塗装によるシルバー表現 その2【冬休み特別企画】マイスター関田の実験プラモLABO Vol.006
電撃ホビーマガジンに連載された「マイスター関田の実験プラモLABO」は、プロモデラーであり、新宿の模型ファクトリー店長でもあるマイスター関田が、見習い店員ホセとの掛け合い形式で、プラモデル作りのハウトゥを紹介する記事でした。電撃ホビーウェブでは、冬休み特別企画として連載の中から選りすぐりの記事を掲載! プラモデル作りのレベルアップに、お役立てください!
塗装によるシルバー表現 その2
前回の実験プラモLABO では下地との組み合わせによるシルバー塗装の基礎的な考え方を紹介したが、今回はもう一歩踏み込んだ表現方法を紹介する。シルバーを単純に塗るだけの表現に満足できない方はぜひ参考にしてほしい。
塗装によるシルバー表現のポイント!
- グレーや黒下地にパールを重ねてもシルバーになる。
- シルバーやパールの反射層にさらにシルバーを重ねる方法がある。
- クリアーをシルバーに重ねる際は質感の変化に注意。
登場人物
マイスター関田……模型店「模型ファクトリー」店長にして本誌ライター。10年余の店員経験から、工具材料に関しては不必要に広い知識を持つ。
ホセ……マイスター関田の元で修業を積む模型店員見習い。モデラーとしても初心者だが様々な課題にぶつかりつつ成長中。
前回はシルバー塗装の基礎ってお話でしたけど、あそこからまだ先があるなんて……。
シルバーの顔料の性質と下地の状態を組み合わせただけでは、質感のコントロールに限界がある。シルバー表現にはまだまだ奥があるので、全部とはいかないが掘り下げられるところまで掘り下げていくぞ。
よし、まずはホワイトパールを使ったシルバー表現から見ていこうか。
意外に思うかい? メジャーな方法じゃないけど昔からある方法だぞ。塗装方法は単純。黒かグレーの下地にホワイトパールを重ねるだけ。
とりあえずサンプルを作ってみたので見てくれ。ここでも下地の色調と粒子の性質で見え方が変わってくるのは同じだよ。
ホワイトパールを使ったシルバー表現
意外な程にシルバーだろ? シルバー顔料よりも隠ぺい力が低いから、より下地を反映しやすくなっている点に注目してくれ。
ということは、たとえば、下地にグラデーションがかかってたらどうなるんでしょう?
おぉっ! いいところに気が付いたな。もちろんグラデーションを反映することになるぞ。でも、かなりコントラストが潰れた状態に持って行かれるから、シャドーとハイライトはキツめにしておいた方がいいな。特に写真撮影を前提とした製作ならなおさらにね。
なるほど。じゃあ、シルバーの下地をグラデーションにしたらどうなるんでしょう?
下地に影響を受けるタイプを使って薄く重ねるなら、微妙にだがグラデーションに見えるぞ。
ほとんど見えないってことですか。じゃあ、あまり意味がないですねぇ。
そうとは言い切れないかな。「ほとんど見えない」ってことは「ほんの少し見える」ってことでもあるんだ。コントラストの弱いグラデーションはインパクトは弱いもののベタ塗りにはない奥行きを作品に与えることになる。表現としては十分にアリだよ。
なるほど、じゃあシルバーでグラデーションをかける場合、マイスターならどうします?
そうだな、あらかじめ黒にシルバーを混ぜた色を吹いておいてハイライトとしてシルバーを重ねるか、シルバーを吹いて黒やスモークグレーをシャドーとして重ねる。
パールによるグラデーションシルバー表現
グラデーションのかかったグレーに同じムーンライトパールを重ねたサンプル。パールによるコントラストの変化を確認してほしい。
シルバーに黒を混ぜるとガンメタルになるんですねぇ。初めて知りましたよ。
シルバーは支配力が強い顔料だ。だから、シルバーに黒を混ぜていってもある程度以上は暗くなってくれない。ここは黒を元にシルバーを極少量加えていく方がコントロールしやすい。
シルバー塗料とパール塗料を組み合わせるだけでもいろんなシルバーができそうなんですけど、これだけじゃないですよね?
そうだな。ここからが今回の本番だ。シルバー塗料にしてもパールにしても、多かれ少なかれ下地の影響を受けるのは繰り返してきたんだが、その下地がシルバーだったとしたらどうなると思う??
まぁ、そうだよな。でも、組み合わせを考えればちゃんと意味のあることなんだ。
やっぱり組み合わせですか、それって下地に向いたシルバーと重ねるのに向いたシルバーがあるってことですか?
その通りだ。さすがに分かってきたな。下地に向くシルバーは隠ぺい力が強いタイプや、粒子が大きく反射がギラつくタイプだな。重ねるのに向いているのは下地に影響を受けるタイプになる。ちなみに前回掲載のR・ギャギャはグレー下地に粒子の大きいシルバーを吹き、クリアー層を挟んで粒子の細かい下地の影響を受けるシルバーを重ねている。こうすることで、下地のシルバーの強いギラつきを活かしつつ、重ねたシルバーが「つなぎ」のような効果を出してツブツブ感を消す。それに加えて2層の反射が生む奥行きと重厚感はただ1層のシルバーにはない表情を生む。
▲作例に使用したシルバー(本体色)下地:GXカラー クールホワイト+GXカラー ウイノーブラック 2層目:ガイアノーツ スターブライトシルバー 3層目:GXカラー スーパークリアーIII 4層目:スーパーメタリック クロームシルバー下地に既存のグレー塗料を使用しなかったのは光沢のあるグレーでイメージ通りの色が無かったため。
粒子の大きなシルバー顔料はその粒子の大きさの分だけ塗膜表面に凹凸を作る。その凹凸は反射のブランクを生み、整った反射を阻害してしまう。だから、クリアーを1層挟んでその凹凸を消すんだ。そうすれば大きな粒子のシルバーのギラつきのみを活かしつつ、上から重ねる微粒子シルバーの反射と合わせて強い反射を生むってわけだ。もうひとつ、ポイントは重ねるシルバーはエアブラシのニードル開放度を絞り気味にして薄く重ねること。下地を完全に隠ぺいしたら意味がないからな。
まったくだ。でも、組み合わせに慣れてくると自分のイメージに合ったシルバー表現が自在にできるようになってくる。あとは、実際に塗ってみて確かめて、自分の中にレシピを貯め込んでいくしかないな。とりあえず、同じような塗り方をしたサンプルを用意したから見ておいてくれ。
確かに、ただサフの上にシルバーを吹いただけじゃこんな表現はできないですね。それにしても、マイスターこんな塗装方法よく考え付きましたね。
いや、これは『カンペキ塗装ガイド〈3〉エアブラシ完全攻略』(小社刊)で鋭之介・初代・日野さんがやっていた方法を応用した。今読んでも非常にためになる本だぞ。
そうだったんですね。僕も読み返してみます! あ、マイスター、一つ質問。この上にクリアーコートしたらどうなるんですか?
こうした塗装に限らずシルバーにクリアーコートするとシルバー粒子が溶け出して配列が崩れる。つまり、ツブツブ感が強調されるようになるわけだ。特にメッキ調シルバーの場合はその質感が大きく損なわれてしまうから注意が必要だ。
シルバーにクリアーコートするとどうなるか?
この結果を見るとデカールを貼ってもコートしない方がいい場合があるってことですね。
うーん……、とりあえず僕はイメージ通りのシルバーが表現できるように練習を始めてみますね。
ニードルの開放度から調節してみるといいよ。特に、仕上げに吹き付けるシルバーやパールはニードルを絞り気味にして薄く少しずつ吹き付けるようにしてみるとうまくいくことが多いな。って待て。ニードルの絞りと聞いて全くピンときてない様子が非常に気になるんだが。いつも適当に設定してる?
やっぱりいつも適当に調節していたのか。そりゃあ安定しないよな。よし! 次回からエアブラシ特訓シリーズ突入だ! ビシビシ行くぞ!
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関連情報
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