開発に参加しているのでしょう?
YUKI:デザインは2013年頃からM.S.Gのメインデザイナーを担当している社外スタッフの<F氏>によるものです。ヘヴィウェポンユニットは私と彼で一緒に立ち上げたし、ギガンティックアームズもほとんど彼がデザインしたもの。人気の「サムライマスターソード」や「ナイトマスターソード」に「エクスアーマーE」なども彼のデザインしたものです。ヘキサギアですと「バルクアームα」などが代表作ですね。
――すでに大活躍されている方ですね。
YUKI:はい、頼りになる相棒の一人です。企画の最初期にはエヴォロイド(※)のプロデューサーである糸山雄大が参考用の機構試作を作ったりもしました。またデザイナーではありませんが社内設計スタッフのMARUYAがディレクションを担当しています。各形態での見え方や構造上の問題点などがあればデザイン画へ修正指示などを入れていきます。
※『エヴォロイド』
2021年12月に第1弾・第2弾が発売した、「簡単組み立て、簡単変形!」がコンセプトのデフォルメロボットプラモデルシリーズ。
――変形フレームということで、開発の上での苦労された点はありますか?
YUKI:まずは既存の変形メカの真似に感じさせないというのが一番苦労したところだと思います。人型から戦闘機に変形するロボットはこれまでにもたくさんありますので、それらとどこで違うポイントを作るのかですね。当時のやり取りを振りかえると<F氏>本人的にはかつてないほどのスランプで、偉大な先輩デザイナーたちの作り出したものと差別化しつつ、クライアントである私からの要望を同時に叶えるといったところにかなり長い時間を要したのを覚えています。機構的にも、サイズ感はフレームアームズとそう変わらないのに主要関節を5ミリにしたことや、カスタムする余地を残したデザインにするというところも苦労していましたね。
――聞くからに大変そうです……。
YUKI:具体的には、企画とデザインの段階では機首をどこに納めるか悩みました。機首部分においては変形機構の複雑さもさることながら、戦闘機/人型のどちらのモードでもかっこいいデザインラインを出すために、MARUYAと相談しながら伸縮機構なども採用しています。
YUKI:また細かい機構的な部分では頭部の格納や太モモユニットのロールでもだいぶ頭を悩ませていました。特に頭部の格納は多軸での変形機構となるため、こちらが想定している回転軸とは違う別の軸が先に動いてしまうと思わぬところで干渉が発生してしまうことがあり、かなり試行錯誤を繰り返すことになりました。モモに関しましても実際に組んでいただければ「ああ、なるほど!」と苦労の跡が見え隠れするかと思いますのでぜひ楽しみにしていてください(笑)。
――それは気になりますね(笑)。これまでのM.S.Gノウハウが生かされている点、逆に本シリーズで新たに盛り込まれた技術などはありますか?
YUKI:M.S.Gの派生としてヘキサギアがあり、そこからノウハウのフィードバックもあります。前に作ったアイテムの良いところを受け継ぎタイトルが変わってもまた受け継がれていくというスタンスはヘヴィウェポンのスタート時から変わりません。遊び心地という点では頑丈な関節を持つバルクアームなどを参考に、不要なハードポイントを埋めるためのディテールカバーはメカサプライからの発想です。以前に開発されたものでも複数の要素が合わさることで新しい物に感じることがあります。「ガルダギア」はそういった技術の蓄積によって完成したアイテムだと思います。
――最新作は常に既存のすべてのシリーズの集大成なわけですね。
YUKI:また、よりM.S.G的な思想をもとに製作しているのはやはりフレーム部です。変形機構を有しながら組み換えの汎用性も持つという、一見すると相反するこの課題ですが、上記のさまざまなシリーズの経験を活かし自分流にカスタマイズいただける仕掛けをフレームの各所に盛り込んであります。
――なるほど。ちなみにお値段に関してです。完全新規設計で、この内容、ボリュームで10,000円どころか8,000円を切ったこの価格は、かなり思い切った価格設定だと思うのですが……。
YUKI:製造単価は基本的にある一定量までは作る数が多いほど下がりますから、価格設定は企画段階でどれくらい売っていくつもりがあるのかという覚悟の度合いで変わるといっても過言ではありません。特にオリジナルものはアニメやゲームなどのアイテムと違って事前に人気の度合いを測れませんので、販売予定数を決めるのに苦労しますね。ガルダギアの場合は自信作ということもあって、ボリューム感に対して価格も頑張っているんですよ。
――確かに、覚悟と自信が伝わるお値段です。
YUKI:価格を下げるために仕様を落とすという選択肢もありますが、そうやって作られたものを“娯楽であふれたこの世の中に出して本当に欲しいと思ってもらえるのか?”というのはいつも自問自答するところです。
――これからのラインナップの予定や、シリーズの展望はもう決まっているのでしょうか?
YUKI:今後に関して、まずは第1弾の「ガルダギア」が発売されて実際にそれを遊んでくれている方の様子を見てから考えたいですね。この方向性でよいのか、それとも違う方向性へ舵を切るのかを決めるのはまだ先かと思います。第2弾アイテムにしても、フレームから新規にして別のものにするのかはこれからの企画次第です。
――では最後にユーザーへの希望やメッセージがあればひとことお願いします。
YUKI:M.S.Gは<モデリングサポートグッズ>の略称です。ですが今はサポートの域を超えているのではないか?という声もよく聞きます。時代によって望まれるものが変わるようにM.S.Gも変化しているのは確かです。ですがこれからリリースされていく商品もみなさんのホビーライフをサポートするために生み出されたものに変わりません。いつも「豊かな時間を提供する」ということをコンセプトに引き続きいろいろなアイテムを作っていきたいと思いますので、どうぞ応援のほど何卒よろしくお願いいたします。
――本日はありがとうございました。
今後は「ガルダギア」フレームでの別機体が発売されるのか、それとも新フレームの別機体が登場するのか? いずれにせよ「ヴァリアブルフレームシステム」の展開から目が離せません!
DATA
ヴァリアブルフレームシステム01 ガルダギア【ベルーガ】
- プラモデル
- ノンスケール
- 全高:約190ミリ
- セット内容:本体×1、ライフル×1、レーザーソード×2、ランディングギア×3
- 設計:コトブキヤ
- 価格:7,480円(税込)
- 2022年5月発売予定
※写真は開発中のサンプルです。実際の商品とは一部異なる場合があります。
(C) KOTOBUKIYA
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