鉄道ライター・若林健矢が行く!Nゲージ・首都圏レンタルレイアウト探訪記 ~第1景・東京都墨田区「レイルガーデン」(短期集中連載・全3回予定)~

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鉄道模型関連イベントに行くと、メーカーのブースに大型のNゲージレイアウトが設置されており、見慣れた列車がその上を走っている光景に出会えます。そういった場での列車は、だいたい長い編成が組まれており、自宅で同じように展開するのはなかなか難しいものです。

しかしもし、そういったイベントで見かけるような巨大ジオラマで、自分の好きな鉄道模型を運転できたら、とても面白いと思いませんか? また、鉄道模型を持っていない人にとっても、精巧に作り込まれた情景を間近で見ることは楽しいのではないでしょうか。


それらの興味は「レンタルレイアウト」で実現します! 「レンタルレイアウト」とは、時間貸しされている大型ジオラマに自分が所有しているNゲージ車両などの鉄道模型を持ち込み、運転を楽しめるお店のこと。そういったレンタルレイアウト店には、自宅ではなかなか広げられない長い編成の列車も、のびのび走らせることができる贅沢なスペースが用意されています。


筆者(若林健矢)も時々プライベートで利用しているこの「レンタルレイアウト」。当企画は「Nゲージ・首都圏レンタルレイアウト探訪記」と題し、その魅力を短期集中連載にてお伝えしていきます!

3週連続で、2025年2月23日、3月2日、3月9日の毎週日曜お昼ごろ掲載予定。この企画で広くレンタルレイアウトの魅力を知っていただけましたら幸いです。

その第1景として、今回は東京都墨田区の「レイルガーデン」を訪問しました。珍しい2種類のレイアウトや、お店のエピソードについてお話を聞きつつ、筆者も自分のNゲージを持ち込んで運転してきました。


浅草にほど近い立地のレンタルレイアウト店「レイルガーデン」

「レイルガーデン」の最寄り駅は、都営地下鉄浅草線・大江戸線の蔵前駅。大江戸線のA7出入口から地上に上がり、厩橋(うまやばし)を渡りましょう。浅草線の場合、A2・A4出入口から「厩橋」交差点に歩けば、大江戸線のA7出口に合流します。

▲ 都営大江戸線蔵前駅のA7出入口から歩いて向かう。
▲ 隅田川に架かる厩橋。運が良いとJR総武線各駅停車や東武スカイツリーラインが見えるかも。


厩橋を渡ったら、「本所一丁目」交差点でセブンイレブンのある方向へ。そのセブンイレブンの隣にある、正面が水色に塗られたビルの3階に「レイルガーデン」はあります。

▲ 「レイルガーデン」の入っている大岩ビル。


脇道に入ったこの通用口から階段で3階へ。入口に看板が立っています。

▲ 営業時間案内とあわせてレンタルレイアウトの写真も掲示。


店内に入ると、目の前に大きなNゲージレイアウトが登場! スケールダウンしてもなお存在感を放つ東京スカイツリーが目を惹きます。しかも奥にもう1台、別のレイアウトも備わっています。筆者は、お店自体は知っていたものの、訪れるのは今回が初めて。ホームページで下調べしながら、楽しみにしていました。

▲ 東京スカイツリーもそびえ立つNゲージレイアウト! 本物のスカイツリーもお店から自転車で10分ぐらいと、ほど近い。


「レイルガーデン」ではレンタルレイアウトの運営以外に、Nゲージ鉄道模型の車両・線路・ストラクチャーの販売も行っています。ほしい車両やジオラマ素材などがある場合に、立ち寄ってみるのも良さそうです。


鉄道模型初心者オーナーが銭湯と兼業「まさか自分がやることになるとは」

オーナーの堀田晃一(ほりた・こういち)さんに、お店やレイアウトについてお話をうかがいました。

「レイルガーデン」の開業は2013年。堀田さんの実弟である故・堀田健二(ほりた・けんじ)さんがお店をオープンしたことが始まりでした。「当時、レンタルレイアウトはほとんどなかったような時代ですね」と振り返る堀田さん。ご自身は元々、足立区の綾瀬にある銭湯「玉の湯」の営業に専念しており、鉄道模型とはほとんど関わりがありませんでした。時々、健二さんから世間話として聞く程度だったそう。

しかし、コロナ禍の2020年10月に健二さんが急逝し、一時的にオーナーが不在となる事態に。その時、堀田さんは「最初は解体(閉業)しようと思っていた」といいます。Nゲージのレイアウトは新幹線も余裕で走れる大きさであるため、移設するにも一度分解しなければならず、「選択肢として、やるかやらないかの二択しかなかった」とのこと。新型コロナウイルス感染症が拡大した時期でもあり、店を畳んでもおかしくない状況でした。

▲ 「レイルガーデン」および銭湯「玉の湯」オーナーの堀田晃一さん。


しかしそんな時期に、7年間でできたファンからの、再開を待つ声が聞こえてきました。それを受け、2020年11月から週3日でお店を再開。様子を見ていた堀田さんは、店を訪れる熱心なファンの姿に、地元民の生活の支えになっている銭湯と通じるものを感じて「レイルガーデン」の継続を決意。長男の冬馬さん(店長)と姪のひかるさんをスタッフに迎え、本格的に営業を再開され、現在に至っています。

このような経緯のため、鉄道模型に詳しいスタッフがいないという、鉄道模型店としては異例の存在でした。「レールって磨かなきゃいけないの?」「壊れたらどうすればいい?」というところからのスタートだったそうです。しかし、冬馬さんはベースが鉄道好きで、楽しみながら仕事を覚え、ひかるさんはデザイナー志望だった経験からホームページ用の写真を担当する(現在はリニューアル済み)など、あるものを活かしつつ、日々学びながら営業に励んでいます。

銭湯とレンタルレイアウトの兼業は、珍しさが武器なだけでなく、相乗効果も表れました。「玉の湯」に国鉄風のホーロー看板や「レイルガーデン」のロゴマークを飾り、「うちの2号店だよ」と話した際には銭湯の利用者に驚かれたこともあるそう。「レイルガーデン」にも「玉の湯」の写真が飾られています。

▲ 「レイルガーデン」のエンブレム。
▲ ホーロー看板の駅名標。ちなみに「玉の湯」には「たまのゆ」のホーロー看板が飾られている。


さらに、墨田区の広報番組やCMへの起用、鉄道系YouTuberの動画撮影や新聞の取材など、さまざまなメディアに取り上げられる機会も増えたとのこと。鉄道模型に関しては、弟の健二さんから世間話として聞く一方だった堀田さん。「まさか自分が担当することになるとは、これっぽっちも思わなかった」と、改めて驚いていました。


ディディエフ製作「市街地」と「田舎」の2大レイアウトを楽しめる!

そんなレイルガーデンの誇るレンタルレイアウトは、なんと「市街地レイアウト」「田舎のレイアウト」の2本立て! どちらもジオラマ製作のプロであるディディエフが手掛けた、5.0m×2.5mの大レイアウトとなっており、前者6線・後者4線の計10線が用意されています。

まずは、開業当初からある「市街地レイアウト」からご覧いただきましょう。新幹線にも対応した高架線(1・2番線)と私鉄線(3・4番線)の駅、その向かいに在来線(5・6番線)の駅が設置されています。各線の操作卓も駅の近くに配置されています。

▲ 開業当初から親しまれている市街地レイアウト。写真は1~4番線側。
▲ 市街地レイアウトの5・6番線側。


高架線・私鉄線は、他の路線との立体交差を交えつつ、街の外周を周回。対する在来線は、変形8の字型の配線で、情景の中を横断します。街の中には東京スカイツリーや、「玉の湯」イメージの銭湯も。在来線が途中で川を渡る様子は、中央・総武線各駅停車が神田川を渡る光景を彷彿とさせます。

▲ 2つの駅を中心に広がる街並み。駅・ホームや一部建物に電飾も。
▲ 「玉の湯」をイメージして銭湯が線路沿いに。
▲ 御茶ノ水~秋葉原間を走る黄色い電車が思い浮かぶ。


「市街地レイアウト」ではありますが、川の上流は郊外となっており、そのエリアには建物が少なく、農家や山などの情景が広がっています。その境目では、川岸の表現に変化が付いているのもポイント。都市部から郊外まであらゆる情景が凝縮されているので、どんな列車を走らせても楽しめそうです。

▲ 街の反対側は紅葉も見られる郊外となり、情景やその表現が大きく変わる。


次は「田舎のレイアウト」も見てみましょう。開業後に増設されたレイアウトとなっており、私鉄・ローカル線(7・8番線)と峠越え線(9・10番線)が用意されています。こちらは「市街地レイアウト」に比べてローカル線の趣きが強く、自然が充実した情景でロングランを味わえます。そのかわり、フル規格の新幹線は走行できません。

▲ 大きな山と川が特徴の「田舎のレイアウト」。写真は7・8番線側。
▲ 「田舎のレイアウト」9・10番線側。


私鉄・ローカル線は在来線の10両編成まで対応しており、山のふもとを周回する配線となっています。さらに、長い留置線も3線ずつ設けられています。運転したい車両の入れ換えはもちろん、3編成ずつ留められる広さを活かして、ここで撮影などもいかがでしょうか。

▲ 7・8番線のターミナル駅の横に長い留置線が備わっている。
▲ 駅前の町と川に挟まれたカーブ(写真右奥から左手前)も見どころのひとつ。


峠越え線は在来線の15両編成まで対応し、最高点の途中駅にかけて3%(実物換算で30パーミル)の急勾配に挑む路線となっています。レイアウトの左右にそびえ立つ2つの山を、その外周を迂回しながら徐々に高度を上げる列車の雄姿は必見!中央を横切る川沿いギリギリを並行したり、何度も渡ったりするところも山岳路線ならではの魅力です。

▲ 駅を出たところから峠越えの坂道が始まる(写真はキハ31・キハ47)。
▲ 最高点の途中駅。この駅を含め、駅は全て照明が組み込まれている。
▲ 色も構造も異なる3種類の鉄橋で何度も川を渡る。


どちらのレイアウトも、KATOのユニトラックをメインに、大きなカーブではフレキシブルレールも活用しています。ポイントの配線は比較的単純で分かりやすいので、すぐに要領を掴めそうだと見受けられました。手元のテーブルが広いのも、ケースや飲み物(アルコールはNG)を置くのにありがたいところ。勾配のある路線を利用する場合は、列車が坂を登れるかにも気を付けてください。

一方、特にフレキシブルレールの継ぎ目の維持が大変なようで、現状は見た目度外視でアルミホイルで保持しているといいます。また、作中のストラクチャーに組み込まれている電飾も、あいにく一部が切れています。それも含め、「できるところは自分たちでやるけど、できないところはまとめて専門家に任せようと思います」(堀田さん)とのことでした。

「鉄道模型やジオラマには興味があるけど、車両は持っていない……」という人も安心の、レンタル車両も用意されています。取材時点で利用可能な車両は、山手線E235系(6両)、常磐線E531系(4両)、東京メトロ東西線直通E231系800番台(4両)、そしてE653系国鉄特急色(7両)です。鉄道模型が精密であることに加え、お店の車両なので大切に扱いましょう。

▲ 取材時点で利用可能なレンタル車両は4種類。



次ページでは実際に
レイアウトをレンタルし
峠越えなど車両の運転を体験!


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