『キャプテン・アース』デザインの現場 荒牧伸志(その2)

更新日:2014年11月11日 17:57

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『ちゃんとリアクションしてくれるので、やっていて楽しいんですよ。』(荒牧伸志)

 

インタビュー:電撃ホビーマガジン編集部(2014/8/15)

※インタビューで語られる画稿は電撃ホビーマガジン2014年11月号に掲載されています。

 

 

―その流れで『キャプテン・アース』に至るわけですね。

 

荒牧:そうですね、今回も五十嵐さんに声をかけていただいて。その前にコンセプトデザインで参加した『STAR DRIVER 輝きのタクト』もありますけど。『キャプテン・アース』では宇宙ステーションの天海道をデザインしてください、と言われて、榎戸(洋司)さんから、身振り手振りを交えて、「地上に北海道があるように、空には天海道があるんですよ!」と説明を受けました。

 

コヤマ:3つのゲートがあって、通り抜けていくとロボットができる、というのがコンセプトにあったんですよね。

 

A

 

―コンセプトを聞いていかがでしたか?

 

荒牧:素敵でしたよね。格好良いな、と。デカい宇宙ステーションを通り抜けながらロボが合体していくという話だったので、最初は集合体的なものを考えていたんですけど、五十嵐監督の反応を見ると、もっと象徴的なものが欲しいんだと判断して、あの十字形に。ちなみにあの形は、北海道と似ているところがあるといいなと思って考えました。

 

―モチーフとして北海道があるんですね。

 

コヤマ:いちおう、北海道に次ぐ48番目の都道府県という設定になっています。

 

荒牧:さらに宇宙ステーションなので、輪っかが付いていた方がそれっぽいと思いましたし、太陽電池も付いていないとダメでしょうと。天海道は、お話の舞台にもなるというので、宇宙船のドックも必要かなと。どういう機能を持たせたらいいのか、監督と相談しながら進めていきました。

 

コヤマ:天海道の真ん中を貫くエキスパンド・ゲートは五十嵐監督が「長い筒を通過するシーンが欲しい」、つまり通過する尺が欲しいと言われたので、そこをどこまでリアルに設定してデザインするか、というのを話し合いましたよね。

 

荒牧:真面目に考えるとオーディナリーとか地球脱出速度で、もの凄いスピードじゃないですか。だから少々長いゲートを考えてもそこを抜けるのなんて一瞬です。でも、そこは“ケレン味”の部分なので、割り切って考えましょう、と。

 

―ゲートが3つ重なる、というあのシーンは最初からアイデアとしてあったんですか?

 

荒牧:そうです。3つの穴が綺麗に軌道上で合致すると聞いた時、「これは絵になるな」と思ったんで、CGで簡単に組んでみたりしました。本当は高度が違うと軌道もスピードも違うので、けっこうムチャな話なんですけど。天海道は五十嵐監督がコンテを描いてくれたものがあって、構造上のアイデアはもうそこに描かれていました。五十嵐監督はそういったところは明確でしたよね。

 

コヤマ:ゲートの筒の中にさらに円が入ってくるようなアイデアは普通にメカをやっている人からはあんまり出てこないんです。その五十嵐監督のイメージを先に出さないと、と。

 

B C

 

―コンセプトがしっかりしているんですね。

 

荒牧:かなり明確だったんです。僕があまりシナリオを読み込まないんですが、話の流れと使い方は全部聞いていたので、それを全部クリアするように、と。

 

コヤマ:デザイナーがシナリオをあまり読み込みすぎて思い入れが強くなると、演出家が「こうしたい」と言ってるのに、「こうしないとダメでしょう!」みたいになっちゃうこともあるんです。

 

荒牧:今回はほぼシナリオを読まずに、五十嵐監督が懇切丁寧に説明して頂けるので、その枠内でしっかりやる、というところに非常に集中して作業しました。もう、イメージが明確なんです。「ああ、これを絵にすると綺麗だろうな」という画を、五十嵐監督自身が描ける。それをこちらがデザインして、見せたときに「イメージ通りです」みたいな反応が来るとね、「ああ、やっぱりそうなんだな」となる。このやりとりが作業としては非常に楽しい。ちゃんとリアクションしてくれるので、やっていて楽しいんですよ。

 

コヤマ:五十嵐監督が出したい雰囲気をちゃんと汲んで、護っていくという感じですね。オーダーがあるときは、オーダーする理由があるんです。

 

荒牧:五十嵐監督は、画面の光の使い方が凄い明確だよね。何が見えて、何が見えないかっていうことがシーンごとに明確なので、やりやすいですね。

 

―天海道は内部もデザインされてますね。

 

荒牧:天海道関係は、全てデザインしていますが、「はめられたな……」と思ったのは、「天海道をお願いします」と言われて、「天海道は3つあります」と言われて、「天海道は内部もあります」と言われて、「舞台にもなります」と言われて……いつ終わるんだろう、と(笑)。

 

コヤマ:内装の丸みとか、五十嵐監督の見たかった宇宙的なディテールというのは、僕や高倉さんがデザインに入る前から、荒牧さんが天海道の管制室で描かれていたんで、そこは先頭を切っていただいたという感覚があります。宇宙っぽさと、ある種の医療機器っぽい雰囲気が欲しいと五十嵐監督が言われてたので。

 

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荒牧:そうね、JAXAっぽいというか、その辺はしっかりやりたいと。

 

コヤマ:ただ監督のイメージがどのくらいのデザインラインなのか、着地点が分らないところもあったので、そこを最初に形にするのを荒牧さんにお願いしたことになります。例えば宇宙だったら、布状のものがバーに巻いてあったりするんですが、荒牧さんのデザインだと、もうちょっとシンプルな筒になってたりしますよね。

 

荒牧:デザインって、実用一辺倒のメカっぽいラインと、もう少し洗練されたラインとあるじゃないですか。その辺をどうしようか、というのは五十嵐監督も含めて、皆で話をしていきました。

 

コヤマ:そうそう。「歯医者さんのアームくらい」とか。

 

荒牧:そう。「もうちょっと丸みがあって、製品っぽい感じが良いんじゃないの」とか。そんな話をしていましたね。

 

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(11月3日につづく 2/4)

 

<関連情報>

キャプテン・アース公式サイト

その1:『自分のやりたい映像をどうやったら作れるか、という実験という意味ではつながっていると言えますね。』

その2:『ちゃんとリアクションしてくれるので、やっていて楽しいんですよ。』

その3:『下書きしちゃダメなんですよ、コクピットは一発書き出来るようにならなきゃ(笑)。』

その4:『何を描いても「こんな面倒臭いものを描かせて、申し訳ない!」という気持ちでデザインやっています。』

 

 

(C)BONES/キャプテン・アース製作委員会・MBS

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