素組みでガンプラ! 【基礎】道具を使ってきれいに作る初心者向け講座 前編
ガンプラの楽しみ方は人それぞれ。合わせ目を消したり全塗装して“ガチ”で仕上げていくのも楽しいけれど、せっかく色分けが再現されているガンプラだから、そのまま組んで楽しむのもアリでしょう。
そこで本コーナーでは、プロモデラーの桜井信之氏に、初心者や充実した作業環境のない方にもガンプラ作りを楽しめるように、超基本からちょっとしたワザまで、素組みで作る際の“コツ”を紹介してもらうことにしました。少しの手間で十分楽しめる“素組み”の楽しさを、味わっていただければと思います。
今回は『ガンダム Gのレコンギスタ』に登場する「ガンダム G-セルフ」を使って、模型製作の初級講座をお送りします。放送中のTVアニメを観てプラモデルを作りたくなった方も多いはず……。そんな初心者に役立つ模型製作の基礎を、お届けします。今回のテーマは「初心者におすすめの道具」です。
1 プラモデル最大の特徴は、「自分で組み立てる」ということ。自分に作れるのか不安に思う方もいるかもしれませんが、今のガンプラは、簡単に誰にでも組み立てられるように設計されています。接着剤は不要で、全てハメ込み式。白・青・赤・黄のカラフルなパーツをご覧ください。各パーツが色分けされているので、ただ組み立てるだけで劇中に近い配色で再現できます。
2 これはグレーで成形されたパーツ。主にヒジやヒザなどの関節部分が、この色のランナーにまとまっています。武器やバーニアなどもここに含まれており、これは全てのモビルスーツに共通することなので、知っているとパーツを探す時にすばやく発見できるでしょう。
3 これはクリアー成形されたランナーです。G-セルフの各部で輝くクリアーブルーのパーツは、色付きのクリアーで成形されているので、もちろん塗装は不要です。ビーム・サーベルはクリアーピンクで成形されているだけでなく、破損の恐れも少ない軟質樹脂で作られています。柔らかいプラスチックで作られているため、ビーム・サーベルの刃を自由に曲げてアクションポーズを演出するのにも便利です。
4 こちらはさらに柔らかく、弾力のある素材で成形された「ポリキャップ」です。モビルスーツの各関節内部に組み込むことによって、スムーズな可動を再現できるだけでなく、パーツ同士の擦れによる“関節のヘタリ”が起きることもありません。
5 さて、ここでプラモデルのパーツについて説明します。先ほどから「ランナー」という言葉が出てきていますが、これは一般的にはプラモデルのパーツが付いた“板状”のブロックを指します。
①ランナー記号
「A・B・C」などアルファベットで分類されています。ここには商品名(モビルスーツ名)も刻印されており、他のアイテムと間違えないよう配慮されています。ガンプラではさらに枝番号が付いて、「A1・A2・B1・B2」と刻印・分類されることもあります。
②ランナー
この“板状”のブロック全体を指しますが、厳密にはパーツを取り巻く棒状の“ワク”を指すものです。
③パーツ番号
パーツを区別するためにナンバリングされたプレート状の部分です。基本的にパーツのすぐ近くに配置され、「1・2・3」とアラビア数字で刻印されています。組み立ての際、どのパーツを使用するかを示す時に使います。
④パーツ
プラモデルの部品そのもの。同じような形状のものは、近接したブロックに配置されているので、パーツを探す時にこの法則を知っておくと、すばやくパーツを探し出せるので便利です。そして、この「パーツ」以外の部分は、パーツの成形とパーツの番号・記号を示すためのもので、模型完成時には不要になってしまいます。この不要部分の廃棄に関しては、それぞれお住まいの自治体の方法に従って処分してください。
⑤ゲート
模型誌の製作文などで最も登場する言葉が、この「ゲート」という部分です。これは「ランナー」と「パーツ」を繋いでいる部分で、人間でいえば“へその緒”にあたる部分です。なぜ、模型誌で頻繁に登場するかといえば、この「ゲート」をきれいに取り除くことが“プラモデルを上手に組み立てる”のに大切な条件だからです。
6 さて、では実際に「パーツ」を「ランナー」から外してみましょう。「ゲート」は細いので、手でもぎ取って外すことも可能です。低年齢層向けのプラモデルには、実際に手でパーツを外すことを前提に作られたものもあります。しかしこのG-セルフは道具を使ってパーツを外すのが好ましいプラモデルです。写真を見るとわかりますが、「パーツ」を外した跡が非常に汚く、まるで引き裂かれたような状態になっています。
7 特にパーツの一部は、大切なパーツが欠けてしまっているのがわかります。これでは美しい完成品に仕上げることができません。そのため専用の道具を使い、「パーツ」と「ゲート」を正しい位置で切り離すことが大切になるのです。
8 では、どんな道具で「パーツ」を切り離すのがベストなのでしょう。まずはどの家庭にもあるハサミを使って切り離してみます。みなさんも使い慣れているので、上手くできそうに思えるでしょう。
9 ハサミの刃は長く、“切り離すべき部分”だけを上手くカットすることができません。それどころか、刃の長さが原因で、パーツの一部をスパっと切ってしまいかねません。こうなったらパーツの修復は高度なテクニックがなければ難しいでしょう。
10 では爪切りではどうでしょう。ハサミに比べて刃渡りは短く、ポイントを絞ったカッティングができそうです。しかし、爪切りはプラモデルを切り取るには大きく、さらに、入り組んだランナーとパーツの隙間に刃先を入れることができません。仮に可能であっても、爪切りの刃の先端はカーブが付いているため、「パーツ」からきれいにゲートを取り除けません。これでは爪切りを使うのも難しいようです。
11 ではどんな道具がプラモデル製作に適しているのでしょう。写真は「ニッパー」です。金属線を切断したり、電気機器の配線を切断したりする道具ですが、これを模型製作専用に特化させたものが「プラモデル専用ニッパー」です。
12 「プラモデル専用ニッパー」の特徴は、電工用ニッパーに比べて刃先が圧倒的に薄く、先端が細いのでどんな入り組んだパーツの間にも入り込み、確実にパーツをカットできる点です。写真の「パーツ」カッティング部分をご覧ください。見事に一刀両断に「ゲート」を切り離しているのがわかります。
13 では「ゲート」をきれいに処理せず「パーツ」を切り離した場合、どんな問題が起きるのでしょうか。まず、パーツ同士が組めないということがあります。写真を見ればわかるように、残った「ゲート」のでっぱりが引っ掛かってしまうのです。関節などの可動部分でも同じです。
14 ボールジョイント式の肩関節などは、腕をきちんとはめ込むことすら不可能になってしまいます。無理やり押し込んでも、飛び出した「ゲート」がポリキャップをキズ付けてしまい、スムーズな可動を邪魔してしまいます。腰アーマーも飛び出したゲートが影響し、サイドスカートの可動範囲が制限されているのがわかります。
15 そして何よりも、完成後の仕上がりに大きな影響が出ます。これはニッパーを使わずに、手でパーツを外して組み上げたものです。ある部分は引き裂かれたようなゲート跡が露出し、ある部分はゲートが飛び出たままになっています。プラモデルを美しく組み立てるためにも、ぜひ使いたい道具が「プラモデル専用ニッパー」です。次回は、より上手なニッパーの使い方とゲート跡の処理方法を考えてみたいと思います。
次回の後編は2014年12月11日に更新予定なので、お楽しみに!!
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