鉄道ライター・若林健矢が行く!Nゲージ・首都圏レンタルレイアウト探訪記 ~第2景・神奈川県海老名市「海老名鐵道」(短期集中連載・全3回予定)~

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鉄道模型を専門に取材・執筆しているライター・若林健矢が、自身のNゲージとともに東京近郊のレンタルレイアウト店を訪問し、Nゲージ鉄道模型の楽しみを発信する取材企画「Nゲージ・首都圏レンタルレイアウト探訪記」。今回は神奈川県海老名市にある「海老名鐵道」(えびてつ)を取材してきました!

「レンタルレイアウト」とは、時間貸しされている大型ジオラマに自分が所有しているNゲージ車両などの鉄道模型を持ち込み、運転を楽しめるお店のことです。

今回ご紹介する、神奈川県最大級の巨大レイアウトの中には、鉄道ファンにグッとくる要素や、Nゲージを楽しみやすい設備が充実。他店にはなかなかない、Nゲージ専用のレンタルBOXも。そんな「えびてつ」について店長(オーナー)に取材しつつ、珍しい地下線付きの路線で実際に鉄道模型の運転をしてきました。

▲ 写真提供:海老名鐵道

▲ 筆者撮影(以下「写真提供:海老名鐵道」の表示がない写真はすべて筆者撮影)



海老名駅の2つ隣り、意外な駅の近くにNゲージの運転場が!

「海老名鐵道」の最寄り駅は、相鉄本線のさがみ野駅。終点の海老名駅から2つ手前にあるここには、各停・快速が停車し、特急は通過します。まずは改札口から南口に出ましょう。

▲ 相鉄本線・さがみ野駅南口。


パチンコ「P-REX」前を通り、セブン‐イレブンがある方向へ歩きます。セブン‐イレブンの横断歩道の手前から遊歩道が分かれているので、横断歩道を渡らずに遊歩道へ。

▲ セブン‐イレブン前の遊歩道に入ってさらに歩く。


遊歩道をしばらく歩き、「食堂こなすび」横の階段・スロープを降ります。すぐ横に見えてくる紺色の建物の2階が「海老名鐵道」です。駅からここまで、筆者の足で約5分。周りは住宅地ながら駅近で、便利な立地です。

▲ ここで遊歩道の脇道へ。

▲ 階段を上がれば「海老名鐵道」。


階段を上がって2階のお店に入ると、待っていたのは店の奥まで続く巨大レイアウト! 見ただけで、実車の複々線も顔負けの線路本数が見受けられます。横浜駅~海老名駅間の住宅街に、これほど大きなレンタルレイアウトがあるのはビックリです。

▲ 店内の奥まで続く巨大なNゲージレイアウト!


レンタルレイアウトの営業以外に、Nゲージ用の室内灯や、飲み物・アイス・カップラーメンも販売しています。店内奥では鉄道書籍も読むことができ、月刊誌『鉄道ファン』が1990年代から揃っています。店内専用なので、読み終わったら元の場所に戻しましょう。



店長が「相鉄沿線で開きたかった」レンタルレイアウト専門店

「海老名鐵道」店長に、店舗やレンタルレイアウトについてお話をうかがいました。同店の開業は2024年5月。3月にプレオープンとして6線で先行開業し、5月に12線が出そろいグランドオープンとなったとのこと。相鉄線沿線でのレンタルレイアウト専門店はかなり珍しい存在です。

店長がここにお店を開いた理由は大きく3つ。1つ目は、駅から近いこと。公式サイトでは徒歩4分と案内され、前述のとおり筆者の足でも5分で着きましたので、鉄道でのアクセスがしやすいです。2つ目は、近隣のコインパーキングに500~800円(入庫後24時間以内)で車を止められること。2021年3月に東名高速道路の綾瀬スマートICも開通したので、車での来訪もしやすくなりました。

そして3つ目は、店長が幼い頃、相鉄沿線に鉄道模型関連施設がなかったこと。今でこそ、横浜駅や海老名駅周辺でも鉄道模型を楽しめますが、当時はそういったお店はありませんでした。過去にはユザワヤが鉄道模型を販売していたものの、レンタルレイアウトではありません。そうした経験から、「相鉄沿線で開きたい」と店長は考えていたとのこと。

▲ Nゲージのレンタルレイアウト専門店は、相鉄沿線では稀有な存在(写真はNゲージ車両ではなく実際の21000系、さがみ野~相模大塚間にて)。


さがみ野駅を黄緑色の通勤電車が行き交っていた時代から沿線になじみ深い店長からは、「うち(えびてつ)に来て相鉄線を好きになったという人もいて、それが本当に嬉しいです」と、沿線に対する想いもうかがえました。

今はJR埼京線や東急線からもいろんな電車が来るので、都心・埼玉方面からも「海老名鐵道」を訪れやすくなりました。そのため、主なユーザーは神奈川県民が多いながらも、首都圏各地や静岡県内から来る人もいるとのこと。長期休みには北海道や九州の鉄道模型ファンも訪れます。男性がほとんどですが、小学生からシニア世代にかけて、幅広い年代に愛されています。

通常営業は金曜日16~21時と、土日13~20時。月~木曜日は全線貸切専用です。そのかわり、毎週金曜日には「えびてつ」ならではの運転会を開催! 毎週異なるテーマが用意され、それに合わせた車両で楽しむ時間となります。お店を利用時に事前予約は必要ですが、運転会だからといって追加料金はかかりません。あくまで「テーマに合った車両を運転しましょう」と考えれば大丈夫。

今回の取材は、「近郊型・通勤型」運転会の間に時間を取っていただき実現。ご一緒した方の車両も撮影させていただきました。

▲ 東急田園都市線、東京メトロ半蔵門線、東武スカイツリーラインの乗り入れ車両が勢ぞろい!


話のところどころに相鉄愛が垣間見える店長は、ユーザーが運転している車両を撮影しながら、気さくに接してくれます。店長が撮影した写真は、公式SNSで次回運転会の告知用として使っています。もしかしたら、あなたがここで走らせた自慢の列車が、「海老名鐵道」のSNSに登場する可能性があるかも?



新幹線フル編成完全対応!神奈川県最大級の特大レイアウト

前出の通り、「海老名鐵道」のレンタルレイアウトは、神奈川県最大級とも称されるほどの巨大レイアウト。TOMIXのファイントラックを使用しており、大きさは圧巻の10m×最大4.5m! 店内の手前側に高架線メインの1~6番線、奥側に地上線の7~12番線で、計12路線用意されています。

▲ 東京タワーと神社仏閣の周りに多くの線路が敷かれている。

▲ 高架と繋がる築堤部分に1・2番線のヤードが広がる。


目印でいうと、このレイアウトの両端に東京タワーと東京スカイツリーが立っています。高架線はこれらの下を通りながら、レイアウトを周回します。

▲ 1~6番線は主に高架線を走行。

▲ 東京タワーの反対側には東京スカイツリー。


対する7~12番線は終始地上を走行します。列車が走る高さが違うものの、こちらも使い勝手の良さは1~6線と同じで、長編成を並べやすい線路になっています。

▲ 7~12番線は地上線がメイン。

▲ 駅も非常に長い上に、電飾が組み込まれている。

▲ 写真左側が1~6番線で右側が7~12番線。特大ヤードへは12番線から。


どの路線にも長い留置線が設けられているので、いろんな車両を入れ替えて運転したり、同じ位置に停めて撮影したり、いろいろ楽しめます。この規模ゆえに、全線が新幹線フル編成に完全対応! 15両編成が綺麗に一直線になってもまだ余裕があるといえば、そのスケールが想像できるでしょうか。

▲ お気に入りの車両をたくさん並べて、運転・撮影両方とも楽しめる。

▲ 在来線最長クラスの15両編成ですら、綺麗な一直線に収まる。


情景という情景は主にレイアウト中央に並び、その周囲を12路線が囲む形になっています。多くの線路が集中するレイアウト両端や、8の字型に交差する中央の5連トラスは、特に密度が濃く、見ごたえがあります。

▲ エンドレスに挟まれる形で町が密集する。

▲ レイアウト中央の5連トラス鉄橋。5・6番線がこれを渡る。


細かく見てみると、5・6番線ホーム付近のビルに、列車が反射して写り込むようになっています。いわゆる「反射鉄」がNゲージで楽しめる面白ポイントです。

▲ 高架線の後ろにあるダークグレーのビルに、Nゲージの列車が反射する。


そして、ここならではの特大ヤード。どの路線でも長編成をたくさん並べることができますが、店内に入ってすぐの特大ヤードは、なんと20本も線路が並んでいます。もちろん、こちらも新幹線フル編成に完全対応! 2025年2月末の時点では、新幹線でこの20本全てを埋めた人はいないそうなので、新幹線中心のモデラーさんは挑戦してみてはいかがでしょうか。

▲ 新幹線完全対応の留置線がなんと20線!

▲ 特大ヤードの全線に車両が並ぶとこんな感じ(写真提供:海老名鐵道)。全部新幹線で埋めた方はまだいないとのこと。


通常時でも運転しがいのあるレイアウトですが、毎月最終金曜日の運転会、または貸切時には、夜景モードも楽しめます。その名の通り、店内の照明を暗くし、夜の雰囲気を再現します。さらに、ただ店内を暗くするだけではなく、マルチカラーLEDでいろんな時間帯を再現可能です。この時、電飾がないと車両が目立たなくなるので、自身の車両にも室内灯を組み込むことをおすすめします。

▲ 通常時とは一味違う、夜景モードの例(写真提供:海老名鐵道)。


驚くことに、これら全てを店長一人で手掛けているとのこと。グランドオープンまでの製作期間は4カ月でしたが、実はまだレイアウト製作は続いています。独自呼称として「エボらま」、つまり“「エボリューション(進化)」するジオラマ”を掲げており、これからも少しずつ情景が変わっていくのです。次に訪れる時には、以前とは違った情景を楽しめるかもしれませんね。


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