【独自取材】一体成型の巨大な翼用金型は約1トン!「ARTPLA エヴァンゲリオン量産機“襲撃”」金型開発工場見学レポート!!

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2024年10月に開催された「第62回全日本模型ホビーショー」の海洋堂ブースで発表・展示されたアイテム群のなかで、筆者が特に衝撃を受けたのが、「ARTPLA エヴァンゲリオン量産機“襲撃”」というプラスチックキット。


海洋堂はその他にもARTPLAシリーズで「エヴァンゲリオン 初号機“ヤシマ作戦”」や零号機、初号機、弐号機、仮設5号機など、エヴァ関連アイテムを多数展示していましたが、凶悪かつ嫌悪感を抱く量産型を見事に表現した谷明氏の造形と、それを象徴かのような巨大な翼を見て、あの旧劇場版がフラッシュバックしたのは、筆者だけではないハズ……。そして何より驚いたのは、その巨大な翼が1枚のランナーで構成されている(いわゆる一発抜き)ということ。

もともとは1997年にレジンキットとして発表された本作。当時も巨大な翼は1パーツで作られており、その圧倒的な質量に大変衝撃を受けたのを今でも克明に覚えています。そして、その基本構成はそのまま、ARTPLAシリーズならではの手頃な価格に抑えての発売に、海洋堂の本気を見た展示でした。

そんな「エヴァンゲリオン 量産機“襲撃”」の金型開発の現場を公開してもらえるという機会をいただいたので、現地からのレポートをお届けしたいと思います。“作品”に込められた想いをいかに“製品”に込めるのか——そのこだわりを感じてもらえれば幸いです。


翼の金型は通常の5倍の重さ!

中国広東省、東莞市——玩具、衣料品、電子部品、紙製品など様々な工場が立ち並ぶ一大工業地帯で、ARTPLAの製品は海洋堂の管理のもと、金型製造、成型、梱包まで、ここ東莞で作られています。


東莞の市街から1時間ほど車を走らせたところにある金型工場では、ちょうど胴体部分(Cランナー)の金型を修正しているところでした。話を伺ったところ、試作の際に発生した組み立て時のすき間を解消するため、加工を行っているとのこと。


こちらはひとまず完成となったエヴァ量産型の金型。ARTPLAは固定ポーズのプラスチックモデルキットのため、パーツ形状の起伏が激しく、金型のキャビティ(へこんでいる面でパーツの表面)と、コア(盛り上がっている面でパーツの裏側)の起伏も(当然ですが)激しい形状になり、通常のプラスチックモデルキットとはまた違ったノウハウが必要とのことでした。


クレーンにつるされてやってきたのが翼用の金型! 組み立て時の強度を確保するため、翼は一体成型が採用されましたが、そもそもプラスチックモデルキットでは成形が難しいので、抑揚ある起伏が激しい形状を一体成型するなんてことは(普通は)しません。それでもレジンキットと同様のパーツ構成を選ぶあたり、海洋堂の強いこだわりを感じます。


巨大かつ起伏の激しい形状を射出するため、当然金型も巨大で分厚く重量はなんと約1トン! 他の金型は約200kg程度とのことなので、その巨大さがお分かりいただけるかと思います。


こちらが金型の両面と細部。巨大すぎて工場備え付けの試作用成型機では成型できないため、後日、別工場で試作を行うとのことでした。


作図室も見せていただきました。データ上で嵌合形状の微調整をおこなっているとのこと。翼パーツのランナーは巨大であるがゆえ、そのままパッケージに梱包すると歪みやすく対策が必要とのことでした。(製品では、ランナーから底に向かって垂直に保護用の円柱を設置し、均等に圧力がかかる形状となっています)


金型製造はプラスチックモデルを作る工程の一部ですが、そこだけ見ても多大な労力と情熱で作られていました。キットを手にした際には、あの巨大な金型のことも思い出してくださいね♪


「ARTPLA エヴァンゲリオン量産型“襲撃”」開発者コメント

「ARTPLA エヴァンゲリオン量産型“襲撃”」の開発者の方からコメントをいただきました!


ARTPLAエヴァ量産機、3つのコンセプト

  1. 7,000円台で買える商品にする
  2. 美しく・頑丈に、翼パーツは一体成型
  3. 超かっこいい量産機が、すぐに組み立てられるキット構成にする
(1)価格について

高価格帯になると実際お金が無くて買えない……となってしまう。実際私も良くプラモを買う人間。どれだけかっこよくても買えなければ意味がない。というわけで、どれだけ高くても7,000円台にしたいと考えた。となると、人件費・設計費・金型代・成型単価・パッケージ印刷費・梱包費用・輸送費etc……色々試算すると、製品代の多くの割合を占める金型は5型までとなる。
翼で1型使うので(実質2型分くらいの金型代……)残り4型にエヴァ量産機本体とベースをいれなきゃいけない。なので特に今回はシンプルな形状ということもあり大きな形状での分割としました。

▲開発時の走り書き。翼パーツ一体化を実現するために試行錯誤がありました……。


(2)翼パーツについて

翼パーツは一体化にする。これは見た目のインパクトで箱を開けた時にワクワクしてほしいというのもそうですが、いちばんは組み立ての頑丈さが理由です。組み立てたり色を塗るときに破損しないかドキドキするのはイヤですよね。完成した時に継ぎ目が見えないというのも大きなポイントです。また、20年前に発売された元となったガレージキットも翼パーツは一発抜きでした。巨大すぎて国内でできず、中国にもっていってむりやり抜いたという逸話があります。

▲本商品の原型となった1997年に発売されたガレージキットの翼パーツ

プラモ版の翼パーツはガレージキットの原型からさらに抑揚をつけた形状にしたことで、金型の厚みがどえらいことになりました。重さ約1トンあります。

また、特に翼パーツのランナーは翼パーツの保護というのも重要です。先端が箱にぶつからないように保護しつつ、翼の形状が変形しないように、ランナーから支柱となるピンを設置しました。データ調整中のランナー形状と最終的なデータを見比べてもらえると分かりやすいと思います。これにより、ランナーを置いた時に自重が分散して変形しずらい形状にできました。あと、もちろんEピン(押し出しピン)跡はパーツ本体にはつかないように設置しています。

▲ランナーの支柱の調整前
▲上記支柱では変形する可能性があるので修正を指示
▲黄色い部分が新規に配置されたランナー・支柱パーツ


(3)“すぐに完成する”ためのキット構成について

(1)のところでも少し触れましたが、金型の数を減らすためシンプルかつ大きな形状での分割としました。結果的にではありますが、すぐに組み立てられて、すぐにかっこいいエヴァ量産機が完成するキット構成にすることができました。


「ARTPLA SCULPTURE WORKS エヴァンゲリオン量産機“襲撃”」製品情報

『新世紀エヴァンゲリオン劇場版Air/まごころを、きみに』より、エヴァンゲリオン量産機が海洋堂の「ARTPLA」シリーズに登場!


細身ながらも筋肉質な身体とぬらりとした頭部、展開した背中の巨大な翼が美しい本商品は谷明氏(株式会社OZ)の原型を使用。1997年に発表されたレジンキットの全パーツを3Dスキャンし、デジタルデータに置き換えプラスチックモデル化されました。また、当時の原型から翼パーツの形状を微調整。取り付け角度や波打つような起伏ある形状に整えたことにより、360度様々な角度で印象が刻々と変わる造形物となっています。


その特徴的な翼(全幅470ミリ)は1パーツで成型され、見た目の美しさと組み立ての頑丈さを実現。ポーズ固定ゆえのシンプルなパーツ構成で、あっという間に組み立てることが可能。また、成型色にパールグレーを採用することで、組み上げるだけで彫刻作品のような佇まいに。もちろん、塗装することで、自分だけのエヴァンゲリオン量産機に仕上げることも可能です。


また、トップヘビーな形状を頑丈に支えるためベースの瓦礫もサイズアップし、さらにディテールを追加しています。


ランナー状態・パーツ一覧


DATA

ARTPLA SCULPTURE WORKS エヴァンゲリオン量産機“襲撃”

  • プラモデル
  • ノンスケール
  • 全高:約280mm(翼先端)
  • 原型:谷明(株式会社OZ)
  • 成型色:パールグレー
  • 発売元:海洋堂
  • 価格:7,700円(税込)
  • 2025年2月発売予定
  • 2024年11月13日(水)予約受付開始

(C) カラー/EVA製作委員会

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