合わせ目消しをマスターしよう!【冬休み特別企画】マイスター関田の実験プラモLABO Vol.001
電撃ホビーマガジンに連載された「マイスター関田の実験プラモLABO」は、プロモデラーであり、新宿の模型ファクトリー店長でもあるマイスター関田が、愛犬ホセとの掛け合い形式で、プラモデル作りのハウトゥを紹介する記事でした。電撃ホビーウェブでは、冬休み特別企画として連載の中から選りすぐりの記事を掲載! プラモデル作りのレベルアップに、お役立てください!
合わせ目消しをマスターしよう
プラモを作る際、パーツ同士の合わせ目を消すのは、玩具っぽさを払拭し完成度を高めようとするなら避けて通れない工作だ。もちろん、合わせ目を消さずにそのままフィニッシュするのもプラモ作りの楽しみ方として十分にアリだが、消すのと消さないのでは完成後の満足度は大きく変わってくるだろう。今回は合わせ目消しの方法の中でも、現在主流となっている「セメント系接着剤」と「瞬間接着剤」を使用した消し方に注目し、それぞれの長所を活かしたた使い分けと段取りまでを見ていこう。
合わせ目消しの方法を選択する3つのポイント!
- 使用する接着剤のメリット・デメリットを知っておく。
- パーツの形状・合わせ目の周囲のディテールを把握する。
- 一つの方法にこだわらず、パーツごとに合った方法を選択する。
登場人物
マイスター関田……模型店「模型ファクトリー」店長にして本誌ライター。10年余の店員経験から、工具材料に関しては不必要に広い知識を持つ。
ホセ……マイスター関田の元で修業を積む模型店員見習い。モデラーとしても初心者だが様々な課題にぶつかりつつ成長中。
得手不得手があるからね。適材適所で使い分けた方が効率がいいんだよね。たとえば、パーツが単純な形状で合わせ目周辺の段差やスジ彫り等のディテールがない場合は、瞬着がいいな。瞬着硬化スプレーを使えば待ち時間なしでヤスリがけに移行できる。これは大きい。使う瞬着はコレとコレな。
接着力の強い瞬着であらかじめ接着しておいてから、サラサラの瞬着を合わせ目に流し込むようにしてるんだ(後述)。
なるほどー。せっかく合わせ目消したのにバラバラになったらショックですもんね。こんなに使い勝手がいいなら、全部瞬着でいいんじゃないですか?
まぁ、そうなんだけどね。こんなパーツはやっぱりリスクが高いんじゃないかな?
リスク?? 大丈夫ですよ瞬着流し込んで……あああっーー!!!
サラサラの瞬着は簡単に周辺のディテールや関節の隙間に流れ込んでしまうんだ。ディテールの復旧は中々の手間だし、関節に至ってはもう無理。そこでセメント系の登場だ。セメント系ならよほどベッタリと塗らない限りディテールをつぶすハミ出しはないはず。ただし、ヤスリがけができるまで時間がかかってしまうのが考えどころだね。
俺も待てない。だから、セメント系で消すパーツは先に接着までしておいて放置する。そして、乾燥を待つ間に瞬着で消すパーツの処理を進めておけば、無駄に待つ時間を過ごさずに済むんじゃないかな。
その通り。無駄な時間と手間を省けば、気持ちがダレることなく作業も進められるってわけだ。
瞬着を使った消し方
マイスターとホセの会話にあるように、同じ瞬間接着剤でも特性に大きく差があり、使い分けることが重要だ。ここでは液体の粘度と硬化後の削りやすさに注目したい。粘度が低くサラサラしていれば簡単に合わせ目に流し込むことができ非常に有利。硬化後の硬さは削る作業にダイレクトに影響が出る。様々な瞬着を使い比べて自分にベストなチョイスをしよう。そして、瞬着最大の長所「待たずにすぐ削る」を実現するには瞬着硬化剤の存在が不可欠。スプレータイプがオススメだ。吹き付ける量は少量で問題ない。吹き付けるとパーツの表面が若干ながら溶けてしまうので注意。特にクリアーパーツは一瞬で曇る。
マイスターおすすめの合わせ目消し用瞬着
ウェーブ「瞬間接着剤×3Sハイスピード」(写真左)他のグレードと比べて粘度が低く合わせ目に流し込みやすい。また、硬化後の硬さも削りやすい。ただし、接着力は若干弱め。コニシボンド「アロンアルファ木工用」(写真右)「瞬着×3S」を流し込む前にこれでしっかり接着する。木工用とはいえPSやABSとの相性が良く、接続ピンに少量付けるだけで強力に接着してくれる。粘度が高く合わせ目消しには向かない。
セメント系を使った消し方
余計なところに流れ込むリスクも少なく、接着力も強いし、乾燥後削りやすい等メリットは多い。まずはパーツの貼り合わさる部分を確認し、それぞれに2回ずつ塗る。1回だけでは十分に溶ける前に乾燥してしまうことが多いので、なるべく多めに2回塗ろう。また、塗った後すぐに貼り合わせるのではなく、20~30秒待ってから貼り合わせるのがオススメだ。これは接着剤がパーツを溶かす時間を取るためで、接着効果が高まり、合わせ目を消す溶けた部分を十分に確保できる。
待ち時間による「ヒケ」検証
セメント系接着剤の溶剤成分は十分な揮発まで時間がかかる。早めに削ってしまうとその後も揮発が続き、合わせ目の部分がヘコむ「ヒケ」が起きる。そこで、待ち時間を検証した。なお、ヒケが分かるようにサフェーサーを吹いた後ヤスリがけをしている。
接着後
6時間後
1日後
3日後
なぜラッカーパテを使わないのか?
ラッカーパテはPSへの食付きもよく、合わせ目消しの素材としてポピュラーだ。だが、乾燥時間はセメント系と変わらず、乾燥後も若干削りにくいことから、スピードを重視するなら瞬着が有利だし、作業性を重視するならセメント系で十分といえる。よほどのこだわりと慣れがない限りはオススメしない。
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