あなたの身近にもある?かもしれない怪奇現象を描く純和式ホラー『残穢【ざんえ】―住んではいけない部屋―』

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集合住宅の部屋がいわくつきの物件だった。そんな類の怪談はよく耳にするところでしょう。実際そのようなホラー小説や映画は数多く作られていますね。この作品もタイトルずばりが、そのものな感じです。が、さすがはホラー小説で高い評価を得る小野不由美原作ということで、ヒネリがきいた展開が絶妙です。一体どんな恐怖が降りかかってくるのか、ぜひ劇場でお確かめください!

※一部解説にネタバレを含んでます。

 

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 文/百鬼

■ストーリー

読者からの体験談をもとに怪談を執筆する小説家の「私」は、その中の一通、「久保さん」からの手紙にあった、“部屋で聞こえる奇妙な音”に興味を持ち連絡を取った。幾度かの手紙のやり取りから、「久保さん」の住むマンションでは、なぜか住人が居つかない部屋があり、「久保さん」の部屋もまさに、そんな入れ替わりの激しい部屋だった。さらに、彼らがマンションを出た後のことを追跡すると、自殺や心中、殺人事件などとんでもない事態になっていた。「私」は、「久保さん」とともに、マンションの建つ土地そのものの歴史を辿ることになり、さらに不可思議な出来事がこの場所で起こっていたことを知る。そして、さらに時代を遡っていくうちに、事態は予想を遥かに超えた様相を呈していく……。

 

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■解説

原作はTVアニメ化もされた大人気ホラー小説『屍鬼』の小野不由美。本格的なホラー小説ながらも、第26回山本周五郎賞受賞ということで、同賞の候補作で終わった『屍鬼』のリベンジを果たした作品だ。また、同時期に刊行された怪談集『鬼談百景』と対を成す構造にもなっていて、今回の映画化にあたっても、この『鬼談百景』収録のエピソードが冒頭に引用されているので、そのあたりも要チェックだ。

 

とにかく、この作品は実に怖い。ものすごく怖い作品になっているのだけど、たぶん、表面的にはあまり怖くないかもしれない。まず、主人公の「私」を演じているのが竹内結子なのだが、元々は“怪談”系ドラマ出身だし、映画初出演も『リング』だったりしたわけで、じゅうぶん“スクリーミング・クイーン”になる余地もあったはずなのに、その後のキャリアの中で、どちらかというと“天然”系女優へと転身してしまった人。本作でも、怪談作家という役柄ながら、というか、怪奇系作家にありがちなことだが、本人はまったくの“霊感ゼロ”体質で、どこへ行こうとも“何も起こらない”のだ。つまり、怪奇現象が起こるのは、常に“手紙の内容”だったり、“人から聞いた話”の再現シーンだけ。

主人公であるはずの、「私」のまわりでは、ほぼ平穏な日常だけが描かれる。

かなり怖いホラーなのに、主人公はけっして“叫ばない”のだ。

 

もうひとりの主人公「久保さん」を演じるのが橋本愛。彼女もホラーとは縁の深い女優さんなわけだが、この「久保さん」も(原作とは少し設定を変えているけど)、どちらかというと理知的な人物で、自分の部屋で起こる奇怪な物音に恐怖よりも先に興味を覚えて、「私」とともに調査したりするような人なのだ。つまり、“叫ばない”。

画面上を“貞○”みたいなオバケが這い出してくることもなく、“伽○子”的なずりずりも出ない。もちろん、俊○クンみたいな色白過ぎる子どもがエレベーターの外に立っていることもない。

 

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それでも、この作品はかなり怖い。

本作で扱っている怪異は、タイトルの如く“穢れ”そのもの。その意味だけなら、“伝染”系のホラーと言えないこともないのだが、日本古来の習慣や因習に根差しているので、基本的に逃れる術がない。いや、正確にはこの“穢れ”を避けるために、古来より“ハレ・ケ”の概念を体系化したり、「方違え」などの各種“作法”を作り上げてきたのだろう。

 

というと、かなりムツカシイ作品に聞こえるかもしれないけど、要するに、「引っ越したアパート」が“穢れ”ていたら、どうしよう? 「遊びに行った」けど、そこが“穢れ”ていたら、どうしよう? 「葬式」に参列したけど、“穢れ”を落とすにはどうしたら? などなど、普通に生活していても“穢れ”にまつわることからは、けっして“逃れる術はない”ことを思い知らされる。

 

しかも、「私」と「久保さん」が調査を深めていくうちに、この問題のマンションが侵された“穢れ”の根がいかに深いかが、やがて明らかになっていく。まさに何でもない日常に潜む闇が垣間見られるのだ。この映画で描かれているような“穢れ”は、実はどこにでもあるかもしれない。

主人公がいかに鈍感だろうが天然だろうが、まったく関係なく怪異は起こる。簡単に自分の身に置き換えられるリアルな恐怖。本作で描かれる怪異とは、まさにこれだろう。

 

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主人公の「私」。本作の主人公には明確な姓名が存在しない。そして、「久保さん」というのも、怪談でよくある“仮名”なのだ。長編小説だけど、全体を怪談本の形式になぞらえているということ。

 

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「久保さん」は、原作では編集プロダクションのライターだったが、映画では橋本愛に合わせて大学生へと変更。そこで細かい調査には、大学の仲間たちも参加しているという設定になった。このあたりは、ホラーというよりはミステリーの雰囲気が濃厚だったりもする。

 

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「私」と同業者で人気怪奇作家の「平岡芳明」を演じるのは、佐々木蔵之介。原作に登場する“実在の作家”平山夢明と東雅夫を合わせたキャラクター。もちろん、佐々木蔵之介が演じる以上は、ちゃんとしたコメディリリーフ。シリアスなシーンに、しっかり笑いを放り込んできたりするのだ。

 

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クライマックスのワンシーン。「私」が首に巻いているコルセットに注目。じつは主人公のまわりでも、それなりに“凶事”は起きていることになるのだが、「私」は一向に気にするそぶりもない。このあたりも、他のホラー作品と一線を画すところとも言えるだろう。

 

 

 

<DATA>
残穢【ざんえ】―住んではいけない部屋―
監督:中村義洋/原作:小野不由美/出演:竹内結子、橋本愛、佐々木蔵之介、坂口健太郎、滝藤賢一、ほか
配給:松竹
上映時間:107分
2016年1月30日公開
⇒上映スケジュールはこちら

 

 

<関連情報>
残穢【ざんえ】―住んではいけない部屋―オフィシャルサイト

 

(C)2016「残穢-住んではいけない部屋-」製作委員会


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