浅間・智、究極の立体化!! 完全監修した原作者をインタビュー! 

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■既定路線を超えるデザインを目指して

 

--そもそも原作のデザイン作業はどのようにされているのですか?

川上:初めに物語を作りながら世界設定を作っていき、その中で必要なキャラクターが立ち上がっていきます。そのキャラクターの能力に合わせて装備などを考え、さらに通常時の装備、見せ場での「最強装備」的なものを中二的に考えていくわけです。浅間の場合だと、「普段使っている弓を2本合わせて大型の弓を作る」とか。

基本的にデザインに関しては、ドデカイ別の物を用意するより何かの組み合わせなどで別の何かに見せかけたりする方が面白いと考えています。

 

--武蔵もそうですよね。

川上:そうですね。1艦でドーンとドデカイのがあって「船です」って言うのも説得力がありますが、面白さの構造が欲しくなるんですよね。一つの船が、よく見ると三胴艦で、更によく見ると8隻の艦が接舷した形……、という方が、面白さの構造があると思います。また、例えばアニメの変形ロボットにしても、航空力学的に正しい完全な航空機の形になるわけじゃないけど、記号として羽根があってそれっぽい形になれば飛ぶ事への説得力を感じるじゃないですか。完全な航空機型になるのはリアルですが、「それっぽいけど飛ぶ気がする」のはワンダーですよね。うまく嘘をつかれているなっていう。

 

--浅間の衣装にもそういったデザイン思想が盛り込まれていますね。

川上:ええ、よく見れば弓でもないし巫女装束でもないけど「そうも見える」っていうライン。それをその世界観の中での弓であり巫女装束として統轄し、提示していくことの面白さって大事だと思っています。

 

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原作者こだわりPOINT.3

横から見ると広がるバインダーが巫女衣装のように見えるデザイン。バインダーの折り目の角度や高さも単調にならないように一つ一つ調整されている。こうした2次元の嘘をうまく3次元に落とし込むことを念頭に『ホライゾン』のキャラクターたちはデザインされているのだ。

 

--それでご自身でデザインまでされているのですね。通常はイラストレーターさんに任せている作家さんも多いと思いますが。

川上:他と違うものを作りたいっていう意識が強いんですよね。こちらから何も提案せずにイラストレーターさんに依頼すると、さまざまな兼ね合いからどうしても既存のラインに近いものになってしまいます。ですから、まずはこちらからヒネったものを提示します。そうすることでやり取りの工程もひとつ省けますし、結果として他よりも一段すごいものができ上がるだろうと思っています。

 

■膨大な物語はいかに生まれたか

 

--そもそもこの『境界線上のホライゾン』という分量も世界観も膨大な作品はどのように生まれたのでしょう?

川上:元ネタは中学生の時に考えていました。でも世界をある程度作って登場人物を配置して書き始めてみたら、物語の冒頭のエピソードは書けたのですが、舞台が次の都市や国に移ったら各都市間の情勢がつながらないんですよ。向こう側に貿易や市場とか政治があればこっちの国もそれに影響されているはずだから、じゃあここは書き直さなきゃいけないんじゃない?っていうのが始まり、書けなくなってしまったんです。

そうした問題を解決するまで保留にして、いろいろ勉強を始めました。なんとか1つの国だったら書けるようになったかなと思い、書き始めたのがデビュー作です。それである程度の世界を限定条件で動かしてみようと思って書いたのが、やはり中学の時に原本を作っていた次作『終わりのクロニクル』。これらの執筆活動の経験を踏まえて「今なら行ける」という手応えを感じ、いよいよ当時の「書けなくなってしまった」に挑んだのがこの自分の原点の一つ『境界線上のホライゾン』だったというわけです。

 

--まさに大作映画のような「構想20年!」の世界ですね。

川上:『クロニクル』が商業的に成功して、膨大な世界と話を読んでくれる読者がいるという手応えもありましたからね。また、今は中高生でも世界情勢など、膨大な情報にネットで触れる機会が多いので、複雑な世界観でもわかってもらえると思いました。それでも不安はあったので、事前に世界観とプロットを全部立てて編集担当さんとしっかり打ち合わせをしていました。それも2年ぐらいはかかりましたね……。

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