第二次大戦中に沈んだ『二式水戦(二式水上戦闘機)』の初撮影に成功! ほぼ原型を保った機体を海底で発見
OCEAN PLANET(代表:水中写真家・戸村 裕行)は、ミクロネシア連邦・チューク州(旧名:トラック諸島)ウエノ島近海で、第二次世界大戦中にこの地に配備され、何らかの原因で海底に沈むことになった日本海軍「二式水戦」の水中撮影にメディアとして初めて成功しました。以下、OCEAN PLANETのリリースを元にお届けします。
チューク州は、第二次世界大戦中、トラック島空襲などで撃沈された旧日本軍の沈船などを巡るダイビングのメッカとして有名なエリアですが、現在まで「二式水戦」の存在は知られていませんでした。2015年6月、地元民の作業中に偶然発見されたものの、その正体が分からず放置状態となっていたといいます。その存在は現地の人々にも知られておらず、また発見地点が私有地で許可なく潜ることができないエリアだったため、発見後もこの場所で潜水をした人はいなかったそう。
今回、OCEAN PLANETが、現地ダイビングショップ「トレジャーズ」の協力のもと、土地所有者の許可を得て撮影を敢行。軍事専門誌「丸」(潮書房光人社)編集部に鑑定を依頼し、「二式水戦」という確定がなされました。「二式水戦」は地上に現存するものがなく、大変貴重なものとなります。
発見地点の水深は約29m。どういった経緯でこの海底に沈むことになったのかは不明ですが、恐らく70年以上、誰にも知られることなくこの地に眠っていた機体と見られます。裏返った状態で、中央部のフロートなどに破損はみられるものの、ほぼ原型を保った状態での発見となります。
新発見!ミクロネシア・チューク州の海底に眠る二式水戦(二式水上戦闘機)
【チューク州(トラック諸島)について】
かつてはトラック諸島と呼ばれていたチューク州までは、飛行機で成田からグアムまで3時間半、グアムで乗り換え、さらに1時間半のフライトを要します。周囲は約200km、248もの島々からなる世界最大級の堡礁であり、第一次世界大戦終結後の国際連盟決議において大日本帝国の委任統治領となり、南洋庁の支庁が置かれました。
地理的に戦略的重要性を持ち、環礁を含む泊地能力の高さから日本海軍の一大拠点が建設され整備されましたが、1944年2月17日~18日になされた米軍による航空攻撃(トラック島空襲・海軍丁事件)によって多くの艦船・航空機を失い、その能力は無効化されました。現在は、その際に沈められた船などを潜るレック(沈船)ダイビングのポイントとして世界的に有名となっています。沈船だけでも30隻以上あり、そのなかには横浜に係留してある氷川丸の姉妹船・平安丸(特設潜水母艦)といった船や、映画の撮影に使われたという「富士川丸」、駆逐艦では文月などもあります。航空機では零戦や艦上攻撃機・天山、一式陸上攻撃機(一式陸攻)、二式飛行艇(二式大艇)などを見ることができます。
【二式水上戦闘機について】
日本海軍の水上戦闘機(中島飛行機製)。略符号はA6M2-N。連合国コードネームは「Rufe」と付けられ、零式艦上戦闘機11型をベースに仮称一号水戦として試作されました。基本設計は零戦と同じで、水上機とするために胴体の補強、腐食対策が施されています。量産された機体は、戦線拡大により太平洋各地に展開した海軍航空隊に配備されました。総生産機数は327機、終戦時には24機が残存していたそうですが、これらの機体は戦後処分されて現存する機体はありません。よって、今回海底で見つかった機体は大変貴重なものとなります。
【トラック諸島と「二式水戦」】
かつて、トラック諸島の島々には和名が付けられており、そのうち夏島と呼ばれていた島には水上機基地が整備され、第九〇二海軍航空隊が哨戒などに従事していました。昭和18年(1943年)10月に第八〇二海軍航空隊より二式水上戦闘機隊が移譲され、約10機程の水戦が配備されたという記録が残っています。
【今回見つかった「二式水戦』の今後】
チューク州ではレックダイビングが盛んであり、パーミット(入海料)を支払うことで、海中に沈んでいる航空機や沈船などを見ることができます。しかし、海中で見つかった、いかなる物も引き上げることは禁止されています。
今回見つかった「二式水戦」の場所は私有地となるため、パーミットを払ったとしても今の段階では潜ることはできません。今後、このポイントが一般のダイバーでも潜れるようになるかは土地所有者との相談となり、現在のところどうなるかは未定です。
<撮影者略歴>
戸村 裕行(トムラ ヒロユキ)
1982年3月3日生まれ。埼玉県出身。独学で水中撮影をしていたが、写真を基礎から学ぶために専門学校に入学。卒業後に本格的に水中写真家としての道を歩み始める。現在は世界の水中生物、水中景観の撮影をしつつ、ダイビング誌を中心に作品を発表しながら、オリンパスなどのカメラメーカーの水中カタログなどの写真も担当している。
また、ライフワークとして世界の海中に眠る第二次世界大戦中の日本の沈船や航空機などの取材を続け、現在までに約50隻にのぼる沈船を撮影。その内容は瀬戸内海に眠る、戦艦「陸奥」なども含まれ、その範囲はミクロネシア、フィリピン、パラオ、インドネシアと多方面にわたる。それらは軍事専門誌「丸」(潮書房光人社)にて「海底のレクイエム」と題し、毎号、人気のコンテンツとして連載が続いている。
※この記事は、OCEAN PLANETのリリースを元に一部再構成したものです。