次回作のヒントもアリ!? バンダイキャンディ「スーパーミニプラ 戦闘メカザブングル」開発者インタビュー!<後篇>
話題の「スーパーミニプラ 戦闘メカ ザブングル」について、企画担当の田中宏明氏(バンダイキャンディ事業部)と、設計を手がけた柳沢 仁氏(アーミック)にインタビュー!
昨日(1月29日)更新の<前篇>に続く<後篇>では、さらに細かく、ザブングルの可動やギミックについて掘り下げていくと共に、こちらも気になっている方が多いであろう、ギャロップやトラッド11についてもお話をうかがいしました。
(関連記事はこちら⇒話題作誕生の秘密とは!? バンダイキャンディ「スーパーミニプラ」開発者インタビュー!<前篇>)
また、本稿では、初紹介となる次回アイテムのヒントも掲載しています! かなりの大型アイテムが予定されているようですが……?
【Profile】
▲ 田中宏明(たなか・ひろあき) | ▲柳沢 仁(やなぎさわ・ひとし) |
現バンダイ キャンディ事業部 玩具菓子チームマネージャー。多くのハイターゲットトイの開発を担当し「超合金魂」「ROBOT魂」シリーズなどにも深く携わる。 | アーミック取締役。「ROBOT魂<SIDE AB>」シリーズや、R3「ウォーカーギャリア」などの開発に携わる。 |
■「スーパーミニプラ」の仕様に迫る! (ギミック&ギャロップ/トラッド11篇)
(前篇から続き)
――ちょうど関節に話になったところで、「スーパーミニプラ」の可動についておうかがいしたいと思います。
田中宏明氏(以下、田中):
可動についても湖川さんの画稿のイメージや、オープニングなどの印象的なポーズをとれる、そういったところを目指しています。
▲『戦闘メカ ザブングル』オープニングより。ダイナミックなアクションですが、これを再現することを目標に「スーパーミニプラ」は開発されたとのこと。 |
(アクションポーズの写真はこちらのサイトから確認できます⇒バンダイキャンディ事業部内特設サイト)
柳沢 仁氏(以下、柳沢):
必要最小限の可動は入れよう、というかたちでやっています。特にオープニングでのザブングルが地面を滑走するシーン。あれは確実に再現できるようにしたい、と思いましたので、足首には気を使いました。ザブングルはデザイン的にスネの部分に足首をカバーする大きなパーツがあるので、これが可動のネックになるんで、結構工夫しましたね。
▲足首の可動範囲(上)と、キットでの関節構造(下)。かなり大きな可動範囲となっており、接地性抜群。 |
田中:
アクションフィギュアではないので、多重関節で超絶可動とか、そういうことはありませんが、必要十分な動きで、まずはオープニングのイメージでポーズをとれるように頑張っています。
もちろん、より上を目指す方はぜひ腕を振るっていただければ。PS素材ですので、改造もし易いと思いますし。スカートの部分もガンプラ的なフォーマットとは、少し違う動きをしています。
柳沢:
フロントとサイドを一体化して、フンドシ部分に接続したボールジョイントで可動するようにしているんですが、これも部品を減らす工夫ですね。それぞれ独立して動いてしまうと、その数だけ可動部が必要になってしまうので、どんどんパーツが増えちゃうんですよ。食玩でこのサイズなんで、あんまり細かい部品を入れるのもためらわれましたし。
田中:
このあたりコスト的な部分もありますし、ウォーカーマシンって兵器じゃなくて、車だよね、と考えると、腰はきっとバンパーかカウルみたいなイメージで、あまりバラバラと動かない方がいいよね、という気持ちもちょっとありますね。あとは、腰や首も効果的に動きます。よく動くザブングルというと、アクションフィギュアの「WM in ACTION!! (OFFSHOOT)」くらいで、超合金魂も変形重視だったので、自分の中でもこれは新鮮です。超絶可動では無いんですが、ザブングルとしてここまで動く、というのもポイントですね。
柳沢:
可動のために、パーツの空間やスキマも多いんですけど、そこも割り切って作っているところですね。プロポーションに関してはシンプルだけど劇中イメージに近い、2016年だったらコレがベストだろうというものは完成させられたので、そういった部分が気になる方は手を入れていただければ、もっと良くなるよ、と。
ある意味、食玩・ミニプラだから許される仕様であるかもしれないですよね。
――結構、冒険的ではありますね。
田中:
冒険的といえば、こちらも本アイテムのオリジナルギミックで、ロケット砲やミサイルランチャーは、劇中ではブングル・ローバーにロープでグルグルとくくりつけていたんですけども、今回は武器を直接装着できるようになっています。設定にはありませんが、食玩のプレイバリューとして、フル装備のザブングル・カーを楽しめるようになっています。
▲劇中ではロープで固定されていましたが、「スーパーミニプラ」では脚部のウイングに装着する独自のギミックを搭載しています。 |
――さて、それではトラッド11とギャロップタイプについてもお聞かせください。
田中:
ギャロップ、トラッド11は柳沢さんのこだわりもあっての登板です。むちっとした劇中のフォルムを再現したいと。
――プラモデル版は、たしかにメカメカしい形状のギャロップでした。
柳沢:
アニメや設定画ではどれもムチッとした感じなんです。当時のプラモデルは手足が細くて、精密で格好良い、メカニックとしてクールなイメージでした。ただ、やっぱり劇中や設定画イメージの立体が当時から僕は欲しいと思っていて。でも、「ギャロップを商品化」なんていう機会はなかなかないじゃないですか(笑)。今回、ザブングルをミニプラのフォーマットで、分割して販売してみようか、と田中さんがおっしゃったので「じゃあほかの箱は何を入れますかね?」という話の流れの中で、「武器を別にして、小さいウォーカーマシンを入れる」「あ、じゃあギャロップをやりましょう!」という話の流れでした。
――そこで、この2体に白羽の矢が。
田中:
最初の頃はクラブタイプを上半身と下半身で分けて……という話もあったんですけど、コストの問題で実現しませんでした(笑)。
柳沢:
クラブタイプだと、もう何がメインか分からなくなりますよね(笑)。
田中:
そこまではできなかったですね(笑)。今回思ったんですけど、どのウォーカーマシンもやっぱり好きなんですよね。ザブングルという主人公機を良い物にしたい、という思いも有るんですけど、小型ウォーカーマシンをわらわら買って、自分の好きなように改造したい、仕上げたいっていう。
――どちらも色が2種類用意されるとのことでした。
田中:
はい、サンドカラーとグリーンですね。皆さん機体へのイメージがそれぞれあると思うので、どちらかだけにはしたくない、と。そこで登場頻度が多かったサンドカラーとグリーン、どちらかを封入しています。機体色が複数用意されているというのは、当時のプラモデルの「★ウォーカーマシンの設定には特に決まった塗装はありませんので、自由に塗装してください」という、組立説明書の注意書き。あの自由な感じも意識しています。ガンプラブームでプラモデルを学んだ小学生が、次の瞬間「好きに塗りな」って突き放されてしまう衝撃。しかも「こんなパターンはどうですか」って載っているのが複雑な迷彩塗装! 小学生には無理! っていう。あの突然荒野に放り出されたような感じも良い思い出なんです。
――’80年代のプラモブーム世代は、食玩キットへのある種の郷愁や憧れがあると思います。
田中:
今回のスーパーミニプラは、従来のミニプラフォーマットでもあり、かつてのアオシマさんの「ミニ合体」的ともいえる「低価格分割キット」を愛する気持ちが源流にあります。あと、直接的な影響はないのですが、郷愁という点で外せないのが、カバヤ食品さんのダグラムガムやボトムズガム。世代として「あの異質な食玩」へのリスペクトはありますね。そもそも我々の、ガムと合わせてトイやキットを販売する、というその流れ。それを作ったのは、ビッグワンガムではないかと思います。あの当時の「すごいプラモデルがお菓子売り場で100円くらいで売ってるぞ」という衝撃。それは、食玩のルーツを語る上で欠かせないですし、ダグラムガムやボトムズガムに至っては、「ツヴァークが出るんなら、こっちで集めるよ」って(笑)。完成度だけじゃなくラインナップの妙も含めて、食玩の身軽さや懐の深さは、当時から脈々と続いてるものです。お菓子だから、食玩だからこその身軽さで、模型売り場やオモチャ売り場でできないことだってできるんだよ、っていうスピリッツがあるかな、と。 模型であるからには模型の様式美が、オモチャであるからにはオモチャの様式美があるじゃないですか。でも、食玩はそのハードルが少しだけ低いんです、きっと(笑)。 今回のザブングルの変形方法は、食玩だから許されるんじゃないかな…っていう、そういう大胆な差し替えです。また、サイズ的には1/144に近いんですが、特に模型的スケール表記はしていません。スケールに縛られると後々自由でなくなってしまうので(笑)。
――食玩にして模型にあらず、という。
田中:
……と言いながらも、今回のキットが支持を受けたのは、やはり当時のバンダイ模型(現ホビー事業部)のプラモデルあったからなのは間違いないことで、何よりものリスペクト先は、当時の素晴らしい完成度のキットシリーズですよね。その原体験があるからこそ、みんなザブングルのキットに反応してしまうんだと思います。あの、オーパーツ的な完成度。当時の記憶が美化されているかと思いきや、今見ても凄い。「あのとき良いキットに出会えた」という思い出を30何年経っても忘れられない人がやっぱりこれだけいたのか、というのが今の感想ですね。けっして、リメイク作品が作られたわけでもなく、何があったわけでもないのに。
■「スーパーミニプラ」のこれから
―― さて、ちょっと気が早いのですが、次のアイテムが気になっている皆さんも多いかと思います。
田中:
特別サービスでちょっとだけお見せいたします。ザブングルとも縁深い、赤いロボットでして……。
――また、これは、すごいものが! しかし納得のチョイスですね!
柳沢:
これは、より暴走してますね。
田中:
暴走してますね。組み合わせると製品サイズはザブングルの1.5倍くらいになるでしょうか……。ただ、まだなにも決まっていません(笑)。
柳沢:
だいたい当時のあのサイズ感です。
田中:
スーパーミニプラは、ひとつの機体を複数に分けて販売するフォーマットに則って始まったのですが、そこに捕らわれすぎず、「食玩は自由である」っていうところを体現していくシリーズになればと思っています。’80年代のロボットも大好きなので、それをやるという野望はもちろんあるんですけど、必ずしもこの流れだけではない展開をにしたいですね。例えば、サターンロケットですとか。ああいう実在のものとか、そう、カウンタックでもいいな、って。
柳沢:
未来の車が合体するとスーパーカーになるような(笑)。
――最後に、読者のみなさんにメッセージをいただけますか。
田中:
スーパーミニプラというアイテムはいろんな意味で可能性の商品、シリーズだと思っています。ザブングルにかけられている期待や、このあとの展開に期待していただいてる皆様にも応えたい。一方で、もっといろんな広がりを可能性として持っている、自由な”食玩”というフィールドの商品です。「こんなのもできるんじゃないか、あんなのもできるんじゃないか」という、皆さん意見を寄せていただく機会も作りたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。
柳沢:
僕自身がやっぱり’80年代ロボットアニメにどストライクの世代なので、こういうアイテムに関わらせて貰えるだけで本当に感謝しているんです。なので、この状況を少しでも長く続けたいな、と思っていますので、応援をしていただきつつ、その皆さんの期待に違わぬように努力していくつもりですので、よろしくお願いします。
――本日は、どうもありがとうございました!
以上、バンダイキャンディ事業部「スーパーミニプラ」開発者インタビューでした! 現在好評受付中の「スーパーミニプラ 戦闘メカザブングル」が、さらに待ち遠しくなる内容でしたね。
そして、次アイテムのヒントの赤いメカは一体……? 想像が膨らみます!
これからも電撃ホビーウェブでは「スーパーミニプラ」の情報を追いかけていきますのでご期待ください!
■インタビュー:佐野達郎/電撃ホビーウェブ編集部
<DATA>
スーパーミニプラ 戦闘メカ ザブングル
■PS(ポリスチレン)製組み立てプラキット/ガム(ソーダ味)付属
■全高:125ミリ(ザブングルWM時)、55ミリ(トラッド11タイプ/ギャロップタイプ)
■価格:各850円(税抜)
■発売元:バンダイキャンディ事業部
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