【現代のからくり時計?】実物大ユニコーンガンダム立像はいかにしてつくられたのか?乃村工藝社にインタビュー!!

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昨年2017年9月24日、お台場「ダイバーシティ東京 プラザ」フェスティバル広場に実物大ユニコーンガンダム立像がお披露目されてから約5カ月が経ちました。その人気は衰えることなく“変身”が行われる時間には、ひと目立像を見ようと詰めかけた観客から大きな歓声があがります。

 

ガンダムファンのみならず、名実ともに“お台場の新名所”となった実物大ユニコーンガンダム立像ですが、この巨大な立像はいったいどのようにして作られたのでしょうか?

 

今回、電撃ホビーウェブでは、製作を担当した乃村工藝社のみなさんにインタビューを敢行。実際に製作した本人たちだからこそ語れる、実物大ユニコーンガンダム立像が誕生するまでのお話を伺います。

 

▲インタビューにこたえていただいた乃村工藝社のみなさん。▲インタビューにこたえていただいた乃村工藝社のみなさん。左からガンダム立像のディレクションも担当したクリエイティブディレクターの川原正毅氏、川原氏をサポートし造形方面のデザインを担当した中川智志氏、営業担当の寺崎真吾氏。

 

 


――最初に「RX-78-2の次の立像はユニコーンガンダムになる」と聞いたときには、どのような印象を持たれましたか?

川原:正直なところ「ハードルが高いな」と思いました。まず、ガンダムと比べて大きいじゃないですか。ガンダムが全高18メートルなのに対して、ユニコーンは22メートル近くある。基礎から見直さなければいけないし、そのサイズをどうしようかと。そして、完全変形は難しいとしても、変形させるのかさせないのか。さらに機体色も大きく変わりますよね。実際に作らければいけないという視点になると、どうしても大変そうなところばかりが頭をよぎってしまい、ガンダム立像を作ったときのノウハウは当然あるのですが、それとはまた違うものを考えなければいけないなと感じました。

 

中川:私は「ガンダムと同軸の世界観で未来を描いている作品」という考え方ならば、ユニコーンガンダムが選ばれるのは妥当なのかなと感じました。サイズが大きかったり、変形することは知っていたので、あとは「川原はこれをどう料理していくのかな?」と。

 

寺崎:ダイバーシティ東京 プラザはすでにオープンしている施設なので、周りのお客さまの安全性を考慮したり、繁忙期には現場の囲いを小さくしなければいけないといった“目に見えない壁”もたくさんあったので、それも含めてこれは大変だなと感じましたね。

 

――みなさん「大変そう」という1点においては同じ思いだったんですね。たしかに、我々のような端から見ている人間からしても、ユニコーンガンダムは「大変そうなガンダムだな」と感じました。

中川:立像製作の取っ掛かりとして「PG ユニコーンガンダム」などを材料として機構やプロポーションを検討する過程があるんですが、パーツ数は多いし組み合わせも複雑で……変形するしない以前にこれは骨が折れそうだぞと。

 

川原:最初にパーツ数を割り出してみたら、ガンダム立像の1.7倍ほどあったんですよ。それで、ガンダム立像のときは外装のパーツをタイの工場1箇所で作っていたんですが、今回はパーツ数から考えて1箇所でまかないきれないということになりました。そこで、大きなパーツを海外で、顔や手首などの細かいディテールが求められる部分は国内で作るというように、製作ベースを2つに分ける手はずになったんです。期間も若干短かったですし、製作のピークだった2017年7~8月は海外と国内の工場を行ったり来たりで、かなりハードでしたね。

 

▲検証用に作られたPG ユニコーンガンダム。▲検証用に作られたPG ユニコーンガンダム。手首の表情など、実物大と同じになっているところに注目していただきたい。なお、ツノは実物大ユニコーンガンダム立像にあわせ、製品版より短くなっている。

 

 

 

ちょっとしたスクープ合戦みたいな感じでしたね

――海外で作られた大きなパーツというと、脚部のパーツなどでしょうか。

川原:そうですね。一番大きなパーツはスネ後ろのスラスターカバーで、これだけで7~8メートルあります。あとはフクラハギ横の船形パーツ。これは本当に人が乗れるくらい大きくて、研磨作業中などは実際の船を磨いている気分でした。

 

――これだけ大きいと、輸送も大変そうですね。

川原:輸送自体はガンダム立像のときのノウハウがあったので大きなトラブルはなかったのですが、船のコンテナ内が高温になってしまい、いくらFRPといえどもどうしてもパーツが歪んでしまうんですよ。固定するテンションを上げたりと対策はしたのですが、なかなか計算通りにはいきませんね。

 

――完成したパーツはどこかに集めて最終的な調整をしたのでしょうか。

川原:ガンダム立像のときはそれをする時間があったのですが、今回は納期がタイトだったこともあり、現場(ダイバーシティ)でテントを建て、仮組みをしていきました。外からは見えないようにはしていましたが、ユニコーンがあまりに大きすぎてツノの先端がはみ出てしまって、めざといブロガーさんにかなり早い段階ですっぱ抜かれてしまいました(笑)。

 

――ネット上で、完成前から連日のように進捗状況があげられていましたね。

川原:現場に訪れたサンライズの担当さんも「まあ、いいんじゃないですか」と笑っていました。ある時なんて、進捗状況を報告しようとしたら「ネットで見ました!」といわれてしまって(笑)。なんというか、今時ですよね。

 

 

 

デザインの完全再現よりも、1/1立像という流れのなかでガンダム立像とつながりを感じるものに

――話はパーツの製作過程に戻りますが、製作工場が複数になることで、パーツの精度に差が出てしまったりするんでしょうか?

川原:当然、それは起こりうる問題だと想像していました。そこで、事前にカトキさん(ユニコーンガンダムをデザインしたカトキハジメ氏)ともお話をして、あらかじめ“プロダクトデザイン上の共有化”というか、ルールを決めておいたんです。カトキさんのデザインの特徴として、必ずAという面とBという面の間に「C面」があるんですが、このC面の取り方を規則化することで、製作工場が変わってもクオリティに変化が起こらないようにしました。

 

――なるほど、C面でパーツの統一感を管理していくと。なんというか、模型に近しい部分ですね。

川原:ホント、同じですよね。世の中にある工業製品って、直角に尖っているのものってほとんどないんですよ。だから、カドをC面としてルール化するのはひとつのコツですね。この「C面のルール化」により、複数の工場を使っても、ある程度クオリティコントロールすることができました。

 

――そのほかに、カトキ氏とはどのようなやりとりがあったのでしょうか?

川原:カトキさんとは初期段階から数回もミーティングをして、そのなかで構造面や強度面の問題で、デザインを多少調整しなければいけないというお話をさせていただきました。ありがたかったのは「自分のデザインの完全再現ということよりは、1/1立像という流れのなかで初代のガンダム立像とつながりを感じるデザインにしたほうがいいんじゃないか」といっていただけたことですね。

 

それで、カトキさんからのアイデアで、ガンダムとの“共有化部分”を作ろうということになりました。ところどころに開いている小さな四角い穴やファスナーパーツがそうなんですけど、ガンダム立像のときのデータを使い、一緒のデザインにしています。ガンダムと同じテクノロジーの延長線上で、ユニコーンガンダムが作られているという裏ストーリーです。

 

▲全身の小さなディテールを共有化することにより、78とのつながりを感じさせている。

▲全身の小さなディテールを共有化することにより、ガンダムとのつながりを感じさせている。

 

――ディテールでつながりを感じさせるということですね。

川原:はい。あとはガンダム立像のときに目の部分を1つの色で表現するのではなくて、センサーの複合体みたいなイメージで複数のLEDを入れたんです。それをカトキさんはおもしろかったといってくださって。今回もやってみたのですが、ちょっとデストロイモードの時に違和感があったんですよ。なので、そこは青と緑くらいに絞りました。

 

――あえて単色に近づけたと。

川原:そうですね。ほかの色味を入れることはやめました。やっぱり、ユニコーンガンダムの持っている色のイメージって強烈じゃないですか。なので、そこに違和感のある色を挿さないほうがいいのかなと。それでいうと、ガンダム立像は「人型の戦闘機」といったようなコンセプトがあったので、肩の端に赤と緑の翼端灯をつけたんです。当初ユニコーンガンダム立像でもこれをやろうとしたのですが、やはり色味的にちょっと違和感があったのでやめることにしました。ガンダムの持っている兵器的なリアルさと、ユニコーンガンダムの持っているヒーロー的なデザインは若干違うんだなと、改めて感じさせられました。

 

 

 

変形させられなかった部分も、違和感のないようにしなければ

――色数の少ないユニコーンガンダムのほうがヒーローっぽいというのは意外ですね。色についてもガンダムと大きく異なる点だと思いますが、苦労した部分はありましたか?

川原:完全変形できれば一番よかったんですが、どうしても構造上、変形できなかった部分があるんです。そういった箇所はユニコーンモード時にサイコフレームが剥き出しになってしまうので、その部分の色をどうしようかというのは、頭を悩ませました。やはり、ユニコーンモードのときに、ピンクのままというわけにはいかないじゃないですか。

 

それで、このPG(※1)を検討用に作って、サンライズさんと実際にこれでやりとりをしました。グレーに塗ってあるサイコフレーム部分が、立像で実際に剥き出しになっているところなんです。

 

▲※1▲(※1)デストロイモードとは別に、ユニコーンモード時の検証用に作られたPG ユニコーンガンダム。露出してしまうサイコフレーム部分はグレーに塗られており、違和感がないかを検討している。

 

 

――本当だ。意外にといっては失礼かもしれませんが、違和感がないですね。

川原:特に胸とか、本来は装甲が横にスライドしなければいけないんですけど、物理的に開閉のメカが入れられなかったので。このあたりはカトキさんが許してくれたのも大きかったです。ファンの方はやっぱり完全変形を望まれていると思うんですけども、なかなか。制限が多いなかで、いかに違和感なく「らしく」するということに腐心しました。

 

――デストロイモードに目を奪われがちですが、ユニコーンモードも大変だったんですね。

川原:そうですね。デストロイモードのみで変形しなくてもいいのであれば、それこそガンダム立像のノウハウでやれたんじゃないかと思います。そうそう、ユニコーンモードといえば「眼の奥」も大変でしたね。

 

――眼の奥ですか?

川原:やっぱりユニコーンモードの顔の眼の奥に、緑のセンサーを入れたいじゃないですか。ただ、どうも眼の位置がカッコよく決まらなくて。つけたりはずしたり、3回くらいやりなおしましたね。結局、現地で正面から見たときに若干上目になるように位置を調整しています。下から見たときに、そのほうがちょうどいい位置に決まるんですよ。

 

中川:このあたりの微調整は、モックアップのスケール感を落としたものなどでは限度があって、最終的には現物で調整しました。これほどの大きさになってしまうと、やはりデータはデータでしかないというか、「データでできているから同じようにできる」とはいかなかったですね。

 

 

顔の変形は、からくり時計のDNAなんです

――今回の立像の目玉でもある変形ですが、可動する部分で難しかったのはどのあたりでしょうか?

川原:やはり、ツノの開閉と頭ですね。狭いスペースの中に、複雑な変形ギミックをどう入れていこうかと悩みました。顔の変形は、設定だと(ユニコーンモードの顔が)上にせりあがって頭部に収納されるんですよ。ただ、ツノを動かすためのメカが中に入っているので、上にはたためない。そこで、いろいろ考えた結果、首下に落として胴体側に収納することにしました。これが構造の検討用モデルです(※2)。この仕組みは「文楽」などで使われる手法で、実はうちの会社の伝統芸なんです。明治時代からからくり舞台や時計等で大きくなった会社なので、そのDNAが受け継がれているといえますね。

 

▲※2

▲(※2)頭部のギミック検討用に作られたモデル。実際の実物大ユニコーンガンダム立像と同じように可動する。

 

 

――頭部の変形はからくり時計の発想だったんですか! それはおもしろいですね。

川原:そういう意味では、実物大ユニコーンガンダム立像には、現代のからくり時計のようなところがあると思います。時間になったら一斉に動き出すところとか。

 

――ツノの開閉ギミックにも苦労はあったんですか?

川原:サンライズ側のプロデューサーさんに「ツノの開閉スピードはシュッですよね?」といわれてしまって。「いや、シュウーです」と説明したら「シュッでしょ! アニメはもっとはやく動きますよ」と釘を刺されてしまいました(笑)。なので、できる限りスピード感のある動きにしています。ただ、どうしても大きいものを動かす安全性と強度の問題があり、あまりはやく動かすとブレーキの制動でガタガタしてしまうので。できる限りですが。

 

――そのほかに動くところというと、肩とヒザと……。

川原:スカートもですね。このスカートがけっこう大変で、フロントスカートは装甲がスライドするんですけど、カトキさんのデザインが複雑で、一軸でそのまま横にスライドさせようとすると引っ掛かってしまって開かないんですよ。そこで、いったんせりあがってからそのあとに横にスライドするという仕組みを考えたのですが、これだとメカが複雑になって重くなってしまう。そのあたりのせめぎあいがあって、最終的には一軸で斜め前にせりあがる方式にしました。このあたりはトライ&エラーの繰り返しで、かなり時間を食いました。

 

中川:そうですね。前から見るだけならばそこまでの違和感はないと思うんですが、やはり完成後はいろんな角度から見えてしまうので……。最初に作ったのはスライド部分が前にせりだしすぎてしまい、横から見たときにちょっとカッコ悪かったんですよ。それで、やっぱりクリアランスがない状態にしないといけないだろうと、メカを2度作りなおしました。

 

▲フロントスカートは頭を悩ませた部分。

▲フロントスカートは、どのように可動させるか頭を悩ませたという部分。完成した状態は、まったく違和感なく仕上がっている。

 

 

川原:脚部の可動に関しては、変形プロセス自体はシンプルなので大きな問題はなかったのですが、それよりもサイコフレームを光らせるためのLEDを入れるクリアランスを確保するのが大変でした。なかには太い鉄骨が通っているので、見た目以上にギリギリのスペースしかないんですよ。

 

 

 

サイコフレームは色よりも、素材選びに苦心しました

――LEDのお話が出ましたが、サイコフレームをはじめとした光の演出も今回のユニコーンガンダムの特徴だと思います。このあたりはいかがでしたか?

川原:RGBの調光で自由に色が出せるので、色の選択に関してはそこまで苦心することはなかったです。ただ、例えば「最終決戦仕様」の青っぽい緑を出そうとする時に、あのキラキラした感じはどう表現しよう? といったことで迷うことはありました。

 

中川:むしろ色よりも、サイコフレーム部分の素材選びに時間がかかりましたね。サイコフレーム部分はアクリル製なのですが、ただの透明な板ではなく、いろんなレイヤーを重ねているんですよ。アニメ本編でのサイコフレームのように発光させるため、カトキさんとも相談しながら決めていきました。

 

川原:結晶の感じが少しでも出せるように、ダイヤカットの板を入れたり、格子を入れたりとか。アクリルの板をフィルターのように重ねて、乱反射しているように見せたりと、試行錯誤の繰り返しでした。

 

――なるほど。かつ、ユニコーンモードのときには外装に見えるようにしなければ……と。

川原:そうなんです。光っていないときは、すりガラスっぽいぼんやりとした白に見えるようにしています。

 

――本当に細かいところまで、こだわり抜いて作られていたんですね。では逆に、全体を通してやりきれなかった部分や「こうしたかった」という部分はありますか?

川原:いただいたお題の中で、やれることはできるだけやらせていただいたつもりなので「こうしたかった」というのは正直あまりないですね。ただ、またなにかしらの形でゼロから作るチャンスがあるなら、やれなかったことをやりたいというのはあります。それは本当の意味での完全再現かもしれないですけども……。まったくの新しい場所で、構造もイチから作れるならば、実現の可能性はあるかもしれません。

 

――本日はいろいろなお話を聞かせていただきましたが、ユニコーンガンダム立像が完成したときは、どのように感じましたか?

中川:立像にすべてのパーツがついて、立ち上がって、発光して……というのは現場で毎日のように見ていたので、正直なところ完成した瞬間というのは、わりと普通に迎えてしまいました。私が一番感動したのは、オープニングの日に変形シークエンスを披露した時のお客さんの、大きなざわめきと歓声ですね。あれが一番「あぁ、完成したな。よかったな」と実感しました。いまだに変形の時間にお客さんが見やすいポジションをキープしていたり、シークエンス時に歓声があがったりしているのを見て、とてもうれしく思います。

 

川原:私はもう、一言でいえばお客さんの反応がよかったことにホッとしました(笑)。このような大きな仕事をして毎回ハードルが上がっていくなかで、今回もどうにかやりきったなと。実は私、オープニングセレモニーの日に緊張の糸が途切れたのか、会場で熱を出してしまいまして。フェスティバル広場の大階段の陰で寝ていたんです。なので、お披露目の瞬間は残念ながら、歓声しか聞いていないんですよ。

 

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――それでは最後になりますが、これから実際に立像を見にいこうという人に向けて「こういうところを見てほしい」というポイントをお願いします!

川原:ちょっと地味なんですが、ツノの閉じ具合でしょうか。ユニコーンモードに戻るときに、ぶつけて閉じてしまうと機械に負荷がかかってしまうので、実はあれ、クリアランス5ミリくらいの寸止めなんです。ウチのメカチームが頑張ってくれたので、そのあたりをぜひ見てやってください。

 

あと、ユニコーンガンダム立像は斜め上の角度から見るのがすごくカッコいいんです。高所作業用のクレーン車があるんですが、それに乗って上から眺めると、まるで自分がアナハイムの技術者になったみたいで。特に夜なんかはもう、本当にSFの世界です。なかなか一般の方は見れる機会がないと思うので、今後、映像などでお見せできればいいですね。


 

圧倒的な存在感の陰には、乃村工藝社の、そして関係者全員の「こだわり」や「苦労」、そして「魂」が込められている実物大ユニコーンガンダム立像。変身シークエンスはもちろん、ライトアップといった演出も定期的に行われているので、まだという方はもちろん、すでに見たという方ももう一度、足を運んでその熱量を確かめてみてください。

 

 

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(c)創通・サンライズ


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