プラモファン注目!!家庭用品だけれど模型工作に欠かせないマストアイテムを産み出したメーカーさんに色々伺いました!——「アイラップ」「なんでもシート」編

更新日:2022年10月31日 10:54

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プラモデル作りをしてて「もっときれいに作りたい!」「もっと格好よくしたい!」という欲求が出てくるのは自然なこと。そんなとき心強いのが、ノウハウが詰まったHow-to本や、SNSでの情報ですよね。TwitterをはじめとするSNSでは、プロ・アマ問わず多くのモデラーさんたちが情報を発信しています。そして、その情報の中には、それまで模型とはあまり関係のなかったアイテムやグッズを活用している事例も……。

本企画では、そんなホビーとはあまりなじみのない、だけれど必ず役に立つアイテムを作ったメーカーを直撃! 身近なあのアイテムの誕生秘話や知らなかった活用法、そして当初想定していなかった用途での活躍をどう感じているのか等などをお伺いしていきます。

 

第1回となる今回取り上げるのは、岩谷マテリアル社の「アイラップ」と「なんでもシート」! Twitterがきっかけで家電量販店の模型売り場やホビー専門店にも並びはじめたという2つのアイテムについて、アイラップ公式Twitter(@i_wrap_official)の中の人に聞きました!

▲今回取り上げる「アイラップ」(左上、左下)と「なんでもシート」(右上、右下)。材質は耐熱耐冷性能にすぐれ、すこし厚手のフィルムはコシがあり耐久性もバッチリ。
物性として安定しているポリエチレン製なので、保存だけでなくアイデア次第で様々な用途で活用できます。

 

岩谷マテリアルってどんな会社?

——普段はあまりというか全く接点のない弊誌からの取材にOKをいただき、ありがとうございます。早速で恐縮ですが、まずは御社について教えてください。イメージとしては「アイラップ」をはじめとするポリ袋の会社さんという印象が強いのですが、御社はどのような製品を取り扱っているのですか?

 

アイラップ公式Twitter(@i_wrap_official)の中の人(以下、中の人):弊社はもともと合成樹脂や各種金属のコーティングや各種フィルム等の製造と販売、原材料の輸入から業販などを取り扱うメーカー機能を持った商社なんです。

一般のお客様の目に触れる製品はおっしゃる通り「アイラップ」をはじめとする家庭用品ですが、ポリタンク類や農業用のフィルム、珍しいものですと金属フェンスのコーティングなど、あまり名前の出ない製品の取り扱いも多いんですよ。

家庭用製品ですと、ポリフィルム製品以外では樹脂素材の特徴を生かした台所用品や、椅子、ゴミ箱などインテリア製品も数多く展開しています。日本ではじめて大々的に白いゴミ箱を販売したのは弊社のゴミ箱でして、これをきっかけに日本で白や明るい色のゴミ箱が増えていったんですよ。その他にも背もたれ付のお風呂用椅子を販売したのも弊社が最初だったりします。普段使っている製品が弊社製品だと気づかないまま使われている方って、結構いらっしゃると思います。

▲こちらが日本で初めて白色で販売された「kcud<クード>スリムペタル」シリーズ(大きい方が#30モデル、小さい方が#20モデル)。ペダルを用いたフタの開閉、大きなキャスターで移動も楽々と使いやすい機能も満載。

 

日本海側から全国区へ——

——このゴミ箱は確かに見たことあります! 御社の製品だったのですね。では「アイラップ」と「なんでもシート」について教えてください。まずは「アイラップ」からお伺いしたいのですが他のポリ袋とは違う「アイラップ」ならではの強み、魅力はどういった点でしょうか。

中の人:一番の強みは耐熱耐冷の性能ですね。災害が起きる度にポリ袋の利便性が見直されていますが、そういう観点でも「アイラップ」は活用できると思います。
「アイラップ」が出た46年前は電子レンジの普及が進んでいない時代で、温め直しをするには湯せんなどが一般的だったんです。そこで袋状なら湯せんをしやすいですしレンジにかけるのも楽だということで開発されたのが「アイラップ」なんですよ。

その後、発売から15年で特許が切れたことにより多くの企業が参入し、類似品が増加。で、やはり価格競争となり、どんどんと……売り先が縮小していっちゃったんですね。ですが、山形を拠点に展開されている食品スーパーのオーナーさまが「アイラップ」を気に入ってくださり、力をいれて取り扱いをしてくださったんです。そのおかげで日本海側で「アイラップ」は普及していったんですよ。

 

――公式Twitterで地域限定での商品ではないという旨のTweetが拡散したとき、全国商品ではなかったのかと驚いている人が多かったのが印象的でした。

中の人:ある地域ではポリ袋のことを「アイラップ」って呼ぶところもあるくらいご支持いただいている商品が、何十年の刻を経て平成の末期に誕生したTwitterアカウントがきっかけで脚光を浴びたというのは、ちょっと感慨深いですね。

 

「なんでもシート」が脚光を浴びたあのTweet

――ロングセラー商品の「アイラップ」と比べると、「なんでもシート」はかなり最近の製品ですよね。「なんでもシート」はどういったきっかけで開発がはじまったのですか?

中の人:「アイラップ」の材質であるポリエチレンを幅広く取り扱っている弊社として、袋の他に何か生活の役に立てるものはないかと考えたとき、次はシート状で何か作れないかな、と。この素材はコシがあるのでクシャクシャにしてもスッと元に戻りますし、何よりくっつかないんですね。これなら、色々な用途で使えると考えたんです。

例えばお弁当を作る時の一時的な置き場や、汚れ落としのための漂白剤を使ったパックとか。あと、薄いので刃を当てたら切れてしまいますが、まな板で生魚を下ろすときの匂い軽減に使えるとも考えました。アイデア次第で何にでも使えそうだったので、「なんでもシート」という名前にして販売しようと製品化したのが2020年のことです。

 

——発売後の反響はいかがでしたか?

中の人:それが、「なんでもシート」を発売したすぐ後に他社さんがシート状のまな板を発売されてヒットしたのですが、その製品と混同されてしまい「これ切れちゃうじゃないか!」って言われて大変でした。洗い物の負担を軽減するというコンセプトとシート状のまな板とは違うので、さすがにこれは弱ってしまいましたね(苦笑)。

そんな中、プロモデラーの瀬川たかしさんが弊社の製品をすごく推してくださって。「アイラップ」と「なんでもシート」を活用されていて、SNSで色々なことができると発信してくださったのがきっかけで、家電量販店のホビー売り場に「アイラップ」と「なんでもシート」が並んだりしました。

——あのTweetの後、ホビー方面での活用がTwitter上で大きな話題になったと記憶しています。おそらくホビー方面での用途は想定されていなかったと思うのですが、どのような印象を持たれましたか。

中の人:幅広い世代の方に愛されている製品ですので、ホビー分野の話題が特別目立つということはないんですけれど、それでも家電量販店さまや模型店さまの店頭で自社製品を見かける機会が増えたと感じています。これは本当にうれしいですね。

 

――Twitterでの拡散をきっかけに、ユーザーからのお問い合わせ、反響などは変化しましたか。

中の人:Twitterをはじめる前と後では、都市部のお客さまの反応が増えた印象です。「アイラップ」が強い日本海側の地域のお客さまは長く愛用してくださっているお客さまが多いです。ですが、SNSをきっかけに弊社製品を知ってくださる方は比較的若い方が多いですね。その若い層の広まっている先に、ホビー用途で使ってくださるホビーファンの方たちがいるのかな、という印象です。

 

——アイラップ公式Twitterの運用では、何か変化はありましたか?

中の人:うーん、そうですねぇ。現状、Twitterでホビー用途はそこまで熱を入れて発信しているわけではないので、まだ知る人ぞ知る存在なんじゃないかな……と。たまに拡散されるTweetも話題性とかではなく、刺さる人が見てくれて「これは!」って言ってくれているのだと思っています。
なので、特に大きな変化というかスタンスが変わったということはないですね。もともと製品とは全く関係ない話題とかを投稿していましたから(笑)。

 

SNSから生まれた新しいつながり

——アイラップのロゴ入りミニ四駆のお話とかもされていますよね(笑)。

中の人:今日はそのミニ四駆をもってきたんですよ!

――おお! これが!!

中の人:最初は話題作りのつもりではじめたら思いのほか反響が大きくて驚いたんですけど、つぼ八さんが主宰した企業アカウント対抗のミニ四駆大会(※1)に出場することとなり、ならばしっかりと作ろうと秋葉原にある秋葉原工作室さん(※2)で店長にアドバイスをいただきながら生まれて初めてエアブラシ塗装をしたんです。

(※1)ミニ四駆に関心のある企業アカウントが業種を超えて集まり開催したミニ四駆大会。2019年3月に第1回が開催され、アイラップ号IIは総合優勝を飾った。
(※2)電ホビ読者にはおなじみ、東京・秋葉原にある時間貸しの工作室。塗装ブースや貸し出し機材も充実し、思う存分プラモ作りが楽しめます。

 

▲こちらが中の人が製作されたアイラップ号。左からアイラップ号I、II、III。アイラップ号IIはつぼ八カップで総合優勝を飾った。アイラップ号IIIはリアウィングのロゴ回りとボディカラーのマッチングが一発で決まった自信作。
製作の模様はTwitterのハッシュタグ #アイラップ号 や #公式DIY部 で検索を。

 

中の人:秋葉原工作室さんでの工程を全部Tweetしていたのですが、その時たまたま瀬川さんがいらっしゃっていて。マスキングや塗装の仕方などをも教えていただき完成したのが、このアイラップ号IIです。そのころ私は瀬川さんを存じ上げなくて、逆に周りの人が「あの瀬川先生ですか!?」と立ち上がって握手を求めているのを目にして、スゴい人だったんだとその時初めて知って……改めてご挨拶させていただきました(笑)。

自社製品がきっかけで違った分野・業種の方と出会いあるというのは素敵ですよね。私もこういう機会がなければ塗装まではしなかったと思います。

 

――異業種といえば、カプセルトイもリリースされ大好評でしたよね

中の人:お声がけくださったのは、株式会社いきもんという生き物を題材にしたカプセルトイを作っているメーカーさんなのですが、そこの社長さんが新潟のご出身なんです。その頃はご自身にゆかりのあるアイテムを企画していて、新潟繋がりでお声がけいただいたのですが、「何で俺はアイラップを忘れてたんだ!」っておっしゃってました(笑)。
お声がけいただいてからあっという間に試作品ができあがったのですが、そのタイミングでコロナ禍が激しくなって、発売までかなり時間がかかってしまいました。

 

——入っている「アイラップ」は通常のものと同じなのですか?

中の人:まったく同じです。当初は袋も小さいもので検討していたのですが、コロナ禍の影響で難しくなってしまい、だったらもう本物をいれてしまおう! と。むしろ本物をいれたことで話題になってくれました。カプセルトイをPRに活用している企業ということで、TV番組の取材申込みもあったんですよ。面白い方向に転がってくれて、本当によかったです。

 

——御社の製品を中心に、よい意味でゆるく愉快な繋がりが生まれたのだなあ、と感じました。いまの心境はいかがですか。

中の人:最初にも申し上げましたが、一地域で長い間ご支持いただいていた商品が、SNSをきっかけに再び全国の方に知っていただくことが増えたのは、そして様々な世代に活用されジャンルも広がったのは、とても感慨深いですね。

 

――最後になってしまいましたが、「アイラップ」と「なんでもシート」を使う際に気をつけてほしい、注意してほしい点を教えてください。

中の人:耐熱性は120度なので、湯せんの際には必ず鍋の底にお皿を敷いていただきたいです。熱源のすぐ上の鍋肌は何百度にもなっているので、そこに触れてしまうと溶けてしまうんですね。なので、直接触れないよう何かをかませるようにしてください。基本的には食品用の商品ですがホビーの世界でも何か湯せんをすることがあるでしょうから、その際には同じように守っていただきたいです。

また、レンジにかける時は耐熱皿が必要なのと、その場合は必ず袋を結ばないようお願いをしています。レンジに入れる際にキッチリ結んで温める方がいらっしゃるのですが、それだと破裂してしまうので。湯気の逃げ道を確保するためにも、結ばずにねじるなどして温めをしてください。
あと、レンジ加熱の際に油分を含んでいると、油が耐熱温度を超えてしまい溶けてしまうことがあるので、その点も注意していただきたいですね。

以上の注意点を守っていただき、ぜひこれからも「アイラップ」と「なんでもシート」を活用していただきたいです。あと、面白い活用法がありましたら、ぜひTweetもお願いします!

 

——本日はありがとうございました。

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