余命がメールでわかっちゃった人たちの面白くもやがて……な人間ドラマ『神様メール』

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

意味不明なタイトルですが、まんまです。神様が使うPCからメールが誤送信され、さあどうなる? というお話。監督は「ミスター・ノーバディ」のジャコ・バン・ドルマル。人生や人の生き方を見る者に問う作品を撮る監督さん。ファンタジックでコメディタッチな本作でもそれがテーマのようです。近年終活が話題になることもしばしばですが、この映画を見て楽しく人生を考えてみるのもいいんではないでしょうか?

※一部解説にネタバレを含んでます。

 

01

 

 

ストーリー

神様は創世の最初にベルギーの首都ブリュッセルを創造した。そして、アパートの一室でPCを操り、いろいろな実験を始めた。海を創り山を創り、いろいろな動物を創った。最後に自分の姿に似せて人間を創った。神様は人間に争いごとを起こさせて楽しんだ。

 

神様には女神の奥さんと息子JCがいた。JCは、ある日神様の行いを疑問に思い、地上に降りて救世主になって磔にされてしまった。それから2000年……。

 

神様の娘、10歳になるエアは横暴な父親に嫌気がさして、いまは置物になっている兄JCのアドバイスで父親の目を盗んで洗濯機から地上に向かった。

 

しかし、その前にエアは父親のPCから全人類のスマホに向けて、ひとつのメールを送信していた。それは、残りの寿命を報せるメール。このメールが真実だとわかったとき、地上はちょっとしたパニックに!?

 

エアの目的は、兄のように使徒を探して地上を救世することだった。ただし、兄の12人にプラスする6人の使徒を見つけるのがエアの目的。エアはちょっとした奇跡を起こしながら、次々に使徒を見つけていくのだが、エアのしでかしたことを知った、神様である父親も洗濯機を通って地上に降りてきた……!!

 

02

 

 

解説

神様のPCから届く余命が見えるメールから巻き起こる大騒動と予想もできない奇跡の物語。とってもほんわかする可愛らしい作品だ。

 

まず創世がブリュッセルから始まったというところからシャレている。というか、人間が発明する前から神はPCで仕事をしていたのだ。仕事というか、その様子は仕事もせずに引きこもってゲーム三昧な日々を過ごすダメ人間そのもの。PCを使って万能の力を振るう様は、まさに唯一無二の神だが、じつはPCがなければ、ただのダメ男。家出したエアを追ってブリュッセルに降臨したものの、まったく何もできない。神様ならできそうな水の上を歩く程度の“奇跡”も起こせない。唯一持っている力といえば、長年にわたってエアに植え付けたトラウマくらいのものだろう。

 

見どころは、個性的な登場人物たち。

 

主人公の神様の娘エアがまず可愛い。人の心の音楽を聴いたり、恋をさせたりと可愛い奇跡を起こす。演じるピリ・グロワーヌちゃんは、映画出演3作目となる本作でベルギーの映画賞を取りまくったくらい好評価を得ている。

 

対する神様は、横暴で独善的なイヤな男。人が争う姿を何よりも喜び、地上に数々の災厄、戦争をもたらし続けてきた張本人として描かれ、家庭内でも妻をないがしろにして、娘に暴力をふるうDV野郎なのだ。演じるのはブノワ・ポールヴールド。『エイリアンVSヴァネッサ・パラディ』にも出ている、ベルギーを代表するコメディアンだ。

 

神様の妻でエアたちの母親、掃除や刺繍、そして野球を愛する女神を演じるのはベルギーの名女優ヨランド・モロー。ひたすら夫のDVに耐えながらも家と子供たちを守り続ける寡黙な母親。しかし、エアと旦那が地上に降り立ってしまった後も、黙々と日常の家事を続けるという、まったくブレない存在なのだ。そんな彼女も女神としてのスゴい力を秘めている!? という重要な役どころだ。

 

そして、6人の使徒とひとりの預言者。預言者は救世主を導く者。エアが地上で初めて出会うホームレスのおじさん。ホームレスだからスマホもないので余命も知らないし、興味もない。救世主たるエアと預言者のコンビは、運命に導かれるように6人の使徒を巡る旅に出るのだ。

 

みんなエアが神様のPCで送った余命メールで人生を変化させることにした人々。

 

スナイパーに転職した保険屋(余命25年3ヶ月8日)、夫との関係に醒めてゴリラと愛を育む女性(余命5年2ヶ月17日)、セックス依存だが、きっかけとなった女性と運命の出会いをする男(余命83日)、美人だけど片腕の女(余命11年6ヶ月27日)、冒険家への夢を再燃させた退職間際の男(余命12年9ヶ月5日)、そして余命54日の女の子になりたい男の子。

 

神様メールで人生を見直すはめになった彼らのもとを巡ることで、この物語は進んでいくのだ。

 

さらに物語に直接関係はしないけど、余命を知った人間たちのエピソードも数々描かれていく。あらゆる手段を使って必死に余命から逃げようとする者、逆に長い余命を逆手にとって自殺しまくる男。人間の愚かさを笑いに昇華させているのも、この作品の面白さだろう。特に繰り返しギャグになる自殺しまくり男には、しっかりオチも付くので要チェックだぞ……(たぶんここは予想どおりになるだろうけど)。

 

さて、本作のクライマックスは、ただひとり余命が少なすぎるウィリーが望みを叶えて死を受け入れる終焉の地、青い海と白い砂浜が広がるビーチが舞台となる。

 

ここで“奇跡”は起こる。

 

神様は不在、エアにはもちろん、そこまでの力はない。では、一体誰が何を……!?

 

この奇跡がどんなものか、それが本作の最大の見どころ。まさに想像を超えた超ファンタジーな奇跡。このクライマックスの大スペクタクルは絶対に見逃せない。

 

しかも、かなり痛快無比でありつつ感動的だから、爆笑しつつ涙を流すこと必至だ。

 

03

神様のPCを無断使用して余命メールを一斉送信するエアちゃん。10歳だけどマニキュアしているあたりは、神様の娘でも現代っ子なのだ。ところで見てわかるように、旧式のPCキーボード。もちろん、モニターもブラウン管式だ。なぜかというと、やっぱり人類誕生前の製造だからだろう。

 

04

ウィリーの最期を看取るために集合している使徒のみなさん。人生も余命もバラバラで接点のなかった彼らは、救世主たるエアに導かれてここにいるのだ。ところで、なぜ今回6人の使徒を集めたかというと、母親の女神が好きな野球は18人でプレイするからなのだ。兄JCが集めた使徒12人に6人足すことで、ようやく完璧になるというわけ。

 

05

棚の上にいるのがエアのお兄さんJC。ふだんは置物としてじっとしているが、妹のエアだけには話しかけてくる優しいお兄さん。残りの6人の使徒のことや、地上行き洗濯機の秘密を教えてくれた。

 

06

本作で話題になったのが、往年の大女優カトリーヌ・ドヌーヴの出演。その美しさは、まさに名作ミュージカル『シェルブールの雨傘(1964)』当時からまったく変わっていない!! その永遠の美女カトリーヌの恋人がゴリラ!? というなかなか衝撃の展開も本作の見どころ。しかも、このゴリラ、なかなか漢気があるのだ。

 

07

余命54日のウィリー君と救世主エアのプラトニックなラブシーン。ウィリー君の望みは女の子になること。可愛らしいワンピを着て、静かに最期の時を迎えようとしていたのだが、その時……!?

 

 

DATA

神様メール

  •  監督・脚本:ジャコ・ヴァン・ドルマル/出演:ブノワ・ポールヴールド、ヨランド・モロー、ピリ・グロワーヌ、カトリーヌ・ドヌーヴ、ほか
  • 配給:リンクライツ
  • 上映時間:115分
  • 5月27日より全国公開

⇒上映スケジュールはコチラ

 

 

関連情報

 

(C) 2015 - Terra Incognita Films/Climax Films/Après le déluge/Juliette Films Caviar/ORANGE STUDIO/VOO et Be tv/RTBF/Wallimage

上に戻る