マット仕上げのRGサザビーに、時間を切り取ったブグのジオラマなど、電撃ガンプラアカデミー2019年8月、9月投稿編
2019年8月、9月に投稿された作品から、電撃ホビーウェブがピックアップした作品を紹介。前回から選定に時間がかかってしまい申し訳ありません。夏休みの時間を使って作られたと思われる力作がたくさん投稿されており、全投稿作品はワンダースクールにて公開中です! 今回選ばれた9作品は以下のとおりです!
>>電撃ホビーウェブ presents 電撃ガンプラアカデミー
電撃ホビーウェブのピックアップの9作品
作品名:HG F2-06R-2 ザク 【Original Mixing】(モルガナさん)
ザクに関しては様々なバリエーションがキット化されているので、それらを上手に選択する事で、自分好みのザクを作る事ができますが、反対にミスチョイスするとトンデモない作品ができてしまう可能性も含んでいます。モルナガさんは好みのコンセプトが明確だったと思われ、見事なミキシングを成功させています。他にも多くご投稿いただき、どの作品を選ぶか迷ったのですが、このザクを選ばせていただきました。しかし他の作品も清潔感あふれる完成度です。
作品名:RX-110-A Gabthlay Type Albino(niccaさん)
白の色味とグラデーションの感じ、質感が素晴らしいです。コンセプトでもある生物感をきちんと再現した塗装法がとてもいい方向に作用して、作品に安定感を与えていると思います。同時に投稿されたバリエーションについても、改造箇所の処理において自然なまとまりを見せているので工作スキルもかなり高い方だとわかります。ポイント色として選んだゴールドもかなり作品を引き立てていると思います。品のよさが漂っていて、大変好感のもてる作品です。
少し前に同じようなシチュエーションのジオラマ(空中に飛び上がった状態で、敵に一撃を加えているレイアウト)について質問をお寄せいただいたのですが、まさにその答えのような作品です。ジオラマと言うのは特定の空間を切り取り立体化する事ですが、じつは同時に“時間”も切り取っています。実際には浮かせる事ができない「ブグの本体と破損したガンキャノンの頭部」をどう固定するかが腕の見せ所ですが、アングルやレイアウトをも味方にし、この難しいシチュエーションの再現に成功しています。各キットの仕上げも丁寧で大変見事な出来栄えです!
機体的にもカラーリング的にもとても地味なアイテムなのですが、それゆえに工作も塗装もごまかしがまったく効かないキットです。REというキットの弱点のみを的確にディテールアップし、最小限の労力で最大の効果を生み出していると思います。カラーリングの選択も巧みで、特につま先の色味の変更は本体色を引き立てるためには大成功だと思います。ディテール、スジ彫近辺のシャドー感がとても繊細で、丁寧なフィニッシュワークが光る作品です。
一見、成形色を活かしたフィニッシュかと思いましたが、改造箇所やミディアムブルーの個所を見てフル塗装作品だとわかりました。逆にいえば成形色に見えてしまうくらい繊細で丁寧な基本塗装が行われている証拠だと思います。水中迷彩は迷彩のパターンも難しいですが、キモになるのはラインの濃さとボケアシの繊細さです。月風さんも仰られています“濃さ”ですがミディアムブルー部分の濃さは適正だと思います。ただライトブルー部が見えにくくなってしまっているので、ここは基本塗装の色味を濃くするなど調整すると迷彩が見やすくなると思います。
ここからは9月に投稿いただいた作品になります。
クレヨンを使ったウエザリングがとてもいいですね。油性のツヤ消し剤とも異なる独特の質感もウエザリングの方向性と合っていると思います。これもクレヨンを使った汚しだからできる仕上げですね。TERUさんは他にも同じ技法を用いたハイゴックもご投稿くださって、ハイゴックの基本色であるスカイブルーとウエザリングの相乗効果がとてもよく迷ったのですが、こちらを選ばせていただきました。
安定した仕上がりのえぬ専用さんの作品ですが、今回のは特に凄いと思いました。写真を拝見する限り“砥ぎ出し”は行っていないと思うのですが、クリアー吹きっぱなしでこの丁寧な滑らかな光沢感はエアブラシワークが大変優れている証拠です。特に前腕やスネ部の赤のグラデーションが秀逸で、ズゴックの曲面とクリアー仕上げと大変マッチしています。これを計算した上でグラデーションの加減を調整しているのでしたら、かなりのレベルだと思います。
改めて感じるのは、RGサザビーは光沢仕上げよりも、全体の形状アレンジやマーキングの書体なども含め、マット仕上げが似合うキットかもしれません。まずそれを見抜いて塗装の方向性を決めた事が素晴らしいと思います。全体の色味もマット仕上げに映える朱色よりの赤を選択した事も大正解だと思います。
ベアッガイやSDキットなどにも同じことが言えるのですが、この種の“かわいいアイテム”は本気で製作した時の説得感が凄いということです。逆に中途半端に製作してしまうとアイテムの持っているキャラクター性ゆえに、アラがとても目立ってしまいます。可愛らしい方向でもお笑い寄りの方向でも、リアルスケールモデルよりも丁寧な仕上げが求められます。そういった意味でもぴさんの作品は見本のような仕上がりと説得力を持っており、LEDを仕込んだ展示にもその意識が表れていると思います。とても好感が持てる素晴らしい作品です!
電撃ホビーウェブの総評
たくさんの力作をご投稿くださりありがとうございました。そして、選出が遅れてしまい申し訳ありません。『素組みでガンプラ』にて、100円ショップのグッズを使ったモデリングをご紹介しましたが、さらに突き詰めてあらゆるマテリアルで検証してみて感じたのは、100円ショップの商品では限界があり、専門店で扱っている同様の商品と比べると、性能に明らかな差があった事です。例えば化粧品などを使ったフィニッシュでは、やはりドラッグストアで扱っている一般の化粧品の方が優れていて使いやすく、同じように100円ショップで扱っている日曜大工用のアクリルスプレー(油性アクリル塗料)なども、ツヤ消しクリアー以外はほとんどがプラモデルにはまったく向かないと判明しました。どちらも原因は使用している溶剤が影響しているのだと思いますが、模型用の溶剤と相性が悪く、スミやウォッシングのふき取りなども不可能で、トップコートに使う以外は模型とは全く相性が悪いと解りました。時間をかけて実験を行ったものの成功例はわずかで、やはり実際に試してみないと何も分からないものです。しかしその結果、ドラッグストアの化粧品売り場や、カー用品店でプラモデルに使えそうな材料を見つける事ができました。加えてCS放送で見た「旧車を再生する番組」や「ネイルアート講座」などにも模型のヒントがありました。車の板金……パテ埋め・ヤスリ処理・塗装工程や、ネイル磨き・塗り技法などは、基本的な考え方は模型製作と同じですが、気付いていなかったポイントを異業界の作業手順から気づくことができました。どちらも不思議な技法満載で、やみくもに手を動かすだけではなく、ちょっと視点を変えてみるのもいいと気づけたエピソードです。
また、模型製作には様々な仕上げ方法と技法が存在しています。ダークな色から立ち上げた重厚感のあるグラデーション仕上げ。反対にパステル調の調色で空気遠近法を用いた華やかなグラデーション塗装。シリコーンバリアーやヘアスプレーなどを用いたハードウエザリング仕上げに、キュベレイのようなエレガントなボディラインを持つ機体には光沢仕上げ……。模型業界的にもその仕上げ方法に流行・廃りがあり、模型誌でもコンテスト作品でも、そのトレンドが少なからず反映されていると思います。少し前までは新たな技法によるウエザリングを施した汚し仕上げが全盛でしたが、最近はまた新たな兆しが見えてきている気がします。カーモデルもF1からグループ5まで、とにかくデカールワークが派手で“砥ぎ出し甲斐”があるキットがとても多いです。この手の仕上げはとにかく誤魔化しがきかず、一つ一つの工程を確実・丁寧に仕上げて、次の工程に移ることが絶対条件です。個性を確立するために一つの技法を追求するのも大切ですが、時には違った技法を試してみるのも上達のコツだと思います。秋は気温的にも湿度的にも長時間かけて乾燥させるには適した季節です。
10月投稿作品の選出記事も近日公開させていただきます。皆さんのたくさんのご投稿をお待ちしております。
電撃ガンプラアカデミーへの応募はワンダースクールにて受け付けています。
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