『クトゥルフ神話TRPG』って何?今から始めるテーブルトークRPGのススメ
『クトゥルフ神話TRPG』のルールブックが15年ぶりに全面改訂され、『新クトゥルフ神話TRPG ルールブック』として2019年12月20日に発売されます。
TRPG(テーブルトークRPG)界のキラーコンテンツ『クトゥルフ神話TRPG』ですが、クトゥルフ神話って何? そもそもTRPGって何? という方もたくさんいらっしゃるでしょう。本記事では、『クトゥルフ神話TRPG』について、ちょっとだけ詳しくなれる解説をお届けします!
- 邪悪な半魚人が巣食う街で、派手な銃撃戦を繰り広げる
- なにか恐ろしいものが潜む暗がりを、ライト片手に探索する
- 忍者になり、戦国の世の裏で手を引く邪神に忍法をぶっぱなす
- 歴史の大事件の裏側で渦巻く、異星人の陰謀を阻止する
- 気軽にうちよそ(※)したい
※うちの子とよその子が関係性を持つシナリオや空気感を楽しむこと。
これら全部、『クトゥルフ神話TRPG』で楽しむことができます。少しでも気になったら要チェック!
そもそもTRPGって何?
そもそもTRPG(テーブルトークRPG)ってなんだろう、そんな方が多いと思います。
ひとことで言うと、自分で作ったキャラクターを操作して、ダイスと会話で物語を作り上げていくRPGです。一般的に想像される“ゲーム”はゲーム機が必要で、どんなイベントが起きるだとか、いくらダメージが入るかなどは、ゲーム機側で自動に処理されますね。そこをTRPGでは、人間がダイス(サイコロ)を振ったりして担当します。
めんどくさいだけじゃん? いえ、ここに面白みがあるのです。会話によって進むということは、その場で柔軟にイベントが変化するということ。どう情報を集めようか、だとか、どうやってあんちくしょうを罠に嵌めるか、などが自在なのです。
自分が操作するキャラクターを自分で作れるのもポイント。プロフィールや能力値から、振る舞い、物事に対する返答やリアクション、果ては死に際のセリフまで思うがままです。ゲームだけでなく、小説、演劇が好きな方にもよく合う遊びといえるでしょう。
●TRPGのプレイサンプル
プレイヤーが取れる行動は自由ですが、ゲームマスター(ゲームの進行管理をする人)の手に負える範囲内で行うことが求められます。物語の最初にいきなり依頼人を殴り倒されたら、大抵の場合困った雰囲気になります。個性的な行動をしたいときはゲームマスターと相談しましょう。
実際にやってみると、たとえば以下のようになります。
鬱屈とした雰囲気が漂う街はずれの洋館に来たプレイヤーキャラクターたちは、玄関で中に入る方法を探している。
A「とりあえずドアノブをひねってみます」
ゲームマスター(以下GM)「回りません。鍵がかかっているようです」
B「では庭を見渡して予備の鍵が隠されたりしていないか探します。そこの犬小屋の中とか(探す判定をする……)失敗!」
GM「長い間使われていなさそうな犬小屋に手を突っ込んだあなたは、ちょっと湿った布があったことくらいしかわかりませんでした」
B「布を見てみると?」
GM「真っ赤な血で『今すぐ逃げろ』と書かれていますね」
B「悲鳴をあげて布を放り投げます」
C「では鍵師の私が持っている針金でちょちょいっと開けてしまいます。(鍵を開ける判定……)大失敗!」
GM「では針金が中で折れて鍵穴に詰まります」
C「『オウ、シット! ヤッチマッタネー!』と大仰に頭に手を当てて嘆きました」
D「……裏口あるんじゃね? ちょっと後ろに回ってみます」
GM「玄関の反対側に勝手口らしき扉がありました。半開きになっています」
D「最初っから見ておけばよかった! ……『ヘイ、天才鍵師のボブ! 裏口ががら空きだぜ!』と大声でみんなを呼びます」
GM「では、その声を聞きつけたのか家の中から何者かが動く物音が……」
といった具合に進んでいきます。このTRPGを、『クトゥルフ神話』の世界で遊ぶのが『クトゥルフ神話TRPG』です。
じゃあ『クトゥルフ神話』って何?
『クトゥルフ神話』とは、アメリカのホラー作家ハワード・フィリップス・ラヴクラフトが作り上げた、未知のものに対する恐怖を描いたホラー小説です。他の作家たちが世界観を共有して、神格や生物を足していく、いわゆるシェアードワールドであることが特徴です。
はじまりから100年ほど経った今でも『クトゥルフ神話』に連なる作品は増え続けています。アニメ、小説、ゲームなどのモチーフにもたびたび使われているので、見かけたことがある人もいらっしゃるかもしれませんね。
そしてその中でも、TRPGが大きなコンテンツとして注目されているのです。
『クトゥルフ神話TRPG』の魅力について
『クトゥルフ神話TRPG』では、プレイヤーは“探索者”と呼ばれる、超能力などの特別な力を持っていないような一般人となり、不思議な出来事やおぞましい事件を解き明かしにいきます。刑事モノでよくある「このヤマは危険だ。手を引きな」と言われるようなものに首を突っ込んでいくイメージですね。
その過程で恐ろしいもの、冒涜的なものを見たり触れたりしてしまうと、“正気度”と呼ばれるポイントを失ってしまいます。“正気度”は精神的な健康度合いのようなもので、失いすぎると狂気に陥ります。ゲームシステム的には自由な行動ができなくなったり、味方に襲いかかったりすることになるのです。このように、恐ろしい目に遭うとわかっていながら勇気を振り絞り、狂気に抗いながら潜んだ邪悪を解き明かしに行くゲームです。
また、ゲームを運営する役割もまた、独特の楽しさがあります。『クトゥルフ神話TRPG』では、ゲームマスターのことを“キーパー”と呼びます(英語:Keeper より)。触れてはいけない世界の秘密を守り、管理するものだから“キーパー”。名前だけでワクワクしますね。キーパーは、原作の『クトゥルフ神話』から生物を持ってきたり自作したりして、物語を作り上げるのです。少々難しいところもありますが、自分の世界を組み上げる楽しさは、プレイヤーとはまた違ったものになるでしょう!
このように『クトゥルフ神話TRPG』の遊び方は無限大。ルールブックを一冊用意するだけでそれはもう自由に遊べてしまいます。プレイするたびにシリーズの続編が追加されていくと言っても過言ではありません。愛着が湧いたキャラクターで何度でも遊べる(生きている限り)というのも、何度も遊びたくなる特徴です。
まず、もととなっている『クトゥルフ神話』の世界が膨大です。出てくる生物をまとめるだけで何冊も本になってしまうほど。その数は今でも増え続けているうえ、あなたが作り出すこともできるのです。TRPGで扱うにはモンスターの大きさ、攻撃方法などのデータが必要ですが、それらはモンスターデータ集『マレウス・モンストロルム』でまとめられています。生態やイメージ絵なども掲載されているので読み物としても面白いものとなっていますよ!
また、ゲームはシナリオの数だけ遊べるといえますが、自作すればキーパー(『クトゥルフ神話TRPG』におけるゲームマスター)が作った数だけシナリオが存在しますし、公式でもたくさんのシナリオが用意されています。
舞台設定も自由自在。『クトゥルフ神話』の大元は1920年代のアメリカですが、公式から出版されているものだけでも現在の日本はもちろん、大正時代、戦国時代の日本や、ヴィクトリア朝時代の霧深きイギリス、陰謀渦巻く第二次世界大戦期のドイツや、変わったところだと帝政ローマなんかもあります。時代が変われば常識や使える道具がガラリと変わり、全く違ったプレイ感が楽しめるでしょう。
『クトゥルフ神話TRPG』は特にプレイ人口が多く、公式から出版されている本やサポートが手厚いことが特徴です。一緒に遊ぶ人を見つけやすく、ネット上で見つかるノウハウも多いため、遊びやすいと言えるでしょう。
面白そうだけどピンとこない。もうちょっと詳しく
遊んでみるのが一番手っ取り早い……とはいえ、いきなりはためらいがあるかもしれませんね。そんなあなたにおすすめなのがリプレイ。プレイの様子を動画や小説形式にして追体験できるようにしたものです。
●リプレイの例1:動画
ニコニコ動画、YouTubeなど動画サイトで探してみると、動画形式でのリプレイがたくさん見つかります。そこでは、プレイの様子を楽しく気軽に見ることができます。凝った演出のものが多く、見応えありますよ! 公式チャンネルとして、『クトゥルフ神話TRPGチャンネル』も展開しています。
『クトゥルフ神話TRPG』を題材に、声優や人気実況者によるプレイの模様を配信する“生放送”、リプレイテキストやシナリオを解説する“ブロマガ”、オリジナル“動画”など、さまざまなコンテンツを楽しめるニコニコチャンネルです。利用料は324円(税込/月額)です。
●リプレイの例2:小説
リプレイは小説として出版もされており、こちらも実プレイを読み物として楽しむことができます。『クトゥルフ神話TRPG』のルールブックを制作しているアーカム・メンバーズ作のリプレイがおすすめです!
ルールブックに友達は付属していません……が
TRPGは複数人で遊ぶものです。買っても遊ぶ相手がいない……そんな心配があるかもしれません。大丈夫、遊ぶ仲間を見つける方法はたくさんあります!
●ショップでプレイ!
TRPG、ボードゲームを取り扱ってるお店の中には、プレイスペースを併設しているところがあります。お店主催のTRPGをプレイするイベントが開催されていることがあるので、HPやSNSの公式アカウントをチェックしてみてください。
●イベントでプレイ!
大規模なアナログゲームのイベントでは、TRPGの体験会を開催している場合があります。例えば春と秋に開催される“ゲームマーケット”では、TRPGフレッシュフェスと題して、遊ぶタイトルと長さを選んでTRPGを遊ぶことができるブースが用意されています。
ちょうど2019年11月23日(土)・24日(日)にも“ゲームマーケット2019秋”が開催中です。TRPGデーは24日となり、『クトゥルフ神話TRPG』のプレイができるほか、ステージイベントも開催予定。入場料は1,000円ですが、高校生以下は学生証の提示で入場無料なので、ぜひ足を運んでみてください。(小学生以下は保護者同伴で無料となります)
●コンベンションでプレイ!
公式、あるいは有志団体が主催する、TRPGを集まってプレイする会は“コンベンション”と呼ばれています。公民館や会議室などの会場を借り、一日がかりで遊ぶのです。多くの場合、どの作品が開催されるのかが書かれているので『クトゥルフ神話TRPG』を探して申し込んでみてください。初心者へのサポートも考えられているので、きっと楽しくプレイできますよ!
●オンラインでプレイ!
いきなり人と会って遊ぶのはちょっと……という方や、会場が遠くて無理……な方にもおすすめな遊び方があります。インターネット上でもTRPGをプレイする、オンラインセッションです。ダイスを使ったりできるTRPG専用のツールと、チャット形式のやり取りや通話による音声によってゲームをプレイできるのです。
キャラクターや場面のイラストや、BGMを使いやすく、表現を工夫しやすいほか、チャット形式で遊ぶ場合は文章でやりとりするので演技がしやすいという利点もあります。ただしオンラインで遊ぶ際は、プレイを円滑にするためにルールブックの所持を求められる場合が多いです。参加前に確認し、必要であれば購入してください。
友達とやってみたいけどみんな未経験だよ!助けて!
さあ、一緒に遊ぶ人は集まった、でもキーパーをやるのって難しそう……そんなあなたに公式から豊富な手助けが用意されています! 何に気をつければいいのか、どうすれば楽しくプレイできるのか。ルールブックだけではまだ不安……そんな方には『クトゥルフ神話TRPG入門 るるいえびぎなーず』(ログインテーブルトークRPGシリーズ)があります。
初心者が気をつけるといい点をまとめており、試すためのシナリオも付属しているので遊ぶ際の大きな手助けになるでしょう。また、今ならお試し版として『新クトゥルフ神話TRPG クイックスタート・ルール』が無料で配布されています。新ルールに触れることが可能な短めのシナリオ“悪霊の家”も同梱されているので、このセットだけでプレイすることができます。オリジナルの改編をしなければ、動画やSNSなどへの露出に制限もないので、ぜひお楽しみください!
おわりに
リニューアルした『新クトゥルフ神話TRPG』が発売する今が、「クトゥルフ神話」の世界に入門する絶好の機会です。今後も拡大し続ける『クトゥルフ神話TRPG』、少しでも興味を惹かれたらぜひとも触ってみてください! 宇宙の恐るべき真実が、あなたの探索を待っています!
いよいよ『新クトゥルフ神話TRPG』発売間近な来月は、改定にあたってどんなところが変わったのかをご紹介します。ご期待ください!
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