鍋奉行の「玩具道」――第1回・「ミニプラ」の歴史は2001年の『ガオレンジャー』で変わった

更新日:2022年1月29日 10:42

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スーパーで食玩をBOX買いしたとき、目が合った子供の表情が未だに忘れられません。どうも、エンタメライターの鍋奉行です! その悔しさを忘れずに、君も大人になったらやりなさい。ようこそ玩具道へ!

ということで、今回から唐突に短期連載コーナーがスタート! このページではハイターゲットトイや食玩など近年の玩具を中心に、1ユーザーの立場からアレコレ語って行きたいと思っておりますので、なにとぞ良しなに。それでは、さっそく行ってみましょう!

※文中の金額表記は、発売当時の税抜価格です。

 

長年続く食玩ブランド「ミニプラ」とは?

ところで皆さん、そもそもミニプラはご存じでしょうか? ミニプラとは、主にスーパー戦隊シリーズの主役ロボを毎年立体化している、バンダイキャンディトイ事業部の食玩ブランド。工具不要でパーツをもぎ取れるスナップフィットを採用し、子供にも組みやすいプラキットとして長年親しまれてきましたが、近年は可動ギミックの充実によりアクションフィギュアとしての魅力も加えられ、大人も含めて更なるファン層を獲得する人気シリーズとなっています。

またミニプラから派生したハイターゲットブランド「SMP [SHOKUGAN MODELING PROJECT] 」(旧スーパーミニプラ)では、現在放映20周年を記念して『百獣戦隊ガオレンジャー』の様々な商品を展開中。当時のミニプラのリメイク版とも言える「SMP 百獣合体ガオキング」など、どれも決定版と呼ぶべき仕上がりですが……ここでは今後数回に渡って、そのリメイク元である20年前の「ミニプラ パワーアニマルシリーズ」の魅力やすごさを、改めてお伝えしたいと思います!

 

▲現在「SMP」ブランドでは、ミニプラの現代版リメイクとも言える精霊王たちが続々と登場中! 写真の「SMP 百獣合体ガオキング」「SMP 百獣合体ガオマッスル/ガオライノス&ガオマジロ」に続いて、年明けには「SMP 百獣合体 ガオナイト」や「SMP 百獣合体ガオハンター」も加わる予定です。

 

2000年以前の「ミニプラ」苦難の歴史

……と、その前に。今回はミニプラを中心とした、それ以前の食玩の周辺事情についておさらいして行きましょう。

バンダイの食玩ブランド・ミニプラシリーズでは、以前からその年ごとに放映中のスーパー戦隊シリーズのロボを立体化していました。しかし2000年以前のミニプラでは、メインアイテムである「DX玩具」と同等のラインナップや合体ギミックが再現されないこともあり、番組終盤に登場するロボなどは合体ギミックを省いたロボ形態のみが発売されたり、そもそも発売されないこともありました。これには様々な理由があるのですが、最も大きな原因は発売時期の問題でしょう。

まずDX玩具に目を向けると、番組終盤に登場する追加ロボの玩具は、クリスマスやお正月の年末商戦用として10月末~11月初旬頃に発売されます。この時期はDX玩具が年間で一番売れるので、ある意味サブアイテムである食玩は当然売れにくくなります。そのためミニプラシリーズは毎年10月頃までに最終アイテムを発売することが多く、最終ロボは(番組登場前の場合もあって)タイミング的に発売しづらいという事情がありました。メイン商品であるDX玩具の発売と同時期に、同様の合体ギミックを再現したアイテムは出しにくいということもあったのかもしれません。

またそれまでの食玩はあくまでも幼児のためのものであり、「低価格でないと売れない」というジンクスも根強くあったようです。そのためミニプラは、長きに渡って1個200~300円という厳しい縛りの中で商品開発せざるを得ませんでした。

そんな中、1990年代後半には中国が様々な商品を大量生産するようになり、その価格破壊は日本の玩具・食玩業界にも大きな影響を与えました。その頃は完成品や塗装済みの食玩が驚くほど安価で大量に出回り、組み立てやシール貼りの手間を要するミニプラにとっては非常に不利な状況でした。同じ売り場の商品のクオリティが全体的に底上げされ、それでも価格を上げるわけにも行かず、年末商戦では売れない……2000年頃までのミニプラは、このような厳しい状況の中でシリーズを存続させていたのです。

 

▲現在発売中の「ミニプラ 全界合体シリーズ」より、「ミニプラ 全界合体シリーズ04 ゼンカイジュウオー」。『機械戦隊ゼンカイジャー』のロボは変形+左右合体などの複雑な合体ギミックが売りだが、ミニプラでは可動ギミックも意欲的に盛り込まれており、多彩なアクションポーズまで楽しめる。

 

2001年『百獣戦隊ガオレンジャー』で起きた状況の変化

そんな苦境を一変させたのが、2001年にスタートした『百獣戦隊ガオレンジャー』のDX玩具・パワーアニマルシリーズでした。それまでのスーパー戦隊ロボ玩具にはなかった自在な合体システムと豊富な商品ラインナップは、ミニプラシリーズにも否応なく変化をもたらしました。一部ミニプラ化されなかったアイテムもありましたが、年間を通じて発売されたアイテムが全て合体できるようになり、それまでの単発的だった商品展開から「DX玩具と同等にアイテム連動するシリーズ」へと進化したのです。また当初は逆風だった食玩ブームも、食玩全体が注目を集め新たなユーザーが増えたことで、結果的にミニプラにとっても追い風となりました。

 

▲ミニプラブランドでは、スーパー戦隊のロボ以外にも様々な作品のロボがキット化されている。写真の『ミニプラ 変形合体インパルスガンダム』(2004年11月発売、300円、全2種)は、『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』放映当時に発売されたもの。

 

この後ミニプラシリーズは、DX玩具では追求しにくい「アクションフィギュアとしての魅力」を加えて、新たな路線へとシフトして行くことになりました。そしてその変化は、個人的には「ミニプラ パワーアニマルシリーズ」から始まったのだと思います。

……ということで前置きが長くなりましたが、いよいよ次回から「ミニプラ パワーアニマルシリーズ」をご紹介したいと思います。それではまた!

【第2回に続く】 ※2022年1月4日(火)17時配信予定

 

ライター●鍋奉行

食玩や玩具を買い始めることで、人の心を取り戻したフリーライター。アニメ・特撮・フィギュアなどの記事を中心に、各方面で活動中。ロボ系玩具や可動フィギュアが好物で、食玩では特にミニプラシリーズに思い入れが強い。

 

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