大河原邦男氏×Kelvin Sau氏(threezero)対談! 『ボトムズ』&スコープドッグについて語る!

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インタビュー●島田康治(タルカス)/編集●電撃ホビー編集部

香港アートトイの旗手threezeroは、卓越した造形力と可動ギミック、あたかも模型作例のような汚しや錆の表現を極めた塗装技術を有する、香港有数のホビーメーカーである。

 

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▲threezeroロゴ

 

これまで映画キャラクターや世界的ゲームタイトル、日本のコンテンツなどをモチーフに、ハイクオリティなフルアクション塗装完成品モデルを生み出してきた彼らが今回挑むのは、メカニックデザイナー・大河原邦男氏の代表作『装甲騎兵ボトムズ』の主役機スコープドッグ!! 造形やギミック、さらに塗装にも期待が高まる本製品の最新試作モデルを前に、今回はオリジナルをデザインした大河原邦男氏と、香港より来日したthreezeroアートディレクターKelvin Sau氏に、製品についてはもちろん、スコープドッグの魅力について語って頂いた。

 

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大河原邦男/右
1972年に『科学忍者隊ガッチャマン』にてメカデザイナーとしてデビュー。『機動戦士ガンダム』から『勇者』シリーズや『タイムボカン』シリーズなど、幅広いジャンルの作品にデザインを提供する、名実共に日本を代表するメカニックデザイナー。滋賀県佐川美術館にて6月16日まで「メカニックデザイナー大河原邦男展」が開催されている。

 

Kelvin Sau(ケルヴィン・サウ)/左
香港在住。threezeroにてアートディレクターを担うデザイナー。これまでマジンガーZやゲッターロボ、ゾイドといった国内メカキャラクターを卓越したセンスでアレンジメント。大河原氏との協同作業となった「フルメタルゴースト(重甲侍鬼)」では、「和」を強く意識したデザインを描いている。

 


 

 

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▲2月のC3 HongKong サンライズブースにて展示されていたthreezero(スリーゼロ)の1/12スケール「SCOPEDOG(スコープドッグ)」。

 

――まずは大河原さんとthreezeroの接点からお聞かせください。

 

大河原邦男(以下、大河原)氏:

バンダイ香港(BANDAI NAMCO ASIA CO.,LTD)の泉(勝洋氏)さんから紹介されて、それからうちの事務所にKelvinや社長のKimさんが訪ねてこられてね。それが6年前くらい。それからは年に2回くらい会っていますね。

 

――バンダイとthreezeroがコラボしたB/3ブランドの「重甲侍鬼(フルメタルゴースト)」のときですね。

 

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▲「重甲侍鬼(フルメタルゴースト)」。
※現在は販売終了しています。

 

Kelvin Sau(以下、Kelvin)氏

それはもう大興奮でしたね。代表のKimから「今度大河原さんと仕事するよ」と言われたときは、嬉しくて、信じられないくらいでした。事務所へお邪魔するという前日は、嬉しくて眠れませんでしたね(笑)。こうしていっしょにお仕事できるのはありがたいし、誇らしいことだと思っています。昔からファンで、憧れの人ですから。

 

――大河原さんが海外のメーカーにオリジナルデザインまで提供するというのは、意外と珍しいですよね。

 

大河原氏:

そうですね。threezeroさんが初めてでしたね。「重甲侍鬼」の場合はオリジナルですが、スコープドッグの話を聞いたときは、どうアレンジするかな、と思っていました。

 

――数あるロボット作品のなかで、『装甲騎兵ボトムズ』を選んだ理由は?

 

Kelvin氏:

大河原さんのデザインされたロボットのなかでも特に有名で、ぜひやってみたいと思ったのがひとつ。あとは作品の世界観が持つ魅力ですね。こういう汚れた量産品のロボットが戦うような世界観が、threezeroの得意とするテイストにピッタリだと思ったんです。

 

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▲画像はOVA『装甲騎兵ボトムズ レッドショルダードキュメント 野望のルーツ』より。

 

――Kelvinさんご自身もお好きだったのでしょうか?

 

Kelvin氏:

小学生の頃から、プラモデルのスコープドッグは何個も買っていたし、大好きでした。『ボトムズ』という作品自体は、大きくなってからDVDで初めて観たので最初は模型から入ったことになります。やはりミリタリーライク的なところが気に入っています。

 

大河原氏:

私にとっての『ボトムズ』というのは、今までの作品とは違って、こういうものがやりたいと、初めて自分からプロデューサーにアプローチした作品なんです。というのも、その前にやっていた『太陽の牙ダグラム』の第1話を観るころには、次は4メートルのサイズのロボットだなと決めていたんですよ。このサイズならパイロットと機体の対比も判りやすい。高橋(良輔)監督にも、こういうジープっぽいものをやりたいという気持ちはあったみたいですね。

 

――スコープドッグの“リアル”なデザインは、Kelvinさんがそうだったように、作品を知らなくてもプラモデルから入ってこれるだけのインパクトがありました。

 

大河原氏:

ガンプラが社会現象になるくらい売れたあとに、タカラ(現・タカラトミー)さんがプラモデルを売りたいというので、共同してデザインしたのが『太陽の牙 ダグラム』だったんです。その次がこの『ボトムズ』でした。でも最初スコープドッグのデザインはタカラさんに評判悪かったんですよ。特にこの頭がね(笑)。

 

Kelvin氏:

人間ぽくないからですか?

 

大河原氏:

いえ、丸い頭がタコに見えるって。だから日本では「スコタコ」って呼ばれていたんですよ。

 

Kelvin:

それは初めて知りました(笑)。

 

大河原氏:

あのターレットは、顕微鏡の対物レンズとか8ミリ映写機のやつを、監督がそのままつけようって言うんですよ。私は照れてしまって、そのままではマズイのではとも思ったんですが、監督はいやそのままでいいんだと。アームパンチにしても、ああいう演出をしたいからというので生まれたんです。それで薬莢が飛び出すようにした。降着ポーズにしても、私は立ったまま乗れるようにと、ヒザにステップ代わりのパイプを付けていたんですが、あのポーズを取った方が乗り降りしやすいだろうということで、かなり後の方で考えられたものなんです。ローラーダッシュも、歩かせると作画枚数がかかるから、だったらこう滑走するようにすればそれも必要ない、ということで生まれた設定です。やはり監督が演出上必要だなと考えたものが、ちゃんとスコープドッグの特徴になっているんですね。

 

▲threezero(スリーゼロ)1/12スケール「SCOPEDOG(スコープドッグ)」の原型。

▲threezero(スリーゼロ)1/12スケール「SCOPEDOG(スコープドッグ)」の原型。

 

――threezeroのアイテムは、これまでの日本のメカキャラクターではデザインにアレンジを施しているものがほとんどでしたが、今回の「スコープドッグ」は大河原さんのデザインを、かなり忠実に製品化しているように見えます。

 

Kelvin氏:

threezeroが過去にコラボした、ダイナミック企画さんとの「ゲッターロボ」「マジンガーZ」、タカラトミーさんの「ZOIDS」などについては、ディテールだけではなくシルエットやプロポーションまで、全部私の手でデザインさせてもらっているんです。最初はスコープドッグもそうやってアレンジをきかせるやり方で作ろうと考えていたんですよ。何枚かアレンジしたスケッチも描いてみたんです。もっと頭が小さくて脚が長くて、ボディももう少し前に突き出ているような。

 

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▲Kelvin氏による初期のスケッチ。実際に立体化されたものと比較するとプロポーション・ディテールともにかなりアレンジの入った、ある意味で“threezero”らしいバランスとなっている。

 

Kelvin氏:

しかし結局、もとのデザインがベストだという結論になりました。足の短さですとか腕の太さみたいなものが、やはりスコープドッグ「らしさ」だと思ったんです。変にアレンジすると、それはもはや『ボトムズ』ではないと気づいてしまった。大河原さんが描いたデザインは完成されているものだから、変える必要はないという結論になったんです。そこでシルエットを崩さずにディテールを追加することだけを心がけていました。最終的には、デザインから3Dに起こしたときに、さらにもっと手を太く、足を短くという調整を行っています。

 

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▲その後、進行した状態のKeivin氏のデザイン画。スコープドッグ本体のプロポーションがかなり基のデザインに近づいているのがわかる。

 

大河原氏:

多少のアレンジはできたとしても、イメージを変えるまでにはいかないと思いますよ。(スコープドッグのデザインは)作品と一体になっているところもありますからね。実は、ちょうどこの取材の前に、小説用の新しいスコープドッグの画稿をサンライズさんに送ったばかりです(笑)。

私にとっても現在進行中なんですよ。『ボトムズ』という作品自体、ディレクターが世界観というものをかなりしっかりと持っているので、私がもっとかっこよく(手足を)伸ばしたいと言っても、世界観からはずれるからダメだと言われてしまう。だから30年間ずっとこのラインですね(笑)。

 

――スコープドッグの生みの親である大河原さんですら、ある意味でいじることができない絶妙なバランスなんですね。

 

大河原氏:

実はブラッドサッカーは、もっとカッコ良い方向に持っていきたくて描いたんですよ。かろうじてあれは許してもらえたんですが(笑)。それ以後、さらにかっこよくしようとすると、もっと手足を短くして“ずんぐりむっくり”にして欲しいと言われるんです(笑)。

 

――そうなると、threezero版「スコープドッグ」の具体的なアレンジはどのように行ったのでしょう?

 

Kelvin氏:

ぱっと見たときの印象は変えずに、ディテールを追加しています。例えば手首などのアーマーは厚くして、さらに側面に実際の兵器の装甲のような積層構造に見えるようなアレンジを入れています。あと肩アーマーは大きめにして、防御力の高い感じを出しました。全体的なところには手を入れていません。

 

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▲手首の装甲や各部のリベットなど、戦闘兵器を思わせるディテールが追加されているのに注目してほしい。

 

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▲こちらは各部の装甲板の3Dレンダリング画像。装甲板の裏には補強材のディテールが施されており、実に”兵器”らしい仕上がりとなっている。

 

――特徴的なギミックとして、股関節が3段階で位置を変えられるようになっていますね?

 

 

 

▲脚の長さは、太もも基部に設けられたギミックにより、3段階で調整が可能となっている。

▲脚の長さは、太もも基部に設けられたギミックにより、3段階で調整が可能となっている。

 

Kelvin氏:

今回のスコープドッグのテーマとして「アストラギウス銀河の香港みたいな都市で運用されている機体」という切り口で考えているんですが、舗装された固い地面で歩行する際のサスペンションとして股関節に上下機構を付けようというアイデアです。これによって脚の長さの見た目を好みで調整できるようになっています。

 

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▲股関節。画像は一番下段の位置に脚部を動かした状態。

 

――あとは、胸の開閉パネルについて、細かく造形されていますよね。

 

Kelvin氏:

これも、都市空間で運用するとなると、やはりハッチを簡単に開けられるのは問題だろうと思ったんですね。そこで指紋認証などのセキュリティを設定したんです。

 

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▲造形されない部分まで細かく設定されており、それが本アイテムに卓越したリアルさを与えている。

 

大河原氏:

『ボトムズ』の世界はもっとアナログな世界だと考えていたので、そういうスマートな機構は入れないようにしていたんですね。でもたしかに香港のような都市で運用するとなると、こういう設定もアリでしょうね。

 

――装備品やギミックにもthreezeroらしさを感じますね?

 

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Kelvin氏:

実際に、腰に付けているアームパンチ用のカートリッジを前腕内にセットすることができます。腰にはヘヴィマシンガン用のカートリッジを腰に付けている機体もあるので、どちらも取り付けられるようになってます。

 

大河原氏:

いいですね。これまで日本のメーカーさんや個人でキットを作られている方の作品などで、スコープドッグをいくつも見てきました。それらにはすべて作った方の愛情が感じられました。だからどの商品もすごくいいんです。ファンは濃い人が多いので、ヘタに手抜きのモノを作れば叩かれますからね(笑)。

 

Kelvin氏:

そうやって長年、いろいろなメーカーやファンから支持されてきたのは、やはりデザインが完成されていること、ミリタリーとしてのリアルさを持っているからだと思います。戦車とかジープのエッセンスが感じられるので、身近に感じられるのが、長続きの理由でしょうね。

 

大河原氏:

『装甲騎兵ボトムズ』では、監督とキャラクターデザイナー、作画監督は終戦前後の生まれなんですよ。だから作品には第二次世界大戦の印象を引っ張ってきている。進駐軍のジープのかっこよさに惹かれた監督が、まだ砂利道が多い東京で、水たまりに落ちた油のギラギラした感じ、そういうイメージが欲しいと言うんです。それが判るのは、日本では1947年生まれの私くらいまででしょうね。『ボトムズ』のATの素材は明確に鉄とは言っていませんが、鉄のイメージがある。いまのロボットは強化プラスチックのイメージ。鉄を組み上げてキャラクターを作れる世代は我々が最後なんですね。

かなり特殊な作品なんです。だから『ボトムズ』をやりたいというメカデザイナーは少ないんですよ。『ガンダム』やりたい人は多いですけどね(笑)。

 

――threezeroの「スコープドッグ」の試作をご覧になっていかがですか?

 

大河原氏:

私が描いた設定はアニメ用に作ったものなので、ディテールについては入れたくても入れられないんですよ。少ない線でもミリタリズムを感じられるという、ギリギリのラインだった。だからこういうふうに立体化する場合は、あのラインだけではちょっと少ないんですよね。モデリングする人の感性で構築していくというのは正しいやり方だと思います。いろいろな解釈があると思うんですけど、私が作ったのはあくまでアニメのデザインなので、それを見た人がそれぞれの解釈で立体にしてくれたらいいと思っているんです。

 

――鉄のイメージが似合うスコープドッグが、どんな仕上がりになるかも気になるところですが?

 

Kelvin氏:

いまの時点では、threezeroらしくしっかりと汚しを入れたものと、汚しが控えめなもの、2つの異なる塗装の製品を出そうと考えています。

 

大河原氏:

塗装に関してはもう完璧ですから。信頼しています。

 

――ちなみに大河原さんがいちばん好きなATは?

 

大河原氏:

やはりいちばん最初に描いたスコープドッグですね。でもね、私の場合、デザインにあまり時間をもらえないので。40年以上やっているけど、今見れば直したいものばかりですよ。デザインというのは手を入れればそれだけ良くなりますからね。

 

Kelvin氏:

大河原さんは、今でも常に新しいアイデアをデザインに投入し続けているのがすごいと思います。ガンダムの新しいデザインも続けてますし。毎回、これが新しいポイントとなる要素が必ずあります。非常に尊敬しているところです。

 

――最後に、デザイナーから見た、この商品の魅力をお聞かせ下さい。

 

Kelvin氏:

装甲板の裏側にまで気を使ってモールドを入れています。指関節もフル可動。保持力もきつめにしてあるので、ライフルもちゃんと持てるようになっています。設定画のようにヒジを伸ばしたまま降着ポーズを取らせることもできます。

 

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大河原氏:

みんな悔しがるでしょうね(笑)。threezeroさんがトコトンやっちゃうと、日本のメーカーは負けますよね。

 

Kelvin氏:

threezeroのスタッフはみんな、トイやフィギュアが大好きですから。妥協せず、常に熱量を持って製品開発に挑んでいるんです。

 

――そんな熱意をもって生み出される「スコープドッグ」。今後の情報をお届けするのが楽しみになってきますね。それでは本日はありがとうございました!

 


スコープドッグをデザインした大河原邦男氏とthreezeroのKelvin氏の対談、いかがでしたか? 製品化されるthreezero版「スコープドッグ」への期待が高まります。

 

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▲「スコープドッグ」には1/12スケールのパイロットフィギュアが付属する。

 

また、「スコープドッグ」には同スケール(1/12)のパイロットフィギュアが付属! 耐圧服の縫製やヘルメットやアーマーマグナムのディテールなどこちらも見どころが多い内容となっています。

 

もちろん、「スコープドッグ」のコックピット内に座らせることも可能!

 

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まだまだ多くの秘密が隠れていそうな「スコープドッグ」の情報をこれからもしっかりとお届けしていきますので、お楽しみに!

 

DATA

SCOPEDOG

  • 1/12スケール塗装済み完成品
  • 発売時期未定
  • 価格未定
  • 原型製作:threezero

※画像は開発中のものです。最終製品とは異なる場合いがございます。

 

関連情報

ボトムズWeb

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(C)サンライズ

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