【ガンダムビルドファイターズ連載】ガッツリ作り込んだホットスクランブルガンダムを見よ!(その2)~フクダカズヤ的、スクラッチ3つの方法~

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機体解説・文●千葉智宏(スタジオオルフェ)/ホットスクランブルガンダム製作・文●フクダカズヤ/編集●電撃ホビー編集部

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<ガンダムビルドファイターズD-Rまとめページ>

 

月刊ガンダムエース(毎月26日発売)連載のガンダムビルドファイターズ外伝『ガンダムビルドファイターズA-R(アメイジング レディ)』は、既刊の『ガンダムビルドファイターズA』の続編としてユウキ・タツヤの新たなる戦いが描かれています。

 

▲『月刊ガンダムエース』2016年11月号。好評発売中!

▲『月刊ガンダムエース』2016年11月号。好評発売中!

 

本連載『ガンダムビルドファイターズD-R』は、『ガンダムビルドファイターズA-R』と連動し、その登場機体を外伝のシナリオを手がけるスタジオオルフェ 千葉智宏先生に解説していただきます。今月は、月刊ガンダムエースの別冊『ガンプラエース』に登場する、付録武器を装備したガンダムレッドウォーリアが解説されていますので、ぜひお読みください!

 

 

そして作例では、スクランブルガンダムの派生機であり、ガンダムエース10月号にも登場したホットスクランブルガンダムをフクダカズヤが製作! セミスクラッチとなったガチの作例をご覧ください。

 


 

1/144 ホットスクランブルガンダム(その2)

~フクダカズヤ的、スクラッチ3つの方法~

 

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▲フィンファンネルが接続され、バスター状態になったライフルを構えるホットスクランブルガンダム。ライフルは、通常状態とバスター状態の2種類が製作されている。

 

 

こんにちは。フクダです。まずは、今回の目玉となるホットスクランブルガンダムの特徴、ライフル、シールド、そしてフィン・ファンネルの製作をご紹介します。

 

▲ホットスクランブルガンダム。作例前面。

▲ホットスクランブルガンダム。作例前面。

 

▲作例背面。

▲作例背面。

 

スクランブルガンダムとホットスクランブルガンダム(以下ホットスクランブル)をパッと見た時の違いは、背中のバックパックとそれに接続されたフィン・ファンネル、武装類、そしてカラーリングです。

 

▲今回の製作物一覧。本体以外の、背中のバインダーや武装類はほとんどスクラッチされている。

▲今回の製作物一覧。MS本体以外の、背中のフィン・ファンネルから武装類まで、ほぼスクラッチされている。

 

▲ベースとなった「HGBF 1/144 スクランブルガンダム」の素組み。

▲ベースとなった「HGBF 1/144 スクランブルガンダム」の素組み。

 

▲スクランブルガンダム背面。

▲スクランブルガンダム背面。

 

 

 

スクラッチか、キット改造かで悩む

ホットスクランブルの武装はνガンダムのそれらに類似していますので、もちろんHGUC 1/144 νガンダムから流用することから検討しました。スクラッチするかνガンダムを改造するか……。悩んだのには理由があり、ボクなりに考えたそのメリットとデメリットは以下の通りです。

 

 

メリット

<キット改造>

  • ギミックを流用できる。
  • 分割されているので塗装が楽。接着してしまったら楽じゃないけど(笑)

<スクラッチ>

  • 製作する原型はひとつ。
  • 数がたくさんになっても後工程は仕上げのみ。
  • レジンキャストで素材が統一されるため経過によるトラブルが起きにくい。

 

デメリット

<キット改造>

  • サイズが違う。
  • 同じ改造を同じ精度で複数行う。
  • プラスチックにパテなど異なる素材を使用するためヒケや剥離といった経過によるトラブルや可動時の破損が起きる可能性。

<スクラッチ>

  • シリコン型の製作の手間。
  • パーツはムク(中が詰まっている)なので重量が増える。

 

 

結論として、シールドはパテの使用は控え、プラ板工作をメインにすれば軽量化もできると判断しνガンダムの改造で対応することにしましたが、それ以外のフィン・ファンネルやライフルなどのパーツは、トラブルや破損を避けたいのでスクラッチしてレジンキャストに置き換える。と、それぞれを対応することにしました。

 

▲ホットスクランブルガンダムのフィン・ファンネル(左)と、νガンダムのフィン・ファンネル(右)同じようでいて、ほぼ別物。

▲ホットスクランブルガンダムのフィン・ファンネル(左)と、νガンダムのフィン・ファンネル(右)同じようでいて、ほぼ別物。

 

▲反対側から見た両者のフィン・ファンネル。左がνガンダム、右がホットスクランブルガンダム。

▲反対側から見た両者のフィン・ファンネル。左がνガンダム、右がホットスクランブルガンダム。

 

 

スクラッチへのアプローチ

ボクの場合、スクラッチは手加工です。手で作る場合、「図面を引く」「直接材料を切る」「勘」とアプローチは様々です。今回の場合は全部やっています(笑)。
例えば、雑誌などの設定画で、誌面に印刷されているMSの全長が90ミリで、持っているライフルの長さが55ミリだった場合を想定しましょう。

 

 

まずは、そのMSのキットの全長を測ります。それが140ミリだったら、実際に作るライフルの寸法を計算するには……

「90:140=55:x」

といった具合の比例式を使います。

 

 

この計算で出た寸法を描けば「図面を引く」ことになります。ほかにも、

 

  • この寸法で「直接材料を切る」方法
  • 厚紙などを切って「ゲージを作り確認」する方法
  • 計算では出しにくい曲面のものは「勘」でそのラインを厚紙に描き、それを切ってゲージを作り確認する方法

 

など、場合によって使い分けます。「フルスクラッチはこうだ!」という決まりはないんですが、ボクの場合は迷ったらゲージを作って確認する。という工程が多いです。

 

本作例のスクラッチパーツは、

 

  • フィン・ファンネル……図面から
  • ライフル……直接切り出し
  • シールド……勘
  • 機首……勘
  • ブースターユニット……直接切り出し

 

といった感じで製作を進めました。スクラッチパーツが完成したらシリコン型を製作し、作例に必要な数で量産します。素材はレジンキャストです。

 

 

図面から作る例:フィン・ファンネル

▲フィン・ファンネル作成のために描かれた図面。

▲フィン・ファンネル作成のために描かれた図面。

 

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▲フィン・ファンネルを製作中。灰色と黄色がプラ板、白っぽい部分はエポキシパテを使用。

 

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▲フィン・ファンネルは部位ごとに分割されている。

 

▲これにより、開いた状態と……

▲これにより、中央のフィン・ファンネルは、開いた状態と……

 

▲閉じた状態を差し替え再現可能になる。

▲閉じた状態を差し替え再現可能になる。

 

 


●ワインポイントコラム(その1):重量問題にどう対応するか? 必要ならば、ナットも使う!

フィン・ファンネルの課題、それが「重量の問題」でした。ホットスクランブルは左右3基ずつのフィン・ファンネルの翼が背面に装備され、かなりの重量になります。

▲完成したフィン・ファンネルの羽根。ホットスクランブルガンダムにおいて、特徴的なパーツだ。

▲完成したフィン・ファンネルの羽根。ホットスクランブルガンダムにおいて、特徴的なパーツだ。しかしレジンキャストのため、相応の重量となる。

 

 

今回は、これを解決するために、フィン・ファンネルに工業製品などで使用される「インサートナット」という真鍮製の部材を埋め込み、ビスで締め込んで固定する方法をとりました。またバックパックとフィン・ファンネルをつなぐパーツもMS用、飛行形態用で固定されたものをレジンキャストで用意し、真鍮パイプで作ったスペーサーを圧入。ビス周辺を金属で固めることでレジンキャスト側に負担がかからないような工夫を入れています。

 

重量のあるパーツを取り付ける際の、参考になれば幸いです。

 

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▲掌に乗っている小さな真鍮製の部材が「インサートナット」。真ちゅう製の筒状の部材で内側には3ミリビスに対応したネジが切られており、外側はインサートナットが抜け出てこないよう細かい溝が切られている。

 

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▲インサートナットの仕組み。

 

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▲インサートナットハメ込み後。

 

▲実際の取り付け。機体中央から出ているフィン・ファンネル接続用のアームは、設定状変形時に可動するが、重量面の判断で、差し替え式としている。

▲実際の取り付け。機体中央から出ているフィン・ファンネル接続用のアームは、設定上変形時に可動するが、重量面の判断で、差し替え式としている。

 

▲MS時のフィン・ファンネルとその基部。

▲MS時のフィン・ファンネルとその基部。

 

▲飛行形態時。機首は可動ギミックが施されているが、フィン・ファンネルの付け根のアームに注目。こちらは差し替え式になっている。

▲飛行形態時。機首は可動ギミックが施されているが、前進しているフィン・ファンネル付け根のアームに注目。こちらは差し替え式になっている。

 

▲フィン・ファンネルの差し替え用パーツ。写真右は重量とは関係なく、フィン・ファンネルの開閉用パーツだが、写真左がアームの前後可動をそれぞれ再現した差し替えパーツとなる。

▲写真左がアームの前後可動をそれぞれ再現した差し替えパーツ。写真右は重量とは関係なく、フィン・ファンネルの開閉用差し替えパーツとなる。

 

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▲重量に配慮した点としてもうひとつ。フィン・ファンネルの裏面に配置されるブースターユニット風のパーツ(グレーになっているもの)はプラ板の積層から製作されている。最終的にはこの中にネオジム磁石が入り、インサートナットを止めるビスの頭に取り付ける仕様とした。

 

 


●ワンポイントコラム(その2):アクションベースも工夫しよう!

今回は、展示用のアクションベースにも工夫を施しました。ホットスクランブルガンダムは、レジンキャストのパーツ類によって背面側……というか上半身に極端に重心が移動しています。そのため、撮影やイベントなどの展示の際は自立が困難なためベースが不可欠になります。作例は1/144スケールなのですが、無難に1/100用の「アクションベース1」を使用しました。前述したように重心が上半身にあるので、通常股下にある3ミリ穴に取り付ける方法では不安定ですし、そもそも3ミリの棒1本で保持するに不安を感じます。

 

そこで取り付ける位置を背面に移す工作を行いました。アクションベース1に付属する「股間止め用パーツ」をU字プレート状に加工し、上半身と下半身で挟み込み固定します。重い上半身がU字プレートに乗り、そのままアクションベースで支えられることになり非常に安定します。

 

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▲アクションベース1の接続用パーツを加工し、腰のジョイントを差し込み……

 

▲上から上半身をはめ込めば、しっかりと固定される。

▲上から上半身をはめ込めば、しっかりと固定される。

 

▲ただし、キットの腰の後ろには、出っ張りがある(赤線で囲んだ部分)ので、それは切り欠かく加工を行った。

▲ただし、キットの腰の後ろには、出っ張りがある(赤線で囲んだ部分)ので、それは切り欠く加工を行った。

 

 

実はこの加工方法はアクションベース2でも製作可能でニャイアガンダムや、足を閉じたポーズで撮影したい作例(HGBF 1/144 トランジェントガンダム)でも取り入れていました。展示の際のポージングの幅も広がりますのでオススメです。

 

▲ニャイアガンダムの例。こちらも足を閉じたポージングが可能になっている。

▲ニャイアガンダムの例。こちらも足を閉じたポージングが可能になっている。

 

▲トランジェントガンダムも、腰の後ろで固定する方法が採られた。

▲トランジェントガンダムも、腰の後ろで固定する方法が採られた。

 

▲実は、フィン・ファンネル絡みではもうひとつ。ライフルがバスター状態になった際も重量問題が発生する。そのため、こちらもアクションベース側のジョイントを平坦に加工し、ライフルを支えるようになっている。アクションベースは、もともとジョイントできる仕様になっているのも幸いした。

▲実は、フィン・ファンネル絡みではもうひとつ。ライフルがバスター状態になった際も重量問題が発生する。そのため、こちらもアクションベース側のジョイントを平坦に加工し、ライフルを支えるようになっている。アクションベース自体、もともと複数をジョイントできる仕様になっているのも幸いした。

 

▲U字のジョイントを平坦に加工し、ライフルを支持できるようにしている。

▲U字のジョイントを平坦に加工し、ライフルを支持できるようにしている。

 

 


 

次回は、直接切り出し、そして、「勘」で作る例をご紹介します!

 

 

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(c)創通・サンライズ・テレビ東京

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