カルト漫画「少女椿」待望(?)の実写映画化!
「少女椿」の実写作品がついに公開されます。原作は1984年に単行本化され、その後アニメ、舞台劇にもなっているのでご存じの方もいることとは思いますが、アニメ化された作品でありながら、キワモノ的要素満載な内容からでしょうか、映像ソフトは一般販売されていないという、なかなかカルトな作品です。
本作のみどころといえば、やはり「見世物小屋」とその住人たちがどのように描かれるかということでしょう。R15+指定の映画になっていますので、まさに「見世物小屋」を覗き見するちょっとイケない気分で見に行ってみてください!
※一部解説にネタバレを含んでます。
ストーリー
どこか見たことあるようなないような時代の東京。父親不在で母の面倒をみるため、少女みどりは、造花売りで生計を立てていた。ところがある日、その母親はネズミに喰われて死んでいた。天涯孤独のみどりは赤猫サーカス団に拾われ、異形の団員たちに囲まれて生きていくことになった。そして、みどりが拾われて数日経った頃、ひとつの荷物が届く。この箱の中身は小瓶で、中にはワンダー正光という不思議な男が入っていた。彼の作り出す奇術にみどりは惹かれていき、ワンダー正光もそんなみどりを気に掛けるようになっていく。ワンダー正光の奇術は人々を魅了し、赤猫サーカス団は大盛況。しかし、ほかの団員たちからの嫉妬で、みどりがいじめに遭うようになってしまった。これに怒ったワンダー正光は、なかでも嫌がるみどりを無理やり犯した全身包帯男の鞭棄を、幻想で作り出した砂地獄で殺害。だが、そのことを目撃してしまったみどりは、ワンダー正光の恐ろしさに一抹の不安を覚えるのだった……。
解説
舞台は昭和臭がプンプンする東京みたいな土地。単なるレトロではなく、まさに昭和臭いという感じ。いかがわしいものが、いかがわしいままで存在できた、そんな在りし日の昭和を表現しているのだ。あの時代のいかがわしさの代表といえばサーカス団。本作のサーカス団は、昨今流行のシルク・ド・ソレイユ的なサーカスではなく、どちらかというと見世物小屋に限りなく近いもの。「悪い子はサーカスに売っちゃうよ」という、いかにも昭和風な脅し文句に使えるような、いかがわしい場所として登場する。実際、原作では「見世物小屋」となっているようだ。
団員たちも全身包帯の両手なし男や、まるで虫みたいな男、蛇使いの美女に、怪力男や性格の悪い美少年、そして超能力を使う瓶詰男なのだ。もちろん、ヒロインのみどりがここに拾われてきたのも、そんな彼ら異形の者どもと同等の匂いがしたからに他ならない。
ヒロインみどりを演じているのは、俳優中村雅俊の愛娘であり、モデル・タレントとして活躍している、本作が映画初主演の中村里砂。全身黄色の水玉ワンピにおかっぱという、あまりに特徴的過ぎるアイコンキャラを原作コミックから飛び出してきたかのような再現度で演じた。
やたらと個性的過ぎるキャラが周りを取り囲んでいる作品だが、彼らの強烈さに微塵も負けていないあたりも見どころだろう。
もちろん、本作最大の見どころといえば、鬼才・丸尾末広による名作『少女椿』の世界観を映像で再現したという暴挙だろう。レトロ風味で耽美的であり、不条理、残酷にしてエログロの極み。そんな表現のオンパレードの作品。これまで何度も映像化を試みるも、一応完成したのは1992年の紙芝居的なアニメ作品ひとつだけ。
このアニメに関しても、本作ではシーンによってはアニメで表現しているので、その意味でも『少女椿』映像化の集大成になったといえるかもしれない。
とにかく、けっこう異形で異様すぎる作品。カルトな人気の原作同様に意外にクセになるかもしれないので、観るならちょっとした覚悟をもって臨むように……。
美少年カナブンは、ビジュアル系ロックバンド「SuG」のボーカル、武瑠が演じている。まわりの異形な人々は海鼠と蟻男さんだ。もはや何が何やらよくわからん世界観なのだ。
足芸の鞭棄役は佐伯大地が演じている。せっかくのイケメンだが、基本包帯男の役柄なのだ。もちろん、原作と比べると素顔率が高めなのだが、原作どおりの残虐な最後を遂げてしまう。
ヒロインのみどり。ビビッド過ぎる黄色の水玉ワンピは、原作を超えた!? 中村雅俊の娘かと思えば、また格別な感慨を抱くこともあるだろう。とにかくやたらと異形な人物が大挙出てくるのだが、負けないくらい彼女の印象は強烈に残るはずだ。
DATA
少女椿
- 監督・脚本:TORICO/原作:丸尾末広「少女椿」(青林工藝舎)/出演:中村里砂、風間俊介、森野美咲、武瑠(SuG)、佐伯大地、深水元基、中谷彰宏、ほか
- 配給:リンクライツ
- 上映時間:90分
- 公開中
関連情報
(C) 2016『少女椿』フィルム・パートナーズ