『超時空要塞マクロス』放送から35年――アニメやホビー界に歴史を刻んだ最新鋭戦闘機VF-1バルキリー!【趣味でプラモデル】
電撃ホビーウェブ編集部員&モデラーたちによる趣味で作ったプラモデルを思い出と共に語るコーナー「趣味でプラモデル」! ロボット、キャラクター、ミリタリー、カーモデルなどの様々なジャンルから自由気ままに紹介していきます!
第3回目は、今年2017年で35周年となった80年代リアルロボットの代表作『超時空要塞マクロス』にて登場する「VF-1D ガウォークバルキリー」「VF-1S バトロイドバルキリー」の2機をお届け! 「VF-1D」は主人公の一条輝が初めて搭乗したバルキリー。“主人公は第1話で主役機乗る”という従来のロボットアニメのお約束を外して、一条輝が搭乗することになった機体です。続く「VF-1S」はスカル小隊隊長のロイ・フォッカーが駆るエースパイロット専用機で、第2話から登場し活躍しました。『マクロス』シリーズ元祖となるバルキリーを本作品と縁がある桜井信之氏に語っていただきます。
※バックナンバー
#3箱目 ハセガワ 1/72 VF-1D ガウォークバルキリー/VF-1S バトロイドバルキリー
今回は35周年で盛り上がる『超時空要塞マクロス』から、ハセガワ製バルキリーを製作しました。『超時空要塞マクロス』は1982年10月3日からTBS系列で放映が始まり、初回は『マクロス・スペシャル』として第1話と第2話が一挙放送されました。1982年はガンダムに始まる空前のリアルロボットブームの最中で、アニメーションや模型業界の動きが大きく変わった時代でした。
『超時空要塞マクロス』という新作品が放映されることは、同年の夏ごろからアニメ誌にて発表され、キャラクター・メカニックともに、それまでの作品とは明らかに異なるビジュアルに注目が集まっていました。とりわけ模型ファンが注目したのは戦闘機から格闘戦用の人型兵器に変形する「バルキリー」の存在でした。アニメ誌に掲載されていた設定資料を見て「どのように変形するのか?」という点に話題が集中し、それを自身の目で確かめようと全てのキャラクターモデラーが10月3日の初回放送を待ちわびました。
ファースト・コンタクト~うーん、わからん~
そして待望の10月3日が訪れます。日曜日の午後1時という異例の時間帯での放送だったため、多くのメカファンが日曜日の外出を控え自宅待機することとなります。数分間のアバンタイトルの後、オープニングが始まりますが、その中で観たバルキリーの変形シーンは多くの人の心に、一生忘れられない衝撃として刻まれたことでしょう。それまでの変形・合体メカのシークエンスは、数十秒から、作品によっては数分間をかけ、じっくり観せるのが普通でした。しかし、オープニングの中のバルキリーは、ファイター→ガウォーク→バトロイドへの変形がそれぞれ約1秒……。その兵器としてのリアリティに驚くとともに、変形シークエンスを見届けてやろうと待ちわびていたメカファンには「どう変形したんだ??まったくわからん!」とさらなる謎を残し物語はスタートします。
ブービー・トラップ?~初のマクロスプラモデルが登場~
『超時空要塞マクロス』という作品が後に与えた影響やストーリーそのものへの言及は、別の機会に譲ることとして、ここでは模型を取り巻く状況を振り返ってみます。本作品のプラモデル化は今井化学株式会社(イマイ)と株式会社有井製作所(アリイ)の2社から発売されるという非常に珍しいケースでシリーズ展開が始まります。しかも放映前から1/100グラージ(イマイ)・1/100ディフェンダー(アリイ)が発売されたことも異例でした。しかし、最大の問題は2社の共同参加のため、両社のプラモデルの設計思想やクオリティが異なっていたことでしょう。
今の目で見ても完成度の高い秀作キットから、当時“運河のようなスジ彫り”とまで揶揄されたキットが同シリーズとしてラインナップされたため、並べて展示した際の統一感に欠けていました。当時の模型誌のような大改造作例を作ることができない若年層モデラーには哀しい時代だったかもしれません。特に『マクロス』をリアルメカ作品とたらしめたファイター形態のバルキリーが、1/72という国際スケールで未発売だったこともあり、モデラーによる“スケールモデルテイストが漂うファイターバルキリー”への挑戦は90年代まで続くこととなります。かくいう僕も20代にセミスクラッチしたバルキリーを某大型模型店のコンテストに出品、それが入選したことが現在の仕事に就くきっかけになったのですから不思議な縁を感じてしまいます……。
キャラクターモデル業界に“落ちてきた”オーバーテクノロジー
そして21世紀に入って間もなく、誰もが耳を疑うニュースが流れます。「スケールモデルのハセガワがバルキリーを開発中!」。ハセガワはご存じの通り、飛行機・艦船・車などのスケールモデルを確かな技術でリリースを続ける老舗模型メーカーです。特にエアキットに関してはハセガワの独壇場といっていいほど、模型店の飛行機コーナーはハセガワキットがところ狭しと並んでいます。あのころ誰もが「ハセガワがバルキリー作ってくれたらなあ……」と夢を見ていたものですが、それが現実となったのです。発売されたキットはまさにオーバーテクノロジーの産物といえるほどスケールモデルテイスト溢れるバルキリーでした。この奇跡にマクロスモデラーだけでなく、模型業界中がショックを受けるほどの大事件でした。
当時僕は、創刊2年目の電撃ホビーマガジンで仕事をしていましたが、流石にバルキリーの作例はやらせてもらえないだろうと諦めていました。なぜならAFVやエアキット、カーモデルは毎月スケールモデル専門の御大モデラーが担当しており、僕のような若手モデラーには(当時はね!・笑)憧れのコーナーだったからです。そんな時、ある大先輩モデラーから「エアキットは専門外で、この繊細なスジ彫りにきちんとスミ入れをする自信がない。さらにマクロスはよくわからないので、総統よろしく!」とご指名をいただき、狂喜乱舞し作ったバルキリーの初作例のことは昨日のことのように覚えています。
ファンタズム?~ハセガワ驚異の技術力~
このハセガワ製の“決定版バルキリー”である「VF-1Aバルキリー」は驚きと称賛をもって模型ファンに受け入れられ、その後もJ型・S型とバリエーションを増やしただけでなく、スーパーバルキリーやVE-1・VT-1といった“夢のキット”を発売します。次々と発売される幻のようなラインナップに「これは夢じゃないか?」と疑いたくなるような日々が続きます。
それと同時にハセガワは『電脳戦機バーチャロン』など他のキャラクターモデルも手がけ、さらに模型業界に革命をもたらしました。それもそのはずです。それまでスケールモデルで名を馳せてきた同社は『ザ・コクピット』や『エリア88』などの製品にデカールを加えたキャラクターキットを発売してはいましたが、完全新金型・新設計によるキャラクターモデルに進出するとは、誰もが予想をしていなかったからです。
その後もマクロスシリーズを続々と発売し、マクロスモデラーの心を満たしてくれたハセガワは、近年ついにガウォーク・バルキリーまで発売いたします。この数年で培った人型メカのノウハウと、職人技ともいえるエアキットの技術を見事に融合したガウォークは、文句なしにカッコイイとしかいいようのない出来栄えです。電撃ホビーマガジンは紙媒体からWEBへと形態を変えたため作例を掲載できなかったので、「ガウォークを作ろう!」と思ったのが今回のきっかけです。しかもどうせなら第1話・第2話の衝撃を想い出したく、VF-1Dを選択しました。しかしVF-1Dのガウォークは限定版で入手困難のため、VF-1Jガウォークに、VF-1Dファイターのパーツを組み込んでミキシングすることにしました。
ガウォーク~ミキシングでVF-1Dを簡単再現~
改造ポイントは複座型に変更されたVF-1Dファイターの機体上面とコクピットを含む機首部分、さらに頭部をVF-1Jガウォークに移植するだけです。この際、機体裏側の一部を切り取る必要がありますが、ただそれだけです。塗装はウェザリングを控えめにし、キャノピーはアニメで表現されているようなクリアー・ブルーグリーンで塗っています。ただのブラック系のスモークではなく、以前から作中のように塗ってみたかったので、この機会に初めてやってみました。
バトロイド~ちょっとの改造で力強い立ち姿を~
VF-1Dガウォークを作ったのなら、VF-1Sバトロイドも作り一緒に並べたくなるのが人の常でしょう(笑)。こちらは股関節を中心に簡単な改造を加えています。股関節のボールジョイントを4ミリほど短くし、両脚を機種ブロックに密着するようにしています。その際ボールジョイントの受けであるポリキャップを脚の付け根(インテーク部)パーツに直接取り付けています。さらに、このパーツ上部インテークのフィン、1節分短くして小型化しています。また、脚そのものをイマイキットのような回転軸を設け、脚部を付け根から外側に捻れるようにしています。
メッセンジャー~夢見たキットが続々と~
現在では当たり前のように発売される“80年代キャラクターモデルを今の技術でリニューアルキット化”というムーブメントは、バンダイのMGを除けば、このハセガワの大英断から始まったといっても過言ではないでしょう。その後もハセガワは我々を驚かし続け、ついに人型であるバトロイド・バルキリーまでリリースします。その後のハセガワの展開は若い読者でもご存じの通りです。アルカディア号やウルトラビークル、マシーネンクリーガーなど、あのころ僕等が夢見たキャラクターキットを続々とリリースし続けています。久しぶりにバルキリーを作ったら想像以上に楽しかったので、時間を見てさらに作ってみたいと思っています。その際はまた本コーナーに掲載させていただきます。ではまた。
次回『超時空要塞マクロス』から“あの機体”をご紹介予定! 乞うご期待!!
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