なぜ2021年に『デジモン』のまったく新しい玩具が登場することになったのか?――「バイタルブレス デジタルモンスター」プロデューサー&プロジェクトリーダーに直撃!

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

2021年3月13日、バンダイよりウェアラブル型液晶玩具「バイタルブレス デジタルモンスター」が発売となります。2020年12月7日の情報解禁以来、ファンから「めっちゃ欲しい!」「こういうの待ってた!」という好意的な意見が多く寄せられている本アイテム。かくいう筆者もデジモン直撃世代で、その発売を心待ちにしているひとりです。

 

本稿では、そんな待望のアイテムである「バイタルブレス」の企画秘話や、今後の展開についてうかがったインタビューの模様をお届け! バンダイ ネットワークトイ企画部 バイタルブレスプロデューサーの関戸大彦さん、バンダイナムコ デジモンプロジェクトリーダーの原田真史さんにリモート取材を行いました。企画段階のコンセプトアートやイメージラフといった貴重な資料も掲載していますので、あわせてご覧ください。

 

 

 

バイタルブレスは新プロジェクトに欠かせない玩具

 

――バイタルブレス発表時には、電撃ホビーウェブのTwitterアカウントにも多くのデジモンファンから好意的なリプライなどがありました。ユーザーさんの反応をご覧になっていかがですか?

 

関戸大彦さん(以下、関戸):正直、我々が予想していた以上の反応をいただいてます。まずは良かったな、と胸をなでおろしていますが、特に海外ファンの方々からのメッセージが多かったですね。

▲バンダイ ネットワークトイ企画部 バイタルブレスプロデューサー 関戸大彦さん

 

――企画の立ち上げ時期については、デジナビ(※)内でも言及されていましたが1~2年前とのことでした。ニュースリリースでは、バイタルブレスの“第1弾”としてデジモンが登場するという表現だったかと思いますが、「デジモンの新玩具」と「バイタルブレス」というくくりでは、どちらが先に動き出していたのでしょうか。

※2020年12月18日(金)公開「デジナビ デジタルモンスター 新作デバイス発表SP」

 

関戸さん:次世代のデジモン玩具の開発が先でした。その構想のなかで「バイタルブレス」が生まれ、結果的に他のコンテンツにも水平展開が可能になったデバイスに仕上がったところもあって、そのように発表しています。

 

原田真史さん(以下、原田):試作をしてみた結果、「現代にマッチした新しい遊びとして確立できるのでは?」という意見が多く集まって、会社として水平展開を検討することになり、このような表現になっています。

▲バンダイナムコ デジモンプロジェクトリーダー 原田真史さん

 

――これまでは、従来の液晶玩具のリバイバルや、X抗体デジモンが登場する新シリーズ、「デジモンペンデュラム」の新たな展開など、既存の枠のなかでの商品展開を行われてきた印象があります。2021年というタイミングになって、まったく新しいデバイスが開発された経緯について教えてください。

 

原田さん:2019年の1月より、『デジタルモンスター』20周年にあわせる形で新プロジェクトが動き始めました。バンダイナムコグループ全体の方針のひとつとして「IPを軸とした戦略」を打ち出しており、『デジモン』は貴重な玩具発のIPということで、そのポテンシャルを見直そうという流れがありました。そこで、『デジモン』を未来に向けて新調しつつ、コアなファンには喜んでもらい、新しいファンにも好きになってもらえることを目指すプロジェクトが発足しました。そのリブートには、旗頭となる新しい液晶玩具は絶対外せないよね、ということになったんです。

▲バイタルブレス企画段階のコンセプトアート。テイマーとデジモンの一体感にあふれた様子が心をくすぐる。

 

――その新たな液晶玩具を生み出すにあたって、関戸さんは「初代デジモンの根幹を大事にしつつ、今風に見えるようにバランスを取るのに苦労した」(※)と仰っていました。もう少し詳細をうかがいたいのですが、「今風に見える工夫」というのは、具体的にはどのような要素だとお考えでしょうか。

※「デジナビ デジタルモンスター 新作デバイス発表SP」13:20~

 

関戸さん:そうですね。前提としてカラー液晶であることは必須でしたし、やはり一番大きなところは「ウェアラブル」であることです。スマートバンド・スマートウォッチなどが我々の日常にとって当たり前になってきているなかで、これまでキーチェーン型だった液晶玩具をウェアラブル化したことで、プレイヤーの心拍数といったバイタルデータをゲームに絡ませられるようになったところだと思っています。

 

関戸さん:ただ、そのなかで機能をアップデートしていくにあたり、デジモンがこれまで受け継いできたバトル・育成進化・お世話の仕組みをどこまで新しくすべきなのかは、かなり慎重に検討しました。具体的には、食事・うんちのお世話といった機能はなくなり、プレイヤーの活動データをエネルギーとしてデジモンに送り込むという見せ方に変換しています。その一方で、バトルシステムを始め「ここは変えない方が良いよね」と判断した部分については大事にしています。

 

――その判断には、長年に渡って醸成されてきたファンコミュニティに対する理解など、シビアに求められるものが多かったのではないかと感じます。開発陣の意識共有など、どのようなスタッフワークがあったのでしょうか。

 

関戸さん:そうですね……。もちろん全員ではないのですが、歴代の『デジタルモンスター』の液晶玩具を開発していたプレックス(※)のディレクター陣など、いわば「デジモン有識者」が企画段階から入っていたプロジェクトなので、スタッフ間の相談や意識のすり合わせは密に行いました。予備知識豊富なメンバーが集っていたので、「どういう遊びがしたいのか」を考えて試作しつつ、膨大な仕様書と照らし合わせながら「ここは変えた方が面白くなるんじゃないか」みたいな話があがってきた際には、みんなでそれを汲み上げてみる、といった作業を行いました。

※「たまごっち」「デジタルモンスター」を開発したウイズ(後にウィズに商号変更)が2019年2月にプレックスと合併

 

 

デザインにおよそ2倍の労力を注ぎ込んだパルスモン

 

――開発の舞台裏では繊細な判断と膨大な作業があったとのことですが、見た目にも分かりやすい象徴として、アートディレクターの小林史弥さんがデザインした「パルスモン」が担っている役割は大きいと思います。

 

関戸さん:パルスモンは新たな液晶玩具シリーズを始めるにあたり、メインとなるデジモンが必要だろうということで生まれました。バイタルブレスのコンセプトがハッキリしているので、その機能面からデザインに求められるものが多く、大まかな姿・形が決まるまでは割と早かったんですが、プロジェクトの顔となる新しさがありながらも、原点回帰をイメージして成長期デジモンたちと並べても違和感のないバランスへ落とし込むのに苦労しましたね。僕と小林さんはもちろん、原田さん含めバンダイナムコグループのデジモンチーム全体に見てもらって、意見を取り入れました。

 

――実際に、パルスモンのデザインを気に入っているファンも多い印象です。本当にまちまちで一概には言えないと思うのですが、新しいデジモンを1体デザインするのに、通常どれくらいの時間をかけるものなのでしょうか。

 

関戸さん:大体1ヶ月ほどで基になるデザインは出来てくるのですが、ブラッシュアップを進めながらその前後の進化ルートに通じるモチーフなども考慮する必要があり、そこから並行したデザインが始まります。バランスを見ていく必要があるので、どうしても2ヶ月くらいはかかってしまうんです。パルスモンとその進化系は、スケジュールという観点ではそれほどオーバーしてはいなかったんですが、かなり難航したので通常の2倍くらいの労力を使ったと思います。

 

――バイタルブレスに収録されるデジモンについては、これまでシリーズが生み出してきた数多くのキャラクターにもう一度脚光を浴びせたいという思いがあったとお話されていましたが(※)、今後もバイタルブレスで初登場となるデジモンの存在については期待しても良いのでしょうか。

※「デジナビ デジタルモンスター 新作デバイス発表SP」15:18~

 

関戸さん:バイタルブレスの企画と同時進行で展開していた「デジタルモンスターX」シリーズは、デジモン自体に自我があるような、キャラクター性の強いシリーズになったんですね。究極体以上の強くて派手なデジモンたちが激しいバトルを繰り広げるっていうお話をやっていたのですが、その内容に好評をいただく一方、一部のファンの方からは「デジモンを生物として育成・研究する側面も見てみたい」という要望が届いていました。

 

「デジモンペンデュラムZ」シリーズでは「じゃあ、それぞれのデジモンの生息地とかをリアルに設定して、プレイヤーはその観測者という立場で世界観を構築してみよう」というところからスタートしたのですが、そうしてみると進化ルートに“穴”が空いてたり、うまくつながっていない部分があったことに気づきました。そこをキレイに整える作業などを行ってリリースしたのですが、ファンの方々からは「それを待っていた!」という評価をいただきまして。そういった経験は、バイタルブレスの収録デジモンを選ぶ際やDimカードの設定などに活かされています。

 

もちろん、これまでに登場してきたデジモンは僕たちにとってもファンの方々にとっても素晴らしい財産ですし、色褪せないデザインだと自負はしていますが、その生態系を考えた時にどうしても出てくる穴や、ファンの皆さんの違和感となる部分を埋めていくためにも、しっかりと新デジモンを用意していきたいなと思っています。

 

 

運動の種類はどのように判別しているのか?

 

――ここからは、主にシステム面についてお聞きしたいと思います。プレイヤーの活動データがデジモンの育成に影響を与えるという「パルスリンク」ですが、筋力トレーニング(バルクモン)、ヨガ(エキサモン)、ランニング(ランナモン)など、どういう運動にどれだけ時間を費やしたかにより、進化が分岐することを予感させるデジモンたちが公開されています。バイタルブレスには心拍センサーと加速度センサーの搭載が発表されていますが、これらのセンサーで運動の種類まで判別することは可能なのでしょうか。

 

関戸さん:基本的には心拍数と動きから運動を検知して、基準となる心拍数からの上がり下がりを加味し、バイタル値が増減していくという仕組みです。

 

――つまり、心拍数と加速度の相関で運動の種類を判別しているのでしょうか?

 

関戸さん:例えば腹筋とか、日常生活ではしないようなちょっと変わった動きを要求するミッションを用意していて、それをセンシングしています。初代ペンデュラムに搭載されていた振り子センサーを活用して、本体を振ると光るとか音が出るっていう「動いているかどうか」を検知する技術にはノウハウがあったのですが、小走りをしているのか、それともゆっくり歩いているのかなど「動きの強弱」をどう検知させるかという部分には骨が折れました。

 

――そのほか、技術面で苦労されたことはありますか?

 

関戸さん:心拍センサーは今まで玩具に搭載したことがなかったので、結構ギリギリまで苦戦しました。(2020年の)夏から秋にかけて調整に追われていましたね。

 

――そういった技術が使用されている一方で、価格が税込6,380円(ver.BLACK&ver.WHITE)というのは安いですよね。

 

関戸さん:無料でダウンロードして遊べるF2P(Free to Play)ゲームの存在が当たり前になってきているので、価格が8,000円~10,000円とかになってしまうと、勝負できないというところはありました。なので、最初からパッケージのゲームソフト1本分よりは安いか、同じくらいの値段に抑えようという価格帯の目標が先にあったんです。

 

原田さん:バイタルブレスは従来のファンの方々だけでなく、新たな子どもたちにも手にとって欲しいという思いがありますから、クリスマスプレゼントやお年玉で買えるようなところを目指しました。コアなファンの方からは、「もっと高くてもいいから色んな機能をつけて欲しい」といった要望も届いていますが、そういう方にも納得してもらえるベストなバランスを関戸さんにコーディネートしてもらっています。

 

――プレイヤーのバイタルデータによって進化するデジモンが決まるという、ある意味で自由意志が介在しにくい出会いを楽しむのがバイタルブレスの醍醐味と承知の上でお聞きしたいのですが、例えばどうしても進化させたいデジモンが決まっている場合などに、ユーザーの裁量で進化先を絞るようなことは可能なのでしょうか。

 

関戸さん:結論から言うと、できます。進化にはバイタル値のほかにも、スクワットやシャドウボクシングなどの運動をこなしてトロフィーを獲得するミッションや、バトルの回数と勝率、この4つの条件で進化が分岐します。その全部を公開する予定はありませんが、ある程度の指針があったほうがユーザーさんも盛り上がると思うので、進化の条件などは一部公開していきたいと思います。ちなみに、「お気に入りのデジモンと一緒に過ごしたい!」という方のために、進化のキャンセルが可能な仕様になっています。

 

 

Dimカードの販売ペースや新キャンペーンなど

 

――商品展開のスケジュール感についてもお聞きできればと思うのですが、遊びを拡充していくアイテムであるDimカードは、どれくらいのペースで発売していく予定なのでしょうか。

 

関戸さん:現状、2ヶ月に1種(2枚セット)のペースで販売していく予定です。基本的にはデジタルワールドの火山とか海とか、各ロケーションに根ざしたデジモンを収録した内容としていくつもりですが、ペンデュラムシリーズなどで展開した勢力のデジモンたちもフィーチャーしていきたいですね。

 

――バイタルブレス本体やバンドの色展開、バンドのサイズ展開などは?

 

関戸さん:ブレス本体は、すでに発表しているver.BLACK・ver.WHITE・ver.SPECIAL以外の色展開は今のところ予定していません。バンドは同じく色展開の予定はありませんが、身体の大きな方にも装着していただけるように延長バンドの発売は検討中です。

 

――最後に、バイタルブレスの発売を楽しみに待っているファンに向けて、メッセージをお願いします。

 

関戸さん:ご予約をしていただいた皆さま、また購入を検討している皆さまの期待に添えるよう、精一杯頑張って作っています。お楽しみに!

 

原田さん:新デジモンのパルスモンが活躍するプロモーション映像の第2弾も制作中です。こちらも公開を楽しみにお待ちください!

 

 

――ありがとうございました!

 

 

2020年12月18日の受注解禁後、開発陣の予想を上回るペースで予約申し込みが舞い込んでいるというバイタルブレス。その感謝を込めて、ブラックワーガルルモンを育成可能となる特製Dimカードが当たる「バイタルブレス「シャドウハウルDimカード」プレゼント!~ブラックワーガルルモン参上!~」キャンペーン(※)の追加開催が決定しました! 当選者にはバイタルブレスの発売日までに特製Dimカードが贈られるとのこと。詳細は発売中の月刊Vジャンプ3月特大号、およびデジモンウェブ(2月1日情報解禁)をチェックしてください!

※キャンペーン内容・スケジュールは変更となる場合があります。
※賞品のお届け先は日本国内に限らせていただきます。

 

また、1月22日(金)20時よりデジモンウェブ公式Twitter、バンダイ公式YouTubeチャンネルにて「デジナビHeadlineNews」のvol.3が公開となります。バイタルブレス関連情報のほか、現在放送中のテレビアニメ『デジモンアドベンチャー:』の情報など、盛りだくさんの内容でお届けするとのこと。こちらもお見逃しなく!

(C)本郷あきよし・東映アニメーション
(C)本郷あきよし・フジテレビ・東映アニメーション
(C)BANDAI

関連情報

 

関連記事

上に戻る