すくすくスクラッチ(電撃ホビーウェブ版):自作の手動旋盤を使ってプロペラントタンクを自作する。

更新日:2016年2月5日 09:24

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岬光彰によるスクラッチ技術紹介連載「すくすくスクラッチ」が『ガンダムホビーライフ(GHL)』にて復活! ここではその出張特別版として、自作手動旋盤によるプロペラントタンクの作り方を解説します。GHL008の連載と合わせてご覧ください。

 

自作の手動旋盤を使ってプロペラントタンクを自作する

 

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TEXT/岬光彰

 

GHL008に掲載されております「すくすくスクラッチ」。久々の記事の作成で、勢い余って作成した記事がページの枠に収まりきらず、お蔵入りもちょっともったいない…ということで追加画像を用意して、電撃ホビーウェブで掲載させていただくことになりました。GHL008では、手動の旋盤として使える「トリメ箱」本体の製作と、約20センチの長さの砲身パーツを製作しているので、ホビーウェブではその応用編として全長約18センチのプロペラントタンクの製作方法を紹介します。

 

■手動旋盤(トリメ箱)

 

トリメ箱は古くから、陶芸や工業試作などの分野で使われてきた技法で、主に石膏を材料にして、ハンドルで軸棒を回転させながら、任意の形状のゲージで挽いて回転体を作るのに便利な道具です。今回はポリパテを使用して、長さが 約18cmで直径38cmから34cmにテーパーのかかったプロペラントタンク風のパーツを製作してゆきます。

 

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1:トリメ箱
自作したトリメ箱です。シナベニヤで適当なサイズに組んだ箱に内径6ミリのABSパイプ(8ミリ編み棒)の軸受けを対になる辺の上部に接着し、6ミリのステンレスパイプと回転ハンドルを接続したものを通しています。軸棒と平行になる辺には、ポリパテを挽くゲージを装着するための台が設置してあります。詳しい製作方法はGHLの記事に載ってますのでそちらを参照してください。

 

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2:ゲージ
プラ板で任意の形状&サイズに切り出したゲージをMDFボードに貼り付けて、台の上に装着して使用します。ゲージを乗せる台には両端にゲージと同じ幅に角材を貼り付けておいて(赤い部分)ゲージをスライドさせることができます。回転軸を強度があるステンレスパイプの両側受け式にして、ゲージ自体を固定式にすることで、軸の曲がりやゲージの歪みを抑え、長めのパーツや直径の大きなサイズのパーツに対応させています。

 

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3:回転軸とパーツの芯となるパイプの加工
回転軸(6ミリ径のステンレスパイプ)とパーツの芯材となる内径6ミリの8ミリ径のABSパイプ(編み棒)。その両者に貫通するように2ミリの穴を開けます。右の2ミリ真鍮線を通して固定します。

 

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4:回転軸のセット
写真のように、回転軸を「受け」に通してから、芯材となるABSパイプに通して、トリメ箱本体にセットします。

 

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5:ストッパー
右側がプラ板をコの字に組んだ「ストッパー」で左側は3の画像と同じ真鍮線の接続ピンです。

 

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6:軸棒とパーツの芯になるパイプの固定
写真のように接続ピンを貫通させて、軸棒とパイプを固定します。この作業で回転の際の空回りを防ぐことができます。

 

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7:ストッパー
軸棒の縦の動きを固定するため、軸受けとパーツの芯のパイプの隙間の軸棒の部分にコの字型に組んだパーツをかぶせます。これによって、軸とゲージの当たる位置が常に一定になります。
■大型プロペラントタンクの製作

 

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長さ18センチ、太さ34~38センチのテーパーのかかった円柱パーツの場合、ポリパテのムクで作ると相当な重さになってしまうので軽量化と材料の節約のために、スタイロフォームで一回り小さい形状の中子を作り、表面をポリパテの層でコーティングしてパーツを製作することにしました。

 

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8:スタイロフォームの加工①
芯材となるパイプに接着するため、必要なサイズにカットしたスタイロフォームの中心線辺りをV字にカッターでカットします。

 

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9:スタイロフォームの加工②
V字にカットした溝を丸棒に巻きつけた紙ヤスリで削って溝を半円に削りこみます。

 

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10:スタイロフォームの加工③
「10~11」の加工をしたものを2つ用意してパイプを挟んで接着します。スタイロフォームを溶かさないエポキシ接着剤を使用しました。

 

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11:スタイロフォームの加工④
カッターで大まかな形状を削りだします。

 

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12:スタイロの削り加工①
「4」の写真のゲージよりも2ミリほど小さなサイズに削り出したいので、ゲージの形状の内側の寸法に切り出し、両端を曲げ加工したプラ板の短冊と100番程度の粗めのペーパーを用意し、図のようにプラ板の裏側に角棒を2本ゲージの厚みの間隔で接着して、非接着で接続できるようにします。

 

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13:スタイロの削り加工➁
プラ板の短冊に100番のペーパーを両面テープで貼り付けてゲージに装着します。

 

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14:スタイロの削り加工③
スタイロフォームの中子の付いた芯のパイプと軸棒をトリメ箱にセットして、台にセットしたヤスリ付きのゲージを内側にスライドさせながら、ハンドルを回して旋盤加工をします。

 

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15:加工した中子パーツ
旋盤加工による切削加工の終了した中子パーツです。ゲージとの隙間は2ミリでこの部分にポリパテの層を形成することになります。

 

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16:コーティング材料①
スタイロフォームはポリパテの溶剤成分で溶けてしまうので、表面の保護のため使用します。写真は、通称「ボンボン」を作るための薄い紙「フラワーペーパー(100円ショップで購入)とスチロール樹脂用の接着剤です。

 

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17:コーティング材料②
エポキシ接着剤もコーティング材として使うことができます。写真のものは「クイックメンダー100g(800円程度)」です。薄く表面に塗りつけて使用します。

 

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18:コーティング加工
今回はフラワーペーパーをスチロール用接着剤でスタイロフォームの中子の表面に貼り付けてコーティングを行いました。薄い紙ですが、これでも十分な耐溶剤の効果があります。

 

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19:ゲージの離型剤処理
ゲージに付着したポリパテが剥がしやすいように表面に「シリコーンバリアー」を塗ります。ワセリンやメンソレータム等でも代用が可能です。

 

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20:ポリパテの盛り付け
ゲージをトリメ箱の台にセットして、クリップで固定し、ハンドルを回しながらポリパテをスタイロフォームの中子の表面に盛り付けて、ゲージの形状に挽いていきます。

 

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21:回転①
やや多めにポリパテを盛り付けたら、そのまま半硬化状態までハンドルを回し続けます。

 

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22:回転②
ポリパテが半硬化するまで回転させ続けることで回転によってパーツ側とゲージに付着したポリパテが分断されて、円柱状にパーツが成形されます。

 

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23:ゲージのメンテナンス
ゲージに付着したポリパテは完全硬化後に、パキッと剥がします。

 

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24:基本形状の完成
「22~25」の工程を数回繰り返して(今回は6回)プロペラントタンクの基本形状ができ上がりました。

 

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25:表面の状態
半硬化状態で回転させるため、表面はかなり粗い状態です。

 

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26:切削加工①
表面を削ってキレイに仕上げるため、写真&図解のような切削用パーツをプラ板と紙ヤスリで作ります。T字に組んだプラ板の表面のペーパーは、180番で「29」の加工で挟む各番手のペーパーの滑り止めとして使用します。

 

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27:切削加工②
「26」で作った切削用のパーツを、ゲージの台にセットしてプロペラントタンクのパーツとの間に必要な番手の紙やすりを挟んで、ハンドルを回して切削加工をします。今回は180番から600番程度まで番手を上げて仕上げていきました。

 

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28:端の曲面の切削加工
両端の曲面の部分は手でヤスリを当てながら旋盤加工をして形を整えています。

 

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29:完成
ポリパテの盛り付け→切削加工で、テーパーの付いたプロペラントタンクのパーツが完成しました。

 

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30:筋彫り加工
デザインナイフをゲージ板にマスキングテープで固定して、刃先を軽く押し当てながら回転させると簡単に円周へのスジ彫り加工ができます。

 

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31:完成
サフを吹いて完成です。画像2枚目の奥が今回作ったもので、その手前が同じ方法で作った少し小型のものです。一番手前はGHL008で製作した20センチの砲身パーツです。右奥はサイズ比較用のMrカラーのビンです。

 

今回製作したような大きなサイズの回転体パーツはあまり作る機会は多くないものの、いざ必要となると流用できるパーツも少なく、手作業で作るのはなかなか難しいので機会がありましたらぜひお試しください。

 

GHL008_h1_4mihon_C
ガンダムホビーライフ008

 

ガンダムホビーライフ 008
■2016年1月25日発売
■A4判
■定価(本体1,600円+税)
■発行:KADOKAWA
アスキー・メディアワークス

 

COVER
カバーモデル:RX-0 ユニコーンガンダム
製作:NAOKI

(C)創通・サンライズ

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