エアブラシ特訓シリーズ その3【冬休み特別企画】マイスター関田の実験プラモLABO Vol.009
電撃ホビーマガジンに連載された「マイスター関田の実験プラモLABO」は、プロモデラーであり、新宿の模型ファクトリー店長でもあるマイスター関田が、見習い店員ホセとの掛け合い形式で、プラモデル作りのハウトゥを紹介する記事でした。電撃ホビーウェブでは、冬休み特別企画として連載の中から選りすぐりの記事を掲載! プラモデル作りのレベルアップに、お役立てください!
エアブラシ特訓シリーズその3
エアブラシ特訓シリーズ第3弾は吹き付けの「圧」と、対象との「距離」に焦点を当てて解説する。「何となく」で済まされてしまうことが多い部分だが、エアブラシ塗装では重要なポイントなので、関係性を把握してミストの状態を自在に操れるようになろう。
エアブラシ使用時の吹きつけ圧と距離のポイント
- 吹き付け「圧」はパーツとの適性「距離」に直結する。
- 表現によって柔軟に変化させ塗装状態をコントロールしよう。
- これまで同様パーツを塗る前に必ず試吹きを忘れないこと。
登場人物
マイスター関田……模型店「模型ファクトリー」店長にして本誌ライター。10年余の店員経験から、工具材料に関しては不必要に広い知識を持つ。
ホセ……マイスター関田の元で修業を積む模型店員見習い。モデラーとしても初心者だが様々な課題にぶつかりつつ成長中。
この前の説明で濃度に関するコントロールは理解できたかい?
はい! これまで固定する方向で考えていたから驚きましたけど、もう大丈夫!
よし、それじゃあ続きだ。次は吹き付けの「圧」と対象となるパーツとの「距離」に関してだな。
うーん、どっちも自信を持って「これでいい」といえる自信はないですねぇ。でも、前回の濃度とほかの要素を組み合わせた実験で分かったことがあるんですよ。
エアブラシ塗装の失敗は「ザラザラ」になるか「垂れ・流れ」のどっちかに集約される、ってことですね。
おお、そこに気付いてくれたか! それなら話は早い。「ザラザラ」にならず、「垂れ・流れ」が発生しない条件を出していけば自然とキレイな塗装面が得られるわけだ。
そうですね。失敗しないことが必ずしも成功とイコールじゃないとは思うけど、まずはそこを目指したいですね。
そこが分かっていれば十分だ。「圧」も「距離」もほかの三要素と絡めて考える必要があるんだが、とりわけこの二者は関係が深いからセットで見ていこう。
「圧」による吹きつけ状態の変化
条件:0.1MPaで吹き付けた際に適性なミストの状態になるように、「濃度」「距離」「ニードルの引き具合」「手の動き」を調節して吹き付け。
0.05Mpaでの吹き付け
0.1Mpaでの吹き付け
0.2Mpaでの吹き付け
距離による吹きつけ状態の変化
条件:対象との距離を10センチで吹き付けた際に適性なミストの状態になるように、「濃度」「圧」「ニードルの引き具合」「手の動き」を調節して吹き付け。
距離5センチでの吹きつけ
距離10センチでの吹きつけ
距離20センチでの吹きつけ
「圧」によるミストの状態
0.05Mpaのミスト
0.1Mpaのミスト
0.2Mpaのミスト
「圧」が弱過ぎるとまともにミストが飛ばないんですね。でも強過ぎるとコントロールが難しそうだなぁ……。
ここで覚えてほしいのは「圧」と「距離」の関係だ。「圧」の変化はそのまま吹き付けの適性「距離」の変化になる。適性「距離」が決まれば後はその距離を保ちつつ、手を動かしていけばいい。実はそこが「濃度」に続くエアブラシ初心者第二の試練になるわけだが。
そうですね、エアブラシを始めたころは一定の「距離」を保って、手を動かすのは本当に苦労しました。
「ここにミストを当てよう」という意識が強過ぎると、手がそこに引っ張られるように近くなっていく。車の運転中よそ見をするとそっちに引っ張られるのと同じだな。
本当にその失敗はよくやりました。でも、そうなると「圧」を決めてしまえば、後はずっと固定した「距離」でいいんじゃないですか? 調節なんてメンドクサイですよ。
そうとも言い切れないな。エアブラシをただ「面を均一に塗るためのツール」と考えるなら確かに「圧」も「距離」も一定でいい。しかし「距離」の変化は吹き付けられるミストの範囲と密度も変化させる。つまり、近ければ範囲は狭く、密度は高くなり、遠ければ範囲は広く密度は低くなる。その差を活かして色々な塗装方法や表現への対応が可能になる。そして「距離」の調節には他の要素以上に「圧」が直接関わってくるんだ。
なるほど! 細く吹きたければ「距離」を近くすればいいけど同時に「圧」を弱めていけばいいし、広く吹きたければ「距離」を遠くして「圧」を高めればいいんですね!
厳密にいうとほかの要素も絡めて調節することになるが、大まかなところはそれでいい。繰り返しになるが、まずは第一に「いつも面吹きする時の条件」を確定させておくことだ。そして、吹き付け範囲や表現の変化に合わせて条件をシフトさせていくという考え方がオススメだ。
あぁ、なるほど。違う吹き付け方をするときは手法を変えないといけないと考えていたんですけど、そうではなかったんですね。
それでもかまわないんだが、いつものやり方から変化させるだけと考える方が、簡単だと思うんだよな。
「ニードルの引き具合」と「手の動かし方」だな。それは次回にしよう。
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